テニスLエントリー 「騎士と狩人(前編)」  投稿者:とーる
 それは、風見家での何気ない一言から始まった。

「ただいまー」
「あ、ししょー、おかえりなさい!」

 玄関までルーティが出迎えると、そこに立っているのは赤十字美加香一人であった。

「あれ? ひなたさんは?」
「……久しぶりにSS不敗に目覚めたみたいで、叫んでくるって」

 苦笑しながら美加香は肩をすくめる。かしげた首がぱきん、と音を立てた。

「首、いたいの?」

 ちょっぴり心配そうな表情のルーティを見て、美加香は目を細めながら、うーんと
 伸びをする。

「そういうわけじゃないんだけどね、ここ数日工作部のほうが忙しかったから、肩こ
っちゃったかなぁ」
「じゃ、後で肩たたきしてあげるね、ししょー!」

 肩たたき。
 にっこり笑いながら言うルーティに対して、実に神妙な面持ちで美加香はこう付け
足した。

「ルーティ」
「なに?」
「肘打ちと踵落としはなしよ」
「大丈夫! 正拳しか使わないから」

 ……この親子の肩たたきってのはどんなもんなんだろう……。
 深く考えると怖い考えになるのでやめておく。

 閑話休題。

 靴を脱いで部屋に向かう美加香が、ふとルーティにいうでもなく、独り言のように
つぶやいた。

「それにしても本当にハードだったぁ。温泉にでも行けなきゃやってられないわ」

 普段なら聞き流す美加香の呟きだったが、今日に限ってルーティの耳にこの言葉が
残った。
 温泉、か。
 HMのあたしたちにはよくわからないけど、人間はお風呂で疲れを癒すんだよね。
 温泉は、普通のお風呂よりもゆっくりできるから、リフレッシュできるし、体にも
いいって、マールおねえちゃんがいってたっけ。
 でも、温泉に行くとなったら旅行になっちゃう。けっこうお金かかるもんなぁ。
 ……あたしのおこづかいじゃとてもたりないし……。
 その日の晩、ルーティは自分がすっぽり入りそうなかごを両手で持って、飛び跳ね
て逃げ回る『温泉』を追いかける夢を見た。



 翌日、ルーティが校門をくぐると、多種多様な学年の面々が掲示板の目の前にたむ
ろしているのを見かけた。
 高等部の生徒までいっしょにいては、とてもじゃないがルーティの身長では掲示板
の張り紙は見えてこない。
 伸び上がってジャンプしたルーティの顔に、ひゅ〜、ばさっ。

「わぷっ」

 どこかから飛んできたチラシがへばりついた。
 イヤそうに顔をしかめながらそれを引き剥がす。

「テニス……大会?」
「知らなかったの? 昨日からその話題で持ちきりだったのに」

 ルーティの後ろから声をかけてきたのは、マルティーナ3姉妹の長女であるマール
であった。
 チラシをかぶって乱れたルーティの髪を手で直しながら、マールはチラシの内容を
読み上げていく。

「暗躍生徒会主催・男女混合ダブルステニス大会 優勝賞品:鶴来屋2泊3日の旅2
名様ご招待(提供:鶴来屋)……ですって」
「鶴来屋って、確か柏木先生たちのおうちだったよね?」
「そうよ。千鶴校長先生がスポンサーになったらしいわ」
「隆山温泉の旅館の旅……ってことは、温泉!?」

 ひときわ声が高くなったルーティにびっくりしたが、マールは苦笑しながら当たり
前でしょ、と嘆息する。

「要するに温泉旅行プレゼントのテニス大会ということね。これだけみなさんが盛り
上がるのもわかる気が……あら、ルーティ? ルーティ?」

 マールの言葉が耳に入らない様子で、ルーティは両手をぎゅっと握り締めて盛り上
がっていた。熱血である。この辺り、育ての親とはいえ、よく似ているというものだ。

「これだ! よーし! 優勝して、温泉旅行もらっちゃうもんねっ!!」
「るーてぃぃ〜……」
「ということで、おねえちゃん、あたしと一緒にテニスやろう!」

 一人でずばばーんと盛り上がっているルーティに両手を握られて、ぶんぶんとジャ
ンプしながら上下に振られるが、3回ジャンプしたところでマールは我に返って顔を
大きく左右に振った。

