テニスL幕間劇「心持つ者のしばしの休息」 投稿者:とーる

 テニスコートから程近い、保険委員詰めの赤十字マークが掲げられている仮設テン
トの中。
 未だ荒く息をつきながら、広瀬ゆかりはベッドに横たわっている。
 川越たけるの奇跡のレシーブによってポイントを取り返された直後、ゆかりは試合
の結果を見ることなくコートに再び崩れ落ちた。

「ゆかりっ!!」

 貞本夏樹はルールだのなんだのをまるっきり無視して、ゲームの決着がついていな
いコートに飛び込み、間一髪ゆかりがそのまま地面に突っ伏す前に彼女の体を受け止
めた。
 そのとき、YOSSYFLAMEと長瀬祐介との間で、決着をつける会話が行われていたのだ
が、夏樹はそれどころではなかった。

 広瀬ゆかりは心臓に爆弾を抱えている。

 彼女を強化人間たらしめている『改造』は、心肺機能の強化と肉体的性能の向上に
ある。戦闘用強化人間である『四季』や『紫音』の徹底的な身体強化とは意味合いが
異なる。
 その『改造』のおかげで、もはや心臓には何の心配もない……はずなのだが。
 過度の運動や緊張で身体機能のコントロールを手放してしまうと、まれに『心臓が
悪かったころの自分』を体が思い出してしまうらしい。
 このテニスの試合は必要以上にゆかりの体に負担を掛けていたようだ。

「ゆかり、大丈夫? とりあえず横になれる場所に連れて行ってあげるから」

 呼びかける夏樹の声にも答えは返らない。肩を貸すようにゆかりを持ち上げようと
すると、それを圧しとどめる手が伸びてきた。

「なに!?」
「広瀬委員長は完全に気を失っています。私が運びますよ」

 そこにいたのは選手控えの席から飛び出してきたとーるだった。

「ユカリ、大丈夫?」
「早く休ませないといけませんね」

 とーるの肩越しにゆかりの様子を覗き込んでいるのは、ダブルスパートナーの宮内
レミィだ。
 隣のコートでは同じ暗躍生徒会のHi-waitと月島瑠香のペアが試合をしているのだ
が、試合終盤からゆかりが調子を崩しているのを見て取ったレミィは、ずっとこちら
側にいたのだ。
 見た目よりも軽いゆかりを横抱きにして、とーるはテニスコートのそばの臨時療養
施設となっているテントへと向かった。



「……無茶のしすぎですね。こんなになるまで自分の力を酷使することもないでしょ
うに」

 ベッドの上で浅い呼吸を繰り返すゆかりを見下ろして、とーるはことさらそっけな
くそういった。

「そんな言い方はないでしょう? ゆかりは、彼女は一所懸命プレイして……」
「そして、こうやって倒れ臥している」

 夏樹の反論もとーるは冷徹なまでに切って捨てる。
 味方であるはずのとーるの、こんな『冷たい視線』を感じるたび、夏樹はなぜこの
男が風紀委員会に所属しているのかを疑問に思う。
 ゆかり直々の推挙なのだが、理由までは聞かされていない。

「疎ましく思う記憶でも、体が覚えている。だから、ふとしたことでかつての自分を
思い出してしまう。人間とは、実に非効率的な存在です」
「……あなたは、人間ではないような言い草ね」

 嫌悪感と不快感。
 肉の衣をまとっていても、魂などそこにはないのではないか。
 偵察、暗殺、密偵。忍の心を叩き込まれた夏樹でも、とーるの今の発言は納得でき
るはずがない。

「強化人間として作り出された私は、遺伝子の螺旋にすら手が入っています。人間な
のかどうか、といわれれば、明確には答えられません」
「広瀬ゆかりは、人間よ」
「ですが、強化改造されている」
「それでも、ゆかりは人間なの。あなたとは違うわ」

