てく、てく、てく、てく…… とっ、とっ、とっ、とっ…… 二つの足音が、放課後で、人もまばらな廊下に響く。 「まず、ここからだね」 「そーだね」 と、足音の主が、ある一室の前で止まる。 お互いに確認すると、ドアをノックした。 「失礼します」 そして、中に入る。 「えー、このたび本校に転校してきました、T-star-reverseです。 先生方、どうぞよろしくお願いします」 「僕はてぃーくんだよー。よろしくねっ!」 そこは、職員室であった。 Lメモ「挨拶招く同志たち」 【職員室】 「おー、君が新しく入ってきた生徒か。話は聞いてるよ」 部屋に入った二人を見て、一人の、太めの男性教師が声を掛けてきた。 「なんでも、来た早々ジンとDセリオの戦いに巻き込まれて消滅して、 そのあと暴走した西山に粉々にされたとか……」 「消滅してから粉々……長瀬先生、それって矛盾してません?」 近くにいた金髪の女性教師が疑問の声を上げる。 長瀬と呼ばれた男性教師……長瀬源一郎が、その疑問に答える。 「いやね、なんでもこの男……ええと、T-star-reverse……」 「ティーでいいです」 「そうか。でね、宮内先生、ティーは傀儡使いなんだそうです」 「クグツツカイ?」 「ええ。自分と同じ姿の人形を自在に操ることができるとか」 「へえ……そうなの。それじゃティー君、今も傀儡なの?」 宮内と呼ばれた女性教師……シンディ宮内が、T-star-reverseに聞く。 「いえ、挨拶まわりくらいは傀儡に任せないで、自分でやりたくて……」 「そりゃ、いい心がけだなぁ」 「……で、こっちの子は?」 シンディが、T-star-reverseの隣にいる8〜10歳くらいの少年に 目を留めた。 「僕はてぃーくんだよ。よろしくね」 「てぃーくん……なんか、大きい方のティー君と紛らわしいわね」 「気にしないでください。とりあえず、私の従弟……ってことで」 「……それ、説明になってないぞ」 「そうですか?」 とりあえず職員室にいた先生には一通り挨拶を済ませ、次に二人が向かった 部屋はと言うと。 「さて……次はここかな」 「さっさとしよーよ」 ノックをして、扉を開ける。 「失礼します」 【生徒会室】 「はじめまして、先日転校してきました、2年のT-star-reverseです」 「それについてきたてぃーくんだよっ」 その二人に、部屋の中にいた二人の人物の視線が集まる。 「転校生か……ここに何をしに来た?」 部屋の奥、窓際に立っていた、細い目の男がそう聞いてくる。 「転校の挨拶まわりです」 T-star-reverseがそう答えると、男はなるほどといった顔をして頷いた。 「そうか……僕は3年の月島拓也。前生徒会長だ。そして、こっちが……」 「3年の久々野彰だ。よろしく」 もう一人の人物が、軽く微笑んで挨拶をしてくる。 二人とも、それとは気づかせぬように、値踏みをするような視線を向ける。 T-star-reverseはそんな視線は気にせず、部屋の中に他に誰もいないことを 確認して、その場を退出した。 T-star-reverseとてぃーくんが出ていった後、二人は軽く言葉を交わす。 「……どうかな、彼は」 「さあな……まだ、不確定要素が多すぎる」 「転校して来て、真っ先に松原くんに接触したという情報があるが」 「聞いている。お互い、一安心といったところか……」 「まったくだな……」 こんこんこん。 ノックをして、その部屋のドアを開く。 「失礼します」 【科学部】 「ん?誰だあんた」 T-star-reverseが部屋に入るなり、部屋にいた男がそう聞いてきた。 「先日転校してきた、T-star-reverseです。ティーと呼んでください」 「転校生……か。いったい何の用だ?」 「挨拶まわりです。あちこち回ってますんで……」 「へぇ。挨拶まわりねぇ……なるほどね、俺はジンだ。