「平舟盛」転校Lメモ「魚人戦隊ギョレンジャー第一話:がくえんのへいわをまもれ、鯛ナレッド登場!!の巻」(前編) 投稿者:平舟盛

「ええと、あなたが平舟盛さん?」
試立リーフ学園校長、柏木千鶴は目の前の生徒に話し掛けた。健康に日焼けした肌、
精悍な顔立ち。一見した所なかなか爽やかな好青年である。
「ハイ!いかにもそうでありますタイ、司令!」
直立不動で敬礼。
「(…司令?)確かにあなたの転校の通知は受け取っています。」
手元の資料に目を通しながら
「でもそれはもう、10ヶ月も前の事ですよ?これまで一体どこで何をしていたのですか?」
「ハッ、話せば長い事ながら…」
と前置きしてから彼は話し出した。
東南某国から泳いで渡ってくる途中、漁船の網に引っ掛かった事。
妙な施設に送られて閉じ込められ、研究材料にされかかったこと。
脳改造を受けそうになった時に隙を見て脱出したこと。
迫り来る追手を相手に熾烈な戦いを繰り広げ、友の死を乗り越えて
愛の力でついに悪の総統を討ち果たした事。
だがそれは新たなる戦いの序章でしかなかった事。
「…もう結構です」
放っておけばまだまだ続きそうな舟盛のおしゃべりを千鶴はストップさせた。
「そうですか?ばってん、これからが本番…いえ、分かりました(汗)」
一見優しそうな目の前の笑顔に本能的に何かを感じ取ったのか、素直に口をつぐむ。
「分かりました、あなたの入学を認めましょう。改めて、試立リーフ学園にようこそ。
当校は、あなたを歓迎します。」
うら若き校長はそういってにっこり微笑んだ。
「ハッ!光栄であります!!」
「ここの生徒は皆、ちょっと個性的な子ばかりなんだけどあなたなら大丈夫、すぐに
なじめると思うわ。課外活動も盛んですし…これから学園生活を始めるに当たって何か
やりたいことは決めているのかしら?」
「ハイ!自分は正義の味方をやりたいと思っとりマス!」
「正義の…味方?」
少々普通でない答(この学園に普通などという概念があるのかはすこぶる疑問だが)を
聞いてどういう事なのかと千鶴が聞き返そうとしたとき…
「むうっ?!」
常人には聞き取れないだろうほんの微かな音を舟盛の耳は捕らえていた。それは…
「女の子の悲鳴?!…司令、急用ができたようなので、これにて失礼します!お話はまた後日」
そう言うや否や、何を考えているのか校長室の窓を開け、…おもむろにそこから飛び降りる!!
「ま、待ちなさい!」
しばらくあっけに取られていた千鶴だったが、眼前の飛び降り自殺を食い止めるべく慌てて舟盛
の身体を手を伸ばして捕まえようとする。
届いた!!確かな手応えを感じた千鶴の確信は、だが一瞬だった。不自然に軽い感触に掴んだ
腕の先を覗き込んだ千鶴の目に映ったのは…ぶらーんぶらーんと揺れる男物制服のズボンだった。

「きゃあっ!」
試立リーフ学園1年生、松原葵は思わず悲鳴を上げた。突然誰かの指が背筋をなぞったのである。
「だ、誰ですか?!」
慌てて振り向き、そこに知人の顔を見つけて安堵の溜め息を漏らす。
「なあんだ、YOSSY先輩じゃないですか…もう、脅かさないで下さい!」
「いや、悪い悪い」
ナンパな笑みを浮かべながらヘラヘラと躱す「YOSSY先輩」。「格闘部」の仲間である。
「けどさ、葵ちゃんも格闘家にしちゃちょ〜〜〜っとスキが多いんじゃないか?」
軽口をたたくYOSSYに葵が何か言い返そうとした時…

「とおおおおおおおぅぅ!!!」

反射的に上を見上げる格闘部の二人。上から何かが振ってくる!!
ソレは地球の重力に従って一直線に加速し…

どごぉぉん!!

…明後日の位置に墜落した。
「……………………」
「……………………」
夏もまだ盛りだというのに、ひゅぅぅ…と涼しい風が吹いた。
「あの…これ、何なんでしょう?」
目の前の地面に生えているモノを指差して葵が尋ね、
「…人間の下半身、みたいに見えるけどな」
とYOSSYが答えた。そう、確かにそう見える。だが、問題はそこではない。
なぜいきなり目の前に人間の下半身が生えているのか、という事でもない。
「なんで赤フン一丁なんだこいつは……」
千鶴先生に聞いてください。
思いっきり頭から墜落したにも関わらず、その下半身は生きていた。
じたばたと足掻いて必死で地面から抜け出そうとしている。
「行こう、関わり合いにならない方が良い」
実に尤もなセリフを吐き、葵を連れて立ち去ろうとするYOSSYFLAME。
「あの…でも…あのままじゃ死んじゃうんじゃないかと思うんですけど」
控えめに反論する葵。確かに、そろそろ足掻きが弱まっている。呼吸ができない
せいに違いない。ついに足が地面に落ち、ぴくっ…ぴくっとむき出しの尻が痙攣する
だけになった(ああ見苦しい)。
「…しょうがねえな」
舌打ちを一つくれると、YOSSYFLAMEは葵と共に片方ずつ足を持った。
「「いっせーの!」」
掛け声と共に二人がかりで引っ張ると、ぼこっという音と共に、上半身が地面から
引っこ抜かれた。(後編へ)