Lメモ・ショートショート集10「メイドを超えた闘い」 投稿者:T-star-reverse
 やーほー。てぃーくんだよー!

 今日も話するからさ、よかったら聞いてってよ。

 それじゃ、はじまり、はじまりだよーっ!



Lメモ・ショートショート集10「メイドを超えた闘い」



「何故だっ?何故俺がこんな目に遭わねばならんのだっ!?」
「……僕に聞いたって知らないよ……」
「あああのあの、もももう少し、ゆっくり走ってくださいいい……」
 右と左に人を抱えて、全力疾走をしているのはジン・ジャザムにーちゃん。
 ついでに言うと、右に抱えられてるのは僕。
 左に抱えられてるのはマルチねーちゃんだったりする。
 そして、そんなジンにーちゃんを追いかけるメンバーは……
「ジン!貴っ様ぁぁ!マルチを返せぇぇぇっ!!」
「オトナシクオ縄ニツイテクダサイ」
「スピード、落としてくれないかな」
 セリスにーちゃんとDガーネットねーちゃん、それに、自転車に乗った
河島はるかねーちゃん。あとは……。

「へーのきさん、今です!」

 ひゅうううううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……

「オチマス、オチマス」

 ずどぉむっ!!

「ハズレ、ハズレ」
「へーのきさん!早く引き上げてください!」
「ううっ、疲れるなぁ……」
 後方30センチの所に落ちてきたDボックス……ねーちゃん(?)と、
それを引き上げるDマルチねーちゃんとへーのき=つかさにーちゃんだった。
 引っ張り上げられるDボックスねーちゃん……やめた。呼び捨てでいいや。
とにかく、Dボックスは、屋上から落とされた割に、傷一つなかった。
「へーのき、てめぇ、この野郎!!Dボックスの足っていうか車輪を外して
思いっきり爆撃専用にしやがったなっ!?」
 それを見て叫ぶジンにーちゃん。
「こっちだって疲れるんだから文句言わないでくださいよ!!」
「へーのきさん、急いでっ!!」
「……はい」
 つかさにーちゃんも言い返してきたけど、Dマルチねーちゃんに諭される。
 ……とか思ってたら、屋上の一部が突然砕けた。
「危ないだろっ!マルチに当たったらどーするつもりだ!?」
 セリスにーちゃんの攻撃らしい。
 けど、そうしながらもしっかりジンにーちゃんのあとについてきている。
 つかさにーちゃんたちは、すでに移動したようで、返事はなかった。
 そして、また追いかけっこが続く。
「俺が何をしたっていうんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
 ジンにーちゃんの渾身の絶叫が、むなしく学園に響きわたった。



 事の起こりはちょっと前。
「いよおおぉぉぉぉっし!!!久々の勝利だぁぁぁぁぁぁっ!!!」
 ジンにーちゃんが、倒れたDセリオねーちゃんの前で、高らかに勝利宣言を
しているところに、僕とマルチねーちゃんがやってきた。
 マルチねーちゃんは、倒れたDセリオねーちゃんに気づくと、あわてて
駆け寄って、ぽろぽろと涙を流し始めた。
「ひ、ひどいですぅ……とっても痛そうです……」
 それを見て、慌ててジンにーちゃんがフォローしたんだ。
「い、いや、マルチよ、これは正当な決闘の結果として……」
「――ジンさん」
 その時、突然倒れたままのDセリオねーちゃんが、声を出した。
「お、おおDセリオ、いいところで目を覚ましてくれたな。お前からも
マルチに説明してやってくれ……」
「――今すぐ、マルチさんと小さなてぃーさんを連れて、ここを
離れてください」
 そう言うDセリオねーちゃんに、怪訝な声を上げるジンにーちゃん。
「そうは言ってもな、このままじゃ……」
「――先ほど、サテライトフォースを発動しました。本来なら
ジンさんごとこの場を吹き飛ばすための物でしたが……
 今回の勝ちは譲ります。早くこの場を離れてください」
「なっ……くそっ!!やっかいな……」
 ……って、意地でも負けたくなかったみたいだねー。
 と、その場に突然現れたのがセリスにーちゃん。
「ま、マルチっ!?」
 泣いているマルチねーちゃんを見て、一瞬にして暴走モードに突入。
「ジン、貴様、何をっ……」
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 僕とマルチねーちゃんを抱え、全力で駆け出すジンにーちゃん。
「待て、ジンっ……」
 セリスにーちゃんが、そう言って追いかけようとした瞬間。
 光の奔流が、全ての姿を洗い流したんだ。


