Lファンタジア2・第一話「葉っぱの国の王子様」 投稿者:T-star-reverse
 世の中には、理屈じゃどうにもならないことがある。
 例えば、僕が持っている暗器は何処にしまわれているかとか。
 だが、そんなことはわざわざ考証するべき必要はない。
 必要なのは事実だけ。
 知る必要があること「暗器は服から出る」……これだけで充分。
 そう考えると、今僕が置かれたこの状況もそれを考えるだけで充分のはず。
 まず、僕は見覚えのない部屋にいる。
 そして、僕はベッドに寝かされている。
 で、最後に。
 ……僕は一体誰なんだ?


Lファンタジア2・第一話「葉っぱの国の王子様」


 さしあたって、僕はもう少し詳しい状況を知る必要があった。
 首を動かして部屋の細かい様子を確認……なんか、妙に体がだるい。
「ん……っ」
 不意に、声が聞こえた。
 そちらの方に顔を向けてみると、一人の男が座っていた。
 どこかで見たような気がする……いや、見ただけのような気だけど。
 その男は僕と目を合わせると、ほっとしたような表情を見せた。
「目が覚めたか」
 つい先程まで寝ていたようで、男は少し目が赤かった。
 ほんの少し乱れた短髪を掻きながら、僕に話しかけてくる。
「心配したぞ……貴様はもう10ヶ月ほど寝たきりだったんだからな」
 じゅ……10ヶ月!?
 人間って、そんなに寝続けられることができたんだ……。
 まあ、彼の言葉を信じれば、だけど。
 僕がそんなことを考えながら黙りこくっていると、彼は怪訝そうな表情を
見せて僕に尋ねてきた。
「……どうした? まさか、俺のことが解らない……とか?」
 僕はこくんと頷いた。
 するとその男はさもありなんといった表情を見せた。
「それはそうだ。俺もお前のことは知らないんだからな」
「なら聞くなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 だるいはずの体が自然と動き、僕は男の脳天にスパナを叩き込んだ。
 その瞬間、僕の頭の中をバラバラになったジグソーパズルのパーツの一つが
ピタリと組み合わさったような感覚が襲った。
 自然と、思い出したことが口をついて出る。
「そうだ、僕の名前は……ひなた。風見ひなただ!」
「お、思い出したか、それは良かった」
 スパナを頭から生やしながら男は言った。
 そう、この男も見たことがある……

 だがしかし、次の瞬間。

「王子ぃぃぃぃぃぃっ!! ご無事ですかぁぁぁぁぁぁっ!!」

 ごがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!

 耳をつんざくような轟音と、これもどこかで聞いたことのあるよーな
誰だかの絶叫が重なり、建物が倒壊した。
 もちろん、自然と思考も中断される。
 建物が倒壊した衝撃で舞い上がった砂埃が、僕の視界を覆い隠す。
 しばらくして目を開けると、僕の目の前には青々と茂った森の木々の緑と、
全身鎧に身を包んだ二人の人間の姿があった。
 さっきの男の姿はなかった。
「ご無事でしたか、王子」
「……王子? いったい、どういう……」
「王子が行方不明になられて早二年近く、我々は王子を捜しておりました」
「だから、なにがどうなって……」
「王子らしき人物がここに居るという情報を得て、急ぎ馳せ参じた次第で」
「……おい」
「美加香王女様もさぞお喜びになることでしょ……」
「人の話を聞けって言ってるでしょうがぁぁぁっ!!」
 僕は懐から取り出した地蔵で、一方的にまくし立てる右側の鎧男を殴った。
 その男は軽々と吹っ飛ぶと、脳天から瓦礫の山に突っ込んで動かなくなる。
 ……そこで僕は気づいた。
「美加香……王女?」
 美加香。
 その名前を聞いた瞬間、再び記憶のピースがかちりと組み合わさった。
「美加香……美加香だって? ……そうだ! 僕は美加香の料理を……」
 そう。僕の記憶はほぼ完全に戻った。
 目をつぶれば鮮明に思い出せる、あの時……。
 たまたま美加香が新しい料理に挑戦して、それを食べてから記憶がない。
 そして目が覚めれば10ヶ月眠ってた? 僕が王子? 美加香が王女?
 間違いない、これは夢だ。
 美加香の料理が見せた、タチの悪い幻覚に違いない。
 とりあえず、頬をつねってみる。

