XmasLメモ「聖夜の奇跡」 投稿者:とーる
 えーと、Xmasは掲示板が落ちていたので、再度投稿させていただきますm(__)m
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 12月24日、8:25、学園校門前

「おはようございます、マルチさん」
「あ、セリオさん、おはようございますぅ」
「……メール、読まれましたか?」
「……あのメールですか? 読むことは読んだんですけどぉ……」
「どうかなさいましたか?」
「添付ファイルが解凍できないんですぅ」
「……あれは自己解凍ファイルだから、そのまま実行すれば良かったんですよ」
「えぇっ!? そうだったんですかぁ? 知りませんでした……」
「……今から解凍するより、私のメモリからファイルをコピーしたほうが早いでしょ
う。よく読んでおいてくださいね。ミッションまで、あと13時間と35分です」


 同日、12:00、工作部部室

「9時になったらカフェテリアに来い? それはかまわんが何かあるのか、電芹?」
「えぇ。今日はクリスマスですからね」
「ふーん、パーティでもあるのか」
「そんなところです」
「電芹さーん、あれですねぇ?」
「そうですよちびまるさん。ちびまるさんも来てくださいね」
「りょーかいでーす! ともねえちゃんもきてねぇ」
「何があるんだ一体?」
「さぁ、なんやろな?」


 同日、13:30、校長室

「校長! このメールを!!」
「……もう読みました、足立さん。そんなに慌てなくてもいいのに」
「で、ですが……」
「『永久の闇の中に光は消え、総ての時は止まる
  救いの御手は、小さき言葉が集いし時、現れる』
 いいじゃない、ロマンチックだわぁ」
「そんな悠長なことを!」
「大丈夫よ足立さん、今日はクリスマスだもの」
「理由になっていませんよ、千鶴さん……」
「うふふふふっ、耕一さん、今日は聖なる夜ですからねぇ」


 同日、17:30、風見宅

「で、今日はお出かけなのか、ルーティ?」
「そうなんだ! クリスマスだし、パーティしようってマール姉さんとかティーナと
か笛音ちゃんとかてぃーくんから誘われたの!」
「まぁ、あまり遅くならないようにな」
「それでね、師匠。お願いがあるんだ」
「……クリスマスプレゼントなら後にしてくれ。まだサンタに頼んでない」
「うーん、それも楽しみなんだけど。9時ぐらいになったら終わるから、迎えに来て
ほしいんだ」
「……? あぁ、そのぐらいならかまわんが」
「やった☆ じゃあ約束だよ! かならず美加香お姉ちゃんと迎えに来てね!」
「あぁ、わかった。美加香にも言っておく」
「それじゃ、いってきまーすっ!」
「なんで今日に限って迎えに来いなんて言い出すんだ、ルーティのやつ……」


 同日、同時刻、西山宅
 
「それでは、いってまいります、英志お兄ちゃん」
「あぁ、気をつけてな」
「必ず、約束は守ってくださいね」
「楓と迎えに来いというんだろ? さっき連絡はつけておいたから、時間になったら
迎えに行くよ」
「待っています」
「珍しいこともあるな、マールが自分から出かけていくなんて。これは雪かな……」


 同日、同時刻、OLH宅

「じゃあ笛音ちゃん、OLHおにーちゃんをおねがいね!」
「はーいっ。9時に学校に行けばいいのね」
「首になわをつけてでもつれてきてねっ!」
「はいひーるでふみつけてでもつれていくよっ!!」
「俺の立場って一体……」


 同日、19:00、学園一般校舎屋上

 ミラーシェイドが星のきらめきを反射している。
 そーしゅは、この寒空の下、屋上に一人たたずんでいた。
 HMの体を持つだけに、寒さを感じることはない。だが、こんな夜に一人でいれば必
然、寒さを感じるものだ。体ではなく、心が。
 トレンチコートの襟を立てながら、そーしゅは誰にいうともなくつぶやいた。

「来栖川のパーティにでももぐりこめばよかったかな……」
「すみません、無理を言いまして」

 ぱちん。
 ミラーシェイドを外して、声の主を確認した。
 屋上の入り口に立っていたのは、純白の騎士団正装に身を固めたとーるであった。

「まぁ、ただ普通のパーティよりは楽しそうだから、こっちを選んだのですが」
「いわば一発ネタですけど」
「年に1度だし。いいんじゃないですか、こういうのも」
「では、準備をはじめましょう」