「ちょっと! 盛り上がってるのはいいけど、私、テニスなんてできないわよ」
「やるぞーわーい……って、あれ?」
「私が運動苦手なことぐらい、わかってるでしょ?」

 マールに冷静に突っ込まれて、ルーティは息を呑む。
 機能分化がはっきりしているマルティーナである。戦闘用に調整されているルーテ
ィに対し、マールは戦術分析用コンピュータであり、マールの運動性能はルーティに
比べるらくもなく、機体設定の7才の男女に比べてもやや劣るぐらいだ。
 しかも、出場制限もクラス分けもない以上、高等部のSS使いなどとも戦わねばなら
ないのは必定。分析・解析能力では引けを取らなくても、実戦では太刀打ちできるは
ずもない。

「それに、今回の大会は男女混合ダブルス、つまりルーティ、あなたが出場したかっ
たら、誰か男性のパートナーを探さないとならないのよ?」
「えええええぇぇぇぇっ!?」

 盲点である。
 愕然とするルーティを見て、改めて嘆息するマールであった。



「ルーティちゃん、元気ないね」
「……めずらしいこともあるね」

 初等部の音楽の授業中、席が隣同士の笛音とてぃーくんは、窓際の席のルーティを
見てひそひそと話をしていた。
 当のルーティは肘をついて顎を手に乗せながら、窓の向こうのグラウンドを眺めて
いた。
 どうやら高等部の2年生の体育のようだ。ラケットを手に素振りをしているところ
を見ると授業内容はテニスの実習らしい。指導教諭であるはずの河島はるかが見当た
らないところが怖いといえば怖いのだが。
 ダブルスかぁ……さすがに2対1じゃあたしでもきついなぁ……。
 この期に及んで一人でも出場してやろうという意気込みだけは買いたいところだが、
一度に投げ上げたたくさんのテニスボールをマシンガンのように次々と打ち出す悠朔
や、それをことごとくかわしてのけるハイドラント、必殺技の要領で超々高度のジャ
ンプサーブを打つ新城沙織、それに反応する城下和樹、土煙と共に手元で消えるサー
ブを放つ八希望、それを炎のハリセンで打ち返す保科智子、見よう見真似で綺麗なサ
ーブを打つ藤田浩之に神速の踏み込みで的確なボレーを返す神岸あかり……。
 あんな連中を向こうに回したら、優勝どころの騒ぎじゃないよぉ。
 実力を見誤って闇雲に突撃するのは愚か者のすることだ。
 師であり母である美加香からそう教わっているルーティは、自分のわがままに付き
合ってくれるパートナーを必死に頭の中で検索していた。
 電子脳がフル回転する。
 ……5秒でオーバーヒートした。
 あーんっ、もともとあたしは頭脳労働向きじゃないのにぃぃぃ。
 初等部の男子……てぃーくんや雛山良太では高等部のSS使いに太刀打ちできないし、
今から付け焼刃でコンビネーションプレイをやろうと思っても無理な話だ。
 贅沢は言わないからあたし並みの運動性能と、マール姉さん並みの判断能力を兼ね
備えた男子、どっかにいないかなぁ……。

 それは贅沢ってもんだルーティ。

 席につきながら地団太を踏んでいると、

「ねぇ、ルーティさん、私の授業、つまんない? そんなにつまんないぃぃっ!?」
「は、はうぅっ!?」

 ルーティの頭の上で森川由綺が滝のような涙を流していた。



「暗躍の企画ねぇ……ジャッジは動いたみたいだけど、さて、うちはどうしようか」

 放課後の視聴覚教室を借り切って、風紀委員会の会合が開かれている。
 教室前面のホワイトボードの前で、委員長の広瀬ゆかりが机に肘をつき、あわせた
両手に顎を乗せて周りを見まわす。