 ぎゅっ。

「痛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
 どーせ夢だろうとたかをくくっていて、手加減無用のフルパワーで
頬をつねってしまったため、僕は絶叫した。
 痛みに飛び上がり、瓦礫の上をごろごろと転げ回る。
 なんとか痛みが退いた後も、じんじんと痺れが残る。
 たぶん内出血くらいはしているだろう、と考えた時点で、僕は気づいた。
 もう一人の全身鎧人間が、じっと僕を見ている。
「……えーと」
 なんとなく気まずい雰囲気が漂う。
 僕が会話を切り出せずにいると、突然その鎧がぴくりと動き、喋りだした。
 何を言われるかと内心冷や冷やしながら身構えると。
「……あぁ、すいませぇん。寝ちゃってましたぁ」
 聞くだけで気の抜ける女の声が周囲に響く。
 僕は思わず脱力し、その場に崩れ落ちた。



「……と、いうわけで我々は、二年近く王子を捜して駆け回っていたのです」
 間もなく鎧男――とーると名乗った――が復活し、もう一人の鎧女――
こっちの中身はアレイを名乗った――と一緒に僕の前にひざまずいた。
 僕はひとまず落ち着いて話を聞いてみた。

 すると……どういうことか。
 僕は隣国「ぶれーど」の王子で、この国「にーどる」の王女である
美加香との婚礼前に行方不明になったというのだ。
 ……それも、二年前に。
 それ以来、美加香直属の騎士である彼らが、あちこちで僕の噂を集めては
探し回っていたという。
 僕の頭の中は混乱している。
 だが、今僕が居るこの場所が、僕の知っている世界とは違うらしいことは、
混乱した頭にもなんとか理解できた。
 たとえ、これが夢だったとしても。
「どうかお戻りください王子!!」
「お願いしますぅ!!」
 とーるとアレイの二人に頭を下げられ、僕はどうしたものかと考え込む。
 彼らが嘘を言っていないことは解る……なんとなくではあるが。
 だが、僕の記憶にも間違いはないはずなのだ。
 なにしろ僕は「学園の制服を着て」いるのだから。
 ……あれ?
 何か引っかかるものがある。
 僕は首を傾げるが、その引っかかりが何であるかは解らない。
 とりあえず、ここでこうしていても始まらない。
「……わかりました。案内してくれますか?」
 僕は、とりあえず前に進むことにした。
 その先に、何が待っていても驚かないようにしよう、と思って。



