「放課後の崇乃・4」部活編その弐 投稿者:八塚崇乃



  放課後、図書館。

「んしょ、んしょ、んしょ……」
「鈴花、落書きしない」
「八塚君、口よりまず手を動かしなさい」
「……はい」
――カキカキカキカキ……
――サッ、シャッ、サッ、サッ、サッ、シャッ、シャッ……
「なんで俺、こんな事やってるんだろ……」
「ぶつぶつ言ってる暇があるのなら、もっと増やしてあげようか?」
「遠慮しておく……(泣)」
 放課後の図書館。八塚崇乃は小出由美子先生の監視の元、補習――もとい彼女の仕事の
手伝いをしていた。崇乃のMHMである鈴花はというと、始めは図書館の本を読んでいた
のだが、崇乃に注意されたにもかかわらず、本に落書きをしている。
 仕事の手を休めず、愚痴る崇乃。
「補習の代わりに初等部のテストの採点手伝わせるなんて……せこいよ由美子さん――」
「そうでし。せこいでし」
「ねぇ鈴花、おまえもそう思うよね」
「はいでし!」
「あのねぇあなたたち……八塚くん。こ、い、で、せ、ん、せ、い、で、しょ!(怒)」
 思わず声を大にする――やはり手は止めず――由美子。図書館の静寂がそれによって破
られる。
 図書館いた幾人かの生徒達が一斉に――ではないが――彼ら3人の方を見る。
 真っ赤になって俯いてしまう由美子。
 周りの視線を気にせず、再び落書きを始める鈴花。
 視線を背中に、左右に、正面に感じ、小声で由美子に話しかける崇乃。
「図書館では静かに、ね」
「っ――だいたいあなたが私の授業をサボったりするからこういう事になるんでしょう?
自業自得じゃない」
「じゃあ由美子さんはわざわざ俺のために採点しなきゃいけないテストを溜めておいてく
れたんですか?」
「あっ」
 図星をつかれ、言葉が止まる由美子。追い討ちのように――
「自業自得」
 呟く崇乃。さらに――
「本来、先生であるあなたがやらなきゃいけない仕事を、補習の代わりという名目で生徒
である俺に手伝わせるなんて……あ〜あ、俺こんな先生やだなぁ〜」
 止めを刺す。
「………………」
「………………」
「んしょ、んしょ、んしょ……」
――カキカキカキカキ……
――サッ、シャッ、サッ、サッ、サッ、シャッ、シャッ……
 沈黙する崇乃と由美子。辺りには鈴花の声と彼女の筆使いの音、彼らの答案用紙の添削
音しか聞こえない。
 そして――
――ポタッ……
 手を止める由美子。小さく肩を震わせて、泣き出し始めた。
「ちょ、ちょっとゆ、ゆみ、由美子さん?」
「だっ、だって、しょ、しょうがないじゃない――お、大人には、おと、大人のつご、都
合が、あ、あるんだし――」
「由美子しゃんが泣いてるでし……崇乃しゃん駄目じゃないでしか」
 慌てる崇乃を尻目に、ドモりながら喋る由美子と、追い討ちのように非難をする鈴花。
「由美子さん、ここ、図書か――」
「初等部の、こ、こど、子供達の、世話だって、たい、大変だし、あな、あなたみたいな
も、問題児まで、い、いるん、だし――」
「いけないでしよ、女の人を泣かせたりしちゃ」
「鈴花、黙って。ちょ、ゆ――」
「わ、私だって、私だって――」
 机に突っ伏し、本格的に泣き出した由美子。
 こんな風に女の人に泣かれたのは初めてなので、混乱する崇乃。
 この状況を面白そうに見ている鈴花。
 「干渉せぬが吉」と思ったのか、そそくさとその場を離れる一般生徒達。
 長岡志保が「おっ、これはスクープね☆」と言いながら情報特捜部の部室へと走ってい
くというのは……まあ余談である。
(あ〜〜〜もうどーしよ〜〜〜)
 オロオロする崇乃。すでに頭を抱えて由美子と一緒に泣きたいという心情になっている。
 そんな彼に――
「心を落ちつける意味で、とりあえず紅茶はいかがですか?」
 声をかけてきた生徒が1人。いかにも人の良さそうな表情で、手にはお盆。その上には
3人分のティーカップが乗っていて、カップの中にはいれたての紅茶とオイルが入ってい
た。
「え? え?」
 突然知らない人間からこんな事を言われるのも初めてなので、さらに混乱する崇乃。
「さあどうぞ」
 少年に言われて崇乃は気づく。彼の手には少年が用意していたティーカップがすでに握
られていた。もちろんまだ泣いている由美子と、崇乃をはやしたてていた鈴花の手の中に
もそれがある。
(え? 一体いつ? え? え?)
 にこやかに笑いかけてくる少年。そんな表情につられてか、崇乃は飲――もうとしたの
だがふいに、彼自身に対しての危険を感知する事のできる左目の『浄眼』から涙が零れた。
いつもの癖というか、ほとんど条件反射でその場にしゃがみ込む崇乃。けれど――
「あ、あれ?」
「? どうしました?」
 いつもならあるはずの爆音や破砕音、衝撃音が全然来ない。
(え? あれ? なんで? え? え? え?)
 頭の中を全て?で埋め尽くしてしまう崇乃。こんな状況になった経験がないためか、完
全にパニック状態であった。
 そんな崇乃を不思議そうな目で眺める少年。口を開く。
「紅茶、冷めますよ?」
「え? あ……はい、い、いただきます」
 少年に促がされるまま、紅茶を口に運ぶ崇乃。まだ涙が乾いていない左目で由美子の方
を見ながら――
(あれ? 泣き疲れたのかな? 寝てる……)
 一口、二口と飲んだ……。


