Lメモ・部活編4「いつもあなたの側に」 投稿者:T-star-reverse
 Dマルチが日々お茶を啜り、
 Dガーネットが毎日のように丁寧に掃除をし、
 Dセリオがうっとりと武器に見惚れ、
 Dボックスがしばしば置いてあるその和室。

 その部屋の中で、今。
「えーと『枯れ木も山のにぎわい』!」
「じゃ、『いやよいやよもすきのうち』」
「うーん……『寵愛昂じて尼になす』!」
 たくさんのことわざが、部屋の中に飛び交っていた。


Lメモ・部活編4「いつもあなたの側に」


「笛音ぇ……」
「木風ちゃん……」
 その部屋の外。ちょうど中から死角になる部分に、二人の男性がいた。
 一人はOLH。
 一人は榊宗一。
 両者共に、来栖川警備保障のアルバイトである。
 二人は、じぃぃっと部屋の中の様子を窺っている。
「……いつまでそうやっているんですか?」
 そんな二人に後ろから声を掛けたのは、アルバイトの一人、ティーこと
T-star-reverseである。ちなみに、珍しく傀儡ではなく本体だ。
 ティーの方を振り向きもせず、部屋の中に届かないくらいの声で
二人が答える。
「笛音が心配だ」
「木風ちゃんが心配だ」
 ほぼ同時に二人ともにそう言う。
 ティーは、ふぅとため息をつくと、普段は彼の傀儡が代理をつとめている
校内パトロールの準備に取りかかった。

「『好きこそ物の上手なれ』!」
「えーと……『れんあいにおうどうなし』ってあったっけ?」
「し……『試案の案の字が百貫する』」
 部屋の中ではことわざしりとりがまだ続いていた。
 上から順に、てぃーくん、笛音、木神木風のちびっ子3人である。
 それぞれ保護者が仕事中、ここで遊んでいるのだ。
 ……まあ、普段からあちこちで遊んでいるのも一人いるが。

「る……うーん……『類は友を呼ぶ』」
「『ぶ』は『ふ』でもいいよね」
「そうだね。難しいもんね」
「いいの?それじゃ……『ふーふげんかはいぬもくわない』」
「い……『命あってのものだね』!」
 だんだん白熱してくることわざしりとり。
 それを見ているOLHと榊にも、自然と力が入ってくる。
「がんばれ、笛音っ!!」
「ファイト、木風ちゃん!!」

 だが、どんな戦いにも終止符は打たれる。
 その勝負も、幕は唐突に引かれた。
「『寝耳に水』!」
 てぃーくんがそう言ったすぐ後。
 笛音がこう言ったのだ。
「はやいよぉ……『すきこそもののじょうずなれ』!」
「あれ?」
 笛音の言葉に、思わず首を傾げる木風。
「それ、てぃーくんが言ったんじゃ……」
「うん。言った言った」
「え?あれ?そうだっけ?」
 おろおろする笛音。
 が、実際に一度使われているのだから仕方がない。
 ぱちぱちと手を叩きつつ、木風が突然こう言いだした。
「じゃあ、罰ゲームね!……笛音ちゃん、ふく一枚脱いでー!」
「えーっ?ぬぐのぉっ?」
 それを聞き、ぶっ、と吹き出すOLHと榊。
 てぃーくんが、特に気にせず木風に聞く。
「ねえ木風ちゃん、それも宗一にーちゃんから教わったの?」
「うん……え?なにか、変なの?」
 ちょこんと首を傾げる木風。
「うーん……しょうがないよね、まけちゃったもん」
 とりあえず納得して服を脱ごうとする笛音。
 ……当然、OLHが慌てて止めに入ったのは言うまでもない。



 来栖川警備保障の仕事は、とりあえずパトロールに尽きる。
 事前に危機を察知し、校舎への損害を未然に防ぐこと。
 それが、さしあたっての彼らの仕事である。
「……にしても、なんだってあんな事教え込むんですか?」
「教え込んだ訳じゃなくて……それを言うならOLHさんだって、
笛音ちゃんに妙な漫画を読ませてたようじゃないですか……」
「あ、あれは笛音が勝手に……」
 と、パトロールの道中に、なんだかんだと口論をする二人。
 それはあえて無視し、ただ一人真面目にパトロールに専念するティー。
「あ、松原さん」
「あ、ティーせんぱい。お仕事ですか?」
 たまたま見かけた松原葵に近付いて、世間話をするティー。
 ……あまり真面目にやっているわけでもないらしい。

 とりあえず、騒動というものはそんなときに限ってよく起きるものである。

 そしてそれは、足早にこちらに近付いてきた……


 どどどどどどどどどどどど……


 その地響きは、学園に転校してきたばかりの者でない限りは、誰でも即座に
危機を察知できる足音であった。
 それは、すなわち……
「楓ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
 学園名物の一つ、西山英志の暴走である。

 その瞳はただ楓の姿だけを追い続け、
 その口はただ楓の名だけを呼び続け、
 その足はただ楓の後だけを走り続け、
 その腕はただ楓の体だけを探し続け、
 その耳はただ楓の声だけを聞き続け、
 その鼻はただ楓の香だけを求め続け、

