ずず……ずずず。 静謐な雰囲気が漂うその和室に、茶を啜る音だけが静かに響く。 学園の日常であるはずの喧騒も、そこだけは避けているようだ。 ず……。 啜る音が止まり、次いで「とん」と湯飲みが置かれる音がする。 こぽこぽこぽ……。 さらに茶が注がれる音がして、再びずずずと茶を啜る音。 そこだけは、実に平穏だった。 Lメモ・部活編3「ご一緒にいかがですか?」 その室内には、数名の男女が腰を下ろしてくつろいでいた。 静寂を壊すような言葉はない。 皆が皆、ただその空間を共有し、ふぅと息をついてはお茶を飲んでいた。 まず、茶釜の脇にちょこんと座り、全員の飲むお茶をちゃかちゃかと 点てているのは、茜色の和服に身を包んだDマルチ。 ご丁寧に、自分用の小さなオイル専用茶釜も用意してある。 その隣には、初音が薄桃色にグラデーションがかった和服に身を包み、 その隣ではゆきが慣れない羽織など着込んで、さてどうしたものかと 目の前の湯飲みと、先ほどからじっと対峙していた。 そのまた隣にはT-star-reverseがいて、袖のゆるやかな白い道服をまとい ずずずと茶を啜っていた。 さらに隣では、西山英志がスーツを着込み、堂々とした態度で、そして 慣れた手つきで茶を啜っている。隣には、当然というかなんというか楓の姿。 ちなみに楓は、濃紺の和服姿である。 この場にいるメンバーで、茶道部の部員であるのはDマルチと楓、初音、 そしてT-star-reverseだけである。 西山とゆきは、それぞれ楓と初音に誘われてこの場にいる。 正装で茶を飲むなどということにいまいち不慣れなゆきが、いまだに どうしたものかと悩んでいると、ちょんちょんと初音が彼の腕をつついた。 そして、湯飲みを持って、目で自分と同じようにするように、と合図。 左に1/4回転。そして、一度口を付け、湯飲みを口から話してから、 残りのお茶を啜る。 ゆきもそれを真似て、手こずりつつも同じようにする。 それを見て、初音はにっこりと笑うのだった。 茶道部ではなくとも茶道の心得はあるらしく、西山はそつなく茶を啜る。 楓も、持ち前のおとなしさも手伝ってか、静かに、美しく茶を啜る。 そして、同時に、茶菓子に手を出した。 思わずお互いの手を見つめ、続けてお互いの顔を見る。 そして、わずかばかり赤くなりながら、二人共に静かに微笑んだ。 当然、二人とも速攻で茶菓子を食べたことは言うまでもない。 カップル二組に挟まれ、T-star-reverseは何となく居心地が悪かった。 Dマルチは、自分用の小さな茶釜から、オイルを汲み出して、形だけでも 急須に入れ、濾してからとぽとぽと湯飲みに注ぐ。 そして、礼儀作法に則ってずずずと啜る。 湯飲みから口を離してふぅ、と一息つく。 すでに、彼女のメモリーには茶の礼儀作法が完璧に記憶されている。 が、彼女はまだ何かをその行為から求められることを確信していた。 茶の心という、茶道を確立しそして大成した形として残らないものを。 そんなわけで。 茶道部は、今日も平和である。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− T「T-star-reverseです。今回は、メインキャラは登場人物全てらしいので あえて登場させなかった、茶道部の水禍さんにおいで頂きました」 水「登場させなかった……?させられなかった、の間違いじゃ……」 T「……おっしゃるとおりです……(平伏)」 水「まあ、私が茶道部だって知ってただけまだいいけど……」 T「設定が見つからなかったんで……Lメモ漁る根気もなく……」 水「それはそれとして……次はどちらへ行かれるのですか?」 T「バイト先の一つ、来栖川警備保障の予定です」 水「そうですか。頑張ってくださいね」 T「まぁ、てぃーとの約束もありますしね」 水「それではみなさん、また次回お楽しみに〜」 T「ああ!しまった!油断してたぁっ!!」