Lメモ  想い告げる刻 投稿者:SOS


りーふ学園にあるジャッジ司令室。
特に事件が起こらなければここものどかな時間が流れていく。

「セリスさん、お茶が入りました」
「ああ、ありがとう。マルチ」
「岩下さんもどうぞ」
「ありがとう」
「ところで信、この桂馬、待ってくれないか?」
「断る。昨日の対局ではセリスも待ってくれなかったろう」
ジャッジのトップであるセリス、岩下ですら将棋を指している。
他のメンバーもおしゃべりをしている者、マルチのいれたお茶を飲みながらお茶菓子を
つついてる者、皆すっかりくつろいでいる。
ようするに今日は平穏な1日だった。


この時までは・・・


コンコン
「すいませ〜ん」
ドアをノックする音と同時に女の子の声が響く。
「ん、誰か来たようだね」
「私が出ますわ」
それまでお茶菓子をつついていた貴姫が立ち上がり、応対に出る。
そこに居たのは前髪が触角のごとく跳ね上がっている女の子。雛山理緒だった。
「あら、雛山様。どうかなさいましたか?」
「あ、天神さん。この手紙、岩下先輩に渡してもらえるかな」
「ええ、わかりました。そうだ、雛山様もお茶などいかがですか。お茶菓子もございます
よ」
「ううん、嬉しいけどこれからバイトがあるから。それじゃあ」
「そうですか、それではお気を付けて」

「岩下様、お手紙だそうです」
「自分に?誰からだろう」
岩下はそう言いながら封筒の封を破り、中の手紙に目を落とす。
そして数秒後・・・
ガタン!
唐突に立ち上がり、握り締めてぐしゃぐしゃになった手紙を捨て去りながら部屋から走り
去っていった。

残されたメンバーは呆然と開け放たれたままのドアを眺めている・・・
「どうしたんでしょうか、岩下様」
「信らしくも無いな、あれほど取り乱すなんて」
「その手紙、何が書いてあるんですか?」
「どれどれ・・・」

『
    藍原さんを預かってます。
   彼女が大事なら校門まで来てください。
   もちろん、岩下さんひとりで。

                       』

この文を見て、その場に居た全員が凍り付いた。

「信を相手に瑞穂くんを人質に取るとは、死にたいのかこの犯人」
「無謀すぎますわね。犯人の方が無事だといいのですが」
「はわわわ〜、藍原さんが大変です〜」
「犯人は何分で黒こげにされるかな・・・」
どうやら一部を除いて犯人が心配されているようだが・・・

一方、瑞穂が攫われたため冷静さを失った岩下は一目散に校門に向かって突っ走っていた
(なお、その際L学の主人公が跳ね飛ばされたのは特筆すべき事でもない(笑))


岩下が校門にたどり着いた時、そこには誰も居なかった。
どこかに隠れているのかと思い辺りを見回してみても犯人らしい人影はない。
が、ふいに岩下に話し掛ける声があった。
「あ、すみません、岩下先輩。待たせてしまいましたか」
「何?」
聞き覚えのある声に岩下が振り返ると、そこにはおそらく転移してきたのであろう、岩下
と同じくジャッジに所属するSOSの姿があった。

「SOS君?君があの手紙を書いたのか」
顔見知りがこの場に現れたという事実に戸惑いながらも訊ねる岩下に対し、
「はい、そうです」
SOSは平然と答える。
「なっ、なら瑞穂くんはどうした?」
「え?、ああ、そういえばあの手紙には藍原さんを預かったって書いたんでしたっけ」



その頃のジャッジ司令室――
「あれ?これ、封筒の内側にも字が書いてある」
「なんて書いてあるんですか?」
そこには・・・
『
     ジャッジの皆さんは来ないで下さいね
     岩下先輩と二人で話がしたいので。
                 SOS
                                           』
と、書かれていた。