 とーるのマントとそーしゅのコートの下からは、無数のコード、アンテナ、機材、
その他もろもろのジャンクともつかないパーツが林立していた。
 一つ一つのパーツをつなぎ合わせ、とーるとそーしゅは得体の知れない機械を作り
上げていった。


 同日、20:45、校舎内

「教頭先生、えらく慌ててたけど……何も起こりそうにないなぁ」
「そうですね、へーのきさん」

 薄暗がりの校舎の中を、来栖川警備保障のへーのき=つかさとDセリオ、Dマルチ、
Dガーネット、Dボックスのそうそうたるメンバーが巡回している。
 夜の校舎の雰囲気は結構不気味なものだが、そこはそれ、慣れてしまえばどうとい
うこともない。へーのきは悠然と歩いている。
 だが、普段ならそれ以上に落ち着いているはずのDセリオやDマルチのほうが、ど
ことなく浮き足立っている、というか地に足がついていない。
 へーのきは首を傾げるが、特に理由が思い浮かばない。よもやDシリーズがクリス
マスでもあるまいし……。

「セリオさん、メンテナンスきちんとうけてる?」
「ひゃうっ!?」

 にゅーっとDセリオの前に回りこんで、へーのきが顔を覗き込む。
 その様を見ていきなりDセリオが驚いて小さく飛び上がる。それを見てへーのきの
ほうが今度は驚いた。

「……なんか変だよセリオさん。悪いものでも食べた、って、そんなわけないか」

 らしからぬ態度でしゅんと小さくなるDセリオを見て、へーのきは力いっぱい悩ん
だ。
 これはいったい何のサインなんだろう……?
 と、そこまで考えたところで、廊下の曲がり角の向こうから話し声が聞こえてきた。
すいっとへーのきは集団の先頭に立ち、身構える。


「あうーすみませーんせっかくのクリスマスなのにぃぃぃぃぃ」
「いいんですよマルチさん」
「そうそう、気にしないで。マルチといっしょにいられればそれで十分」

 小さいマルチの頭越しに、天神昴希とセリスが熱い視線を交し合っているが、当の
マルチには見えていない様だ。
 ビームモップを構えるこぶしに必要以上に力がこもっているのは双方ともである。
 そんな3人を見て、へーのきはほっと息をついた。

「やぁマルチ、天神さん、セリスさん」
「あ、へーのきさん、こんばんわですぅ」

 いち早くへーのきに気づいたマルチがぺこちゃんとお辞儀する。
 ここで初めて、へーのきたちに気づいた昴希とセリスが緊張を解いた。

「こんな日にまで巡回かい? 大変だね、Dマルチ」
「……それが仕事です」

 マルチがいるのにDマルチにも声をかけますかセリスさん……。
 苦笑しつつ、昴希はへーのきにまじめな顔を向けた。

「特別巡回というのも珍しいですね」
「教頭先生からのじきじきの依頼で。なんか怪文書が来たとか来ないとか……」

 このとき、びびびびくっとDシリーズ全員とマルチが背筋を震わせたが、へーのき
たちは気づかなかった。

「ビクビクデス、ビクビクデス」
「「「……?」」」

 Dボックスが気にかけられないのはいつものことであった……。


 同日、20:59、一般校舎屋上

「60秒前、20秒前からカウントダウン開始」
「プログラム調整完了。接続状況良好」

 無数のコードを体中に這わせるそーしゅと、空間展開型のディスプレイを複数開い
て状況をモニタしているとーる。
 さっきのジャンクパーツは剥き出しの状態で放置されていたが、各々はコードで結
ばれて起動状態にある。
 そーしゅととーるをコアにして、屋上はオープンフィールド型のスーパーコンピュ
ータと化していた。

「20、19、18、17……」
「最終プロテクト解除。攻性プログラム展開」

 座して動かないそーしゅに対して、とーるはひっきりなしにモニタに向かって音声
入力や擬似キーボードを使ってコマンドを飛ばしていた。

「10、9、8、7……」
「アクセス権限固定。インタラプション……」
「3、2、1、0!」
「RAID-GIG、Go!!」


 そして、学園内すべての電源がいっせいにダウンした……。
 闇が、訪れる。


 同日、21:01、図書館カフェテリア

「うわわわわ、真っ暗だよ停電だよ懐中電灯とろうそくと火打石と灯篭が必要だよ避
難するとなったらカンパンとかミネラルウォーターも必要かなぁあと缶詰とかも持っ
ていくから缶切りも必要だよ十徳ナイフの缶切りって使いにくいんだよぉぉぉぉっっ」
「……落ち着いて、たけるさん」

