私的Lメモ「来栖川警備保障勤務簿」 投稿者:霜月 祐依


 ジリリリリリリリリンンン!!
  
  漆黒の闇の中、侵入者を告げるサイレンの音が鳴り響く。同時に四方八方からサーチ
ライトが当てられ周囲は騒然となる。第一級犯罪を犯したような犯罪者が収監されてい
るような建物はたちまち光の城と化す。そして、その建物から脱出に成功した全身黒ず
くめの男が一人。男は振り返って建物を眺め、勝利の笑みを浮かべると一人漆黒の闇へ
と消えていった・・・。
 鬼ですら恐れると異名を取るその建物の名は・・・

  「Leaf学園女子寮」

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           私的Lメモ「来栖川警備保障勤務簿」

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 ズガン!!

 荒々しく机を叩きつける音が部屋中に響き渡る。ここは生徒指導部の居室。部下から
の報告を受けたディルクセンが感情を露わにして怒りをブチ負けている。
「今月に入ってもう5件目だぞ、何のために大量の人員を割いて徹夜で警戒させたと思
っている!!」
「でも、女子寮には男子は入れるわけにはいかないし、仕事だからって寮内で張り込め
る女子もそういないわよ」
 ディルクセンの隣にいた松原美也が眠い目をこすりながら答える。彼女も昨夜からの
泊まり込みでの警戒で一睡もしていなかった。
「そもそも、寮のことまで私達がする仕事なの?」
 確かに、生徒指導部が泊まり込みまでして下着泥棒一人を捕まえるというのはやりす
ぎという意見が内外から上がっていたのも事実。捕まえれば捕まえたで当然。逆に今回
のように失敗を重ねた後のリスクの方が大きかった。
(あわよくば学園内で我々の力が及ばない学園寮に対して力を示して起きたかったが、
今回は見送るか・・・)
 ディルクセンは少しの沈黙の後、美也を呼び寄せた。
「本来の担当にでも、我々の業務外だといってつきつけてやれ。失敗したら失敗したで
奴らの評判が落ちるだけだ」
「そうね、たまには学園の為に働いて貰わないと」
 美也はそう言い残して居室を出ていった。


「・・・と、言うわけで今日から全員泊まり込みで警戒に当たって貰います」
「「「えーーーーー!!!」」」
「「「わぁ〜い、お泊まり、お泊まり」」」
 ここは、来栖川警備保障のミーティングルーム。生徒指導部より下着泥棒検挙の依頼
を突きつけられたへーのき=つかさがアルバイトスタッフに対して説明を行っていた。
不満の声をあげるOLH、榊宗一、森川由綺。それに対して、笛音、ティーナ、木神木
風は既に遠足気分でいる。
「大体、何で俺達がそこまでやらなきゃならないの」
「元々、この仕事を受け持つべきは我々なんです。それを横取りしていた生徒指導部が
手に負えなくなって押しつけたとみるべきでしょうね」
 OLHの疑問にへーのきがさらりと答える。まぁその通りなのだが。
「とりあえず、夜間の見回りは先ほど打ち合わせたシフトで行います。なに、下着泥棒
を捕まえるまでの辛抱です」
 へーのきはそう言ってミーティングをうち切った。これからの激務を予想し、既にや
る気ナッシングなOLHや榊。遠足気分が高じておやつにバナナを含めるか含めないか
の話にまで発展したお子様組。そして珍しくミーティングで一言も発しなかったDシリ
ーズと、三者三様の光景にへーのきは頭を痛めることになった。

「ふぅ、クラブハウス棟異常なし。Dセリオさん、次行きましょうか」
「そうですね」
 警備保障の面々が全員出動態勢に突入し日の深夜、榊とDセリオが巡回を行っていた。
「さて、次は女子寮の周辺ですね・・・おや?」
 榊がライトを照らした方向から近づいてきたのは柳川祐也であった。
「どうしたんです、柳川先生」
「実験に必要な材料を探していたところだ、貴様らは?」
「夜間の見回りです」
「フン、件の下着泥棒の話か。せいぜい頑張ることだな」
 柳川は、つまならそうに眼鏡を上げる仕草をして、科学部の方へと歩いていった。
「なんだったんでしょうか?」
 Dセリオが柳川の背を見つめてつぶやく。そして今夜、下着泥棒はついに出現しなか
った。

