『どよめけ!ミスLeaf学園コンテスト』 第三十八話 「approval supporter」 投稿者:霜月祐依


「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!? どこに行ったんですかセリオさん!

  出てきなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあい!!!

      きなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあい!!!

             ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあい!!!

                       ぁぁぁあい!!!

                               い……」



「…なんか、これって幻聴?」



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 『どよめけ!ミスLeaf学園コンテスト』 第三十八話 「approval supporter」
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 お子様戦隊初等部レンジャーの恐怖(?)からようやく開放されたセリオ・マルチの
連合軍は手近な教室に逃げ込む。一息つこうとした途端に聞こえてくる、あいも変わ
らないディアルトの叫び声に思わず身体をすくませる。
「マルチとセリオの決着以前に、なんとかしないといけないよなー」
 と、これは先ほどから引き続いてのセリスの弁。
 やはり、彼女たちに決着をつけさせては上げたいのだが、この状態ではいちいち
安心することもできない。
 どーしたものか…とセリスが悩み始めたその時、

「いたっ、ここにいたぞぉ!」

 突如人影が廊下の向こうから声を上げる。

「!!」

 廊下の向こうに次々と膨れ上がる人影に戦闘体制を取る面々。

「こんな大声を出して刺激してどうするの!?」
「す、すみません!!」

「!?」

 どうやら第一発見者で声を張り上げた人物が、リーダー格らしき人物に怒られてる。
その人物はゆっくりとこちらに向かって歩いてきた。

「ごめんね、驚かしちゃったかな…」



 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜



「♪そうよ、わったっしは、薔薇部の男〜」
 校内をいい感じで人を遠ざけ歩くは、アレイと薔薇部ご一行。
アレイがいつもの甲冑姿ではなく、学園制服を着ている為エントリーヒロインと
思われているのも大きい。だが、周囲の一般生徒には別の認識もあった。

 薔薇部やおい支部の女の子なのかな? …と。

 実は薔薇部にいる女子というのは、L学内でもレベルが高いのである。
アレイももちろん(素顔を知る人物は一部に限られるが)のこと、顧問の芳賀玲子に
松原美也。客員的な扱いの隼魔樹は…ともかくとして、美術部員でありながら理念に
大いに賛同している長谷部彩もちょくちょく顔を出す。よって部員と思われている面
もあり、本人もそのつもりなのかも知れない。
 薔薇部の女子生徒は全員コンテストに出場、もしくはなんらかの形で関わっている事
からもレベルの高さは立証できるであろう。
 それに加え、この年頃の女子生徒はやおいな妄想を大なり小なり持っている。一般
生徒が隠れファン的な扱いで支えているのだ。

 そしていつの頃からか定着した『やおい支部』の名称。

 折角女に興味のないバカな男たちが矢面に立っているんだから、自分たちは心おきなく
やおいに浸ろうと。

 この場合かわいそうなのは、こんな所まで利用されている矢島・橋本であろうか。


 話を戻そう。
 ギャラの先導によって、アレイと薔薇部の面々は悠々ととある場所に向かって歩い
ていた。
「いったいどちらに用があるんですか?」
 とはアレイの言葉。
 ギャラはついてきてくださいと言ったきり、先ほどから歌いながら歩くばかりだ。
「ま、今に始まったこっちゃないからー」
「そうそう、何も考えないほうが幸せよ」
 と、矢島・橋本が次々にフォローになってないフォローを入れる。
 考えるだけ無駄だという事を、彼らは身をもって知っていることもあるが。

 先頭を歩いていたギャラの足がぴたりと止まる。
 急停止した後にかかとを軸にしてそのまま一回転、回りきってから左足のつま先を
右側に出して床をノックする。
「着きましたよ」
 と。
「保健室…?」
 恐らくギャラの言葉は薔薇部の面々と、中にいるであろう人物の両方に向けて言ったの
であろう。ギャラはそのままゆっくりと扉を開けた。