 夏樹の言葉の温度もどんどん下がっていく。心酔するゆかりの存在を脅かすものを
許すわけにはいかない。たとえそれが物理的ではなく、精神的なものであったとして
も。
 だが、その緊張を打ち破ったのは、ほかならぬとーるのほうだった。

「そう、ですね。だからこそ、私を風紀委員会に誘ったのだと思います」
「……え?」
「広瀬委員長はいっていました。『この胸の痛みを体が覚えている限り、私は自分の
意志と自分の罪を覚えていられる』と」



「私も厳密な意味では人間ではないのかもしれない。でも、それは体だけの話。心は、
そんなこと、人間であるかないかなんて関係ない」
「……心、ですか?」
「そう。あなたは確かに強化人間かもしれない。でも、あなたには心がある。あなた
にはSS使いとしての力もある。マルチやセリオ、マルティーナ3姉妹、警備保障のD
シリーズ……彼女たちは、ロボット? 人間? それを誰が決めるというの?」

 夕日で真っ赤に染まった校舎の屋上で、ゆかりはとーると向き合っていた。

「この学校にはさまざまな体を持つ者がいるわ。でも、それは大した問題じゃない。
身体の差異なんて、心のあり方に比べたら些細なものだわ」
「広瀬さん……」
「あなたがどんな存在か、どう生まれてきたのか、どう育ってきたのか。それすら他
の人たちには問題じゃないの。誰も過去に戻って干渉することなんかできないんだし。
後悔したって、それを背負って生きていくしかないのよ」

 凛とたたずむゆかりの姿。
 さっきまで、胸を抑えて死にそうになって小さく震えていた少女と同一人物とは思
えない。

「この胸の中で、心臓が動いている。痛い痛いって悲鳴をあげることがある。正直、
痛みがなくなればって思うこともある。でも、この痛みがある限り、私は誰かの手で
生かされているという私の罪と、そして生きているという私の意志を覚えていられる。
私が私でいられる証、とでも言えばいいのかしら」
「私が私でいられる? どういうことですか?」
「この心臓はね、私のものじゃないの。確かに、その人はもう長くなかったのかもし
れない。でも、私のために奪っていい命じゃなかった……!」
「心臓移植……ですか……」
「私の意志とは無関係にね。良かれと思ってしたことかもしれないけど、私は誰かを
犠牲にしてまで生きたくはなかった! 私が死ねば悲しむかもしれない。でも、その
ために死んでいい人なんているわけがないのに!」

 彼女の独白。
 泣いてはいない。
 だが、魂が哭いている。
 それが、とーるには見えた。見えてしまった。

「……あなた、風紀委員会に入らない?」
「え……?」

 唐突なゆかりからの問いかけに、とーるは思わず面食らう。

「赤十字美加香があなたを生み出し、新城沙織があなたを救った。……私なら、きっ
とあなたにいろんなことを教えてあげられると思うわ。あなたがどこへ行くべきなの
か。それが見えたとき、ついででいいから私のことを手伝ってくれればそれでいい。
だから、風紀委員会に来なさい」



「彼女の強化部位の調律という、命にかかわる部分を受け持つ、かなり特殊な関係で
す。ですが、それを超越したところで、私と広瀬委員長の利害と要求が一致した。だ
から、私は風紀委員会にいる。そういうことです」

 長い独白だった。
 夏樹は、委細逃さずそれを聞いていた。
 そして気づいた。ゆかりが、本当は強い人間などではない、という事実に気づいて
いる者が自分以外にもいるということを。

「……とーるくん、あなたは、ゆかりに何を求めているの?」

 真摯な問い。
 先ほどまでの怒りとは違った、純粋な疑問。

「委員長……広瀬さんには、長く生きてほしい。彼女は、それを『許された』存在で
す。だから、それに気づいてほしい。できれば、私が私でいられるうちに」
「いってることが、よくわからないんだけど?」
「……ああ、私の限界稼働時間は、概算で47,347,200sec. このぐらいなんですよ」

 4700万秒。
 いきなり秒数で言われても困る。
 困惑しつつも、夏樹はとりあえず暗算で変換してみる。

「……1年半?」
「そうですね。大体そのぐらいで、私の稼動限界が来ます」

 稼動限界がくる。
 それって……?

