こみっくパーティ参入L「危険な奴らが大登場!」  投稿者:T-star-reverse
「ふふふ……ふはははははっ!」
 りーぶ学園の2年校舎、『エディフェル』屋上。
 そこに、ひとつの異様な人影があった。
 高笑いを上げ、眼下に広がる学園全土を見下ろしている。
「ついにこの時が……この時がやってきたのだっ!」
 その人物は、感極まったように叫びつつ、ぐぐっと拳を握りしめた。
「天よ見よ! 地よ騒げ! 今よりこの私が学園の頂点に立つのだっ!」
 そう言って、おもむろに給水塔に登り始める。
 さほどの時間もかけずに登り切り、眼下に広がる学園敷地にびしり、と
指を突きつけ、もう一方の手を眼鏡に添えて曰く。
「我輩の調べによれば、この場所こそこの学園に置いて最も高い場所、
すなわち頂点であるっ!!」
 そう言って再び満足げに高笑いを上げる男。
 その名を、九品仏大志という。

 屋上の隅では、大志から発せられる奇怪な電波に顔をしかめている
瑠璃子の姿が見て取れた。



こみっくパーティ参入L「危険な奴らが大登場!」



「ちょおちょおちょおちょお、ちょおむかつくぅぅぅぅぅぅっ!!」
「なによなによなによなによっ! いちゃもんつける気!?」
 教室のど真ん中で睨み合っているのは、共に短髪の女生徒二人。
 一方は緑、そしてもう一方は茶色の髪をしている。
「あんたっ! あたしのとーあんのぞいたでしょっ!!」
「言いがかりよ! 被害妄想よっ! なんであたしがあんたなんかの
真っ白テストを覗かなきゃならないわけ!?」
「ひ、ひがいもーそー? ……そ、そんなむずかしいいーわけしても
ダメだかんね。このあたしの目はごまかせないんだからぁ!」
「どこが難しいのよ。だいたいねぇ、あんたいっつもうるさいじゃないの。
ちょっと絵が上手だからって、調子に乗ってんじゃないの?」
「あー! あんたセンパイにむかってよくそんな口きけるわね! それも、
ただのセンパイじゃない、このガッコのクイーン・オブ・クイーンズに!」
「誰がクイーンオブクイーンズよ。誰が」
「きぃぃぃぃぃっ! このガセネタ女! オオカミ女!!」
「言ったわねぇぇぇぇっ!?」

 ばきっ!

 突如として、口喧嘩に終止符が打たれた。
 教卓に拳を叩きつけたポーズのまま、耕一は可能な限りにこやかに告げる。
「二人きりの追試中に、ずいぶんと楽しいコトしてるな、お前ら」
 教卓が左右にゆっくりと倒れてゆく。
「二人に今出してる試験は、中学生レベルの問題なんだが……」
 耕一の目が、にっこりと引き絞られる。
 それに比例して、さっきまで言い合っていた二人がぴったりと寄り添う。
「できたんだよな、当然?」
 ふるふる。
 ふるふる。
 二人の首が横に振られるのを見た瞬間。

 最強の鬼が、目を覚ました。

「ふざけてるんじゃないぞお前達ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
「みゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 その騒ぎで床に落ちた答案。
 その名前の欄に記されていた名前。
 一枚は長岡志保。
 そしてもう一枚には……大庭詠美と書かれてあった。



 たっ!
 印刷室の前から、駆け出した人影が一つ。
「それじゃ会議室までお願いね!」
「はいですぅ!」
 印刷室の中から顔を出した由美子先生に返事をしながら、その女の子は
荷物満載の台車を押して廊下を進んでいった。
 黄色い髪に赤いリボンが可愛らしい。
 とててて……と小走りに無人の廊下を進んでいく。
 しばらく直進したあと、きっ、と階段の前で足を止める。
「会議室は、ここの階段を下りてすぐですね」
 確認するようにそう呟くと、女の子はゆっくりと、階段脇に設置された
荷物用エレベータに近づく。
 一旦台車から片手を離し、エレベータのボタンを押す。
 その瞬間。