「…あ、」
「てめえらは…」

 保健室には二人、いや三人の人物がいた。
 窓際にいて、訝しげな言葉を発したのがジン・ジャザム。
 ベットの脇で、濡れタオルを絞っていたのが長谷部彩。
 そして、彩によって介抱されていたのが…柏木耕一である。
「お待たせしました、介抱ご苦労様です」
「いえ私は…何もできていませんから」
 そうやって彩は顔を伏せる。柳川との戦いは一瞬の隙を突かれて耕一が敗北すること
となった。柳川や千鶴が去った後、M.K、EDGEらの協力を受けて保健室に担ぎ込
んだのだ。自分達がいることによって、耕一の救護に支障が出るという悠朔の判断もあ
り、ひづき達はその場を離れていた。
 本業に戻った相田響子によって応急措置を施され、耕一の命に別状は無かった。
が、今だ目を覚ますことなく眠り続けている。
「あの、M.KさんとEDGEさんを見かけませんでしたか?」
「見なかったけど、どうかしたのですが?」
「耕一センセの仇を取るんだと、二人して行っちまったんだよ。俺はこのとおり動けな
いし」
 アレイの言葉にジンが答える。よく見ると椅子に腰掛けている形ではあるが、両膝か
ら下がなかった。脇に膝から下の足が無造作に転がってる。
 余談だが、自力で動けないジンはここまで逆立ちで歩いてきた。足は耕一を運ぶつい
でにM.Kが転がしてきた。
「さて、耕一センセが倒れてしまったのはショックですが…まだ終わりではありませんよ」
「な……に?」
 ジンの目がギラリと光る。
「そう、その意気です。リベンジを――しなくてはならないと思いませんか?」
 その瞬間、ジンが窓枠の下を殴りつける。衝撃で窓枠がガタガタと揺れる。
「終われる訳ネェダロ! このままじゃ!!」
 ジンの砕かれた両膝を修復できるのは柳川以外に足りえない。柳川が味方として
いたとしても、修復は一朝一夕に終わるものでもない。
 ギャラはそんなこともあろうかと、不適な笑みを見せて指をパチンと鳴らす。
いつの間にか用意さていたのかと『ソレ』は姿を現す。
「こ、こいつは…!? う、乳母車じゃねーか!!」
「これで移動は解決できると思いませんか?」
 驚愕するジンの反応も無理からぬ事ではない。そこには一台の乳母車があったのだ。
「俺にこれに乗れってゆーのか!!」
「彼らが押してくれるから移動は問題ないですよ」
 ギャラに指差された矢島と橋本が「え? 俺? といった表情をする」

「ジンさん、あなたの牙はまだ折れていません。そうですよね」
 ジンはちらりと眠り続けている耕一を見やる。そして口を開いた――



 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜



「すぇ〜りぃぅぉ〜さぁ〜〜ん、ドぉ〜くぉ〜だぁ〜〜!!」
「ディアルト、ちょっ、ちょっととまってよぉ〜」
 相変わらずランナーズハイ状態に突入してしまい、爆走を続ける
戦うラーメン店主ディアルト。
 さっきから坂下好恵が声をかけているのだが耳を傾ける様子が見えない。
「ちょっと、とーるも止めてよ!!」
「この調子だと、屋台を壊さない限りダメでしょうねぇ。そーすると我々も危険
なんですよ」
「じゃぁ、どーすんのよ」
「走り疲れるのを待つしかないですね」
「そんな子供みたいな事…」
 好恵はちらりと他の面々を見やる。座席に座って屋台にしがみついている新城沙織、
川越たけるに電芹。彼女らはディアルトを止めるのは二人に任せたという状態であった。
「ねーねー、このあっきーのカンヅメおいしいかなぁ」
「この屋台って缶切りないんだね。栓抜きはあるのに」
「そのまま食べても美味しくないと思いますからやめた方が…」
「じゃ、ここで調理してみようよ。寸胴鍋も野菜もお肉もあるんだし♪」
「それだと、この缶詰の味がわかんなくなくならない?」
「ご飯にふりかけてみましょうか?」

「あんた達、ちょっとは手伝ってよ…」
 ワカメ涙を流したくなる好恵であった。

「こうなったら、仕方ない…」
「好恵さん、何を?」
 好恵がするすると屋根を伝って屋台の前に移動する、ディアルトが屋台を引いている引き棒に
両足を乗せた。
「ちょっと乱暴だけど、ゴメン!!」
 腕をディアルトの首に回した瞬間、絞める。
「せぇーーりぃーーーおーーー、さぁ〜ぁぁぁ……ぁぁ……あ…ん」
 頭が真っ白な状態で爆走を続けていたディアルトの脳裏がすっと暗くなる。
それと同時にディアルトの足取りが段々と弱くなってその場に崩れ落ちる。
だが、最高速度250km/hを誇るFENNEKを追走できる勢いで走り続けたディアルトが
落ちたからといって、すぐに彼が引いていた屋台の運動エネルギーがなくなる訳ではない。
つまり

 ゴンッッ!!