「人間で言うところの『死』ですね」

 いとも簡単にとーるはいった。
 自分の命数は、あと1年半しか残っていない、と。

「強化改造を受けずに、私は死ぬべきだった、とまでは広瀬委員長もおっしゃってい
ませんが。
 彼女は生きている。
 広瀬ゆかりとして生きている。
 過去に死なずに現在は生きている」

 そして、とーるは大きく息をつき、苦笑じみた笑みを浮かべながら言葉を継いだ。

「だったら、精一杯生きてほしいじゃないですか。せっかく、生きる時間を手にする
ことが許されたのですから」

 ……この男は、自分が人間でないことをどう思っているのだろう?
 悔しいのか。
 嬉しいのか。
 腹立たしいのか。
 楽しいのか。
 どれでもあり、どれでもないような気がする。
 ただ、確実にいえるのは。

「あなたは、自分の後に残る者に自分の存在を残したいのね。だから、死に急ぎかね
ない連中を止められる可能性がある組織、風紀委員会への参加を承諾した……」
「買いかぶりすぎですよ」

 苦笑を崩さない。
 だが、数分前の機械的な冷徹さに比べたら、実に人間味のある笑みだった。
 夏樹は、とーるが機械などではなく、人間なんだと再認識した。
 そう、再認識したのだ。

「テニス、がんばってね。ゆかりの分まで」
「ええ。相手は広瀬委員長を打ち破った強敵ですから。精一杯戦いますよ」
「私、もうしばらくゆかりに付き添ってるから」
「わかりました。では、処置だけしておきましょう」

 そういうと、とーるはおもむろに寝かしつけたゆかりの身体の上からかけてあった
毛布を剥ぎ取り、テニスウエアの上から左の乳房に右の手のひらを押し当てた。

「……ちょ、ちょっとっ!?」

 夏樹が唐突なとーるのセクハラ行為に狼狽する。
 いやまぁ、人が見てる目の前で気を失ってる女性の胸をもみ始めたら、普通の女性
ならびっくりするだろう。
 だが、止めに入ろうとした夏樹より早く、とーるは左手でお下げを止めていたゴム
を外す。
 体表に走る紫電。
 戦闘モードを発動させて、生体電流を増幅する。
 ゆかりの左の乳房の上……心臓の上で紫電がはねる。
 ひく、ひくり。
 ゆかりの肩が小刻みに痙攣する。
 数秒後、さっきまでとは違い、呼吸が深く落ち着いたものへと変化する。

「心筋の痙攣に対して強制制御を加えました。まぁ、強化人間相手でなければできな
いまねですが」

 顔色一つ変えずにこういってのけたとーるを見て、夏樹はあっけにとられている。
 そーいうものなの、かしら……?

「貞本、広瀬の様子は……」

 もしも、あとコンマ数秒でいいから夏樹の背後からYOSSYFLAMEが顔を出すのが遅れ
ていれば、彼女ももうちょっとまともな回答が得られたかもしれない。
 だが、現実には、ふぅ、と一息ついてゆかりの胸から手をどけようとしていたとー
るの姿を、YOSSYFLAMEはまじまじと見ることとなる。

「……オレ、邪魔?」

 なんというか、ありていに言うと実に間抜けな表情で、YOSSYは夏樹ととーるにぼ
そっとたずねる。

「いえいえ。もう『終わりました』ので、私はこれで失礼します。あとはよろしくお
願いします、YOSSYさん」

 あっけにとられるYOSSYの脇をすり抜けるようにして、とーるは解けた髪を直しな
がらテントを出て行った。
 あとに残された夏樹は、どうしたものか判断がつかない面持ちで、ゆかりとYOSSY
の顔を交互に見比べている。
 神妙な顔でとーるを見送ったYOSSYは、つかつかとゆかりの枕的に歩み寄ってきた。
 そして、おもむろに、夏樹が止める間もなく、ごく自然に、ゆかりの胸の頂上を人
差し指でちょんとつついた。

