僕にアフロを汚せというのか 投稿者:TaS



「それじゃ、毎度おーきに。」
わざとらしいセリフとそれに続く苦笑。
それを伴って購買部から出てきたのはそこの主人であるberkerともう一つ、最近購買部で
よく見かける顔だった。
「そんな事を言っていると保科さんに怒られますよ。」
「でも挨拶は商売の基本、でしょう?」
苦笑の主はberkerだったようだ。
だがそんな相手に頓着せず、もう一人の人影は平然と言い返す。
相手の言葉に色々と突っ込みたい気持ちを押さえながら、berkerは適当に笑う。
「それじゃ、またいい写真が取れたらお願いしますね、デコイさん。」
そんな挨拶に答えながらその男、デコイは肩から下げている鞄を架け直していた。



『Lメモ、僕にアフロを汚せというのか』



(さてと・・・今日の獲物は誰かな?)
やたら物騒な事を考えながら廊下を歩くデコイ。
だがその表情は考えている事とは裏腹に幾分のんびりとしたものだ。
もっとも彼の言う”獲物”はこの学園で一般的にいわれる”獲物”とは少し違う。
彼が獲物を捕らえる時に用いるのは魔術でもエルクゥの爪でもサテライトキャノンでも剣
術でも無い。ましてやロケットパンチを持っている人間などは、さすがにそう多くない。
では何も持ち合わせていない彼が、獲物を捕らえるのに使うものは・・・
その時、デコイは急に体を壁に寄せた。
そのまま気配を消しつつ近くの教室に入り込む。
すばやく周囲に誰もいない事を確認しつつ、鞄の中から黒光りする物体を取り出した。
それを顔に押し当て、静かに、だがすばやく廊下を覗き込む。
「うーん、来栖川姉妹のツーショット・・・か。悪くないですねぇ。」
物陰に隠れてその黒光りする物体、カメラを覗き込んで微笑む姿は・・・控えめに言って
もストーカーそのものであった。


「ねぇねぇ、なにやってるの?」

  どがしゃぁっ

急に話し掛けられ、それまでは恐ろしい勢いでシャッターを切っていたデコイが思いっき
りのけぞる。
因みに先の音はその時に倒した机の音である。声をかけた当人 ---たしかOLHの養女の
一人だ--- もその音かデコイの反応か、どちらに対してかはわからないが驚いていた。
「い、いや、これはね!」
確か笛音だったか・・・
目の前の幼女の名前を思い出すよりも早くデコイの口からは言い訳が出ている。
「その、何だ、あ、あれ、あれなんだよ!!」
いや、出ていなかった。汗ぐらいは出ていたかもしれないが。
そのうちに撮影の対象であった来栖川の姉妹も気づいたようだ。怪訝な顔で(片方は良く
分からないが)近づいて来る。
「あ、あ、あ・・・ごめんなさいぃぃぃぃぃぃっっッッッッ!!!!!」
恐慌状態に陥ったデコイには、己に出来る最後の手段、逃走以外に出来る事はなかった。


「はぁ・・・どうしてこうなんでしょう・・・」
やっとの思いで逃げ出したデコイは、どっかの廊下でため息を吐いていた。
ストーカーを生業とする以上見つかる時もたまにはある。
だが、デコイはその度に今と同じにろくに言い訳をする事も出来ずに逃げて出していた。
遠くから爆音が聞こえる。
微かに聞こえる「楓ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっっっ!!!!」と言う声からする
と西山のものだろうか。デコイには妙に切なく聞こえた。
「私もあれくらいに自己主張が出来れば・・・」
やめときなさいって。
そんな突っ込みがどこからか聞こえようとした時に。
目の前のガラスがいきなり砕けた。


ぐわっしゃぁぁぁぁん・・・

廊下のガラスが問答無用に砕けるその音をバックに「それ」は奇妙にポーズを決める。
「Hey!アナタ悩んでマスネ!?」
「な、何ですか貴方は!!」
「自分に自信が持てナイ!違いマスかぁ!!?」
いきなり図星を指されて戸惑うデコイ。
だが、目の前の物体はその戸惑いを助長させるしか能がなかった。
巨大なアフロをガラスの破片で輝かせた「それ」は嫌な笑顔を振り撒きながらデコイを指
差している。
「ここは4階の筈じゃ・・・」
「のーぷろぶれむデス!!アナタのお悩み解決シマショウ!!」
「どうやって飛び込んできたんですか?」
「大丈夫、ワタシに任せてクダサイ!!お値段もりーずなぶるにシテおきマスよ!!」
「・・・金取るんかい。」
デコイの顔に思いっきり縦線が入る。
だがそれを気にする事もなく「それ」はデコイを抱え上げた。
「ちょっと、何をするんですか!?」
「ダカラ任せてクダサイって。」
デコイを肩に乗せたまま先ほど砕いた窓の側に立つ。
「ま、まさか・・・」
「のーぷろぶれむデスゥゥゥゥッッッッッッッ!!!」
繰り返しになるが、ここは4階である。
デコイの意識は、窓ガラスが砕けたところで消えていた。