 全員出動態勢2日目・・・異常なし
        3日目・・・異常なし
       4日目・・・異常なし

「ふぁ〜ぁ、ねむ・・・」
「ネムイデス、ネムイデス」
 5日目に突入した授業中、へーのきは警備保障のメインルームで机に突っ伏していた。
お子様組とへーのきを除くアルバイトの面々は授業に出ており、この場にいるのは彼と
Dシリーズだけであった。
「もう、出ないんじゃないかなぁ・・・」
 へーのきは、誰に聞かれることもなくそう呟いた。正直、そうであって欲しいという
願望の現れなのだが。

 同時刻、女子更衣室

「ふぅ、疲れた、疲れた」
 体育の授業を終えた柏木梓、大場詠美、猪名川由宇といった3年生の女子軍団が入っ
てきた。
「それにしても、今日の体育は辛かったね」
「そーよ、こんな寒いのに外でランニングさせるなんて超ムカツクー」
 梓の言葉に詠美が答える。
「なら、私が暖めてあげます。梓セ・ン・パ・イ☆」
「うっひゃぁぁぁぁ!!」
 体操着を脱ごうとしていた梓の背中に取り憑いたのは日吉かおりその人であった。
「ちょ、ちょっと、かおり! なんで2年のあんたがここにいるのよ!!」
「梓先輩を待ちきれなくって、あぁ、梓先輩の髪、梓先輩の汗、梓先輩のに・お・い」

「うっとぉしぃんじゃぁ!!」 スパーン!!!

 後頭部に強い衝撃を受けたかおりが後ろを振り返ると、そこにはハリセンを構えた由
宇が立ちはだかっていた。
「何するんですか猪名川先輩、もしかして、私と梓先輩の仲を妬いてるんですね」
「寝言は寝てから言いやぁ!!」 スッパァッッッン!!!
 今度は由宇のハリセンがかおりの顎にクリーンヒットする。さすがにかおりもひとた
まりもなかったのか窓側まで吹っ飛ばされて大人しくなった。・・・って気絶してる?
「まったく、もうちょっとシャキッとせなアカンよ」
「う、うん、ごめん、由宇」
 由宇に対して、梓は返す言葉が見つからなかった。

「あ、あの・・・私の制服が見あたらないのですけど」
 騒ぎから離れた所で一人着替えようとしていた彩がしずしずと申し出てきた。その言
葉に更衣室にいた女子全員がざわめき出す。
「あーーー!!! 替えの下着がないっ!!」
「・・・・・・」
「え? 私の制服も?」
 慌てて自分の持ち物をチェックしている中から、詠美と芹香も盗難にあっっている事
が判明する。
「ちょっと、かおり、あんた・・・」
「違う、日吉やったら梓以外の物には興味示さんはずや。もしかして・・・」

「「「やられた?」」」

「駄目ですね、痕跡と呼べるような物は残されていません」
 30分後、黒山の人だかりとなった女子更衣室に警備保障の面々が駆けつけていた。
指紋等の採取を試みていたDマルチが更衣室の入り口に待機していたへーのきに報告し
てくる。
「不特定多数の人が出入りしているわけだからなぁ・・・」
 へーのきは頭を抱えた。これまでの被害は女子寮、しかも夜間に被害が集中していた
のだが、今回は完全に裏をかかれる形となってしまった。
(でも、生徒指導部から聞いていた話と少し違うな・・・)
 へーのきは少し考えた後、Dマルチを呼んで耳打ちする。
(これで、僕の仮説が成り立つと思うんだけど)
「どうした、へーのき?」
 被害にあった女生徒から事情を聞いていたOLHがやってきた。
「あ、OLHさん。大体の状況は掴めましたよね?」
「ああ、まぁ」
「じゃ、一旦警備保障に戻りましょうか」
「え、ここはいいのか?」
「ここにいても進展はなさそうですし」