 にーどる王国、王城の大広間。
「ひなたさんっ!!」
 僕は、先程決めたことをゴミ箱に丸めて捨ててしまった。
「よく……よく戻ってきてくれました……わ、私……私っ……」
 目の前に広がる壮大な理不尽に、なぜか自分が信じられなくなる。
「心配で……心配で……もうっ……!!」
 美加香なのだ。
 要するに、美加香なのである。
 いや、美加香は美加香なのだが、美加香と言っても美加香ではないような、
でもやはり美加香としか言いようのない美加香が目の前にいる。
 そう、顔も美加香なら声も美加香、ぺたんこな胸も、長い黒髪も、どこを
どうとっても完全無欠、服装を除けば僕の知っている美加香なのだが……。
 何かが違う(いや、服装じゃなくって)。
 それが何かは解らないが、彼女は僕の知っている美加香ではない。
 僕が、そのことを問い質そうとしたそのとき。
 突然大きな声がその場に響きわたった。
「ひなた王子が帰ってきただとぉっ!」
「王様! お待ちください! 王様ってば!」
「あうう〜、どうしようどうしようどうしよう〜」
 これもまた、聞き覚えのある声……。
 どばーん!!
 騒々しい音を立てて、奥の扉が開かれる。
 そこから出てきたのは、三つの人影。
「貴様、いまさらのこのこと何をしにきたぁっ!」
「落ち着いてください王様!!」
「電芹ぃ、誠治さんが恐いよぉぉ!!」
 予想はできていたからとりあえず、その場で倒れることだけは避けられた。
 扉から出てきたのは、王様の格好をした誠治さん。
 それに、メイド服を着込んだたけるさんとポニーなセリオ……電芹だ。
 誠治さんはカンカンに怒ってるし、電芹は誠治さんをなだめていて、
たけるさんは誠治さんが恐いと泣いておろおろしている。
「おとうさま!!」
 美加香が叫ぶ。
 どうやら、ここでは美加香の父親が誠治さんらしい。
 ……何故か冷静に状況判断をしてしまう。
 ここが異世界だと判断して、割り切ってしまったからだろうか。
 ふと恐い考えが頭をよぎる。
 美加香の父親が誠治さんってことは、自分の父親は……?
 そこまで考え、ぶるぶると頭を振ってその考えを打ち消した。
 今は、この状況をどうするかが先決である。
「美加香! そんな奴のことは忘れてしまえと言っただろう!」
「嫌です! ひなたさんのことを忘れるなんてできません!!」
 すぐそこでは、誠治さんと美加香の親子喧嘩が繰り広げられている。
 それをぼーっと見学していると、ふと誰かの視線を感じた。
 とーるとアレイはおろおろとしながら親子喧嘩の方に集中しているし、
電芹とたけるさんも同じ事だ。では、誰が……?
 きょろきょろと見回すと、部屋の隅にたたずんでいる人影が見えた。
「ひなた王子!」
「ひなたさん!」
 突然呼ばれ、僕は思わず視線を元に戻す。
 誠治さんと美加香が、真剣な顔つきで僕の方を見ていた。
「説明してもらおう!! 美加香との結婚式直前に姿を消し、あまつさえ
二年も雲隠れしていたのかを!!」
「お願いしますひなたさん! 教えてください!!」
 凄い剣幕だ。
 ここに至って僕は、今の自分の状況が厳しいものであることに思い至った。
 思わず視線を彷徨わせる。
 とーるとアレイも僕に注目している。
 電芹は泣いてるたけるさんをあやしている。
 先程の人影はどこかに消えている。
「えーと……」
 僕は、どうしたものかと思案する。
 正直に、自分が別の世界のひなたであると言おうか?
 いや、ここで言っても恐らく、ただの言い逃れであると思われるだろう。
 かといって、この世界に骨を埋めるつもりも毛頭ない。
「僕は……」
「「僕は?」」
「実は……」
「「実は?」」
 うう、視線が痛い。
 だがそこに、思わぬ助け船が入った。

「ひなた王子には、せなあかんことがあるんや」

 突然横槍を入れたその言葉に、たけるさんと電芹を除く全員の視線が
発言者の方向を向く。
「智子姉さん!」
「保科くん!」
「智子さん!」
「保科軍師!」
「トモちゃん!」
 五者五様のよびかけに、ふぅ、とため息をつく智子姉さん。
 その隣には、これまたセリオ――こっちはオリジナルか――の姿がある。
 さっきの視線は、彼女のものだったのだろう。
「保科くん、それはどういう……?」
 誠治さんが疑問符を顔に浮かべつつそう尋ねると、智子姉さん……いや、
正確に言えば『この世界の智子姉さん』が手に持った本をすっと開いた。
「ここの城で一番古い古文書紐解いてたら、妙な部分見つけたんや」
「妙な部分?」
「そう。それにはこないな部分がある」

『国を挙ぐ祝詞を前にし、隣国の雄子、忽然と罷らむ。
 一つの年、一つの季節、一つの月、そして一つの日の間。
 その姿、何処にても、何人たりとも見ることあたわず。
 かくて雄子は勇者となりて再来し、矛を取る。
 これすべて、現世の希望を守るための摂理の一つなり』