「やはり、誰か出場するべきだと思います」
「うん、そうだネ。やっぱり、こういうお祭りは参加しないと意味がないヨ」
「レミィさん、そうじゃなくって……」

 広瀬づきの委員、貞本夏樹が常識的な意見を提示したが、天下の宮内レミィには通
用しなかったらしい。
 まぁ、レミィは暗躍生徒会の一員でもあるわけだし、一筋縄ではいかないのは自明
なのだが。
 Leaf学園は多数の生徒と教師の存在する巨大な学校である。
 だが、その中において力のある存在……SS使いなど……はそれほどの数がいるわけ
ではない。
 であるがゆえに、学生組織を運営する実力者などは得てして兼任者であることが多
い。
 二重スパイぐらいで驚いていてはいけない。
 自分がスパイであることを忘れているものすらある現状。
 レミィは今回の騒動の根源である暗躍生徒会の一員でもあるが、同時に風紀委員会
のメンバーでもある。
 まぁ、さすがにレミィに諜報活動を期待することは長たるゆかりもしたりしない。
 ただ、ここで一つの計算が働く。
 レミィを、風紀委員会の代表として出場させる。
 そうすることで暗躍生徒会への牽制としようというのだ。
 暗躍生徒会の一員が敵対行動を取ることで、組織が一枚岩ではないことを示し、活
動自体の整合性に疑問を持たせる。
 いざ、暗躍が文字通りの「暗躍」を始めたときの歯止めとするために。

「ただ、このぐらいの計算はとうにできてるでしょ。あの人を出し抜くとまでは言わ
ないけど、なにもしないで白旗を揚げるなんてわけにはいかないわ」

 誰にいうともなくつぶやいた「あの人」、月島拓也がその実何を考えているのかは
さすがの広瀬ゆかりにも見通すことはできない。
 そして、目下の問題はそんな形而上的なことではなかった。

「で、レミィに出てもらうのはいいんだけど、とーるくん、テニスの経験は?」
「ありません。ですが、セリオさんほどではないにしろ、私もサテライトサービスの
恩恵を受けることはできます。付け焼刃は付け焼刃なりに、宮内さんの手助けはでき
ると思います」

 とーるがゆかりの真正面の席からそう答えた。
 ゆかりがすでにとーるをレミィのパートナーとして話を進めているのは、単純に、
男子の風紀委員がとーる以外にいないからである。

「Hi、トール!」
「なんですか、宮内さん?」
「宮内さん、じゃないヨ。レミィ、って呼んでって、もう何度も何度もいってるのに」
「宮内さんは宮内さんじゃないですか」
「NonNon! My name is Lemmy Cristfar Miyauchi! ファーストネームで呼んでほ
しいデス」
「……勘弁してくださいよ宮内さん」
「Oh! またデス……もっとfriendlyになってほしいネ、トール」

 レミィのこの屈託のなさは彼女の魅力の一つである。それだけとーるも気に入られ
ているということなのだが、生来の生真面目さはさすがに一朝一夕に直るものでもな
い。こんな押し問答がたまに繰り返される。

「はいはい、漫才はそのぐらいにして」
「「漫才じゃない(ヨ/ですっ)」」

 ゆかりのインタラプトにレミィととーるが綺麗にハモって答える。後ろで生真面目
筆頭の夏樹は渋面を浮かべているが、その前で苦笑を浮かべながらゆかりは話を元に
戻す。

「では、実働部隊はレミィととーるの二人ということで、貞本、あなたは二人のバッ
クアップに回って」
「わかりました」
「レミィととーるはさっそくテニスの特訓よ。優勝賞品がほしいわけではないけれど、
暗躍にも鶴来屋にも、一方的な勝利をもたらすのは得策ではないわ。ジャッジに期待
したいところだけれど、セリス先輩はマルチとラブラブだし、岩下先輩はまだ動かな
い。打てる布石は打っておかないとね」