ジン・ジャザム」 「ジンさんですか。よろしくお願いします」 と、その時、部屋の奥から一人の男性教師が姿を見せた。 「どうした、ジン?」 「あっ、柳川先生」 「む……?誰だ、その二人は」 「転校生のティーと……おい、そっちのチビ助はなんていうんだ?」 「僕はてぃーくんだよ」 「てぃーくんか、紛らわしいな……だそうです」 ジンがそう言うと、柳川は興味深そうな顔を見せると、T-star-reverseの 前に立って、しげしげとその顔を眺めた。 「ふむ……君、科学部に入る気はないかね?」 「科学部ですか?」 「そうだ。科学こそ万能!そしてその粋を極めた部こそ、ここだ!」 と、柳川先生、ジンをぐいっ、と引っ張り寄せる。 そして、機械化された部分を丁寧に説明しはじめようとしたが。 「いいですよ」 「いいか、まず…………え?」 硬直する柳川とジン。 「もともと、できるだけたくさんの部活に入るつもりでしたし、せっかく 誘ってもらえたんですから、入ってもいいですよ」 「ばかな!人生棒に振る気か!?」 そう口走るジンを蹴倒して、柳川がT-star-reverseの手を取る。 「そうか、入ってくれるか!そうか!よし、手始めに改造……」 「挨拶まわりの途中なので、謹んで遠慮します」 そう言ってT-star-reverseは、てぃーくんと一緒に部屋を後にした。 そして、呟く。 「……ここには、傀儡で来ることにしよう……」 【オカルト研究会】 こんこん…… 「失礼します」 かちゃ…… 扉を開くと、中はろうそくの明かりだけが灯された、薄暗い部屋だった。 「先日転校してきました、2年のT-star-reverseです」 「おまけのてぃーくんだよ」 二人を迎えたのは、一人の女性と一匹の猫。 「…………?」 「なんにゃ、転校生が何の用かにゃ?」 ともすれば聞き取れないくらい小声の女性と、喋る猫。 「校内一通り挨拶まわりです」 「…………」 ごくろうさまです、と女性は言った。 「ご苦労なこったにゃ」 と、不意にすっ、と女性が立ち上がり、ぺこりとお辞儀をする。 「…………」 3年の来栖川芹香といいます……よろしく……、と聞き取れた。 「ご主人様の飼い猫のエーデルハイドにゃ。よろしくだにゃ」 と、その時芹香が、T-star-reverseの持っている本に目を留めた。 装丁も何もない、鍵穴のない鍵がかかっている、古ぼけた本。 整った顔を近くに寄せ、何かを確認するように、本を見つめる。 「…………」 マリオノール・ゴーレム、と彼女は言った。目が心なしか輝いている。 「へぇ……知ってるんですか」 T-star-reverseの言葉に、こくこくと頷く芹香。 口の中でぶつぶつと何かの言葉を反芻し、そして、芹香はこう言った。 「…………」 よろしければ、オカルト研究会に入りませんか? 他は幽霊部員の方ばかりですが、こうして会えたのも何かの御縁です。と。 無論、T-star-reverseに断る理由はなかった。 【第1保健室】 「さて、次は……」 「ティー、ここに保健室があるよ」 と、二人がさしかかったのは、「第1保健室」と書かれた部屋であった。 とりあえず、ノックをして扉を開く。 「失礼します」 がらがらがらっ…… 「……失礼しました」 ……がらがらがらっ 「……次、行こう」 「そだね」 とりあえず、中で何を見たかは、考えないことにする二人であった。 (耕一「だっ、誰か来たのか?助け……」) (千鶴「気のせいよ、耕一さん☆」) 【お料理研究会+茶道部】 とんとん…… 「はーい、開いてますよ」 T-star-reverseがそのドアを開けると、そこには人がたくさんいた。 とりあえず、全員に聞こえるくらいの声で自己紹介をする。 「はじめまして、先日転校してきました、T-star-reverseです」 「僕はてぃーくんだよ。