想い高まる刻 投稿者:SOS


りーふ学園屋上、昼休みも残り時間が無くなってきたため、昼食を摂ったり、談笑をした
りしていた生徒もほとんどが教室へと戻っていた。
そんな中、他の生徒と一緒に教室へ戻ろうとするSOSを呼び止める声があった。
「お〜い、SOSぅ」
「ああ、YOSSYFLAMEさん。どうかしましたか?」
「おう、ちっとこっち来てくれ」
YOSSYFLAMEに呼ばれ、近づくと彼の第一声は、
「お前、藍原さんに告白したんだってなあ」
と言う岩下と、瑞穂本人しか知らないはずの事だった。
「な、ななななな、なんでそんな事・・・」
「ん?ほれ、これ」
そう言ってYOSSYFLAMEが差し出したモノは、

『
   ジャッジに内乱?SOS、統括岩下に宣戦布告!!
     激化する瑞穂戦線、彼女の心はどちらに!?
                               』

などと書かれた情報特捜部の号外であった。
「なんなんですかこれはぁっ」
見出しを見ておもいっきり突っ伏していたSOSはYOSSYFLAMEに詰め寄るが、
当の本人はさも自慢げに
「ふっふっふ、こいつは先日出された号外だが、岩下先輩が察知するのを恐れた特捜部が
わずか100部しか刷らず、さらに3年生を避けて配布されたというレアモノだ」
「そんなものが存在したんですか………」
驚きを通り越してすでにあきれたと言う顔のSOSだが、ふと思う・・・

『YOSSYFLAMEさんはジャッジとかに目を付けられているとはいえナンパ師で
通っている………女性に関してはこの人に聞いてみるのも悪くは無いだろうし、藍原さん
の事でも相談してみようか………』

もう少し、YOSSYFLAMEとの付き合いが長ければ絶対に到達しないであろう結論
に達し、SOSは相談を持ち掛けた。


「女性との付き合い方って言ってもな、まあ仲良くなりたいなら学校帰りにでもヤックに
誘ってみたり、休みの時に映画にでも連れてったり・・・普通はそんなトコだろ」
「やっぱりそう言うトコロですか」
「後はなにかプレゼントをしてみるとか………岩下先輩もしていたからな」
「また指輪ってのも芸がありませんしね」
「毎日毎日電話でもかけてみるか?」
「ゲームならともかく現実にやると嫌われそうですよね」

『SOSなら転移で藍原さんを拉致監禁ってのが手っ取り早そうだな』

「なっ、誰だ!?」
「その声は………ガンマルさんですね!どこに隠れているんです?」
「別に隠れちゃいねえよ………」
そう言ったガンマルはSOSのすぐ真横に居た。

「いつのまにそんな所に………」
「てめえらが話し始めた頃からずっと居たわい」
「盗み聞きは趣味が悪いですよ?」
「普通に聞いてただけだから盗み聞きにはならんだろ」
「まあ、それはそれとして………」

ブォン  ガッ!

いきなり出現し振り下ろされたSOSの剣は一瞬前までガンマルの居た場所を通り、地面
にぶつかった。

「てめえ、いきなり何しやがる。今の躱せなかったら死んでたぞ!」
「何が転移を使って拉致監禁ですか、そんな事女性に出来るわけが無いでしょう!」
「冗談が通じねえのか、洒落だろうが洒落!」
「冗談でも言って良い事と悪い事があります!」
「んでもまあ、悪い案じゃないよな・・・」
「YOSSYFLAMEさんまで何を言うんですかっ」
それまでガンマルと一触即発状態だったSOSが、今度はYOSSYFLAMEに詰め
寄る。
「まあ落ち着けって、拉致監禁は置いといて転移を使うってやつだよ。なんたって岩下
先輩相手だからな多少なりと強引にやらねえと絶対に勝てねえぞ」


「う〜ん、相思相愛の仲に入り込むなんて、けっこうやるわねえ」
「そういう風に言われるとちょっと………って」
そこに居たのは不自然なくらいに微笑んでいる小出由美子教諭だった。
「それにしても、授業サボって恋愛談義とはいい御身分ね」
笑顔が怖いくらいに眩しい・・・
考えてみれば当然だが、話し始めた時点で休み時間はほとんど無かった。当然とっくの
昔に授業は始まっている。
「よっしーくん、SOSくん、指導室まで来てみる?」
「あれ?ガンマルさんは………」
「ガンマルくん?居ないじゃない」
辺りを見回しても確かにガンマルの姿はどこにも無い。
「どうやらさっさと逃げたみてえだな」
「そうみたいですね、こういう時便利ですね、あの人の背景化って………」
「んじゃ、俺も逃げるわ」
「えっ?」
言うが早いかYOSSYFLAMEは全速力で由美子の横を駆け抜け校舎内に姿を消した
「あーもう!いつもながら逃げ足の速い。こーなったらあなただけでも指導室まで来て
もらうわよ」
「え〜と、先生、目が怖いです………」
何かにとり憑かれているかのように目を見開いて迫ってくる様は子供が見たら夢に出るか
もしれない、そうSOSに感じさせた。
ジリジリ………ジリジリ………
じわじわと寄ってくる由美子に押されるように後退するSOSだが、すぐにフェンスに
追いつめられる。
「ふっふっふ、もう逃げ場はないわよ。大人しく指導室まで来なさい」
「できれば辞退したいんで失礼します」
そう言ってSOSはフェンスを飛び越え屋上から飛び降りた。