 無言でうなずくレミィととーる。その表情は喜色満面と真剣怜悧で、実に対照的な
のだが。

「さて、それじゃ出場の申請をしに行かないとならないんだけど……」

 腰を浮かせながらゆかりがそうつぶやいたそのとき。

「ちょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっと、
待ったあああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」

 ばたんっ!
 教室後ろの入り口が観音開きに開かれ、一人の少女が飛び込んできた。
 いや、正確には同い年の少女を一人引きずりながら、一人の少女が飛び込んできた
のだ。

「……やぁ、ルーティ、それにマールちゃんも」
「……あうう、とーるさん、こんにちは〜」

 こめかみに冷や汗を浮かべながら、右手を軽く上げて少女たちの名をとーるが呼ぶ。
 教室に勢いよく乱入してきたのは、ほかならぬルーティとマールであった。
 力いっぱい引きずられてきたらしくぐるぐる目玉で気絶寸前のマールに比べて、ル
ーティは肩で息をついてはいるものの、極めて元気そうに強い眼光で声をかけたとー
るをにらみつけて、叩きつけるように単刀直入に用件だけを告げた。

「とーるっ! あんた、あたしと一緒にテニス大会に出なさいっ!」
「……は?」

 マールの右手を左手でしっかりと握ったまま、ルーティは右の人差し指でとーるを
指差した。

「あー、その、テニスって、暗躍生徒会のダブルステニス大会のことかな?」
「優勝賞品が温泉の、テニス大会っ!」
「あ、それなら私は宮内さんと……」
「あ・た・し・と・で・る・のっ!!」

 ……私は、ルーティには嫌われているのではなかったかな……?
 そんな疑問にかられていたが、極めて冷静に、とーるはこう突っ込んだ。

「なんにせよ、まずは」
「まずは、なにっ!?」
「……マールちゃんを放しなさい。実の姉をハングアップさせる気かい?」

 そこまで言われて初めて、ルーティはマールが気絶寸前のへろぷー状態であること
に気づいたのだった。



 話ができるぐらいにマールが回復する頃には、ルーティも少しだけ落ち着きを取り
戻していた。

「つまり、美加香ちゃんに日ごろの恩返しとして、温泉旅行をプレゼントしたいから、
テニス大会に出場する、っていうの?」
「はい。そういってます、うちの妹は」

 状況を整理するように、ゆかりが尋ねると、盛大なため息と共にマールはうなずき
ながらそういった。
 言われた当の妹はエヘンプイと胸を張っている。

「まぁ、事情が事情だから譲ってあげたいなと思わないでもないんだけど、風紀委員
会(こっち)にも委員会(こっち)の事情があるからね」
「なにせ男手はとーるさんだけですから」

 この場合、夏樹が言う「男手」とは「デタラメなことをやりかねないSS使いの攻撃
を食らっても死なないで済む」という形容詞がつく。

「でも、なんとかしてあげたいデス……」

 生来、子供好きのレミィは、母親孝行の美談に目を潤ませながら親ルーティ派に傾
きつつあった。
 だが、

「ルーティ」
「なに?」
「やはり、君とは出場できない」

 なにいってんのよ! と声を荒げようとしたルーティだったが、自分を見るとーる
の瞳が、真剣に、まっすぐ自分を射抜いているのを感じて、言葉を飲み込んだ。

「君とチームを組んだときの戦力をシミュレーションしてみる。パワーはB、スピー
ドもB、パワーとスタミナを保つために犠牲になるスタミナはD、戦術的なアイディ
アはBランクだとしても、チームワークはおそらくD。優勝戦線に残れる確率は、3
割以下」
「……なんで!? なんでそんなこと……」
「それがわかるからこそ、私に一緒に出ろと言ったじゃないのかい?」