 危険を感知できる能力があっても、どんな類の危険かは知ることができない。
 結局のところ、勘で危険を乗り越えるしかないのだ。



            Lメモ(4)「仁義なき部活の咆哮」



  1日後……昼休み、屋上。

《昨日は疲れたよ。図書館館長のまさた……って人? その人にシビレ薬入りの紅茶を飲
まされて……小出先生は睡眠薬だったけど。あ、鈴花にはなんにもなかったんだけど、念
のために工作部の保科さんに頼んで今エラーチェックしてもらってる。》
「大変だったんだね。けどそのスケッチブックとボールペンはなんなの八塚くん?」
《うん……。なんか……薬の後遺症? と思うけど……医者が言うには一時的なショック
で声帯が使えないって。》
「そうなんだ」
《あ、ところで瑠璃子ちゃん。その「某若松の餡蜜」はおいしい?》
「おいしいよ」
 日常的な会話を一方は言葉で、もう一方は筆記で。ハタから見ればなんとも奇妙な光景
であっただろう。ちなみに、筆記で会話しているのはこのLメモの主役(?)である八塚
崇乃で、言葉で会話しているのはシスコンで変態で腐れ外道の元生徒会長月島拓也の妹、
月島瑠璃子である。〔月島拓也本人に聞かれていたら殺されそうだな(笑)〕
 と、まぁこんな調子で崇乃は瑠璃子と一緒にお茶を飲みながら、昼休み中のほほんのほ
ほんとしていた。


  6時限目、図書館。

「あれ? Dガーネットさん、どうしたんですか?」
「コンニチハ、マサタサン」
 珍しい事だった。
 片やLeaf図書館の館長。片や来栖川警備保障正社員HMX−07D、Dガーネット。
意外と言っていいほどの取り合わせであった。
「Dマルチサントティーナサント木風サント笛音サントティークンニ頼マレテココデ借リ
タ本ヲ返シニ来マシタ」
 抑揚の無い声で喋るDガーネット。
「そうですか。で、本はどこにありますか?」
 そんな彼女に対し、いつものようににこやかな笑みを浮かべて質問するまさた。Dガー
ネットはというと――、
――キョロキョロ……
 何かを探しているように眼を、首を動かしていた。
 その様子を30秒ほど観察するまさた。声をかける。
「もしかして……」
「──スミマセン、忘レテシマイマシタ」
 と言いつつ帰ろうとするDガーネット。だが、
「ちょっと待った、Dガーネットさん」
 引き止めるまさた。足を止め、振り替えるDガーネット。
「ナンデショウ」
「おいしいオイルがあるんですが……どうですか?」