 がくん。

「はにゃ?」
 台車の車輪が階段にはみ出してしまい、台車はそのまま慣性に従う。
 がたがたがたがたがたがたがたがた……。
「わわわわわわわわわわっ!?」
 ごーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!
「にゃあああああああああああっ! 止まりませーーーーーーーーーーん!」
 階段を猛スピードで駆け下り、踊り場を芸術的なスピンターンで回り、
再度階段を直滑降して、台車と女の子は驚異的なスピードで走り出した。
「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 校舎内を猛スピードで駆け、ドリフトでカーブし、校舎の壁をぶち抜き、
サイクリング中のはるか先生を追い抜き、追いかけっこ中の梓とかおりの横を
倍速で通り過ぎて再び校舎の壁を破壊してようやく台車は停止した。
 そこは丁度、会議室だった。
「わぁ、あっと言う間に着いちゃったですぅ」
「そ、それはよかったね……」
 台車の下には長瀬源一郎教諭。
 どうやら、思いっきり轢かれたらしい。

 それに気づかずはしゃぐこの台車の女の子。
 彼女の名前は、塚本千紗という。



「あなた、恋をしているわね?」
 びくっ!
 背後から突然声をかけられ、佐藤雅史は慌てて振り返った。
 そこにいたのは、豪奢なアーマー姿の青髪の青年。
 だがその声は女性のそれである。
「……女の人なんかに僕の気持ちが分かるの?」
「ふっ……」
 青年、いやさその女性は、優しい微笑みを浮かべて一冊の本を取りだした。
 コピー本であるらしいそれを受け取り、さっと目を通す雅史。
「…………」
 だがそれは一度だけに留まらず、二度、三度と隅々まで読みふける。
 完全にそれを読み終えた時、雅史の彼女を見る視線は、すでに同志を見る
それであった。
「ふふ……信用してくれたみたいね」
「あなたは……一体?」
「名乗るほどの者じゃないわ。全人類の男の恋を応援する者……」
 ばさっ、とマントをひるがえしてその場を後にするアーマー姿の女性。
「チーム一喝、蒼き風のガッシュ」
「一喝? ガッシュ?」
 おもむろにその女性が発した言葉を、怪訝に繰り返す雅史。
「その名を覚えてもらうだけでいいわ……それじゃあね」

 ざっ、ざっ、ざっ、ざっ……

 ただ呆然と立ちつくす雅史。
 その手にあるコピー本。
 内容は……やおい(ただし非18禁)。

 一応、奥付に「芳賀玲子」と名前が載っていたが、雅史は気づかなかった。



 こそこそこそこそこそっ……
 学校廊下を怪しい人影が物陰から物陰へ渡り歩く。
「あれ、桜井さん?」
「v@h$Z!」
 声にならない声をあげて飛び上がって驚くその人影。
 そんな人影に声をかけたのは由綺である。
「どうしたの? そんなにこそこそして」
「いや、あの、えと……えっと……」
 おろおろとしてどもる人影の人物。ちなみに女性である。
 気弱そうな感じで、長髪に大きなリボンがアクセントである。
 その様子にしばしきょとんとする由綺だが、ふと気づいてぽんと手を叩く。
「あ、そーなんだ。早く行ったら?」
「え……あ、はい……ど、ども……です」
 そそくさとその場をあとにする女性。
 と、あとに残された由綺に理奈が声をかけた。
「由綺、あなたよく彼女の言いたいことわかったわね」
「あ、理奈ちゃん。うん。なんとなく解るんだ。私に……似てるからかも」

 その場を去った女性、桜井あさひが急いで向かった場所はというと……。
 ……女子トイレであった。



「あーっ! ちょっと! あんた何のつもりよ!!」
「ん?」
 突然その場に響きわたった怒鳴り声。
 ここははるかの憩いの場その2、テニス部コート。
 今日も顧問の自主休部によって人っ子一人いなかったりする。
 いや、正確に言えばはるかともう一人。
 真っ赤な髪を右上でポニーにした活発そうな女性が一人。
「テニス部の顧問やってるくせになんでテニスやんないのよ!」
「休部」
「あんたの勝手な都合でそんなの決めるんじゃないわよっ!!
あんたさっきも自転車で校内一周してたでしょうがっ!」
 すちゃっ、とどこからともなく取り出したテニスラケットを突きだして、
はるかの喉元にぴたりと突きつけるポニーの女性。
 それに対して、すいっ、とポケットからチョコレートを取り出して、
前に差し出すはるか。
「……」
「……」
 沈黙。
 そして、一瞬の緊張のあと。

 ぱしっ。

 はるかの手からチョコが奪い去られていた。
「今日はこのチョコに免じて許して上げるわ」
「昨日もそう言ってた」
「そこ、余計なこといわないっ!」
 そう怒りつつもぱくりとチョコを口にしてしまうこの女性。
 名を、高瀬瑞希という。



 じーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ。

 黒くて大きくて控えめな双眼が、ある一点を凝視している。
 周囲の騒音も気にならない。
 ただある種の憧れのようなものが、彼女をそこに留まらせていた。
「……危ないぞ」
 声がする。
 だが彼女には今、その声を知覚する余裕はない。
 ただひたすらに、目的のものを見つめている。
「……危ないと言っている」
 再度の声。
 しかし彼女は動かない。
「……魂、もらってもいいか?」
 ふるふる。
 首が振られる。

「ち」

 ちょびっとだけ舌打ちの音など聞こえてきたが、それはまあいい。
 問題は、今この場の現状である。

 怪しげな物体が、うじょろどたぎがと暴れ回っていたのだ。
 はっきり言って、気色悪い。
 だが彼女はぽつりと呟いた。
「かわいい……」
 それを冷ややかな目で見つめる警告の主。
「…………」
 それとは別の場所から聞こえてきた小さな声が、波紋のようにその場に
広がっていく。
 すると、怪しげな物体が掻き消えてゆくではないか。
 まるでそこには元から何もなかったかのように、である。
 ただし怪しげな物体による破壊の跡はしっかりと残っていたが。
「あ……」
 残念そうな声をあげる最初の彼女。
 その背中に、警告を発した赤髪の少女……エビルがこう告げた。
「あなた、変わってますね」
「?」
 こくこく。
 首を傾げる彼女。首を縦にしてエビルの言葉に賛同するのは芹香。
「そう……ですか?」
 そう呟いて怪訝な顔を見せる彼女。

 彼女の名は、長谷部彩という。



 さーっ。
 事務室の窓辺にある鉢植えに水をやる女性がひとり。
 軽くゴムで止めた髪に、太いフレームのメガネが特徴的である。
「あら、サボテンですか?」
 ふと掛けられた声に、じょうろを傾けていた手を元に戻すその女性。
 振り向けばそこには、柔らかな微笑みを浮かべた黒髪の女性が立っている。
「ええ。他にもハーブとか……トマトなんかもありますよ」
 よく見れば、窓辺一面に鉢植えがびっしり。
 すでにその様相は家庭菜園というよりミニ農園である。
 メガネの女性は、先程まで水をやっていたサボテンの鉢植えを手にとって、
書類を手に入ってきた黒髪の女性に向けて微笑みかける。
「そうでなくても、こうやってると落ち着きますし」
「ふふ……それで、来期の予算なんですけど」
 書類をめくりながら伝えるべきことを伝える黒髪の女性。
 そこに、さらに来客があった。
「あのー、すいません。ハーブ見繕ってくれま……って千鶴先生!?」
「あら七瀬先生、ハーブを何に使うのかしら? ひょっとして……」
 黒髪の女性……柏木千鶴は、驚きというか、絶望の表情を浮かべる七瀬彰に
邪気のない笑みでにこにこと微笑みつつ、問い質す。
「お料理かしら?」
「失礼しましたーっ!」
 その単語が出た途端に逃亡する彰。
 それを見て、メガネの女性に書類を手渡す千鶴。
「それじゃ、これよろしくお願いします」
「はい、わかりました」
 その返事を聞いて、すぐさま彰の後を追う千鶴。
 残されたメガネの女性は、にこにことしながらサボテンに話しかける。
「あとでちゃんとハーブは届けて上げましょうね?」

 彼女の名は、その手にある書類にしっかと記されている。
 牧村南。この事務室の主である。



「むっ!?」
 廊下を歩いていた保科智子が、ただならぬ表情で突然足を止めた。
「……この気配……誰や!?」
 一瞬の沈黙。
 だが、その沈黙はわりとあっさりと破られた。
「ふっふっふ、流石にええカンしとるわ」
「!!」

 だんっ! ひゅっ!

 言葉と同時に踏み込みの蹴り音、そして風切り音。

 ぱしいっ!!

