体育祭Lメモ・騎馬戦編(後編) 投稿者:川越 たける
『競技開始☆』
「それでは、競技開始です」
「みなさん、入場してください」
 ミニセリオ達にしたがって、出場者達がグラウンドに現れる。
 
「は〜い、司会進行の志保ちゃんで〜す♪ では、これから午前中の最後の種目、
『時間無制限騎馬バトルロイヤル』を開始するわよっ! 」

「「「「「「「……」」」」」」」

  一瞬の沈黙。

「「「「「「「ちょっと待てぇいっっっっっっっっっっっっっ!!! 」」」」」」」
 出場者全員から一斉に突っ込みが入る。

「あれ? 言ってなかったかしら? おっかしわね〜ちゃんとルールを書いた紙を
渡したでしょ? それをちゃんと読みなさいよ! 」
「あ? そんなことどこにも書いてないじゃないか?
もしかして、また暗躍生徒会あたりが勝手にルール変えたんじゃないのか? 」
 きたみちが抗議する。
「何言ってるのよ。ちゃんと全部に書いてあるはずよ」
「いや、俺はちゃんと全部見た! 」
 なおも食い下がるきたみちをbeakerがなだめる。
「まあまあ、これまでの競技だってルールなんて無いようなもの
だったじゃないですか」
「マスターの言う通りですね。これくらいなら、まだ大人しいほうだと思いますよ」
 沙留斗もbeakerに同意する。
「そうはいってもなあ……ん? 何だこりゃ? 」
ルールが書かれた紙を見ていたきたみちが何かに気付いた。
「きたみち君、どうしました? 」
「いや、この紙の下の方に…」
 よく見ると、下の方に小さく何か書いてある。
『←下から軽く熱であぶってみること』
「何だこりゃ? 」
「beaker、火ぐらいもってるでしょ? やってみたら? 」
 好恵に言われて、beakerはライターを取り出して指定の部分に
 軽く火を当ててみる。すると……いままで白紙だったところに新しく
 文字が浮かび上がった。

『4、補足:と、思ったけどやっぱり時間無制限総当たりバトルロイヤル方式で
最後に勝ち残った騎馬の学年に得点が入ることにするのでいままでのルールは無しよ』
『追加補足:よく読んでって書いたおいたはずだよね』

「マスター、これって……」
「あぶり出し……? 」

 ひゅううううううううううううううううううううう〜。

 まだ夏の暑さが残るLeaf学園に、北風が吹き抜けた。

「ふっふっふっ……全ては私の思うがままだ……」
 ようやく「仕掛け」に気付いた出場者達の様子を遠くから眺めながら、
 Runeは一人満足げにほくそえんだ。
「あのねRune、ちょっと聞きたいんだけど? 」
 香奈子が一枚の紙切れを見せながら聞く。
「ん? 何だ? 」
「この領収書は何かしら? 」
「ああ、それはあぶり出しに使ったレモンの代金と、買いに行ってもらった
吉田君と桂木君への手間賃代わりに奢ったクレープ代、それから
試しにやってみる時に使ったライターに紙の代金と昨日夜通しで準備していたので
その時の夜食の弁当代、〆て3647円」
「そうそう、二人で遅くまでレモンの皮むきしてたらお腹がすいたから、
弁当を買いに行ったんだよね、るーちゃん」
 健やかが付け加える。

 ごしゃっ

 青空の下、鈍器で殴ったような音が響き渡った。

「それでは」
「騎馬を組んでください」
 またミニセリオ達がの指示を出す。

「まあいいか、どんなルールだろうが、何か企んでる奴がいようが、戦って勝つ!
それだけだからな」
 いつものように自信たっぷりなジン。
 一説には勝たないと千鶴にお仕置きされるから必死だとか。

「こういうことなら遠慮無くいかせてもらおうか。おいゆーさく、
先に言っとくが、くれぐれも俺の足を引っ張るな」
「……その言葉はそっくりお前に返す」
「いい加減にしなさいっって言ってるでしょっ! 」
 ハイドラント、悠 朔を綾香がまとめる……結構上手く行ってるらしい。

「だ・か・ら! 梓は俺がいれば充分だから、お前はとっとと席に戻って見物してろ! 」
「あ〜ら、アンタみたいに筋肉だけの男よりはよっぽど役にたつわよ? 」
「……あの、喧嘩してる場合じゃ……って、あああ、二人とも聞いてない」
「あ゛―っ! もう競技始まるんだからやめろっ! 」
 いつも通りな秋山、かおり、宇治に梓。