  放課後、校庭〜柔剣道場。

《珍しいね。おまえが部活に来るなんて。》
「そうですか? けど一応私、剣道部員ですから」
 会話(?)をしながら校庭を歩く2人。
 一方はやはり八塚崇乃で、もう一方は――、
《いつもは傀儡に部活まかせてるのに……ホンット、珍しい……。》
「はは……まぁ八塚くんがどれだけ上達したかを見てみるっていうのもありますが」
《本音はそれか、ティー。おまえと初めて会ってから、まだ10日もたってないのにそんな
短期間で上手くなるわけないだろ。はぁ。》
 もう一方――黒い帽子に近視用メガネ、装丁のまったく無い本を持っている――の少年
の名はT-star-reverse。学園に在籍しているSS使いの1人である。
《剣道部員って言えば……。》
「? なにか?」
 ……呟きの言葉をいちいち書くな崇乃。
《よっしーは今日、来るのか?》
「よっしーくんですか? 彼は今日は格闘部の方じゃないですか?」
《ふ〜ん。》
 ……だから書くな! 呟きなんか……。
 そうこうしている内に、崇乃とTは柔剣道場の前に着いた。
「さてと」
 少しだけ開きかけていた道場の戸に手を掛けるT。しかし、いきなり崇乃がその手を掴
み、戸を開けようとするのを止める。
「………………」
「………………」
 沈黙。互いに顔を見合わせる。
 今のTの顔。少し驚いた表情だ。
 今の崇乃の顔。左目の『浄眼』から涙が零れていた。
 Tも噂では聞いている。八塚崇乃の左目から涙が零れる時、それは彼に対してなにかし
らの危険が接近している時、と言う事を。
(けれど実際に見るのは初めてですけどね)
「どうしました?」
 当然のように質問するT。崇乃はTの手を放し、スケッチブックに自分が伝えようとす
る言葉を書く。
《あのさ。やっぱり俺、帰りたいんだけど……。》
 スケッチブックを見、続いて崇乃の顔を見るT。そして――
(ああ)
 心の中で呟いた。そのまま思った言葉を口に出す。
「Dガーネットさんが来てるんですね」
《いや、多分ち》
「なに言ってるんですか八塚くん。彼女が来てるからって帰ろうとするのはいけないと思
いますよ」
《? なに勘違いして》
「1回彼女と試合してボロボロにされたからって、彼女を避けてちゃあ強くなれませんよ」
《いや、別に避けちゃ》
 そう。崇乃は剣道部に入部した次の日、部長や先輩、同輩、後輩から基礎の練習を教わ
っていた最中に出稽古に来たDガーネットと鉢合わせし、彼女との試合の中『浄眼』で決
定打を何度も避けたので彼女がバーサークし、追いかけまわされたと言う過去があった。
 まぁそのへんは置いといて……。
《道場の中には多分手》
 スケッチブックにセリフを書いている崇乃を無視し、Tは横引きの戸を開ける。
――カラカラカラカラ……
「こんにちは、Dガーネットさん」
《負いの獣のようなのが》

――カラカラカラカラ……ぴしゃっ!!
 勢いよく戸を閉めるT。戸を閉めた手は少し震えていて、顔は驚きの表情を隠せないで
いる。
(なんか、とてつもなく見たくないものを見たって顔だよな)
 Tとは反対に、冷静な崇乃。おそらく、自分の運命を受け入れるつもりなのだろう。
(だから俺、帰ろうって言ったんだ……)
 涙が、零れる。
 いまだ戸の近くにいるTを、崇乃は彼の肩を掴み自分の方に引き寄せる。その瞬間――
――スパーン
 閃光とともに、戸が斬れる。斬れた戸の落ち方を見てそれが横薙ぎの一閃だという事を、
崇乃の頭では理解するのに数秒かかった。
 開ける時は重いとは思わないのだが、落ちた瞬間に重そうな音を立て、モウモウと土煙
を巻き上げる柔剣道場の戸。
 そしてその土煙の中から出てきたのは……、
「Dガーネットさん……」
(やっぱり、手負いの獣か……)
 右手に超硬質ブレードを携え、目を赤く光らせ、おもいっきりバーサークした無知なる
超戦士、Dガーネットだった。
《で、どうしよーか。》
「え……と」
 立ち尽くすDガーネットから距離を取り、とりあえず相談する2人。
《あ、ちなみに道場の中、誰かいたか? 俺、まだ中見てなかったんだけど。》
「彼女だけでしたけど……」
《そっか。怪我人はいないわけだ……。じゃ、逃げるか?》
「こんな時に冗談は言わないでください。止めないと……」
《ティー1人で?》
「え……?」
《俺、喧嘩は弱いけど一応音声魔術士。》
「……知ってます」
《俺、今、喋れない。》
「あ」
《もし、俺がDガーネットさんの剣で斬られそうになった時、助けてくれるか?》
「………………」
《俺、喋れる状態になっても、バーサークしてる彼女を1人で倒す自信、無い。》
「………………」
《それ以前に「倒す」じゃなくて「止める」なんて俺はできない》
「………………」
「けど……」
(?)
「彼女が逃がしてくれると思いますか?」
「………………」
「私が時間を稼ぎますから、八塚くんは誰か応援を呼んできてくれませんか?」
「………………」
――カキカキ……
「さ、早く」
――チョイ、チョイ
「? どうしました?」
《位置的に見て一番近い格闘部道場まで全力で走ってよっしーを呼んでまたここに帰って
くるまでの時間、10分。職員室も同じくらい時間がかかる。来栖川警備保障に関しては俺
は場所を知らない》
「………………」
――カキカキ……
《それに》
「っ! 構えてください。来ますよ!」
 Tの声に反応し、慌てて中腰になる崇乃。
 装丁のない本を正面に構えるT。
 ゆっくりと前に進みだすDガーネット。

