Lメモ「……って……ほんとにタイトルが思い付かないや……(汗笑)」 投稿者:皇 日輪




  気がついたら夜が明けていたということは比較的誰にでもよくあることだ。
「…………」
 ある程度の山を越えるとかえってハイになっていたりするが……。
 そのあとは……そう、ただひたすら眠いのだ。
 本来、三大欲である睡眠欲には動物は逆らえないようにできている。
 だから、人間も例外でない。
「もうもどってくるなよ〜」
 まるで、出所した囚人のような言葉を後ろの方から、かけられた。
「……だから違うと言ってるのにっ!」


 昼休み。
 午前中の授業をほぼ寝て過ごした皇は、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
 …………眠い。
 本当は、……空が青い……と考えようとしたのだが途中で変わったらしい。
 普段、坊さんとは恐ろしく規則正しい生活をしている。
 朝は鳥が鳴き出すよりも少し早く起き、夜は木村○郎の駄洒落を聞く前に寝る。
 ……まあ、あくまで「普段は」なのだが。
 それはともかく。
 今の皇には早急に考えねばならない事があった。
(……ばれちゃいました……なんて報告したら駄目でしょうね……)
 もっとも、ばれたのは行動であってまだ目的ではない。
 後は適当に誤魔化してしまえばいい。
(別に、目的がばれたって、僕はかまわないんですけどね……)
 ……僕は貴方達を滅しに来たんです……とでも目の前で言ってしまおうか。
 もし、言ったらどうなるだろう?
 頭がおかしいと思われて笑われるか……それとも呆れられるか。
 いずれにしろ……。
「馬鹿馬鹿しい…………」
 ときどきそう思う……自分のやっていることもすべてを含め何もかも。


 時間がたって放課後になった。
 昨日の今日では、さすがに初音のあとを追うわけにもいけない。
 追うわけにはいけないのだが……。
 ……逆に見つかってしまった。
「今日は、なにもしてないやろうな……」
 その言葉の意味は明らかな威嚇……夢幻来夢は皇を睨みつけながら言った。
「今日はもなにも……僕はもともと何もしてませんよ」
「なんにもしてない? 柏木を……女の子をあんだけ怖がらしといて何にもして
ないとはどういう了見やっ!」
「貴方には……関係ないことです……」
 皇は、もう話をする必要はないとばかりに来夢の前から立ち去ろうとする。
「まてやっ!」
 来夢は去っていこうとする皇に向かって蹴りを放ち……。

 がいんっ!

「あ?」
 皇にあっさり当たった。
「……あ〜……昨日もおもったんやけど……」
 来夢は気まずそうに蹴り倒した皇に言う。
「あんまり、あっさり蹴り飛ばされんでくれんか? 特に今日みたいにみえみえ
の蹴りに」
「……む……無茶をいわないでください……」
「そないゆうたかってなんぼ変質者相手やからって、これじゃオレが悪役みたい
やんか……って……おーい、気絶するな〜」
「…………」
「しゃあない……保健室に放りこんどこ……」
 そういうと来夢は皇の足を持ってずるずると保健室に向かって引きずっていく
のだった。


 頭ががんがんする。
 痛みに耐えかねて目を覚ますと最初に見えたのは白い天井だった。
 痛む頭をそっと手で触ると……たんこぶらしきものがたくさんできていた。
 まるで誰かに足を持って引きずりまわされたような、そういう感じだ。
 身を起こし周りを見渡す。
 自分がいるところはベットだ。周りには白いカーテンが引かれている。
(保健室……ですよね……ここ)
 よく見るとカーテンの向こう側に人の気配がする。
 と、その人影によってカーテンが開かれた。
「あら……気がついたのね」
 カーテンの間から入ってきたのは柏木千鶴だった。
 しばらくぼんやりと皇は千鶴の方を見ていたが……。
(……って……なぜいるっ)
 千鶴の顔をはっきりと認識すると驚き、後ろに後ずさった。
 驚いている皇を千鶴はきょとんとした顔で見ている。
 別に、皇は千鶴が校長であると同時に保険医であることを知らないわけではな
い。
 単純に驚いているだけの部分のあるが、皇はそもそも保健室で千鶴とあうとは
思ってもいなかったのだ。
 なぜならば、皇の与えられた資料には「保険医についてはそんなに熱心ではな
い」とはっきり書かれていたからだ。
 ……だがよく考えてみれば、それが「保健室にはいない」ことには結びつかな
いことぐらいすぐにわかることである。その仕事に熱心であるか熱心でないかは
関係のないことだ。
 保険医の仕事以外にも使うことがあるかもしれないし。
「ああ……そういえば……」
 千鶴は言った。
「聞いたわ……君……初音をつけまわしてたそうね」
「……そ……それは……」
 皇が言いよどむを見て千鶴はすうっと手を皇の方に伸ばしてきた。
(…………殺られるっ)
 皇は自分に向けられた手を見て、目をつぶった。


「めっ」
  窘めるその言葉と同時に、こつんと額に当たったのは切り裂くための爪ではな
く普通の柔らかい指先だった。
「だめよ。 好きだからといって女の子を追いかけまわして怖がらせたりしちゃ」
 笑いながら言う千鶴に今度は、皇の方がきょとんとした……というよりも毒気
を抜かれたような顔をしていた。
「じゃあ、私は用事があるから。 冷やすものはそこの冷蔵庫の中にあるから適
当に使って……そうそう、ここを出るときは鍵をかけずに出ていってもいいです
からね」
 そう言い残すと千鶴は保健室から出ていった。
「…………」
 呆然としたまま千鶴を見送る皇。
 が……次の瞬間には大きな笑い声になっていた。
 しばらく、そうやって皇は笑っていたが、やがて笑うのをやめるとベットに寝
転がった。
「気負いすぎです……馬鹿が……」
 千鶴に触れられた額に右手を覆うようにして皇は自分自身に対してつぶやいた。
 そして、目を閉じる……そう、皇は眠いのだ。


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