Lメモ・日常の切れ端:1「電波・とどいていますか」 投稿者:T-star-reverse
 Leaf学園の朝は早い。
「ふぁ……」
 今朝も仮眠館の入り口では朝靄の中、短パンにタンクトップというじつに
健康的な薄着をしたティリアが欠伸をしながら体操をしていた。
 そこに、二人の人物がものすごいスピードで並んで走ってくる。
「おはようございまーす! どうぞ、新聞です!」
「今朝も気持ちがいいわね! はい、牛乳!」
 新聞配達の理緒と牛乳配達のルミラがそれぞれの仕事を果たすべく、
ティリアに、刷り上がったばかりの新聞と今は珍しいビン牛乳を手渡す。
「はい、確かに。ご苦労さまー」
 ティリアがそう言ってぺこりと礼をすると、二人は軽く礼を返したあとに
再び猛スピードであっと言う間に走り去ってしまった。
 それを見送ると、ティリアは片手に新聞を持ったまま器用にビンのフタを
開け、腰に手を当ててごくごくと飲み始めた。
「……ぷはぁっ!」
 一息でビンを空にして、腕で口元を拭う。
 空きビンを牛乳受けに戻し(昨日のはルミラがきっちり持っていった)、
さて何かないかと新聞の一面を見ながら仮眠館の中に戻っていくティリア。

 ……でも、冬場にその服装は風邪ひくぞ。


Lメモ・日常の切れ端:1「電波・とどいていますか」


 少しばかり日が昇ってくる頃になると、ぽつぽつと登校途中の生徒の姿が
そこかしこに見られるようになる。
 そして遅刻寸前、という時間になってくるともう、その顔ぶれは毎朝毎朝
同じメンツでなおかつ同じタイミングで見られたりするのであった。
「ダッシュよダッシュ! だぁぁぁぁぁぁぁっしゅ!!」
「くそぉぉぉ、てめーだけにゃ負けねぇぇぇぇぇっ!!」
 遅刻常習犯の志保と、ビデオの予約録画に手間取って、結果的にあかりに
置いてけぼりを喰らった浩之が、壮絶なデッドヒートを繰り広げていた。
「遅刻すんのはあんただけで充分よッ!!」
「あかりがいなくても俺は遅刻しねぇ!!」
 その速度はともかく、二人が生み出すその迫力はまるで周囲の時間を
止めてしまうかの如く彼らの周囲に展開されていた。
 彼らの上空を飛んでいた鳥は路上に落下し、ジャンボジェットは乱気流に
巻き込まれた如く揺れ、そしてアポロ13が軌道から外れたりしていた。
 そして、浩之が若干前に出た瞬間!

 ……ごがっ!!

「って、何でだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 彼らを追い抜こうとした銀色の疾風が、浩之を遥か上空に跳ね飛ばした。
 そしてそのまま走り去る。
「あーららら……」
 思わず立ち止まり、浩之の飛ばされた方向を見つめる志保。
 そして、ぽつりと呟いた。
「ヒロってば、ついてないわねぇ」

 が、そこで立ち止まっていたせいで志保は遅刻してしまう。
 浩之は教室に突き刺さっていたので遅刻は免れていた。良かったな浩之。

「あれ……?」
 職員会議に遅れて怒られていた最中のはるか先生が、ふと気づく。
「誰かと、ぶつかったかな?」
「河島先生! 聞いているんですか!?」
「あ、はい、千鶴先生」
 ……だが、気づいても、すぐ忘れてしまっていた。


 授業はわりとしっかり行われていたりする。
「いいか? 基本的にこの学者の考え方って言うのは……」
 例えば緒方英二先生の「一年・倫理」の授業。
 普段から真面目に授業を受けている葵や初音、たけるはともかくとして、
あまり真面目とは言えないRuneやひなたがいたり、生徒じゃないはずの
メイフィアなどもこの授業にいたりする。
 元々そう言うことに対してアバウトなこの学園のこと、誰がいてもいいし
誰がいなくてもさほど問題にはならない。たまに気が向いて校内巡回をする
千鶴さんに見つからない限りはサボリも許容範囲である。
 ためしに裏山に目を向けると、秋山登と電芹が秘密特訓をしているし、
屋上に目を向けると、はるか先生が気持ちよさそうに寝ていたりする。

 ……ちなみにはるか先生、グラウンドで担当の授業があるんだけど?