「ん・・・あれ?」
小さく動きながら、デコイが意識を取り戻す。
ゆっくりと目を開け・・・すぐに閉じた。
「オヤ、起きたみたいデスねぇ。」
鼓膜をたたくのは幻聴である。デコイは必死にそう決め付けた。
だが、その幻聴は悲しいくらいにはっきりとした力を持っている。はっきりといえばやか
ましい声だ。
「イイ夢見れマシタか?」
「夢だったらどんなによかったか・・・」
あきらめたデコイは涙に濡れる瞼を開いていった。
目の前のアフロは気を失う前となんら変わらない。見事なまでの円形だ。
だが、それから下は・・・
「・・・何で白衣なんですか?」
「秘密デス。」
やたら嬉しそうに答えてくれる。
その周りもそれに相応しく怪しげな実験器具や薬品に囲まれている。マッドサイエンティ
ストの秘密実験室、といった光景だ。アフロ以外は。
「トリアエズ自己紹介でもシマショウ。ワタシの名前はTaS。アフロ同盟の長デス。」
知っている。
取り合えずデコイの知識の中ではこんな酔狂な髪型をしている人間は他にはいなかった。
だが。
「アフロ同盟・・・?」
初めて聞く単語だ。しかもやたらに嫌な予感がする。虫の知らせが最大音量で鳴り響いて
いる。無い筈のエルクゥの血がデコイに危険を知らせている。
だが、そこでデコイは自分が椅子に縛られている事に気がつく。
つまりは逃げられないという事だ。
そんなデコイの絶望をよそにTaSは得意げに説明を始める。
「Yes、モットモ現在会員は2名シカいませんが。」
「2・・・名?」
「ワタシと、アナタです。」
一瞬の空白。
デコイの理解。
そして・・・絶叫。
「嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
ぁぁぁっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ
っっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ
っっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ
っっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ
っっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ
っっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!!!」
「HAHAHAHA、チナミに後はこのヅラを取り付けるだけで終わりデス。」
「そこに付いてる機械は何だぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!」
「言うまでも無いデショウ。外そうとすると・・・」
「やっぱ言うなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ!!!」
「気に入ってモラエテ嬉しいデス。」
「気に入ってねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっっっ!!!」
「ソレデハ、始めまショウカ。」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっっっっ!!!」
必死にもがくデコイを押さえる。
今度はデコイも気絶する事が出来なかった。もっともそれには何の意味もなかったが。


「ううっ、あたしよごされた・・・」
「古いネタをやってるんじゃありまセンヨ。」
膝を抱えて泣いているデコイにTaSは苦笑する。
先ほどまで何回か外そうと試みていたのだが、その度に機械からの妨害に遭ってそれは達
せられなかった。
「何であんなものが出て来るんですか・・・?」
デコイの袖のあたりが何かに食いちぎられたかのようにぼろぼろになっている。
「サテ、これで本格的な活動に移れそうデスねぇ。」
そんなデコイの発言をまったく無視したTaSの発言が響く。
もしかしたらデコイの問いに答えられないのかも知れない。だがその発言は多少にデコイ
の気を引いたようだ。
「本格的な活動って・・・何をするんですか?」
「サァ?」
本気の顔でTaSが首をかしげる。
「まさか・・・塔だとかSS不敗流だとかエルクゥ同盟だとか色々活動しててうらやまし
いから自分もなんか作ってみようと思っただけ・・・なんてことはないですよね?」
「Oh!」
TaSの顔が驚愕に歪む。
「何でわかったんデスか!?」
「ほんとにそうだったんかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっ!!!!」
デコイの本日最後の絶叫が部屋に轟いていた。

がんばれデコイ。
未来は君のためにある。
それにアフロも意外と似合ってるぞ・・・多分。







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ごめんなさいデコイさん。こんなのになっちゃいました(苦笑)。
ギャグって書きにくいです。・・・シリアスが書きやすいって訳ではないですけどね。
勢いだけで書いたので結構駄文っぽいです。

あ、デコイさんの設定は結構適当に書いているんでその辺詳しい事は突っ込まないでくだ
さい。
それからアフロ同盟は常に会員募集中なんで、入りたいという奇特な方はTaSまでご一
報を(笑)