Lメモ外伝「お泊まり会の夜」 投稿者:T-star-reverse
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 このSSは、一応ほのぼの系です。
 そういったものに拒否反応を示す方、苦手な方、または暴走する方は
読まれない方が懸命です。


 ……まあ、そういう方もそうそういないでしょうが。


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 その日、子供たちは、河島はるか先生の家でお泊まり会をしていました。
 はるか先生が唐突に企画して唐突に発表したこのお泊まり会は、その唐突さ
にも関わらず、わりと多数の子供たちが参加しています。
(一部、保護者が付き添っていたものの、あくまで「子供たちの」お泊まり会
ということで、はるかさんの百烈サービスでご帰宅願ってもらいました)

「おふとん、ふっかふか〜っ♪」
 ぼふぼふと、畳まれて幾重にも重ねられた蒲団の上で跳ねながら楽しげに
歌っているのは、風見さん家のルーティちゃんです。
 まあ、彼女だけでなく他のみんなも、お泊まり会というイベントに、心が
うきうきしているようですが。

 たとえば、西山さん家のマールちゃんは、台所でいつもより楽しそうに
はるか先生と一緒に夕食のお料理を作っています。
「るるるるん、るるるるん、るるるるん、るるるるん……♪」
「『それは……現実』、やめてね」

 雛山さん家の良太くんは、広い家なのでとにかく駆け回っています。
(残念ながら妹のひよこちゃんは不参加でした)
「ひろいぞーっ! きれいだぞーっ! すごいぞーっ!!」

 てぃーくんと、OLHさん家の笛音ちゃんにティーナちゃん、榊さん家
の木風ちゃん、きたみちさん家の靜ちゃんたちはLFTCGで遊んでいます。
「せーなる光を使ってから、あかりねーちゃんと初音ねーちゃんでお弁当!」
「ちょーのーりょくにせーしんでんぱ! んでもっかいちょーのーりょく!」
「タッグカードにして、おふろで、サテライトとおうえんでスランプ4つ!」
「しきアップ……ちょうせんじょう……えーと、それに付けやきばよっつ!」
「降霊術四回に、PHS四つ、臨時収入二つ、応援二つで、連続バトルね!」


 と、それはそれとして。


 夕食が終わり、すっかり外が真っ暗になる頃にはみんな、遊んだことで
汗をいっぱいかいていました。
 そんなとき、はるか先生がみんなにこう伝えます。
「お風呂いいよ。沸いたから」

 そんなわけで、みんないっしょにお風呂場です。

 はるか先生の家のお風呂は、とっても広いです。
 湯船の広さといい、洗い場の広さといい、まるでお風呂屋さんみたいです。
「わー、ひろぉぉぉい!!」
「すっげー、銭湯みてーだ!!」
 笛音ちゃんや良太くんが感激の声を上げます。
 その他のみんなも、その広さにはしゃいだり、ぽかーんとしたり様々です。
「はいはい、みんな入ってね」
 はるか先生がみんなの背を押して浴場に入り、後ろ手に扉を閉めました。
 そして、なぜか置いてあるホースで全員に掛け湯をします。
「わあっ!」
「つめたーいっ!」
「きゃあっ!」
 たちまち巻き起こる悲鳴。
 驚いたような顔をして、はるか先生はゆっくり手元の蛇口を確認します。
 そして、ぽつりと言います。
「ごめん、水だった」
「それはいいからはやくとめて」
 全員が慌てて湯船に浸かりながら同時にそう言うと、はるか先生は頷いて
きゅっ、と蛇口を閉めました。

 ざざぁ……

「……ふぅ」
 湯気の中、てぃーくんなどはゆっくり浸かっていたりしていますが、一方で
女の子たちは、それぞれこまごまと身体を洗ったりしてます。
 ルーティちゃんは蛇口のそばで、頭の上に手ぬぐいなど乗せて熱い風呂を
堪能していますし、マールちゃんはもう少し全体の温度を上げようと、
反対側にあるシャワーの温度を上げるように、シャワーのそばにいる
ティーナちゃんに言います。
 ティーナちゃんは今の温度が丁度良いようで、マールちゃんに言われても
素知らぬ顔でじゃばじゃばと湯船を歩き回っています。
 良太くんは湯船の中でシャワーの温かい雨に打たれてぼーっとしています。
 木風ちゃんは頭を洗い終わって丁度湯船に浸かるところです。
 靜ちゃんもごしごしと頭を洗っています。
 笛音ちゃんは全身を泡だらけにして身体を洗っています。
 そして、はるか先生はなにやらごそごそとしていたりします。

 そして、笛音ちゃんが洗面器で身体の泡を流した、丁度その時。

 ぱしゃっ! 

 突然そんな音がしたかと思うと、はるか先生が手にカメラを持ったまま、
きょとんとした顔をしていました。
「あ、しっぱいしっぱい」
 みんなが驚いた顔で見ているのに気づくと、はるか先生はぴっ、と
人差し指を立てて言います。
「はい、みんな笑って……って言うの忘れた」
「そういう問題じゃないとおもうぞー」
 良太くんのツッコミが入る。
「だいじょーぶ。これ、防水だから」
「そういう問題でもないと思う」
 続いて、ルーティちゃんの指摘が入る。
 それを聞いてはるか先生は、うーん、と考える素振りを一瞬だけ見せたかと
思うと、カメラを置いてゆっくり湯船に入った。
 そして、ふぅ、と一息つく。
「いいお湯だね」
 その言葉に、ほぼ全員がその場に突っ伏したのだった。

 ちなみに、ほぼ全員、というのは……

「それじゃみんな、あがろ」
「はーい!」
「ほらほらてぃーくん、ぼーっとしてちゃ、のぼせるよ」
 ……というわけである。



 そして就寝時刻。
 みんなそれぞれの布団に潜り、おしゃべりなどしている。
 結構な喧騒だが、はるか先生などはあっと言う間に寝ちゃったりしている。

 それからしばらく。

 おしゃべり疲れで、ぼつぼつ眠る子供たちが増えてきた。
 そんな中、笛音ちゃんがぽつりと言う。
「……おきてるひと、へんじして」
「……はーい」
 声を返したのはてぃーくんだけである。
「よかった。みんな寝ちゃってなくて」
 そして、一言。
「おやすみ、てぃーくん」
「うん。おやすみ、笛音ちゃん」


 こうして、お泊まり会の夜は更けていくのだった。