 苦笑しつつ、いつものように慌てている川越たけるをなだめていた菅生誠治は、ふ
と窓の外に目を向けた。
 図書館どころか、校舎のほうも真っ暗になっている。

「これは、主電源が落ちてるな。非常電源がもうすぐ動き始めるはずだが……」

 だが、誠治がいくら待っても、電源が復旧する気配はない。

「何があったんだろう? おい電芹……!?」

 さっきから静かにしている電芹に声をかけた誠治は、その姿を見て言葉を失った。
 電芹は、カフェテリアの真ん中で静かにたたずんでいた。ただ、その体がほのかに
発光していることを除けば、であるが。

「あれれぇっ? 電芹、光ってる……」
「HMには体表温度の調節を行う機能もある。非常時のためのバックアップもできるよ
うに、発光素子も内蔵されているが……これは……?」
「こっちも光ってるわ」

 保科智子がソファーの上で抱きかかえているちびまるも、同じように体表を光らせ
ていた。

「どないしたんや、ちびまる?」
「うふふふふ、ともねえちゃーんっ」

 ちびまるは智子にすりすりとなついているだけで答えない。

「もうしばらくお待ちください」

 電芹がたけると誠治にぺこりと大きく頭を下げた。
 顔を見合わせる二人に、何が起こるのかわかるすべもなかった。


 同日、21:05、一般校舎屋上

「そろそろですか?」
「そろそろでしょう。RAID-GIG、2ndStage、Go!!」


 同日、21:05、校舎内

「静かだねぇ」
「いやまったく」
「シズカデス、シズカデス」
「「「箱は黙ってろ」」」
「ツッコミデス、ツッコミデス」

 Dボックス以外の4体にも、体表発光は起こっていた。
 へーのきたちはあまり気にしていないようだが。

「これが、教頭先生が気にしていた怪文書の内容かなぁ?」

 何の気なしにへーのきが口にする。答えを期待していない独り言に近いものだが、

「そのとおりです」
「……セリオさん、何を?」
「そのとおりなんですよ、へーのきさん」

 Dセリオがはっきりと答える。
 一瞬、状況が把握できていなかったが、次の瞬間へーのきの表情が一変する。

「セリオさん、よもやと思いますが、自分の意識は保っていますか?」
「私は正常に稼動しています。ただ、今朝来たメールのプログラムにしたがって現在
は行動していますが」
「……もうのっとられていたのかっ!?」

 怪文書の送り主にクラックされてしまったのではないか、とへーのきは心配してい
る。そうそう簡単にHMの制御プログラムを改変できるはずはないのだが、世の中に絶
対という言葉は存在しない。学園に通う生徒ならば誰もが知っている普遍の事実であ
る。
 心底気遣うへーのきの表情を見て、うれしそうな顔になるDセリオ。こういう表情
はめったにどころかまず見たことがない。

「Dセリオさん、そろそろ時間ですよぉ?」

 これまた柔らかい光をまとったマルチがDセリオに声をかける。

「はい、わかりました。それでは待ちましょう」
「……そうですね」
「ワクワクシマス」
「ワクワクデス、ワクワクデス」

 Dシリーズが静かにたたずむ。
 マルチもそれに並ぶように立つ。

「……きれいだ」

 つぶやいたのはセリスか昴希かはたまたへーのきか。
 そして、しばしの沈黙の後、どこからともなく何かが聞こえてきた。


 同日、21:06、学園校門前

「しーしょーっ! こっちこっちーっ!!」

 大手をぶんぶん振って風見ひなたと赤十字美加香を呼んでいるのはルーティである。
 彼女の体もマルチたち同様、ほの明るく光っていた。
 街灯すら消えて、周りの光量ははっきりいって少ない。だから余計に今のルーティ
はよく目立っている。
 近づいてみると、ルーティの周りにあと2つの光源。
 その周りには……、