「えっ?えっ!?え〜〜〜〜!!??」
慌てて由美子はフェンスから下を覗くが何も無い………
「あれっ、なんで?」
「どうかしました?」
「今、生徒が飛び降りたのに………何にも無いのよ」
「まあ、本人がこっちに居ますから」
「えっ!?」
確かにSOSは由美子の後ろに居た。
まあ、単に飛び降りた後すぐに転移し、屋上に戻っただけなのだが目の前で飛び降りを
見た人間はまずビビる。
「何で後ろに居るのよ〜!」
「ただ転移しただけですよ。それでは失礼します」
SOSはそう言ってまた姿を消した。
ただ一人残された由美子は目の前で飛び降りをされた事と、その飛び降りたはずの人間
があっさりと後ろで無事だったと言う事実から腰をぬかしていた。
「なんで、この学校の生徒ってあんなのばっかりなんだろ………」
その問いに答えるものは居なかった………


由美子から逃げたはいいが、遅れて入ると余計にヤバイ(柳川教諭の授業だった)ので
しかたなくいつもの中庭の木に登って時間を潰すSOS。
「もうちょっと強引にかぁ………確かにこのままじゃあ、なんにも変わらないよなあ」
あっさりとYOSSYFLAMEの意見を聞く辺り、危機感知能力が欠如していそうな
気がしないでもない。
「でも、どこかに誘うって言ってもなぁ。ヤクドとかしか思い付かないし………」

「………あ、あそこなら藍原さんも気に入ってくれるかもしれないな」


───放課後、ジャッジ本部にて
「藍原さん、もし良かったら今日の帰りにちょっと付き合ってもらえませんか?」
SOSのその一言で一瞬空気が凍り付いたような感じがした。
なんといってもそこにはジャッジ統括である岩下も居るのだ。
瑞穂も一瞬返事をつまらせた。
「あ、えっと私は別にかまいませんけど………」
「それなら僕も付き合おう」
岩下を気にしながら言う瑞穂と、流石に二人きりにはさせたくない岩下が言う、が。
「ちょっと待て、信。お前にはまだやってもらいたい事がある。もうしばらく残っても
らうぞ」
そう言ったのはジャッジ総司令であるセリス。
「なっ、しかし・・・」
「瑞穂くんが心配なのはわかるが今はこっちも手が足りない。お前もジャッジのトップ
なんだ、組織の方も気にしてくれ」
「ふぅ、わかった今日はそっちを手伝おう。いいかSOS君、瑞穂くんに変な事をする
んじゃないぞ」
「し、信さんっ」
「変な事なんてしませんよっ」


「さて、それじゃあ行きましょうか。私の手をつかんで、すいませんが目を閉じておい
てもらえますか?」
「ええ、いいですよ。ところでどこに行くんですか?」
手をつなぎ、目を閉じながら問う瑞穂にSOSは
「私のとっておきの場所ですよ」
とだけ答えた。
そして二人はどこかへ跳んだ。



風が吹いている………それに足が地面についていない。
どうやら外、しかも空中に浮いているようだとだけは目を閉じている瑞穂にもわかった。
「藍原さん、絶対に手を離さないで下さいよ。離したら落ちてしまいますから」
「ええ、まだ目を開けたらだめですか?」
「いえ、もういいですよ。目を開けて下さい」

そこに広がるのは一面の空………しかも雲が自分達の下にある。
大きく見える夕日がひたすらに奇麗だった。

「うわぁ、奇麗………。SOSさん、ここは?」
「学園のはるか上空、見ての通り雲の上です。ここだと夕日や月なんかがとても奇麗に
見えるんです。ここが私のとっておきの場所ですよ」
そう言ったSOSの顔はいつにも増して穏やかだった。

10分ほどもただ夕日を眺めていたが、上空は流石に気温も低く長く居るのは辛いので
二人は学園の屋上に戻ってきた。

「どうでした?あそこは気に入ってもらえましたか?」
「ええ、ありがとうございます。とっても気に入りました」
「それは良かった。それじゃあまたいつでも連れて行ってあげますよ」
「はい、お願いします」
「さて、じゃあ校門まで跳んでそこからは家まで送りますよ」
「そうですね、そろそろ帰りましょうか」


(「今日はいい日だったな………」)
そんな事を考えながらSOSは瑞穂と共に帰路についた。



追記―――
ジャッジ本部にて。
「セリス、この匿名投書事実なのか?」
「ああ、実物付きでの投書だからな」


翌日、特捜部の号外は岩下により即日100部全てが回収。すみやかに岩下自身により
焼却された。
が、実際に回収されたのは半数にも満たない数だったと言う………





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みずぴー関連で強引にしていこうとすると、なんだかどんどん
問題児化(本体と同化)してきている気がします(笑)
新たな設定にはいたずら好きと言うのを加えようとも考えています(笑)
今回登場していただいたよっしーさん、ガンマルさん、岩下さん、セリスさん
(ジャッジの御二人はちょっとだけでしたが)使わせていただきありがとうございます。