「放課後の崇乃・6」自己紹介追想編 投稿者:八塚崇乃



 嫌になる季節……誰にだってありますよね。


「ねぇ……」
「わぁ〜〜〜! 雪でし〜〜〜!」
「………………」
「八塚くん……」
「白いでしぃ〜〜〜!」
「………………」
「……なんで?」
「ほらほら〜。崇乃しゃんマナしゃんも見てでし〜〜〜!」
「………………」
――ずずっ……
 崇乃は答えない。代わりに鼻を啜った。



             Lメモ(6)「コールドラン」



「おはよ、瑠璃子ちゃん」
「おはよーでし瑠璃子しゃん!」
「おはよう、八塚くん鈴花ちゃん」(にこっ)

「おはよ、くま先輩」
「おはよーでし和馬しゃん!」
「あ、おはよう。……いやぁ、今日はお互い辛いね」

「おはよ、びーかーさん。」
「おはよーでしびーかーしゃん!」
「おは、よ、う……ございます」

「おはよ、ティリアさん」
「おはよーでしティリアしゃん!」
「おはよ、崇乃に鈴花――って何なの? それ」

「おはよ、ティー、よっしー」
「おはよーでしティーしゃんよっしーしゃん!」
「ああ。おはようござ……え?」
「今日はいやにのんびりだ……な……」

「おはよ、由美子さん」
「おはよーでし由美子しゃん!」
「こ、い、で、せ、ん、せ、い、で……しょ……」

「おはよ、まさた君」
「おはよーでしまさたしゃん!」
「ああ、おはようございます。で、どうしたんですか? それ」

「おはよ、Dガーネットさん。見回りご苦労様」
「おはよーでしDガーネットしゃん!」
「オハヨウゴザイマスタカノサン」

「おはよ、浩之」
「おはよーでし! 浩之しゃん!」
「おう! 崇乃たち……か?」
――ずずっ……

(どう考えても……)
(異常、だよな……)
(だよ、ね……)
(なんかの冗談?)
(一体……)
――ずずっ……
 周りの思惑とは裏腹に、腕を組みながら鼻を啜り、真面目に授業を受けている崇乃。ち
なみに鈴花はマイペースにノートに落書きしているが。
「「「「「「………………」」」」」」
 その時間の担当である物理教師、柳川祐也もつい耐えかねて、疑問を口に出す。
「八塚君……」
――ピクリ
 そんな音を出しながら反応したわけはないが、一時黒板の字をノートに書き移す手を止
める崇乃。そして、視線を黒板から祐也教師へと向ける。
 唐突に、教室のざわめきが消える。
「なにか?」
「お前……なめてるのか?」
「はい?」
 殺気。
 少なくとも、その教室にいる生徒はそう感じられた。
 祐也教師は、崇乃に向けて殺気を放っている。それもとてつもないほどの殺気を。エル
クゥとしての『鬼』の力をもう少しで解放しそうになるくらいの殺気を。
「……なめているのかと聞いている」
「質問の意味がよく判りませんが?」
 飄々としながら――あるいはそうでもしないと答えられないのか――質問を質問で返す
崇乃。危険感知の『浄眼』から涙が零れていないので、もしかしたら余裕を見せているの
かもしれない。
 だが、今の祐也教師にはその態度は命取りだった。
――バンッ!!
 音と同時に、教卓が真っ二つに砕ける。その大きな音と祐也教師の形相により思わず悲
鳴を上げる生徒数人。
「た、崇乃しゃん……」
 ビビっているのは生徒だけではない。鈴花も怖がっていた。
「もう一度聞こう。なめてるのか?」「俺は――」
 声が重なる。
「「………………」」
 沈黙する両者。
――ゴクリ……
 誰かが生唾を飲み込む音が聞こえる。
「俺は、ちゃんと真面目に授業を受けていますし……」
 話し始めたのは崇乃からだった。祐也教師、黙ったままその言葉を聞いている。
「先生を馬鹿にした態度も取っていません」
――シ……ン
 永遠の静寂にも思われる一瞬。
「ならば……聞く」

「なんなんだその雪だるまみたいな格好はぁぁぁああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!?」
「寒いから」

 そう。どこからみても、雪だるまみたいな格好をしていた。
 何故か? そう。冬だからだ!
 黒いコートの下にはシャツやらセーターやらなんやらかんやら、あわせて18枚である。
 これで防寒対策はバッチリだ!(爆)
 ……『水』や『氷』を使う魔術士がそんなことでどうする。


 試立Leaf学園は、一部を除いて今日も平和だった。


                                         99/02/03
                                         99/06/14改
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≪アトガキ≫

祐也「構想から執筆まで1時間……なめてるのか?」
崇乃「いんや? べっつにー!」
祐也「狩ってやろうか?」
崇乃「冗談を真に受けるな。え〜、6作目です」
祐也「フン! これがお前の弱点と言うわけか?」
崇乃「まあね。季節が冬ならはっきり言って弱い!(笑)」
祐也「つまらんな。おい、何か言うことがあるんじゃないのか?」
崇乃「ない(即答)」
祐也「………………」
崇乃「………………」
祐也「……これで終わりか?」
崇乃「まあ。一応」
祐也「ならば……狩る!」
崇乃「え、ま、待て! 話せば判る! 話せ――」

――ストン
 と幕が下りる。