 1秒後、戦闘が始まった……。


  同時刻、来栖川警備保障。

「遅いですね、Dガーネットさん」
「この時間だとおそらく、柔剣道場に行っているのでは? Dマルチさんも今日は茶道部
に行ってますし……」
「イッテル、イッテル」
 平和そうだなぁ。おい。


  視点は戻り、再び柔剣道場前。

――ざっ
 踏み込むDガーネット。一気に間合いを詰め、崇乃へと襲い掛かる。
――ざっ
 『浄眼』の力で攻撃が来る事が判っていた崇乃。大きく後ろへ飛ぶ。
――スゥ
 短く息を吸い込み、叫ぶT。
「無究光照らせし十の神性。魔書を繰りて四言神諱を駆動せしめよ!」
 装丁のない本。その本の鍵穴のない鍵が、まるでパズルのピースのようにバラバラにな
り、消えて、本――ゴーレム精霊駆動法儀、マリオノール・ゴーレム――が開く。再びT
は叫ぶ、いや、唱える。
「輝ける栄光は仮面に、反響する鏡なるがゆえに!」
――みしっ
 ちょうど崇乃が先程まで立っていた地面――Dガーネットが今、立とうとしている地面
にひびが入り、
――バッ
 そこから鋼鉄のケーブルや配線が絡まってできたような大きな『手』が生える。『手』
はそのままDガーネットに掴み掛かろうとする。が、
――スパーン
 彼女はその鋼鉄の『手』をブレードでたたっ斬る。
 その間に崇乃は道場の中へと入った。
(なにやってるんですか、彼は)
 すかさずTは神性呪文を唱えようとするのだが、一瞬思いとどまる。
(彼女を『倒す』のではなく、『止める』……。これ以上『本』の力を使えば、Dガーネ
ットさんを倒しかねない。なら……)
 ポケットから、消しゴムや扇子、ボールペンなどを取り出し、足元に転がす。そして口
早に呪文を唱えると、Tが足元に転がした物が、瞬時にTと同じ姿になった。
(人海戦術だ!)

(えっと)
 なにを思ったのか、道場の中に入った崇乃。そして何かを探すかのように、キョロキョ
ロと首を動かす。
(確か……)
 更衣室の中に入り、竹刀置き場を見る崇乃。
(一昨日はこの辺にあったはず………………あった!)

 ゴミを、小石を、先程の壊れた戸を傀儡へと変化させてDガーネットと戦わせていたT
だったが、傀儡と感覚を共有しているので、いくら本人にダメージがなくても痛みは自身
にくる。さすがに打たれ強いTもブレードで斬られる感覚を何度も受けているのでそろそ
ろ限界だった。
(ったく、八塚くん……恨みますよ……)
 視線を道場の入り口に向けるT。そこに隙が生まれる。
――ざっ
 6対もの傀儡と戦っていたDガーネットが跳躍し、そのままTの目の前に着陸した。
「っ!」
 動けないT。
 彼女はブレードを腰に構え、そのままTに斬りかかろうと――
――げしっ
 したのだが、道場の入り口から走り出てきた崇乃にドロップキックを喰らい、横倒れに
転がる。
 ………………。
 呆然とするT。
 ゆっくりと立ち上がろうとするDガーネット。
 道場から持ち出した片刃の剣を構える崇乃。
 ……って。
「ちょ、ちょっと八塚くん! 逃げたんじゃ……それにその剣……」
――スッ
 喋り出すTを手で制する。そのままその手を傀儡たちの方へと向けながら彼の顔を見る
崇乃。そんな彼の意図が判ったのか、Tは傀儡たちを立ち上がったDガーネットを囲むよ
うに配置した。
(まったく、逃げたと思ったらあんなものを持ち出してくるとは……)