「おう、風見じゃないか」
「し……いや、西山さん」

 マールのそばには西山英志、その傍らに柏木楓、楓の背後で西山に殺気を放ってい
るのがXY-MEN。

「保護者会かい、今晩は?」
「OLH? 何でまた……」

 ティーナのそばにはOLHと笛音、それにカレルレン。
 マルティーナに関わった人々が集う形になったようだ(一部例外あり)。

「もらってばかりじゃ悪いからね、師匠」
「私たちからも、クリスマスプレゼントなんです、英志お兄ちゃん」
「ボクもボクも! ダンナ様たちにプレゼント!」

 何のことだかわからない保護者たち。
 彼らを沈黙が覆う。
 そのとき、ふとマールたちが校舎を見上げた。
 そこから、何かが聞こえてきた。


 同日、21:07:00、校舎内

 マルチとDシリーズが目配せを交わす。
 Dボックスは特に変化はなかったが……。
 Dマルチがマルチの背中を軽く押した。
 マルチが照れくさそうにしつつ一歩前に出る。

「何が……」
「「始まるんだ?」」

 へーのきと昴希とセリスが固唾を飲む。
 そして、マルチが大きく息を吸った。

 ♪ I'm dreaming of a white Christmas ♪

 唱和するDシリーズ。

 ♪ Just like the ones I used to know ♪


 同日、21:07:30、図書館カフェテリア

 どこからか歌声が聞こえてくる。
 それにあわせて電芹とちびまるが静かに声を重ねていく。

 ♪ Where the treetops glisten
   and children listen    ♪


 同日、21:08:00、仮眠館ホール

 仮眠館の自室でうとうとしていた幻八は、物音に起こされてホールに向かった。
 こんな時間に誰か来たのか?
 そんなことを考えながらホールに入る。
 すると、同居人のティリア、サラ、エリアのフィルスノーン3人組がホールの大ス
クリーンに見入っていた。
 映画でも見ているのか? と思った幻八が画面を見ると、そこには信じられないも
のが映っていた。

「……まや……?」

 自分の中にしか存在しないはずの「まや」がスクリーンに大写しになっている。
 何が起こったんだ!? と叫ぼうとしたその口は、遠くから、そしてそれに重なる
ように聞こえてきたスピーカーからの歌声にさえぎられた。

 ♪ To hear sleigh bells in the snow ♪


 同日、21:08:30、某所・コクピット内

 ♪ I'm dreaming of a white Christmas 
   With every Christmas card I write ♪

「スタンダードナンバーか……シャロンの歌を聞くのも久しぶりだな」

 学園の外にいて聞こえてこないはずの合唱とともに、歌姫の美声に聞きほれるYF-19
であった。


 同日、21:09:30、学園校門前

 ♪ May your days be merry and bright 
   And may all your Christmases be white ♪

 伸びやかなティーナの声、ちょっとだけ押さえたおすまし気味のルーティの声、心
底恥ずかしそうにしているマールの声。
 それが微妙なハーモニーをかもし出し、どこからともなく聞こえてくるマルチ、セ
リオ、Dシリーズたち、電芹、ちびまる、まや、シャロンの声と解け合い、重なり合
っていく。

 風見ひなたは自分の冷えた手を赤十字美加香の首筋にあてがう。
 ひやっと飛び上がった美加香は、苦笑しつつその手に自分の手を重ねた。

 柏木楓の右手を握る西山英志はXY-MENを手招きした。
 怪訝そうな面持ちで近づくXY-MENは、それでも差し出された楓の左手を取って柔ら
かく握った。
 今日だけだぞ、という西山の無言の圧力が果たして伝わったかどうか……。

 いつのまにかティーナと二人でいっしょに歌っている笛音とてぃーくんを見ながら、
OLHとカレルレンは白い息を吐いた。

 あうぅぅぅ恥ずかしいですぅぅぅ(その1)。
 天神昴希とセリスは真っ赤になっているマルチの目の前でワカメ涙を流して感動し
ていた。

 あうぅぅぅ恥ずかしいぃぃぃぃぃ(その2)。
 Dセリオは必死になってサウザンドミサイルをぶっぱなしそうになる自分を押さえ
つけていた。
 へーのき=つかさは苦笑しつつ、そんなDセリオの肩をぽんぽんと軽く叩いている。

 こぽこぽこぽ。
 川越たける手ずから注いだ紅茶を、菅生誠治と保科智子は小さく掲げてゆっくりと
味わった。
 智子の膝の上で幸せそうに歌うちびまるを見て、電芹も柔らかく微笑んでいる。