 ルーティが求める人材。
 ルーティの運動性能とマールの判断能力。それを兼ね備えた男性。
 プロト・マルティーナで、しかも美加香とも浅からぬ縁を持つ男。
 近親憎悪の対象だからこそ、認められる実力。
 だからこそ、ルーティはとーるの元に来た。
 それがわかっているからこそ、とーるも分析結果を正直に告げた。
 ルーティでは、この戦いを勝ち抜くことはできない、と。

「なんであたしじゃ勝てないの!? 足りないものは何? パワー? スタミナ? 
それとも経験? それならHX-13タイプのボディを借りれば……」
「君のプログラムを量産型HMのボディに換装する? バカをいっちゃいけない。自分
がどういう存在なのかまったくわかっていないとは言わせないよ。量産型のボディで
は、君のスペックは再現することはできない。カタログオーバーのチューンナップを
したところで出力は足りない、調整は遅れる。ボディとプログラムのマッチングが取
れた頃には、大会は終わっているだろうね」
「ならこのあたしの体を!」
「……誰が、どこで、どんな改造をする? ピーキーなチューンでは、絶対に無理が
くる。1試合勝てればいいというものではない。決勝戦まで最低でも5戦、全力で戦
わなければ勝てないような連中を相手に、そんなことをして戦い抜けると思うのか?」

 あくまで冷静に言い募るとーるの言葉で、ついにルーティがキレた。

「やりもしないうちにあたしが弱いって決めつけるな! あんたぐらいケチョンケチ
ョンにできるんだからねっ!」
「できるものなら、やってもらおうか?」
「その言葉、後悔するな! あたしが勝ったらあたしとダブルスで出場してもらうか
らね!」
「では、私が勝ったらこの提案、あきらめてもらうよ」
「ぜぇったいにっ! それは、ないから安心しなさいっ!」

 オーバーヒート寸前までヒートアップしたルーティは、肩をいからせて視聴覚教室
を後にした。

「マール」
「は、はいっ?」
「ルーティを見ててやってください。どうせテニスコートに一直線でしょうから。そ
んなに待たせずに、私も行きますので」
「わかりました、とーるさん」

 マールが慌ててルーティを追いかけていくと、頭をかきながらとーるはどっかりと
机の上に腰を降ろした。風紀委員にしては、無作法極まりない。
 その向かいに、今のやり取りにまったく口を挟まなかったゆかりが歩み寄る。

「苦労してるようね、お・に・い・ちゃ・ん☆」
「……お恥ずかしい限りです」
「いい子じゃない。あの子なら、いいところまで行けるんじゃない? 私は別にそれ
でもかまわないわよ」
「ワタシも、かまわないデス。ルーティちゃんなら、きっと平気だと思うヨ」
「赤十字美加香の最高傑作、『次世代のマルチ』(Next Multi)として生み出された
来栖川のHM技術の結晶、マルティーナ三姉妹の次女。純然たる戦闘用アンドロイド、
コンパクトなボディからは信じられないほどの出力を発揮……何が不満なんですか、
とーるさん?」

 レミィと夏樹までが口々にルーティ擁護に回っている。
 だが、とーるは自説を曲げない。

「出る方々の思惑のすべてが読めもすれば、対策も立てられるのですが、そんなこと
は不可能です。それに」
「「「それに?」」」
「テニスに限定してしまえば、あの子の、ルーティの攻撃を封じるのは簡単です。例
え彼女がオプションアームによる攻撃を行ったとしても」

 そこまでいうと、とーるは白学ランのすそを払い、机から降りる。

「では、わからず屋の妹を説得しに行きますか」

 会釈して教室を出ていくとーるの背中を見ながら、ゆかりがつぶやいた。

「一人で勝手に行ってどうするのよ。私たちも行くわよ、貞本、レミィ」
「はい」
「Ok!」