(ホンット、誰かが道場に剣なんて忘れててくれて、よかったなぁ……)
 ……御都合主義だな、おい。
 ……ともかく。
(素材がいいのか? 真剣のくせにいやに軽い。それにうまく重心がとれてる……これな
ら体力のない俺でも5分、いや10分は闘えそうだ)
 刃渡り70cm程の剣を片手で持ち、重さを確かめる。
(剣の腕じゃ彼女の方が数段上だけど、人数的にはこっちの方が上。後は彼女のバッテリ
ーが切れるまで持ち堪えるか、部員のみんながここに来てくれれば……なんとか勝てる!)
 刀を正眼に構える崇乃。
(それに……人生経験と実戦なら、多分俺の方が……上だ!)
――ざっ
 Dガーネットが踏み込むと同時、崇乃とTの傀儡たちも彼女に向かって走り出した……。


  10分後、柔剣道場前。

「………………」
「………………」
「生きてますか? 八塚くん」
《なんとか生きてるよ。》
 倒れている。3人とも倒れている。
 Dガーネットはバッテリーが切れ、今はもうピクリとも動いていない。
 崇乃は『浄眼』を、そして自らの身体能力をフルに使い、Dガーネットの攻撃を全てか
わし、時には剣で受け止めたためか、起き上がれないほどに体の筋肉にガタがきていた。
おそらく明日は筋肉痛で動けないだろう。
 Tは6対の傀儡を同時に動かしたため、今までにないほど疲労していた。が、彼の場合、
明日にでもなればピンピンしている事だろう。
 ともかく、
「終わりましたねぇ」
 大きなため息とともにTが言う。
 そしてその言葉がすべて言い終わらない内に、複数の足音が聞こえる。
(やっと来たか。みんな)
 もうスケッチブックにセリフを書くのもおっくうになったか、心の中で呟く崇乃。その
まま彼は意識を失う……。


 試立Leaf学園は、一部を除いて今日も平和だった。





<追記>

Dセリオ:「まさたさん。Dガーネットさんに何を飲ませましたか?」
 まさた :「ええ。図書館のジャングルに生えているやばそうな植物からチョチョーイと」
Dセリオ:「………………」
 まさた :「………………」
Dセリオ:「………………」
 まさた :「………………」
Dセリオ:「――サウザンドミサイル!」

 合掌。


                                         98/11/12
                                         99/06/14改
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≪アトガキ≫

瑠璃子「どうして私は八塚くんのコト、『八塚ちゃん』って呼んでないの?」
 崇乃 「だって、恥ずかしいじゃない(笑)」
瑠璃子「そうかなぁ」
 崇乃 「と、言うことでやっと書きあがったよ4作目!」
瑠璃子「曰く付きの作品なんだよね」
 崇乃 「そう。それで前作、鈴花にツッこまれた……」
瑠璃子「それくらいの失敗。誰にだってあるよ」
 崇乃 「ありがとう瑠璃子ちゃん。
    え〜、今回の生贄作家さんは3人です。
    まさたさんとT-star-reverseさん。
    台詞だけでしたが、へーのき=つかささん。
    勝手に登場させてしまって、どうもすみません(謝)」
瑠璃子「今回のLメモ、どういったモノを書きたかったの?」
 崇乃 「今回は……喋れない魔術士が敵を相手にどういった行動をとるか、って言うものかな?」
瑠璃子「けど、尻切れとんぼみたいな感じで終わってるよ?」
 崇乃 「………………」
瑠璃子「………………」
 崇乃 「……あう」
瑠璃子「……次はどんなの書くの?」
 崇乃 「えっと、日常編を書こうと思ってる。登場キャラはまだ未定」
瑠璃子「ふ〜ん。前のように失敗しないために、登場する人を書かないんだね」
 崇乃 「あ、瑠璃子ちゃん、そんなコトばらしちゃ――」

――ストン
 と幕が下りる。