Lメモ・ショートショート集1「薔薇と酔っぱらい」 投稿者:T-star-reverse
 やっほー、僕はてぃーくんだよ。よろしくね!

 今日はね、僕が遊んでて、見たこと、聞いたことをみんなにお話するんだ。

 それじゃ、はじまり、はじまりー。



Lメモ・ショートショート集1「薔薇と酔っぱらい」



「寄るな、触るな、近付くなぁぁぁぁぁぁっ!!」
 僕が高等科の校舎に近付いたとき、そんな悲鳴が聞こえたんだ。
 なにかなー、と思って声がした方に行ってみるとね……

 がしっ、
 
 と掴まれて、
「ちっ、近付くなよ。この子供がどーなってもいいのかっ?」
 一瞬のうちに人質にされちゃったんだ。

「うふふ……無駄だよ浩之。僕たちの愛の前に、そんな子供の命の一つや二つ
風の前の塵ほどの価値すらないんだからね……」
「その通りでございますぞ藤田殿。観念して頂きましょう」
 そう言って、ゆぅ〜っくりと僕の見知らぬ二人がこっちに近付いてきた。
「う……うるせえっ!俺は、俺はこいつで平和な日々を勝ち取るんだっ!」
 そう言って、僕を小脇に抱えた男の人……追っている二人の言葉から判断し
……藤田浩之にーちゃんは、二人から一目散に逃げ出したんだ。 


 そして、何とか逃げ切ったみたい。 
 浩之にーちゃんが、疲れ切って僕を放り出した。
「ぜぇっ、ぜぇっ、ぜえっ、ぜぇっ……」
「……大変だねー」
 僕は、心底同情して、浩之にーちゃんの肩をぽんぽんと叩いた。
「……まーな……ところで、お前、名前は?」
 その時になって、浩之にーちゃんが僕に名前を聞いてきた。
 僕は、いつものように元気よく応えた。
「僕はてぃーくんだよっ!」
「そーか、てぃーくんか……俺は浩之。すまねーな、巻き込んで」
 ぺこりと頭を下げて僕に謝る浩之にーちゃん。
「ううん。気にしてないよ。楽しいもん」
「楽しい……か。ははっ、子供は気楽なもんだな」
 座り込みつつ目の辺りを片手で覆い、顔を上げる浩之にーちゃん。
 そして、ゆっくり立ち上がる。
「さて……それじゃ、俺はまた逃げっから。お前も帰れよ」
 浩之にーちゃんはそう言ったけど、僕はぶんぶんと首を振った。
 そして僕は、背負っている鞄を下ろしながら、言ったんだ。
「浩之にーちゃん……いいものあげよっか?」



「浩之、見つけたよっ!!」
「藤田殿っ!!」
 そう言って、さっきの二人がダッシュで近付いてきた。
 浩之にーちゃんから聞いた話では、学生服を着た方が佐藤雅史にーちゃん。
そしてスーツを着込んだ方がセバスチャンじーちゃんだ、って言ってたっけ。
 ……で、当の浩之にーちゃんはと言うと……
「はっはっは、いよぅっ、雅史にくそじじい!!元気してっか!?」
 これどもか、と言うほど豪快に酔っぱらっていた。
 ついでに言うと、僕はその横でひょうたんを持ってる。
「二人とも、わりーけどなぁ、オメーたちに捕まるわけにゃいかねーんだわ」
「浩之……可哀想に。そんなに酔わなきゃやってられないほどに
追いつめられていたんだね……僕が解放してあげるよ……」
 雅史にーちゃんがそんなことを言う。
 ……どう考えても、追いつめていたのは雅史にーちゃんだと思うんだけど。
「藤田殿っ!!そのような酔いなど、わたくしめが醒ましてあげますぞ!」
 セバスじーちゃんがそう言って、雅史にーちゃんと一緒になって、
浩之にーちゃんに飛びかかって来た。

 浩之にーちゃんは、そんな二人を横目で見つつ、僕の手からひょうたんを
ひょい、と取って、ぐびぐびと中身をあおった。
「ぷはぁ!……はっはっは、ダメだって言ってるだろってばよ」
 そう言って、おもむろに逆立ちになる。
 ちょうど、その足に突っ込む形で、二人に蹴りがカウンターで入った。
「ぐ……っ!」
「がふっ!!」
 反動ですたっ、と立ち上がる浩之にーちゃんとは対照的に、蹴られた
ダメージで倒れる雅史にーちゃんとセバスじーちゃん。
 そんな二人に、今度は浩之にーちゃんが近付いていく。
「しょうがねーなぁ。しょうがねーから、少しばかし眠っててもらうな。
しょうがねーと思うからするんだぞ。しょうがなくな、うん」
 やたらと「しょうがない」を連発しつつ、片手に持ったひょうたんを
振り上げて、倒れたままのセバスじーちゃんの側頭部を殴打する。
 その衝撃で、セバスじーちゃんは近くの壁にめり込んで……と思ったら、
コンクリートの壁を突き破っていった。
「おーおー、さすがくそじじい。鍛えてやがんなー」
「浩之ぃっ!!隙ありっ!!」
 よそ見をしている浩之にーちゃんの真後ろから、雅史にーちゃんががっしと
浩之にーちゃんを捕まえた。
 けど、浩之にーちゃんは慌てず騒がず、前に回された片腕を取ると、
ぐるりっ、とそれをひねって、あっさりと雅史にーちゃんを引き剥がす。
「はっはっは、馬鹿だなぁ雅史。殴られるより極められる方が痛いんだぞぉ」
「痛い、痛いっっ!!ううっ……けど、この痛みも愛の証?」
「何べんでも、飛んでこぉーいっ!!」
 片腕を極めたまま、ハンマー投げの要領で雅史にーちゃんを投げ飛ばす。
 雅史にーちゃんは、あまり哀れでもないけど、ばら星雲まで飛んでいった。


「はっはっは、いよぅてぃーくん!元気か?」
「元気だよー」
 すっかり酔っぱらった浩之にーちゃんは、僕に何度もそう聞いてきた。
 その楽しそうな様子を見ると、いかに浩之にーちゃんが、今までどれだけ
酷い生活だったかがわかるような気がした。



 ……そして、それから……

 その日、酔いつぶれて廊下の真ん中で寝た浩之にーちゃんは、そのあとに
警備保障のDセリオねーちゃんに処罰されたみたい。
 ついでに、次の日に二日酔いで死ぬ目にあっているときに、復活した
雅史にーちゃんとセバスじーちゃんに見舞いに来られたってさ。



 おしまい。



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T「T-star-reverseです。てぃーくんのショートショートシリーズ第1弾!
 ここにお送りしましたっ!!」
て「てぃーくんだよっ!第1弾ってことは、まだまだ続くんだねっ?
 ちゃんと書けるの?」
T「ぎくっ……」
て「でもさー、元ネタ知ってる人なら、次の話のネタも解るんじゃないかな」
T「……そーだね」
て「それじゃ、次回作もお楽しみにねー!!」

(このシリーズ、感想は無しにさせていただきます。ご容赦くださいませ)