「――容赦はしなくていいということですね(ニヤリ)」
 微笑むDセリオ。

「みなさん、頑張りましょう! 」
「おーーーーーーっ!」
「HAHAHAHAHAHA! 」
 団結力なら多分参加チーム中一番であろう葵チーム。

「形こそ違うけど、綾香と戦えるなんてね……みんな、よろしく頼むわよ」
「しっかりやらせてもらいますよ。このメンバーで勝てば、
 第二購買部の宣伝にもなるかもしれませんからね」
「ま、そういうことにしておくか」
「マスターも素直じゃないですね」
 坂下と購買部の面々も団結力なら負けてはいない。

「こら雅史っ! 騎馬の人間がが持つのは足だっ! 腰に手を回すなっ! 」
「え? でもこの方が支えやすいなあ(にっこり)」
「馬鹿やろっ……って四季っ! お前は何してやがるっ! 」
「何って……ダーリンの短パンがずれてたから、直してあげようと、ね(はあと)」
「嘘つけっ! 今確かに引きずり下ろそうとしていた! 俺は見た! 」
(浩之ちゃん、 嫌なのはわかるけど、主役ならこれぐらいのことは我慢しないと) 
 あかりが他の二人に聞こえないようにそっと浩之に囁いた。
「そうだったな、俺は主役、これぐらいのことが何だ。俺は主役、主役……」
(さわさわ)←触わっている音
(ずるずる)←脱がそうとする音
「……って、耐えられるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 」
 浩之チーム、早くも不協和音。

 かくして、15の騎馬が揃う。
 一般生徒を含めて、一学年に5チームとなる。
 数が揃うとなかなかに荘厳な眺めである。

『こんどこそほんとに開始☆』

 さて、今回の競技用の為に、特別に戦闘用フィールド発生装置が用意さている。
( 「『戦闘用』って何だよ」 BY 藤田浩之 )
 格闘技などで用いられるコーナーポスト(約5メートルある)と
 ロープ(ちなみにビームロープ)に囲まれたバリアフィールドで、
 内部と外部を完全に遮断して、外部に被害が出ないようにしている優れものである。
 なんでも、柳川先生こだわりの逸品だとか。

「なるほど、これならいくらでも暴れられるな」
 誰かがそれとなく呟く。他の参加者も同感だろう。
 でも、なんかどこかで見たような気がするけのは多分気のせい。

「おまたせしました」
「では、よーい、はじめっ!」

 ぱあん!

「長らくお待たせしましたっ! さあ、いよいよ始まったわよ! 」
 志保の実況にも熱が入る。

「一気にいくぜっ! ストナァァァァサァンシャインッ! 」
「プアヌークの邪剣よっ!! 」
「天翔龍閃! 」
「天翔熊閃! 」
「――ファイナル……ガーディアン! 」

 各チームの力と技がぶつかり合う。そして……。



『戦い終わって☆』
 (競技に参加した男子生徒Aさん(仮名)の証言より)
「ええ、そりゃすごかったっすよ。騎馬戦といいつつもみんないきなり
大技出してぶつけ合ったんですから。しかも、爆風やら流れ弾も酷くて……
え? 完全に外部から遮断された空間だから仕方が無いって? 
そう、それが問題だったんです。あのフィールドを作った人間、何を考えてんだか
知らないけど、競技が終わるまで、空気すらも外から入って来ないようにしてあって
……で、爆発やら炎の技やらで、ものの数分もしないうちに中の酸素が尽きて、
気がついたらみんな酸欠で倒れてたんですよ……いえ、一部のサイボーグやら
メイドロボはもちろん平気でしたけど。結局、全部の騎馬が潰れてしまったんです
ところで、この『男子生徒A』って、どうにかなりません? 一応俺にはちゃんとした
名前が……何? もうインタビュー終わりだから関係ない? ちょっと待てぇ! 」

 判定:全員失格……ノーコンテスト

 尚、この後に柳川先生に件のフィールド発生装置の制作を依頼した男子生徒Aは
 出場者全員にボコにされたらしい。

「な、なんで俺がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 」

 なんでも、柳川先生のところに残ってた依頼のメモに
 『責任者:藤田浩之』
 って書いてあったらしいよ。あぶり出しで。

 <終わり>