 ……そんなわけで、この追いかけっこが続いてる訳なんだけど……
 ほらほら、セリスにーちゃんの服が所々焦げてる。
 警備保障の人達は、Dセリオねーちゃんとジンにーちゃんの戦いで
起こった被害に加え、ジンにーちゃんとセリスにーちゃんの追いかけっこで
新たな被害が出ないように、ジンにーちゃんを追っている。
 はるかねーちゃんは……ただついてきてるだけみたい。
「ジンにーちゃん、これからどーするのさ?」
「しらんっ!!」
「マルチねーちゃん、これからどーなるのかな?」
「えええええーと……ごごごめんなさい、わわわわかりませぇぇぇん」
 セリスにーちゃんの攻撃が、Dボックスの爆撃が、次々と僕たちの
近くで炸裂し、校舎がだんだんと破壊されてゆく。
「ジィィィィィィィィンッ!!マルチを離せぇぇぇぇぇぇっ!!!」
 セリスにーちゃんが、手に持った刀……霊波刀を思い切り振りかぶる。
「ちっ!!」
 そのまま攻撃されたら避けきれないと感じたのか、ジンにーちゃんが
振り返り、足を止める。
「仕方ねえっ!!行くぞセリスっっっっ!!」
 そしてそのまま僕たちを……放り投げた。
 不自然に感じられる浮遊感。
「わあああああああああああっ!!」
「きゃぁああああああああああああっ!!」
 がしっ。
 突然、浮遊感が止まる。
「……あれ?」
「え?え?あれ?」
「だいじょぶ?二人とも」
 僕たちを受け止めたのは、はるかねーちゃんだった。
 片手で僕たちを肩に担いで、手放しで自転車を操っている。
 ……意外に力持ちなんだなぁ……
 そんなことを思っているうちに、ジンにーちゃんのいつもの台詞。
「ロケットパァァァァァァァァァァァァァァンチ!!」
 それは、狙い違わずセリスにーちゃんの顎に命中した。
 後ろにひっくり返るジンにーちゃん。
 しかし、その次の瞬間。
「オチマス、オチマス」

 ずどがっごがぐしゃあああああああああああっ!!

「メイチュウ、メイチュウ」
 ジンにーちゃんの脳天に、Dボックスが直撃した。
 その衝撃で、ジンにーちゃんの足が、膝まで地面に埋まる。
「ぐっ……ゆ、油断した……」
「タイヒ、タイヒ」
「……あ?」
 急速に引っ張り上げられるDボックス。
 そして、ジンにーちゃんの、半分脳震盪を起こした思考能力が、全力で
視界に映ったものを理解する。
 僕にも見えた。
 全身の兵器をスタンバイし、にっこりと笑うDセリオねーちゃんの姿。
 ……結構早く復活したんだねー。
「これで、さっきの負けぶんはチャラですね?」
 ジンにーちゃんが口を開くが、声にならない。
 動けないジンにーちゃんに、Dセリオねーちゃんの攻撃が炸裂した……。



 そのあと……
 はるかねーちゃんの自転車が立木に激突し、僕たちも怪我したことは……
べつにどーということも無いと思う。
 何故かはるかねーちゃんは無傷だったしね。



 おしまい。



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T「てぃーくんのショートショートシリーズ、ついに二桁達成!!」
て「……続いてるねぇ(しみじみ)」
T「そーだねぇ。このシリーズで出たキャラってのも、結構な数に
 なってるんじゃないかな?」
て「ところで……残ったネタ、あと一つでしょ?どーすんの?」
T「ご心配なく!ショート・ショートシリーズは、てぃーくん編のあとも
 まだまだ続きます!相変わらず一日一作……かも」
て「……そっか。僕が出るのも次が最後か……」
T「そんなことないって……まぁ、レギュラーじゃなくなるけど。
  私がメインの、三人称なお話になるから」
て「……はあ……それじゃ、また次回ねー」