よろしくね」 二人が挨拶すると、部屋の中にいた人達も次々と自己紹介をする。 「神岸あかりです、はじめまして」 「水禍といいます」 「柏木梓。よろしく」 「……柏木楓です」 「こんにちわ、柏木初音です」 「はじめまして、Dマルチといいます」 「雛山理緒ですっ!」 全員がエプロンをつけており、何か料理を作っていたところらしい。 「今、茶道部とお料理研合同で、交流会を兼ねてお料理を作ったんです。 よかったら一緒にどうですか?」 Dマルチにそう誘われるが、そうそう時間を潰す訳にも行かない。 「すいません、今、まだ挨拶まわりの途中なんです……」 T-star-reverseはそう言って断ろうとしたが、 「……うわぁ、これ、美味しいっ!」 「そうでしょ!?美味しいわよねっ!」 「……てぃー……」 ……すでにてぃーくんが理緒と一緒につまみ食いをしていた。 仕方なく、T-star-reverseはお茶を一杯だけもらう事にした。 こぽこぽこぽ…… 「……どうぞ」 「あ、どうも」 わざわざ煎れてもらった昆布茶を、楓から受け取る。 ずずず、と啜れば、これがまたなかなかに美味い。 湯は熱すぎず、すぐに湯飲みは空っぽになってしまった。 T-star-reverseは、ばつが悪そうに湯飲みを差し出す。 「あの……もう一杯、いいですか?」 その様子に、食べるのに没頭している理緒を除く全員がくすくすと笑う。 「ふふ……いいんだよ。遠慮なくおかわりしてね!」 そう初音が言うと、T-star-reverseもなんとなく苦笑してしまった。 結局、そのあとに茶道部に入部したT-star-reverseは、てぃーくんと共に 挨拶まわりを続けていた。 陸上部に入部。マネージャーとして日吉かおりの仕事を脅かす。 剣道部に入部。Dガーネットに真剣で斬られかける。 弓道部に入部。宮内レミィとことわざ勝負にて快勝する。 ボードゲーム部に入部。が、誰も碁を打てなくてがっかりする。 放送部に入部。「志保ちゃんの歌声を昼休みに流すぞ計画」を未然に破棄。 ……ほか、様々なところに挨拶に訪れて、いろいろな事があった。 そして、続きである。 【第二購買部】 「いらっしゃい!何をお求めですか?」 「はい、これは……50円!そっちは……666円!」 「beakerくんがいないから在庫はわからないわよっ!」 ……そこは、修羅場だった。 何故か店番が坂下好恵たった一人しかおらず、それを見計らったように 次々と客が集まってきていた。 「……忙しそうだね」 「……そうですね。購買部にも入りたかったんですが……」 「……兼部しすぎじゃない?」 T-star-reverseとてぃーくんは、その場を立ち去った。 【図書館】 「やあ、いらっしゃい。挨拶まわり大変でしょう、お茶でもどうぞ」 図書館に来るなり、T-star-reverseの前に湯飲みが置かれた。 しかし、T-star-reverseは口を付けない。 なぜなら、すでに床に転がっている数名の生徒がいるからである。 ついでに言うと、図書館周辺の花壇に、毒草が並んでいたのも原因である。 そしててぃーくんなどは、あからさまに怪しいと言ってついてこなかった。 「……いえ、挨拶まわりの途中で」 「いいからいいから、一口だけ試してみるだけでいいから」 「いえ、ですから」 「飲んでみて、ね?」 ……そうまで言われて断るのもなんなので、とりあえずT-star-reverseは こっそり禁呪を掛けておくことにした。 「毒禁即不能害(毒を禁ずればすなわち害することあたわず)」 そして、口をつける。 毒草の苦みを消すための味なのか、毒草そのものの味なのか、甘ったるい 味が口の中に広がったが、とりあえずそれを一口で飲み干す。 「……ごちそうさまでした」 そう言って、そそくさとその場を立ち去る。 あとには、ただ首を傾げるまさた館長の姿だけが残されていた。 ……あと、床に転がる人達もいるけど。 【格闘部】 ……そして、最後。 T-star-reverseは一人でここにやってきた。 てぃーくんは、図書館で別れた時にどこかに行ってしまっていた。 練習場の扉を開く。 ばしっ、ばしっ、ばしっ…… 規則正しい音が、練習場の中に響く。 そこでは、葵がたった一人でサンドバッグに向かっていた。 T-star-reverseは黙ってその様子を見つめている。 ぱしっ、ぱしっ、ど、ど、どっ!ずばぁんっ! 「……ふうっ!」 一息ついて、サンドバッグそばのベンチに腰を下ろす葵。 「あっ!」 そこで葵がT-star-reverseに気づいた。 「ティーさん……いえ、ティー先輩!」 「やあ、松原さん」 T-star-reverseが挨拶を交わしながら、葵の隣に腰を下ろす。 「いつもここで練習してるの?」 「あ、はい。用事があるとき以外は……いつもは他にも、綾香さんとか、 好恵さんとか、相手をしてくれてますけど」 「ふーん……」 そのまま、軽く談笑する二人。 そして、おもむろにT-star-reverseが腰を上げる。 「松原さん、良かったら、私に組み手の相手をさせてくれないかな?」 「えっ!?」 突然の言葉に、驚く葵。 そんな葵の様子をよそに、黒帽子を脱ぎ、眼鏡を取るT-star-reverse。 「そして、格闘部に入れてもらいたいんだ」 「あ……それなら、私と組み手なんてしなくても……」 「いや、生身の私がどのぐらいの実力か、松原さんに解って貰いたいんだ」 本を置きながら言ったT-star-reverseのその言葉に、葵は少し間をおいて、 頷いた。 「二年生・T-star-reverse、格闘部に入部希望します!」 「わかりました。格闘部・松原葵は、全力であなたを歓迎します!」 その組み手は、双方がぶっ倒れるまで延々と続いた。 練習場に、夕日が射し込んでいる。 「はぁ、はぁ、てぃ、ティーせんぱい、やりますね……」 「い、いや、やっぱり、松原さんにはかなわないよ……」 双方共にダウンしている形だが、実はその理由が違う。 T-star-reverseは、葵の打撃によるダメージで起きあがれないのであるが、 葵の方は、ただ単に体力が尽きただけである。無論、多少のダメージはある。 「……何回攻撃を当てても平然と立って来るんで、気が抜けませんでした」 「いや、痛いんだよ。平気なように見えてても。痛みには慣れてるけど……」 そして、どちらからともなく起きあがり、そして、お互いの手を握る。 「では、改めて……よろしくお願いします、松原さん」 「こちらこそ!」 そして、T-star-reverseの挨拶まわりは幕を下ろすのだった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− どうも。T-star-reverseです。一応、挨拶まわりSSとのことですが…… 出てないところ、たくさんあります。ごめんなさい。書けませんでした。 さて、今回出てきた「てぃーくん」なるT-star-reverseにくっついている 少年ですが、彼の正体は傀儡です。 ただ、普通の傀儡とは違い「自我を持っている」ため、T-star-reverseが コントロールすることができません。ようするにオリキャラです。 年齢は8〜10歳ほど。設定はそのうち上がると思います。 さて、現在私が参加している部活(+学園活動)ですが、 「格闘部」 「オカルト研究会」 「茶道部」 「ボードゲーム部」 「科学部」 「陸上部」 「剣道部」 「弓道部」 「放送部」 「第2購買部」 「来栖川警備保障」 ……となっています。購買部と警備保障は、きっちり承認も頂きました。 実はもう一つあるのですが、それはまた別の機会に。 あと、感想、どこからどう書けばいいのかよく解りません。 どなたかご教授ください……