 同日、21:10、一般校舎屋上

 なんとか、うまくいきそうだ。
 とーるは各々の監視下にあるHMたちのタイミングシンクロに全精力を注いでいた。
 そーしゅはプログラムの監視と外部ネットワークからの干渉遮断で手一杯。
 だから、第三者が屋上に上がってくることに関しては極めて無防備であった。

「こんな時間に屋上で遊んでるのは誰かなぁ?」

 ぎくぎくっ。
 そーしゅととーるが屋上の出入り口を見ると、そこには誰あろう、柏木千鶴校長先
生が立っていた。

「予告状を出すのはいいけど、もうちょっとわかりやすくしないと、足立さんがいら
ない心配でぎっくり腰になるわよ」

 しまった……この状態ではそーしゅもとーるも動けない。
 つかつかつか。
 どうしようどうしよう。
 どきどきしまくっていたとーるの肩に千鶴の手が置かれる。

「どうせやるなら最後までしっかりね。学園内の管制プログラムの管理者権限パスワ
ードをセリオちゃんに聞いたことも、一時的とはいえ非常電源管理まで自分の支配下
に置いたことも、ぜーんぶチャラにしてあげるから、きちんと、やりなさい」
「はっ、はいぃぃぃぃっ!?」

 何でそんなことまでばれたのだろう?
 そう思ったとーるは千鶴の背後に複数の人影を見た。

「…………」
「最後の仕上げ? そうね、それじゃ最後はオカルト研の皆さんにお願いしましょう
か」

 今度はそーしゅがぎくぎくっとする番である。
 セリオに伴われてやってきたのはあろうことか魔導師ルックの来栖川芹香と使い魔
のエーデルハイドである。
 その後ろに控えるのは神凪遼刃、神無月りーず、沙耶香、T−star−reverse、
東西、トリプルGのオカルト研のメンバーだ。
 一体、この連中は何を始めようというのか?
 芹香の呪文に唱和するように、各メンバーがばらばらに呪文の詠唱を始める。
 儀式魔法ではないようだが……。

「……何が起こるんですか?」
「なっ、あれはっ!?」

 そーしゅととーるは、空間に魔方陣がばらばらに形成されていくのを見た。
 それはやがて、魔法陣同士を重ね合わせ、正多面体を形成していった。

「立体積層型多重魔法陣……あらぁ、芹香さん、本気ね」
「…………」
「力を押さえるためには、力を発揮する以上の力が必要です? なるほど、だからこ
れだけの術者をそろえたのね」

 魔法陣はやがて巨大な門に姿を変え、異界からあるものを召喚した。

「……氷の女王……」

 誰ともなくつぶやいた言葉のとおり、門から現れたのは氷雪と冷気をつかさどるも
の、仮名を「氷の女王」と呼ばれる存在であった。
 芹香が腕を一振りする。
 すると、「氷の女王」は軽くうなずいて、芹香と同じように腕を一振りした。
 程なく、辺りの気温が下がる。
 ……じゅっ……。
 オーバーヒート限界で稼動しているそーしゅのボディの上で、何かが蒸発した。

「これは、雪?」

 静々と、辺りに粉雪が舞う。
 芹香が一礼すると、「氷の女王」はその属性に似合わないやわらかな微笑とともに
門へと還っていった。

 ちらちらと、雪が舞う。
 みんなの元に雪が舞う。
 White Christmas ,
 Merry Christmas .


 ♪ I'm dreaming of a white Christmas 
   With every Christmas card I write 
   May your days be merry and bright 
   And may all your Christmases be white

「いい曲だね、とーるくん」

 最後の最後に屋上に上がってきたのは、新城沙織と城下和樹であった。城下は手に
大きな箱を抱えている。

「しろりんくんがケーキを焼いたんだって。みんなで食べよう!」

 一瞬、とーるは城下の顔をうかがった。
 苦笑していたが、まぁ、しかたないよね、という表情で城下はひとつうなずいた。
 何気ない奇跡。
 聖夜にだけ許される、白い奇跡が舞い降りてきた。

(了)

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 人これを力技という……。
 構想一瞬、製作4時間強。
 もっとドタバタにしてやろうと考えたりもしたんだけどこれが限界だぁ。
 強引に出演させてしまった皆さん、申し訳ありませんっ!m(__)m
 皆さんのクリスマスが良き物であることを願いつつ。
 Merry Christmas!!

 って思ってたら掲示板が落ちてたんだよねぇ(;_;)
 せっかくだからアップしておきます……。