「……あまりに現状と似てると思わん?」
 淡々と古文書の一節……どうやら予言になっているらしい部分を読み上げる
智子姉さん。
「確かに……それでは、ひなた王子がその予言のあらわす勇者だと……?」
「そうやろうな。……セリオ、さっき届いた手紙読みいや」
「――わかりました。
『ふぉうりっじ国よりにーどる国へお手紙です。
火急につき無礼を承知で用件までをお伝えしようと、今回筆をとりました。
我が国の奥地に古くより穿たれし暗き大穴があります。先日、大量の魔物が
その穴より出てきました。国軍すべてをもって応戦したのですが、戦力の差が
あまりに多く、うちの弟や私と、あと数人の将軍たちが総掛かりでようやく
戦線が保っている状態です。今回この手紙を、にーどる、ぶれーど両王国、
らいすりばー、くれいんぎや両自治都市の合計四カ所に送っています。
援軍を送って欲しいなどと甘えたことは申しません。我が国の誇りをもって
今しばらくはもちこたえますので、その間に迎撃準備をお進めください。
               ふぉうりっじ王国国王代理・悠はじめ』」

 セリオが手紙を読み終わった瞬間、完全な沈黙が大広間を支配した。
 誠治さんが、ゆっくりと口を開く。
「……なるほど……すべては、定めというわけか……」
 そして、ふう、とひとつため息をつくと、ゆっくりと僕の方を向く。
「ひなた王子……この2年のことは運命として何も聞かないことにしよう」
 見れば、全員の視線が僕の方に向いていた。
 考えてみれば、たった今の手紙で勇者の必要とされる舞台というものが
お膳立てされたわけで……と、いうことは……。
「勇者ひなたよ! 頼んだぞ!」
「お願いします! ひなた王子!」
「頑張ってください! ひなたさん!」
「何が『頑張ってください』ですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 僕は絶叫した。
 勇者なんてまっぴらだ。
 ……勇者は、正義の味方。
 ……勇者は、みんなのために戦う。
 ……勇者は、僕らを守ってくれる。
 そんな自己犠牲の代名詞のような理不尽な存在になんてなりたくはない。
 それに第一、僕はこの世界の人間じゃない。
「僕は嫌ですからね! すいませんけど失礼します!!」
 先程とは違い、僕が勇者だという認識が全員に油断を生んでいた。
 僕はその隙をついて大広間から飛び出した。
「あっ、ひなたさん!!」
「ひなた王子!!」
 慌てた声が聞こえるが、もう遅い。
 こうなったら、一刻も早く元の世界に戻らないと……。
 僕はそう決意すると、近くの窓から勢いよく飛び出した。



「――行ってしまいましたね」
 セリオがそう言ったが、智子はふるふると首を振った。
「いや、あれでええ。どっちにしろ彼は巻き込まれるんやからな」
 一瞬首を傾げるセリオ。
 そしてすぐ、それがどういう意味かを聞く。
「――それは……」
「うちにもよくわからんわ。ただ、そんな気がしただけ」
 そう言うと智子はセリオの方を向き、にこりと笑いかけた。
「……さ、また忙しくなるで。どうせまたひなた王子を捜すんやろからな」
 すたすたと廊下の向こうに歩いていく智子。
 大広間は、いまだ混乱から抜け出せずにいた。



「とりあえず、脱出成功……か?」
 城壁を乗り越え、僕は森の中に身を潜めていた。
 着地に失敗して片足が変な方向に曲がっているが、それはどうでもいい。
 ポケットを探ってみると、いつものバンダナが折り畳まれて入っていた。
 それを頭に巻く。……うん、やはり僕はこれがないと。
 巻き終わる頃には足も治っていたため、ゆっくりと城から離れる。
 獣道らしきわずかな痕跡を頼りにし、少しでも城から遠ざかろうとした。