「あの手紙はただ岩下先輩一人だけを呼び出したかったからなんです。
別に藍原さんを攫ったりなんてしてません。ああ書いた方が早く来てくれると思ったので
書いただけです」
「そ、そうか。もう少し普通に呼び出して欲しかったな。それで?一体なんの話だい?」
「藍原さんの事です」
「瑞穂くんの?」
「ええ、岩下先輩と藍原さんはお付き合いなさっているんですか?」
「ああ、そうだが。それがどうかしたのかい」
「いえ、とりあえず確かめたかったんです。どちらにしてもこれから言う事に変わりはあ
りません」
そう言うとSOSは改めて岩下に向き直る。
「岩下先輩、私が今日呼び出したのは2つ、理由があります。まず一つ目」

「今ここで岩下先輩に宣戦布告をします」
「宣戦布告、だって?」
「はい。ですが別に喧嘩をしたいわけじゃあありません。岩下さんと争うのは藍原さんの
事です」
「瑞穂くんの事だって?じゃあ、まさか・・・」
「はい、私はこれから藍原さんに告白してきます。その前に岩下さんに言っておこうと思
いまして」
「なっ!?」
「それでは、岩下さんと同じように手紙で呼んでおいた藍原さんももうすぐ来る頃ですか
らもう行きます」
「ま、待て。SOS君」
「そうそう、さっき言った理由の2つ目ですけど、岩下さんと藍原さんがなるべく離れる
様にする事ですよ」
そういうとSOSはニコリと笑い、そしてその場から消えた。


エディフェル屋上――
藍原瑞穂はSOSに手紙で呼び出されここに来ていた。
そして、今やってきたSOSにただ一言こう言われ、頭の中がパニックになっていた。

「私は藍原さんの事が好きです」

SOSの、この一言は瑞穂を混乱の極みに追いやった。
しかもSOSはもう居なくなっていた、
「私はただ、自分の想いを伝えたかっただけです。それに今返事を貰ったら岩下さんに
かなう訳もありませんからね」
そう言って返事を聞こうとはしなかった。

瑞穂は思う。
確かにそれも正論だろう。今、自分は岩下信が好きなのだ。
その状態で告白されても断るしかない。しかしSOSはすぐに結論を出す事を止めて欲し
いと言う。時が経てば今の想いに変化があるかもしれないという可能性を残して欲しいと
言うのだ。
こう言われては断る事など出来ない。
自分もSOSのことが嫌いな訳ではない。色々と気にかけてくれているのだからむしろ
好意的な存在だった。しかし恋愛感情までは持っていなかった。
今はどうだろう?告白されて、改めて意識するとわからなくなる・・・。

瑞穂は悩み、考え、結論の出ないままその場を離れた。



明けて翌日――
岩下と瑞穂はいつものように二人で登校してきた。しかし、普段とは確実に違うのは瑞穂
を挟んで岩下の反対にSOSの姿がある事だ。
きっぱりと瑞穂は戸惑っているし、岩下は昨日の事でSOSを睨み付けている。
SOSは岩下の視線を無理矢理無視しようとしているがその圧力に冷や汗なんぞ流してい
る。
とてつもなく心臓に悪い登校風景だが、学園にたどり着けば全員が違う学年なのでそれぞ
れの校舎に別れる事になる。
それぞれが自分の学年の校舎に向かう時、SOSが岩下を呼び止めた。

「岩下さん、・・・負けませんよ」
「ふん、こちらのセリフだ」
二人は互いに挑戦的な笑みを浮かべ、そして校舎へと入っていった。


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・・・・・・・・・・・・・・・(^^;
久方ぶりのLメモで何かとんでもない事をした気がするのは
気のせいではないでしょう(木亥 火暴)
学園最強メンバーのひとり、しかも自分の所属する組織の統括を敵に回しました。
誰か、助けてください(爆)

なお、岩下さんは温厚なので(本人談)今回、暴力シーンはありません。
「みずぴーにちょっかいかけたら消し炭にされるだろ」、という意見は却下です(笑)

それにしても、奸計が板についてしまっているのは考え物だ・・・(^^;