テニス大会エントリーL「嘘から出た誠っていうしね(笑)」 投稿者:皇 日輪
     このLは幻八さんのテニス大会エントリーL 「こりゃ参加申し込みだけだな…」
    より数日の前のお話です。
     ・・・・・・いや・・・・・・そういうことにしといて(泣笑)


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     テニス大会エントリーL「嘘から出た誠っていうしね(笑)」



     Leaf学園、仮眠館。
     放課後になって生徒も大分少なくなったはずだが、まだ外からは多くの生徒達の声
    が聞えていた。
     大規模なイベント−−テニス大会が開催されることが決まって、参加する生徒達は
    練習の為、あるいは練習している姿を見学している者達がいる為に放課後になって
    もにぎやかなのだ。
     別にイベントがなくてもこの学園の放課後はにぎやかなような気がするが。
     それはともかく、仮眠館では幻八と皇は外から聞えてくる歓声とよく響くテニス
    ボールを打ち合う音(悲鳴も混じっているような気がするが)を聞きながら日本茶
    を飲んでいた。
     それまで黙ってお茶を飲んでいたのだが、唐突に口を開いたのは皇だった。
   「テニス、誰とでるんですか?」
   「……普通は「テニス、でるんですか?」が先だろう……」
   「…………」
   「…………」
     お互いにずずぅっとお茶を飲む。
   「……そうですかね?」
   「そうだろう……普通」
   「…………」
   「…………」
     またお茶を……飲み終えたようだ。
     空になった二つの茶飲みをことりと音を立てテーブルに置く。
   「……で……誰とでるんですか?」
   「……おまえな〜」
   「でないんですか?」
   「誰もそんな事は言ってないだろう?」
   「じゃあ、でるんですか?」
   「いや、そうとも言ってないんだが」
   「…………」
   「…………」
     こぽこぽこぽ。
     皇は茶飲みにお茶をいれ、ついでに幻八の分もいれる。
     入れながら、急に思いついたような顔をした。
   「……そういえば東西さんはでるみたいですね」
   「ああ、琴音ちゃんとだろう?」
   「…………」
   「…………」
     またお互い黙ってお茶を飲んでいる。
     妙な間だ。
     相手のことを探り合っているようなそんな感じだ。
   「何がいいたい?」
     今度先に口を開いたのは幻八だった。
     皇は少し「う〜ん」っと考えているそぶりを見せると、
   「幻八さんが誰とでるのか知りたい」
     と言った。
   「……何故俺が?」
     怪訝そうなに幻八は答える。
   「別にいいじゃありませんか。面白そうだし、減るもんじゃなし」
   「何がいいたいのか分からんが、そんなに言うなら自分がでればいいじゃないか」
   「…………」
   「どうした?頭抱え込んで」
   「いや……ほんとに分からないんですか?」
   「わからないっ!」
   「なに威張ってるんですか?」
     本当に呆れたとでもいいたいのだろうか?
     皇はため息一つついて見せた。
   「まあ、とにかくだ。やっぱり自分がでた方がいいだろう?」
   「それはそうなんですけど。まだ知り合い少ないですし」
   「だったら、顔見せついでにこういうことには参加した方がいいんじゃないか?」
   「そうですよね」
   「俺のこと気にするより……なあ?」
   「そうなんですけどね。……どうしましょうか……」
     心底困った表情を見せる皇。
     本当に知り合いが少ないのだろう。
     ……よく考えたらこれほどむなしいこともないのだが。
     いや、何がって知り合いが少ないを連呼することだ。
     一方的に知っている人なら結構いる。
     でもまあ……そういうのを当てにすることはできない。
   「そうだな。……皇がでるんだったら俺も考えるよ」
     考え込み、黙り込んでしまった皇を見ながら、幻八は言った。
     この考え込みようでは受付終了期限までに相手を決めてくることはない。
     そう思ったのだろうか?