「「あ」」
 好恵ととーるが振り返った先には、崩れ落ちる際に後頭部を強打して地面に崩れ
落ちたディアルトの姿が見られる。移動式であるが故、屋台の底は人一人が寝っ転がれる
分ぐらいの空間はある。ヒキガエルになるのは免れたようだが…。
「タンコブだよぷっくらだよおもちみたいでぷかぁ〜んとおいしそうだよそういえば
まだ私達ご飯食べてないよねお腹すいたな〜やっぱあっきーの缶詰食べちゃおうよ」
「ねぇ、好恵さんどーやって止まるのこれ?」
「ほっとけば直に止まるんじゃないの?」
「二輪しかついてない屋台じゃ、バランスを崩しちゃいますよ!!」
 以外に無頓着な好恵の言葉に頭を抱えるとーる。
「任せてください」
 そう言って屋台の上によじ登る電芹。そして、スタンスを取ると電柱を水平に構える。
「よっ…ほっ…」
 時々声を上げながら屋台の上で絶妙なバランスを取り始める。それをみたとーるが
好恵と協力し、それぞれの足を屋台の車輪に足を少しだけ掛けてじわりとブレーキを
掛け始める。
「よし、今です」
 屋台のスピードが随分落ちたのを気とみたとーるが、屋台の後ろに飛び降りて屋台を掴む。
そして両足で完全なブレーキを掛けることによってようやく停止した。
「よ〜やく止まったね。結局セリオちゃんも見失っちゃったし…」
 沙織があたりを見回して答える。
 セリオ達を追い掛け回していた地点から随分と移動してしまった。
 また一から探さなくてはならない。
「そうですね、参考になるかどうかわかりませんが…」
 とーるが背負っていたカバンからノートPCを取り出す。
彼も『“Brother Two” Presents』のメールを受け取っていたのだ。
「ねっ、ねっ、どんなのがあるの?」
「さ、沙織さ…」
 とーるの脇から身を乗り出すようにして画面を見つめる沙織。いきなりの急接近に
顔を赤くするとーる。
「……ちょっと、セリオさんに関する新情報はないみたいで――」

 ヒュルルルッ、ズドン! クワワァ〜ン

 とーる言葉を遮るかのように飛んできた飛来物。
 それは彼らの前で地面に激突し、左右に跳ねる様に動き、それは徐々に収まっていく。

「「「「タライ…?」」」」

 飛んできたのはブリキ製のたらい中には何も入ってない。
 否、そのタライに込められたメッセージを読み取った者が一人だけいた。
(………………!?)
 そして、すぐに意図を理解した人物の異変にすぐ気がついたのは、彼女を
一番良く知る人物。
「電芹? ちょっと、ドコ行くの!?」
 電芹は皆と屋台を挟んだ向こう側に立ち、電柱を上に向けて担いでいる。
「たけるさん、皆さん、ゴメンなさい。私は行かなくてはなりません」
 言うや否や、電芹が上空に向けて電柱を勢い良く投げる。
「ハアッ!!」
 まるで投槍のように電柱が一直線に遠ざかり、ジャンプ一発で飛び乗る電芹。
電芹の乗った電柱は一直線に目的地に向けて飛んでいく。

「電芹ーーーーーーーー!!!」

 たけるの叫びが届くこともなく、電芹の姿が消えていく。
 どうして…と、呟いたたけるはその場にペタンと腰を落とす。他の面々には突然の
出来事過ぎて何がなんだかさっぱりわからない。
「あの…たけるちゃん?」
 沙織が声を掛けるが、すでに涙目になっているたけるからの返事はない。
 好恵がちらりととーるの顔を見るが、とーるも困惑したままだ。



 ヒュウウウゥゥゥゥゥンンンンンン!! ズドーーーーーーン!!!

 大きな衝撃音を残して、リネット棟の屋上に着陸す電柱。
 土埃が沸き立つ中、引き続いて電芹が降り立った。
 電芹は注意深く周囲を探りつつ、土ぼこりが収まるのを待つ。
(セリオお姉様……)
 だが、セリオの気配は感じられない。
 土埃が晴れ、電芹の視界に映ったもの――