 最後に何かがぶつかる音で再び沈黙が訪れる。
 今度はその沈黙を智子が破る。
 その手にはしっかりと深紅のハリセンが握られている。
「あんたか……もうええ加減、あきらめてくれへんか?」
「そうはいかん。あんたほどの逸材、そうそうあきらめられるかいな」
 智子とハリセンの鍔迫り合いをしているのもまた、メガネの女性。
 こちらは純白のハリセンに丸メガネである。

 ばっ、と双方共に間合いを取って睨み合う。
「同郷のよしみや、いっぺんでええからウチに手ぇかしてんか」
「なにがいっぺんや。そう言うて前もウチを巻き込んだこと忘れてへんで」
 じりじりと間合いを詰め、同時に踏み込む。
 一部の無駄もなく振られた2本のハリセンが、激突していい音を響かせた。
「この同人不敗マスターオタク、そう簡単にやられはせんで」
「くっ……」
 にやりと不敵な笑みを浮かべる丸メガネ。智子は表情を歪ませる。
 と、そこに突然第三者が現れた。
「おい、そこで騒いでいるのは誰だ?」
「!」
「しめた!」
 一瞬ぎくりとした丸メガネの隙をつき、智子が相手のハリセンを弾く。
 そのまま追撃しようとするが、相手はひらりと身をかわす。
「ちっ……邪魔がはいったようやな。けど覚えとき。この学園にいる限り、
この猪名川由宇の計画からは逃れられんちゅうことをな!! とうっ!」
 窓から外に飛び出す由宇。
 ほぅ、とため息をついてハリセンをしまう智子。
 そこに先程の声の主が現れる。
「なんだ? 何かあったのか?」
 藤井冬弥である。
 だがしかし、智子はその問いに黙ってはぁ、とため息をつくだけであった。

「……うちにもよう解りません」
 猪名川由宇、謎の多い女である。



 ……ばたん。
 美術室。
 ロッカーを閉める音。
 そこに立っているのは一人の男性。
 その後ろには一枚の画布。
 率直に言えば、芸術である。
 一年やそこらの練達では、ここまでの絵は描けないであろうという代物だ。
 その絵を残し、部屋を立ち去る男性。
 一応彼にも名前はある。
「千堂和樹……」
 そう、そーいう名前である。
 歴代主人公の影の薄さが彼にも当てはまるかどうか……。
 とりあえず、彼よりも彼の描いた絵の方が目立っているのは確かであった。



 夕焼け。
 大志が見下ろす大地は、すべて朱に染まっていた。
「うむ、絶景かな絶景かな。世界はいつも美しい」
 相変わらず校舎の屋上で全てを見下ろす位置に立っている。
 前髪を掻き上げつつ、決めポーズなど取ってみる。
「ふふ……」
 陶酔している。
 だから彼は気づかない。
 先程の電波で気を悪くした瑠璃子が、一人の中等部生徒に声をかけて、
その中等部生徒が初等部の生徒に声をかけて、一部隊を編成していることを。
 そしてその部隊は、彼の背後に忍び寄っていた。
 初等部のメンバーに、リーダー格の中等部生徒が目配せをする。
 頷く一同。
 そして号令はかけられた。
「一斉に、かっかれーっ!!」
「それーっ!!」
「てーいっ!」
「やーっ!」
 大志に浴びせられる投石の雨、雨、雨。
「ぬおおっ! 何だ貴様らっ! 吾輩の野望の邪魔をする気か!」
 大志の威嚇にもひるまない。
 中等部の女の子は、傍らの男の子に指令を出す。
「今よ良太くん! とどめを!」
「わかったぞー! ひっさつ……」
 雛山良太が、大志に向けてダッシュをかける。
 そして、飛んだ。
「ドリルおでんキーーーーーック!!」
「ばっ、ばかな、この私がぁぁぁぁぁぁっ!!」
 姉のプロレスごっこ仕込みの強烈な蹴りが、大志を屋上から蹴り飛ばす。
「私は必ず帰ってくるぞぉぉぉぉぉぉっ!」
 意味不明の言葉を残しつつ転落する大志。
 激突音はしなかった。

「よくできました☆」
「へへっ、かるいぞーっ!」

 初等部の指揮を執ったこの中等部の女生徒。

 名を、立川郁美という。



 何気ない一風景。
 どんな出来事も日常の枠から逸脱することのない世界。

 新しい顔ぶれは、いつもすぐに馴染みの顔ぶれに取って代わる。

 そして、再び変わらぬ日常が始まる……。


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ほい、T-star-reverseです。

いーかげんこみパネタも解禁だろうということで書いてみました。

メインキャラから隠れキャラまで、以後ご自由にお使いくださいませ(笑)


一応、Leafキャラのみで構成してみました。
SS使い・オリキャラとの関係は、各自で築いてやって下さい。
由宇とかあさひとか、一見意味不明ですけど特に何も考えてません。
今回の話はとくに気にしないで皆さんは書いてくださいな。

基本的に早くて面白い者勝ちというのは、いつの世も変わらないはず。
それではみなさん、がんばってくださいっ!