 放課後、来栖川警備保障

「・・・笛音ちゃん、これは一体?」
「うん、『罠』だよっ!」
 へーのきは、『罠』らしきものをせっせと作成している笛音に向かって語りかけた。
笛音はティーナらお子様組と一生懸命作成に取りかかっている。
(罠って、それで何を捕らえるつもりなんですか?)
 突っ込みたい衝動を必死に堪えているへーのきのもとにDマルチが駆け寄ってきた。
「へーのきさん、結果が出ました」
 へーのきはDマルチが出力してきた用紙を眺めながら自分の推理が正しいことを確認
する。
(全く、生徒指導部も隠すことじゃないでしょうに。これは、分かってて押しつけたの
かな? どちらにしろ嫌だなぁ)
 へーのきは鋭意制作中の『罠』を見つめながらため息をついた。

 同時刻、第二購買部

「あ,霜月さんいらっしゃい・・・ってどうしたんですその顔」
 beakerが店番をしていた第二購買部に、霜月祐依がやってきた。霜月の右頬には真っ
赤な張り手の後がくっきりと残っている。
「あ、beaker君。大庭の奴にちょっとね・・・」
 霜月はbeakerにその時のあらましをかいつまんで説明した。どうやら、先の下着泥棒
騒ぎで替えの下着を盗られる被害にあった詠美に対し、霜月が『下着買ってきてやろう
か? Aカップでいいよな』と発言した結果であった。
「はぁ・・・。(ま、当然ですね)で、破魔札ですか?」
「(ボソボソ)ここって、女子用の制服とかもあるよな」
「ええっ・・・て、霜月さんまさか・・・!?」

 ガフッ(beakerの口を霜月が塞ぐ)

「(ボソボソ)ちっがーう、長谷部と大庭の分だ」
「(フゴフゴ)わ、わっかりました」
 冷や汗をかきながらbeakerは思った。だからといって男に買いに行かせるものなのか?
「サイズはこちらで把握してる奴で大丈夫ですよね」
「あぁ、って把握してるの?」
「デコイさんのおかげですよ」
 beakerはさも当然といった感じで語る。デコイの盗撮技術にかかっては女生徒の身長、
体重、3サイズなど朝飯前であった。
「じゃ、こちらになります。あと破魔札の方がこちらですね」
 beakerが紙袋に二人分の制服を入れて霜月に渡す。破魔札を胸ポケットにしまい込ん
だ霜月は第二購買部を後にした。
「ううむ、制服代はともかくとして、破魔札の代金が馬鹿にならなくなってきた」
 日々是丹精・・・もとい、日々争いが耐えないこのLeaf学園では望む望まないに
関わらず戦いに巻き込まれる。霜月も防衛手段として破魔札の使用で乗り切っていた。
しかし、破魔札の威力が値段に正比例するため、威力、値段、使用頻度全てが増加傾向
にある現在、懐具合がかなりヤバイ状況になっていた。
「アルバイトしないとなぁ・・・」
 考え事をしながら歩く霜月がちゃんと前を見ているわけでもなく、見事に道を間違え
ていた。そして、警備保障の入り口付近にたどり着いたとき『それ』は存在していた。

「な、なんだこれ・・・」
 霜月の目に映ったのは、直径5m、高さ3m前後の竹で組まれ、つっかえ棒によって
傾けた状態になっているドーム状の巨大な籠。つっかえ棒からは一本のロープが伸びて
おり、籠の中にはパンティが一枚・・・。
(獲物が来たよ、お兄ちゃん・・・)
(慎重にいけよ笛音・・・)
 そう、お子様組の知恵の結晶『下着泥棒捕獲用罠』であった。

(下手に関わらない方が得策だな・・・)
 霜月は冷や汗を垂らしながら、罠を避けるように廊下の端を歩き始める。
(ああっ、どうしよう笛音ちゃん。逃げられちゃう!)
(ティーナちゃん、私に任して。 えぇーい!!)
 慌てるティーナをよそに笛音が念動力を発動させる。

 ふわっ

「え? 体が、自由が利かないって、あーーー!!」
「今よ、お兄ちゃん!」
「任せろっ」

 ピンッ、、、ズッシーン!!