「ちょっ……!?」

 再び、夏樹は慌てる。というか、理解の範疇を超越した行為をどうしていいものか
持て余してる、といったほうがいいかもしれない。
 だが、今度はさほど長く呆然とはせずにすんだ。
 なぜなら、

「……いー度胸してるわねぇ、よっしぃ?」
「……第一種接近遭遇、ってやつだな」
「あーんーたーねええええええええっ!?」

 がばっといきなり起き上がったゆかりは、さっきのテニスの試合よろしく右手を大
きく振りかぶって平手打ちしようとした。
 が、とっさにYOSSYはスウェーバックしてその手をかわした。

「寝てる私になにしようっていうのあんたはぁっ!?」
「とーるが先にやってたんだぞ、そんなに怒るなって!」
「知ったことかぁっ!!」

 元気全快でテントの中を駆けずり回るゆかりと、それから逃げ惑っているYOSSYを
見て、夏樹はさっきまでのシリアスな悩みが音を立てて崩れていくのを感じていた。
 ……私の心配って、ただの取り越し苦労?
 その疑問に答えてくれそうな人間は、少なくともこのテントの中にはいそうになか
った。



 テニスコートに戻る道すがら、校庭の陸上用トラックの片隅で、とーるは髪をお下
げに戻すべく編みこんでいた。
 あまり人に見せたい光景ではない。
 大の男が伸ばした髪を肩から前にたらして、あみあみあみ、とお下げを作っている
のだ。
 幸いなことにテニス大会もたけなわである。
 だから、座り込んでいるとーるの目の前に、

「ちょっと、いいかな?」

 長瀬祐介が話し掛けてきたのはとーるも意外だった。

「ええ、こんな格好で申し訳ありませんが」
「話はすぐに終わるよ」

 とはいったものの、祐介の側から話を切り出そうというそぶりが見られない。
 手早く髪を元に戻したとーるは、座り込んでいた尻のほこりを払いながら立ち上が
った。

「3回戦進出、おめでとうございます」
「……そういってくれるんだ?」
「広瀬委員長と戦うよりはよほど気が楽ですから」
「なるほどね」

 穏やかな顔をしていた祐介が、にわかに表情を引き締める。

「広瀬さんは?」
「委員長は心配ありませんよ。もう目を覚ましたころだと思います。お話をしに行き
ますか?」
「後で」

 なんとも、歯切れの悪い会話である。
 とーるが居心地の悪さを感じていると、祐介は

「単刀直入に、いった方がいいね。沙織ちゃんのことなんだ」

 と、唐突に話題を切り替えてきた。

「さっき、ちょっと話をしてきた。川越さんはバレー部の後輩だし、心配してた。今
はぐっすり寝てるはずだから、お見舞いだったらもうちょっとしてからのほうがいい
よ、って付け足してね。川越さんもあれだけの無茶をしたんだから、ちょっとでも寝
ておかないと体力も戻らないし」

 文字通りの死闘となった2回戦、長瀬・川越組vsYOSSY・広瀬組。
 死力を使い果たした限界を超えたプレーを見せた川越たけるは、保健室のベッドで
眠っている。
 体力回復の邪魔をしないように、電芹だけを残して保健室を辞去してきたのだ。も
うしばらくして、目を覚ますころを見計らって戻るつもりなのだろう。

「それと、沙織ちゃんは君のことも心配していたよ。というより、僕と君のどっちを
応援したらいいのかって、悩んでいた」

 浅からぬ縁の二人。
 長瀬祐介と新城沙織。
 それを思い出して、とーるも渋面を浮かべる。
 ……これは、真理的揺さぶりを狙った作戦なのだろうか?
 そんなことをふと考えたとーるの怪訝そうな表情を見て、祐介は苦笑する。