 日がとっぷりと暮れた頃。


「さて、これからどうしようか……」
「どうかしましたか?」
 木にもたれて休んでいた僕に、突然声が掛けられた。
 僕としたことが気配を察知できないとは、よほど疲れていたのだろうか。
 声のした方向を見ると、一人の女の子が片手に弓を持って立っていた。
「道に迷われたんですか?」
 歳の頃は僕と同じくらい……いや、少し上か?
 困ったような顔に、夜闇に溶けるような紫色の髪が見て取れた。
 ……僕も妙に目がいいな。
「良かったら、私たちの家に来ませんか? この辺も最近物騒ですから」
「え……」
 助かった。
 僕は思わずそう叫びそうになったが、素直にそう叫ぶのも癪だ。
「いいの?」
「はい。困ってるみたいですし……翌朝、町までお送りしますから」
 町まで逃げれば城からの捜索隊も誤魔化せるかな。
 僕はそう頭の中で計算すると、ゆっくりと頷いた。



「ただいまー」
「お邪魔します」
 彼女は吉井だった。
 元の世界に於いて、元々影の薄い3人組の中でも常識人のためさらに
影が薄いと評判の彼女だ。
 だから、僕が知らなくても問題はない。
「おかえり〜」
「……あら、誰よそれ」
 当然というか何というか、3人組の松本と吉井が僕たちを出迎えた。
 怪訝そうな表情で僕を見ている……岡田の目なんて敵意こもってるし。
「森の中で迷ってたの。明日町まで送ってあげようと思って」
 吉井がそう説明するが、松本はぽけっと笑ったまま無反応。岡田は岡田で
一層胡散くさげな視線を僕に向ける。
 ……やたらと腹が立つ。
「……で、名前は?」
「え?」
「そいつの名前よ! 名前も知らないオトコを泊めるなんて嫌よ」
「そうだ。まだ、あなたの名前を聞いてなかったわね」
 ……あ。
 まあ、それはそうだ。名も知らぬ相手など気味が悪くてしょうがない。
 かといって、うかつに本名を名乗るわけにもいかないし……。
 しょうがない。
 僕は、心の中でよし、と呟くと口を開いた。
「……僕はやーみぃ」
「やーみぃ? 変な名前〜」
 けたけたと笑う松本。
 ……親友よ、ここに悪がいるぞ。
 とりあえず異世界の親友に電波など飛ばしてみて、僕はうつむいていた。
「ふーん……」
 岡田は特に目立った反応も見せず、黙って右を指さした。
「馬小屋」
「……え?」
「馬小屋に泊めてやるって言ってんのよ。感謝しなさい」
「…………」
「ちょっと、岡田……」
「いーのよ吉井。こーいう奴を家の中で泊まらせたりしたら、明日の朝には
あたし達全員処女失ってるわよ。適切な処置ってやつよ」
「……誰がんなことするかっ!!」
 思わず絶叫するが、当然というかなんというか、岡田の奴はひるまない。
「ほら、すぐ感情爆発させる」
「誰でも怒るわいっ!!」
「とりあえず、あんたは馬小屋。MPは回復するから安心しなさい」
 僕は回復魔法使えねーってばよ。
 そんな心のツッコミも当然届かず、岡田はとっとと奥の部屋に消えた。
「あの……ごめんね、やーみぃ……くん……」
 吉井がすまなそうに僕に言う。
「あ、いいです……確かに、いきなり泊めろなんて虫が良すぎますから」
 僕はそう言って一旦外に出る。
「おやすみ〜☆」
 松本のバカっぽい声が耳に届く。

 ……その夜は、疲れていたのでよく眠れた。



 翌朝。
 僕は、吉井の案内で町が見える場所までやって来ていた。
「この道をまっすぐ行けばニードルの城下町に出るから」
「わかった。サンキュ」
 彼女は相変わらずの狩人スタイルである。
 たぶん、岡田も松本も狩りに出ず、吉井が一人で働いているのだろう。
 不憫だ。
 そんなことを考えつつ、僕は山を下りはじめた。

 それが、この異世界の運命に深く関わる歩みであるとも知らずに。



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Lファンの作者、風見ひなたんに許可を貰って始まったLファン第2作!

目標は、完結までにもっとギャグを身につけることっ!!(←おい)

勇者、そしてあまつさえ王子様となってしまったひなたんの運命やいかにっ?

では、また次回をお楽しみにぃッ!!

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お約束の「すてーたす」(笑)

ひなた
LV 1
HP 50/120
MP 25/25