 昼ともなれば購買部は激戦となる。
 目当てのパンを購入するべく、学園各地から狩人達が集まるのだ。
「Great!! 今日は大漁ネ! 『濡れ手にアワ』ヨ!!」
 ……たまに別の目的を持った狩人(大体レミィ)が紛れ込むようだ。
 まあその原因は、物陰で様子を窺っている包帯美人だったりするのだが。
「……暗躍生徒会の計画は本日も好調よね」
「好調なのは良いからボクには昼に食べるケーキを焼かせてちょうだいよ」
「……あとにしなさい、あとに」
 ヒト狩りが巻き起こす騒動を後目にそんな会話をしていたりするのだが、
やはり悪の栄えた試しはないらしい。
「あなたが作ってきた化学兵器のせいで、出遅れたでしょうがぁぁ!!」
「化学兵器じゃありませんっ! お弁当ですぅぅぅっ!!」
「でもこの弁当箱に詰まっている物は明らかに食用には適しません!!」
 ひなたと美加香と、ついでにとーるの三人が駆け込んできて、背後から
二人をはじき飛ばしたのである。
「な、何でこうなるのよぉぉぉぉぉっ!!」
「もう、嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 結果。犠牲者二人増加。

「でも、結局は成功なんですよね」
「……Runeくん、君はどこに話しているのかな?」
 でもやっぱりRuneと拓也は無傷であった。


 そして放課後。
 人によってはこの時間にこそ学園生活のすべてがあるという。
 ざっと上空から眺めると、Dマルチがグラウンドの整備指揮をしていたり
陸上部が走り高跳びをしていたり生物部が地下で怪しげな実験を繰り広げて
いたりダンジョンで宝探しをしているトレジャーハンターがいたりする。
『……上からながめて、地下のことまでわかるの?』
 そう言うツッコミを入れてはいけない。
『……電波、届いてるんだね』
 ま、新しいチューナーを買ったから聞き取りはできるし……じゃなくて、
瑠璃子さんが屋上で電波の受発信をしていたりもするようである。
 とりあえず、懐かしいところでは旧校舎で謎の手紙を受け取った人達が
破壊活動を繰り広げていたのもこの時間であった。

 それはそれとして。

「信さん、今日は何かお仕事は有るんですか?」
「あ、いいや、今日はもうあがりだけど」
「よかった……それじゃ、あの……ご一緒に帰りませんか?」
「うん、それじゃ行こうか」
「はいっ!」
 主にらぶらぶモードが充分に発揮されるのもこの時間である。
 そして、それに付随しての争乱が起こるのもこの時間である。
 たとえば、今校門のところで殴り合ってるハイドラントと悠朔とか、
裏門のところで睨み合っている西山英志とXY−MENとJJなどである。
 それでもやはり生徒が最も楽しみにしているこの時間。
 学校帰りにゲーセンに寄り、決戦に備えDDRをしている志保、
(ビートマニア勝負は浩之にボロ負けしたらしい)遅くまで学校に残って
校舎の掃除をしているマルチをはじめとした清掃委員会などもいる。

 ……そんなこんなで日も暮れて。

 夜はもう校舎に残ってるのはほんの一握りの人物だけ。
 毎度のこと、予算のやりくりに頭を悩ませる足立教頭、完全な趣味で
美術室に入り浸る英二、まあ、先生が多いのはご愛敬。
 その時間をもさらに過ぎると、校舎は誰も残っていない。
 定期的にDシリーズが見回りをしているが、この時間に誰かが校舎に
いたという話は、何かイベントがない限りは聞いたこともない。
 ……ふとボードゲーム部を覗けば、結界で気配を消しつつ、ルミラ達が
徹マンしてたりするが、まあ迷惑をかけていないからいいと思う。


 そして次の朝、またティリアが表に出る頃、新聞と牛乳が配達される。
 この辺りは、たぶんいつまでも変わらないと思う。


『だからティリアちゃんは風邪を引かないんだね』
 ……電波でのまとめ、どうもありがとう。



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 ども。T-star-reverseでした。
 日常の切れ端というか……これでは日常の糸ですね(笑)。
 まあたぶんL学の日々はこんな感じの繰り返しなんだと思います。
 でもティリアが風邪を引かないかどうかは知りません(笑)。
 一応シリーズにはしますが、そんなに続けては書かないでしょう。
 小ネタを思いついたときに書くシリーズですかね。
 ちなみに今回思いついたのは冒頭のティリアの服装部分だったり(笑)。

 では、次回までまたですっ!