「だから、僕はこういってきた。『悩んでいるんだったら、僕を応援してほしい』っ
てね。そうしたら沙織ちゃん、余計に困ってたな」
「……そう、なんですか?」
「君は、なんとも思わないのかい?」
「……」

 なんとも思わないのか、といわれればそんなことはない。
 ただ、それが一体なんなのか、その思いが一体なんなのかまでは、製造されてたか
だか数年、設定年齢と同世代の多数の人間と生活するようになって数ヶ月のとーるは
完全にわかってはいない。
 そんな逡巡までは、普通の人間ならわからない。だが、

「……君が混乱した電波を発している。そんなに難しいことをいったつもりはないん
だけど」
「私には、よく、わかりません……」
「わからなくちゃいけないのかもしれないよ。そういう風に、瑠璃子さんはいってな
かったかい?」


『とーるちゃんは、いろんな事を知ってるけど、
 知らないこともいっぱいあるんだね。
 大丈夫、この学校で、いろんなことを教われるから』


 転校したてのころ、アフロ同盟に参加することになったきっかけの事件の後、月島
瑠璃子はとーるに向かってそんなことをいった。
 彼女があの時、学園内でも飛び切り異質でぶっとんだ組織への参加をうながしてな
かったら、今ごろこんな風にたくさんの『友達』に囲まれていられなかっただろう。
 そして、一番最初の友達として、自分の心を救ってくれた、新城沙織。
 単なる友達としてみなすには、沙織はとーるの心の中をあまりに大きく占領してい
る。

「応援、してもらいたい……ですね」
「だったら、素直にそういってきたほうがいいよ。僕も川越さんも、負けるつもりな
んかさらさらないからね。沙織ちゃんの応援があるとないとでは、大違いなんじゃな
いかな、僕も、君もね」

 そういうと、自分の後ろを指差して促す。
 祐介の背後、テニスコート近くに、とーるは新城沙織の姿を見つけた。

「じゃあね。いい試合にしよう」

 長瀬祐介。
 最強の『電波使い』であるがゆえに、人の心の機微の複雑さを誰よりもよく知って
いる男。
 テニスという畑違いの世界でも、主役の意地をまざまざと見せ付けてきた。
 敵は強敵。
 いや、誰が勝ちあがってきたとしても、強敵なのは変わりないのだが。
 とにかく、相手の強さを認めたとーるは、万全の体制で試合に臨むべく、祐介に大
きくうなずくと遠巻きにしている沙織へと駆け出していた。

 それを見送りつつ、祐介は自分の肩を支える柔らかい『電波』に語りかけた。

『これでよかったのかな、瑠璃子さん?』
『長瀬ちゃんはやさしいね』
『そんなことはないよ。沙織ちゃんにも、瑠璃子さんにもいい顔がしたい、優柔不断
なだけなんだ』
『長瀬ちゃんはやさしいよ。電波は嘘をつかないんだよ』

 青い空を見上げて、祐介は大きく背伸びをした。
 照れくささを押し隠すような笑みを浮かべて、さっき打ち破った広瀬ゆかりを見舞
うべく、祐介は仮設テントへ向かった。



「あ、とーるくんだ」

 駆け寄ってくるとーるを見て、新城沙織は大きく手を振っている。
 それを見て、とーるも手を振り返す。

「残念だったね、ゆかりんとよっしーくん」
「そのぶん、私たちが頑張りますよ」
「へぇ、自信あるんだ?」
「長瀬さんも川越さんも相当消耗していますから。1試合少ない分、私たちのほうが
有利ですよ」

 意気揚揚と沙織に向かってとーるが語りかけている。
 試合の結果がどうなるのか。
 それは文字通り神のみぞ知る、という領域だ。
 だが、彼女の前で恥ずかしい試合はできない。
 計算の結果ではなかったが、それだけは確信していた。
 コートに戻れば、レミィが、ルーティが、マールが、みんなが待っている。
 最強の敵たちを打ち倒すために。
 とーるはテニスコートへと戻っていった。


                        to be continue Tennis L-MEMO.