「タ、タライ…」

 それは広い屋上全体に渡って点々と置かれているタライ。
思わず一歩引いてファイティングポーズを取ってしまう。

 ヒュッ

「!?」
 電芹は後方に気配を感じる。
 直感で後ろを振り返っている余裕がないと判断、前方へ転がるように回避する。
電芹がいた場所にはタライが、
「セリオお姉様!」
 電芹の視界の先、給水塔の影からセリオがその姿を現す。たった一人で。
「どういうことですか? いくらなんでもこれはヒドすぎます」
「このコンテストに参加している以上、私は負けるわけには行かないのです。
私に協力してくれている多くの方々の願いを無駄にしないためにも。
 ですから――」
 セリオは片手に握っている釣竿を振りかぶりロッドを飛ばす。中空を泳ぐように
ロッドはまっすぐにタライを目指し、そして釣り針が引っ掛ける。
 セリオが釣竿をわずかに動かすと、タライは意思を持ったかのように電芹へ向けて
襲い掛かる。

「お、姉…様」
 すんでのところで避ける電芹。
 が、タライは電芹を逃さないとばかり戻って来る。

(私は、あなたを、超えなくては、ならない!)

 カキーン!!

 セリオがわずかに驚いた表情を見せる。
 電芹の頭に乗るかと思われたタライはセリオのやや上を飛び、給水塔に激突する。

「それがあなたの意思なのですね」
「セリオお姉様。私は、私は、電芹です!」

 背中に回し、水平に倒した電柱を右手で抱えるように構える。
 タライにおびえる事のなく、力強い目でセリオを見据える電芹。



「う〜〜電芹……」
 たけるはその場に座り込んでしまった。いつも一緒にいるパートナーが突然どこかに
いってしまった衝撃は、たけるにとってかなりのものである。
(この場所は…非常に危険なのに)
 とーるは内心かなり不安になっていた。一行は未だに屋台の側にいたのだが、
ここが校庭の端で障害物がなく見通しが良い。つまり非常に発見されやすい位置なのだ。
 電芹を待つにしろ、安全な場所までいかに移動させるかをずっと思案していた。
「あ、あれは…サッカー部?」
 好恵が自分達に近づいてくる一団に気が付く。
「バスケ部とか野球部とかもいるね」
 沙織が続く。確かに男子の体育会系部員が集まっているようだ。
「どういうつもりだろう?」
 徐々に近づいている一団は一行の10mほど手前で停止する。とーるが皆を庇う様に
先頭に立つ。
「とーる君」
 自分の名前を呼ばれたとーるはわずかに驚く。そして、その名前を呼んだ人物も。
「佐藤さん、皆さんお揃いでどうしましたか?」
 佐藤雅史、サッカー部のエースだ。
「君達に意思を確認しにきたんだ」
「意思?」
「そう、セリオさんの掲げた公約――」
「雅史ちゃんも、セリオちゃんの公約許せないでしょ! ディアルト君のラーメンも
XY−MEN君のたこ焼きもなにも食べられなくなるんだよ!!
協力してくれるんだよね、ね」
 沙織が雅史の言葉に割り込んでくる。すでに彼女にとっては強力な援軍のつもりだ。
「――さおりんごめん、逆なんだ。
 僕達はセリオさんの公約を実現しなくてはならない」
「逆? なんで?、なんでよー!!」
 思ってもよらなかった雅史の言葉に戸惑う沙織。
「さおりんなら知ってるでしょ、一年前の悲劇はもう二度と繰り返してはならないんだ」
「一年前? ……あ、あの!!」
 好恵が何かを思い出すかのような仕草から、驚愕の表情を見せる。
「好恵さん、一体何が?」
「あれは一年前の夏……どこの部も何かしらの大会があって、三年生はこれに負けたら
もう終わり。一番大事な時期さ。だが、うちの学校のすべての男子の体育会系の部活は
不完全燃焼で終わった」
「不完全燃焼なんて言葉で片付けるな! あとちょっとで甲子園だったんだぞ!!」
「俺達もインターハイ出場が掛かってたんだ!!」
 野球部員が声を荒げ、ハンドボール部員がそれに続く。
「…こいつらには大会当日に差し入れがあったんだ。千鶴先生から」

 好恵が紡いだNGワード。周囲の空気が一気に重くなる。

「この、一年前の『ちーちゃんストリーム』は二度と繰り返してはいけないんだ。
『耕一先生が夏バテしないように☆ミ』なんて理由なだけで! だから、僕たちは
セリオさんに協力するんだ!!」
 いつもはゆっくりとした雅史の口調が珍しく強くなる。
「それは我々に敵対するということですか」
「だから、僕はとーる君を迎えに来た」
 雅史の勧誘に戸惑うとーる。
「君達の男子バレー部は部員が揃っていなかったから、その被害を受けてはない。
でも、他人事ではないんだ。君もこの悲劇を繰り返さないために協力して欲しい」
「嫌です。
 それは悲劇かも知れませんが、だからといってセリオさんの公約は無謀すぎます。
私達男子バレー部があるのは、城下さんや沙織さんの努力のおかげです。沙織さんの
幸せを奪う公約には賛同しかねます。それに、カフェテリアや屋台で見られるみんなの
笑顔が奪われるのは我慢なりません」
 とーるの答えは簡潔だった。うしろで沙織がさおりんだよと指摘してはいるが。
「そうなんだ…」
 雅史がため息をつく。