 笛音の念動力で無理矢理籠の中に押し込んだ瞬間、OLHがつっかえ棒に結んであっ
たロープを引っ張る。つまり、霜月は罠に引っかかった訳でして・・・。

「やったぁ、下着泥棒捕まえたぁ!」
「よぉーし、全員で包囲するんだ」
「ホウイシマス、ホウイシマス」

 気づいたら、警備保障の面々に包囲されている次第です。

「さぁ、大人しく観念して貰おうか」
「今なら、半殺しですみますよ」
 訳が分からない状態の霜月に榊とDセリオが脅しをかける。
「ちょっと、下着泥棒って何かの間違いじゃ・・・」
「その紙袋の中にある女子用の制服が何よりのしょーこ!!」
 否定しようとした霜月に対して、OLHが傍に置いてあった紙袋を指さす。何せこの
時期、疑われるには十分すぎるアイテムだった。
「だぁ〜から、俺は・・・」

 ピシッ

 反論しようとした霜月の喉元にDセリオのサイファーが突きつけられる。霜月の唾を
飲み込む音が周囲に響き渡る。
「罪を認めれば、半殺しで済みます。罪を認めないのであれば・・・首と胴体が真っ二
つになります」
(どっちみち、生きて帰れないじゃん・・・)
 霜月の頭の中には、既に幼少の頃の思い出が走馬燈のように流れ出す。初恋の女の子
が引っ越していった事、徒競走で胸?の差で負けた事、修学旅行の記念撮影で一人だけ
ポーズを決めてしまいとっても恥ずかしかった事・・・etc。

「じゃあ、どうしてここに?」

 覚悟を決め、辞世の句まで考えていた霜月を地獄の底から救ったのは、後方でおろお
ろしながら見守っていた森川由綺の一言であった。
「そ、そぅ、ア、アルバイト志望なんですよ!」
 咄嗟に霜月が返した言葉は実に情けなく、口から出任せの上に声が裏返っている。
「ほ、ほら、俺は、これでもゴーストスイーパーやってるから、実戦が修行代わりにも
なるし、武器で使う破魔札の代金も稼ぎたいし・・・」
 警備保障の面々は疑いの眼差しで霜月を見続けている。
(駄、駄目か?)
「その言葉、本当ですか?」
 Dセリオの言葉に霜月は凄まじいスピードで頷いてみせる。それを見たDセリオもサ
イファーを下げる。
(た、助かったぁ〜)
 とりあえず、身の安全は確保された霜月は全身の力が抜けた。そこへ、警備保障の中
で罠作戦に参加しなかったへーのきとDマルチが駆けつけてきた。
「そんな所にいたんですか皆さん。下着泥棒の犯人が出ましたよ!!」
「やっぱり、貴方だったのですね」
 へーのきの言葉を聞いてDセリオが再びサイファーを霜月の喉元に突きつける。
「わー、ちょっと!!」
「違います、Dセリオさん。彼じゃないです! 犯人は今、校庭で暴れています!!」
「「「「「校庭で?」」」」」

 全員出動態勢で校庭に駆け出す警備保障の面々。しっかりと霜月も逃げられないよう
に紐で縛られて連れられている。そして、走りながらへーのきが全員に説明を行う。
「まず、この学園内で事件が起こっている時点で完全に内部の犯行です。そして今まで
時間帯が深夜に及んでいる事。今日は授業中に起こった。こんな時間に自由に動ける人
物という時点でかなり限られてきます」
「あ・・・」
 榊が何かを思いだしたかのように呟く。
「それに、過去の女子寮侵入事件で被害に遭ったのは下着だけじゃないんです。何故か
生徒指導部は隠していましたが、パジャマや洋服も被害に遭ってます。つまり、犯人は
・・・」



「エルクゥユウヤ、パジャマなお邪魔で参上よ☆」



 チーーーーーーーン



 凍り付く警備保障の面々&霜月。
「つまり、エルクゥユウヤのコスチューム衣装にするための素材として下着や洋服を盗
んでいた訳です。鬼の力を自在に操れる普段の柳川先生の時に・・・」