 そして、そこにあるものは、ただ、楓への愛のみ。
 立ちふさがるものは全て排除し、叩き、踏み、粉砕し突き進む。
 楓を見つけるまで、彼の暴走が止まることはないのだ。
 彼が暴走すると、大抵の場合校舎に被害が出る。
「う……っ。西山さんの暴走ですか。……柏木楓さんの現在地は?」
「中央校舎屋上……ま。真正面!?」
 OLHの驚愕の声とともに、西山が屋上の楓の姿を見つけた。
 そして、その方向にまっすぐ突進する……

「ああっ……このままじゃ、正面玄関ごと中央校舎が破壊される!!」
「迷っている時間はない!力ずくでいくっ!!」
 OLHが構える。
 さして、叫んだ。
「ダーク・フレアッ!!」
 瞬間、黒い炎がOLHからほとばしり、西山の全身にまとわりつく!
 が、しかし、一瞬にしてその炎はかき消えてしまう。
「嘘でしょう!?……いくら物理的なダメージを重視したとはいえ……」
 呆然とするOLH。
「楓ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
 さらに西山は走る。次に動いたのはティーだった。
「禁足則不能走(足を禁ずればすなわち走ることあたわず)!!」
 西山の足を目がけ、禁呪を唱える!
 瞬間、西山の足は歩みの速度を落とし、走ることができなくなった。
「ティーさん、すごいですよ!」
「やったのか?」
「……たぶん……えっ!?」
 が、その瞬間。
「楓ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
 西山が逆立ちをし、腕で走り出したのだ。
 スピードは、足の時と大差ない。
 そんな馬鹿な、と硬直するアルバイト3人。
 そして、西山はそのまま校舎に激突した。



 いつもと言えばいつもの如く。
 校舎は、無惨に半壊した。



「――で、なにか言うことはありますか?」

 Dマルチが日々お茶を啜り、
 Dガーネットが毎日のように丁寧に掃除をし、
 Dセリオがうっとりと武器に見惚れ、
 Dボックスがしばしば置いてあるその和室。

 その部屋の中で今、三人の生徒が正座させられていた。
 無論、校舎半壊を止められなかった警備保障アルバイトの三人である。
「――言うことがないのなら、あとは処罰だけです」
 す……と無表情になるDセリオ。
 それを見て、まともに慌てる三人。
「こ、ここでそんなの使ったら、部屋が傷むんじゃ?」
「――全て防護加工してあります。傷一つつきません」
「あ、ふ、笛音とティーナの面倒見てあげないと……」
「――Dマルチさんに頼んであります」
「や、やっぱり、お咎めなしというのは……」
「――ダメです☆」
 一瞬、にっこりとどこかで見たような笑みを浮かべて……
 その瞬間、部屋の中は疑似太陽と化した。



 一方そのころ……
「……熱いじゃないですか……」
「どうしたんですか?ティーせんぱい」
 ぽつり、と独り言を漏らしたティーに、缶ジュースを飲みつつ葵が尋ねた。
「あ、いや、なんでもないです大丈夫です」
 ぱたぱたと手を振りつつ、笑顔を見せるティー。
 その内心は、かなりほっとしていた。
「……嫌な予感がしたんで、校舎半壊のどさくさにまぎれてこっそり
傀儡と入れ替わっていて正解でしたねぇ……」
「せんぱい?」
「ああ、なんでもないですよ。……それじゃ、練習に行きましょうか」
「はいっ!!」

 そう言って、幸せな時を過ごすティー。
 あっさりそれが露呈して、残る二人に粛正される運命を、彼は知らない。



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て「てぃーくんでーす!」
笛「ふえねでーす!」
木「木風でーす!」
て・笛・木「さんにんそろって、ちびっこトリオ・パート2でーす!」
て「と、いうわけで、今回はティーもOLHにーちゃんも宗一にーちゃんも
 ダウンしてるらしいから、僕たちがあとがきを担当しまーす!!」
笛「おにーちゃん、みてるー?」
木「よろしくお願いします(ぺこっ)」
て「えーと、ティーの伝言メモによると……『約束通り出したぞ』……あ、
 これは僕宛か。もう一枚は……『ことわざしりとりが懐かしかった』」
笛「わたしがまけちゃったの」
木「でも、ほんとに懐かしいよね」
て「まだ続いてる……『てぃーくん、笛音、木風の三人をチームで出すのも
 考えてはいたけど、過保護な二人のことだから無理だろうと思った。
 だから今回、警備保障の回は千裁一遇のチャンスだった』……だって」
笛「お兄ちゃん、ティーナちゃんよりわたしのほうがたいせつなんだよ」
木「それがきっと宗一さんの愛ですから……(ぽっ)」
て「……あ、もう一枚ある。『OLHさんへ。よろしく頼む』?」
笛「お兄ちゃんになにをたのむの?」
木「書いてないね」
て「さあ……それじゃ、そろそろ締めだよっ!せーの!」
て・笛・木「次回も、お楽しみにっ!」