「なら――」

   雅史を始めとして、その場にいた男子部員が一斉に片手に持っていたハチマキを
   両手に握る。

「――戦おう!!!」

   一斉にどよコン参加者の証であるハチマキを締める。

 それが沙織たち一行に対する宣戦布告となった。



「セリオさん、大丈夫かなぁ…」
 一方、こちらはセリオと電芹が戦っているリネット棟の屋上に通じる階段。
 陸奥崇が二人の戦いを影ながら見守り、ピンチに備えている。
「まさか、佐藤先輩達が協力してくれるなんて…」

 崇はマルチ達と逃げ込んだ教室に訪れた訪問者のことを思い返す。
「君達に協力したいんだ。勝手な調理をのさばらしておくわけにはいかない」
 そう力強く語った雅史を始め、男子の体育会系部員は協力を約束してくれた。

 その時にセリオが立てた作戦はこうだ、沙織一行を一人一人分断して戦力を
すり減らしていく。言うのは簡単だがどうやって? との疑問には
「私なら電芹さんを確実に引き寄せる手があります」


「とは言っていたけど、タライねぇ…」
 苦笑いするしかない崇である。


 その間に雅史たちが沙織一行を包囲、行動を止めた上でセリオと崇が電芹を
足止めさせる。順番にディアルト、とーるといった順番に分断して戦力を割く。
結果的にディアルトが昏倒してしまい、彼らの機動力は失われた。
 雅史たちはセリオがリスクを犯すことに反対をしたのだが、崇とFENNEKは
自分が出来ることだからと言い出したセリオの意思を尊重することにした。
 FENNEKは沙織一行をかく乱するために、ダミーの人形(セリス達は本人が
乗っているのだが)を乗せて走り回っている。

 崇は再び意識を回想から戦闘に戻す。
 セリオが次々とタライを引っ掛けて雨のようにタライを降らせる。
 電芹がそれを時にはかわし、
 時にはセリオに向かって打ち返す。
 セリオが電芹にタライを被せる事が出来れば、それで勝負は決する。

(――殺気!?)
 崇が背後に感じた殺気、あわてて踊り場へと飛び込んで逃げる。
 瞬間、崇が先程より立っていた場所に雷撃が落ちる。

「あ、ライデインをかわすなんてビックリ…」

「か、神岸先輩…」
 下の階からゆっくりと階段を上ってきたのは神岸あかり。先の雷撃は彼女が放った
ライデインのようだ。
「陸奥君って、セリオちゃんの味方をしているんだよね」
「ええ、まぁ…。神岸先輩は?」
 いきなり崇を攻撃した時点で味方にはならないと思うが、それでも一応聞いてみる。
「セリオちゃんが勝っちゃったら、お料理研究会はどうなると思う?」
「そりゃまぁ、調理が出来ないから……」
 ニコニコ顔で話しかけるあかりと冷や汗だらだらの崇の間に流れる沈黙。
「だから、セリオちゃんに勝ってもらうと困るの。
 そういう訳で、陸奥君も邪魔しないでね」
「そ、それは出来ません!」
 のんきなあかりの口調とは裏腹に手に持った出刃包丁が光る。

「なら、実力で通らせてもらおうかな」
(本気でやらないと…負ける!!)

                               to be Continued…。

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 さてはて、どよコンの続きです〜。
 剥き担当とか公言している割には、今回はちょっと脱落者なしです。
 ってーのも、電芹で桃○白をどーしてもやりたかったんで(笑)
 実際に文章にしてみると思ったほど描写が出来なかった罠もアリですが(^^;
 ちなみに愛蔵版が出たからとかじゃないですよ。その前から思いついてましたから。
 あとタラ芹も。電芹の心の傷をえぐるようで申し訳ないですが(笑)

 それをやった後で誰かを脱落させるとなるとちょっと描写が淡白になりすぎちゃうかな
 と思ったので、次回以降にお任せです。

 ちなみにギャラチームの行動は31話で千鶴センセを襲う前です。
 実はかなりの策士ですねー(笑)