     半ば冗談めかした言い方ではあった。
   「僕がでるんだったら幻八さんも出るんですか?」
     まだ考えているのだろう。
     皇はなんとなく茶飲み眺めつつ、腕組みをしたまま、幻八に言った。
   「ああ、出てやるよ。出るんだったらな」
     その様子に安心したのかそんなことまで言ってしまう幻八。
   「…………」
   「どうした?」
     急に茶飲みから視線を外し、皇は床の方を見ている。
     幻八からはその表情を窺い知ることはできない。
   「確か……「闘士に二言はない」ですよね」
     皇は床を見たまま呟くように言った。
   「別にそういう言葉があるわけじゃないが。……まあ、そうだが……」
   「…………」
     何故かまた皇は黙り込む。
     肩がわずかに震えてる。
     あえて言うなら笑いをこらえているような。
     その様子を見てだんだんと幻八の顔色が変わっていく。
   「……まさか……」
   「皇さん」
     不意に声をかけられる。
     エリア・ノースだ。
     ここは、仮眠館。彼女が住んでいる場所だ。別にいること自体は不思議ではない。
     だが、その格好がいつもとは違っていた。
     手には真新しい緋色のテニスラケット、白さが眩しい上下ともテニスルック。
     清楚、可憐、可愛らしい……まあ、おおよその男達がそういった誉め言葉を上げる
    ぐらい似合っている。
     挙げ句の果てに誰がやったのかは知らないが、いつもと髪型まで変えてある。
   「…………」
     呆然としている幻八を尻目に皇は椅子から立ち上がる。
   「あっ、はい。では、行きましょうか?」
   「誘われたのはいいんですけど、「てにす」ってよく分からないですけど……」
   「ああ、僕が教えてあげます。……奥は深いですがそんなに難しくもないですよ」
   「はあ……」
     エリアはなんとなく納得していないようなそぶりを見せる。
     格好はノリノリだが。
   「じゃあ、そういうことで。後で誰と出るか聞かせてくださいね」
   「…………」
     念を押すように皇は幻八に言った。
   「では幻八さん、また後で」
   「…………」
     そしてエリアを連れて出て行こうとしていたがまさに今、悪戯を思いついたような
    笑みを浮かべ、
   「闘士に二言はありませんよね?」
     と言った。
   「…………」
     幻八は反応がない。
   「んじゃ」
     その様子にまた笑みを浮かべ、幻八に軽く手を上げるとそのまま皇はエリアととも
    に仮眠館を出ていった。
   「…………」
     残された幻八はしばらく呆然としていた。
   「……皇ぃ……」
     ”ごごごごご”という擬音がふさわしいような怒りのオーラが幻八の身体から発し
    られる。



   「ハメやがったなああああああああああああああああああああっ」



     一人の漢(おとこ)の叫びが仮眠館に響き渡った。


   「あの……これで良かったんでしょうか?」
     横に並んで歩いていたエリアが皇に言った。
   「いいんですよ、あれで」
     にべもなく皇は言う。
   「ああでもしないと幻八さんは出てこないでしょうから」
   「ですけど……」
     まだ、納得できないのかエリアは表情を曇らせている。
     ラケットもこのテニスルックの服装も急遽用意したものだ。
     ほんとは、皇とエリアはテニスに出ない。
     そのことは幻八が誰かと出場を登録したら、幻八には言うつもりなのだが。
     だがそれは、もろに幻八を騙したという感じがして気になるのだろう
   「まあこれで「僕に騙されて仕方なく」という言い訳が幻八さんにはできたわけです
    し。……出てくるでしょうね。ちゃんと相手を選んで」
   「はあ……」
   「ところで」
   「はい?」
     皇はエリアに向かってにっこりとした微笑みとともにこう言った。
   「ほんとに一緒に出ませんか?」




     皇日輪、エリア・ノース、大会エントリー決定した。



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