「あーーーー!!! そのパジャマ私の!!」
 校庭でギャラリーをしていた来栖川綾香が叫ぶ。
「高級シルクは、肌触りがよくって、か・い・か・ん」
「来栖川邸にも侵入してやがったのか・・・」
 エルクゥユウヤの言葉に、思わずOLHが呟く。
「「あ、あれが、綾香のパジャマ・・・」」
 エルクゥユウヤの怪しい姿を目の当たりにしても綾香がパジャマに身を包んだ姿を想
像し、あっちの世界に飛び立つ悠朔とハイドランド。
「で、どうする? へーのき?」
「う〜ん」
 OLHの言葉に悩むへーのき。でも、ティーナの姿が見えなくなっている。という事
は・・・。

「愛と正義の魔法少女マジカルティーナ、変態さんに引導渡しにただ今参上!!」

 ピシッとポーズを決めたマジカルティーナがエルクゥユウヤと対峙する。 
「出たわね、貧乳娘が」
「うっさいわね、下着泥棒なんて極悪人のやる事よ、展開も展開だしとっとと退治され
なさい!」
「たった一人でエルクゥユウヤに勝てると思ってるの?」
「ふっ・・・」

 ピカッ、ズッドォーーーーーーーン!!

 マジカルティーナが顔に似合わず不適な笑みを浮かべたかと思った瞬間、はるか上空
からの光点がエルクゥユウヤを貫く。残されたのは校庭に広がるクレーターと真っ黒焦
げのエルクゥユウヤであった。
「ちょっと、戦艦冬月ってのは二番煎じじゃぁ・・・」
「勝てばいーのよ、勝てば。それに正々堂々戦うなんて一言も言ってないし」
 高笑いをしながら勝ち誇るマジカルティーナ。どうでもいいがキャラ違わない?
「それに・・・」
 マジカルティーナがパチンと指を鳴らす。それを合図に女生徒がエルクゥユウヤの周
りを取り囲む。

「被害に遭われた皆様、やぁ〜っておしまい!!」
 マジカルティーナの合図を元にたこ殴りを始める女生徒軍団。って本当にキャラが違
うと思うのだが・・・。

「なぁ、へーのき」
「何ですか、OLHさん」
「科特隊の気分ってこんなんだったのかなぁ・・・」
「そうですね・・・」

 外に夕闇がさしかかる頃。事後処理を終えた警備保障の一行は警備保障のメインルー
ムへと戻っていた。
「えっと、じゃぁ本当にアルバイトをしたいのですね」
「うん、そう」
 へーのきからアルバイトについて説明を受けた霜月は改めて、アルバイトとして雇っ
て欲しいという意志をへーのきに伝えた。
「じゃぁ、仕事を覚えて貰うまでは雑用って事で・・・」
「霜月さん、とりあえず今度の週末に新人研修を受けて貰いますので、予定を空けてお
いて下さい」
 へーのきの言葉を遮ってDセリオが話し出す。見ると、OLHと榊が後ろで涙を流し
ながら何かを思いだしているようだ。
(へーのき様のLメモへーのき番外編4『来栖川警備保障新人研修の巻』参照)

「それでは、これから宜しくお願いします」
「こちらこそ」
 Dセリオが差し出した右手に戸惑いながらも霜月も右手を差し出して握手する。なに
はともあれ、霜月の来栖川警備保障におけるアルバイトが認められた瞬間であった。

「ふぅ、今日は大変な一日になったなぁ」
 霜月は緊張が解けたせいか、額に汗が滲んできたのでポケットからハンカチを取り出
して額を拭く。

「「「「「あ・・・」」」」」
「え? あ゛・・・」

 全員の目は霜月が汗を拭ったハンカチに集中した。そのハンカチはくまさんプリント
の逆三角形の形をしていた。つまり・・・。

「それ、私の勝負用のパ・・・」

 顔から火が出るかという勢いで真っ赤になった由綺が言葉を絞り出す。
「あ、いや、これは、ちが・・・、何かの間違・・・」
 霜月が言い訳を言い終わらない内に全員が思い思いの武器を取り出す。
「いゃ、これは・・・・」

「「「「「覚悟はいいですか?」」」」」