Lメモ 「あるうららかな午後」 投稿者:東西
「腹減ったなー」

「しょうがないよ、浩之」

 昼休み、校庭をとぼとぼと二人の青年が歩いていた。

「雅史、お前は何で買わなかったんだよ?

 お前は普通にスタート切れたんだから買えただろうが……」

「浩之が買えなかったのにその目の前で僕が食べたら恨まれるでしょ?」

「いってろ!」

 双方とも笑いながら会話している。ホントに仲がいいようだ。

 目つきが悪い方が「藤田浩之」、

 絶えず笑顔を浮かべていそうな方が「佐藤雅史」、

 二人は幼なじみであり、今までずっとその関係を保ってきた者達、

 微風が二人の間を通り抜ける。

「!?」

 浩之が鼻を少しぴくつかせる。

「どうしたの?」

「いい匂いがする……」

「いい匂い?」

 浩之はしばし辺りを見回し、一つの人影を見つける。

「あれは……だれだ?」

 浩之の視線の先、そこは校庭の中でも自然を残し少しした林のようになっているところ、

 そこに一つの人影がある。

「あんまり見ない人だね?」

 雅史もその人影に視線を向ける。

 しかし、浩之は人影も気にはなっていたがその人影の前に広げられている物に気が向いていた。

「何かいっぱい食い物持ってるな……少し分けて貰うか?」

 浩之が誰ともなしに呟く、

「初対面の人にそれはないんじゃ……」

 雅史は長いつきあいからこの男が言った以上実行することを知っていた。

「まあ、話せば何とかなるさ」

「まったく……」

 浩之は嬉しそうに、雅史は苦笑を浮かべて人影に近付いていった。



   Lメモ 「あるうららかな午後」



 人影=東西は、この二人が来たときには絡まれたのかと思った。

 無理もない、片方は明らかにガラが悪いのだから。

「何か用ですか?」

 東西はなるべく穏便に済まそうとおとなしく聞いた、怪訝な表情が浮いていなかったという自信はないが、

「ん、いや。あんたが、あんまり見ない顔だったからちょっと気になってな」

「驚かせたのならごめんね。

 別に、どうこうしようと言う理由じゃないから……」

(別に悪い人たちじゃなさそうだ……)

 その人達の雰囲気(片方はぶっきらぼう、片方は人当たりがよすぎる)から、

 何となくの勘が働いて東西はそう判断した。

「そうですか、じゃあ、自己紹介しますね。

 この間、転校してきた一年生の『東西』です、よろしくおねがいします」

「ああ、オレは二年生の『藤田浩之』でこっちが……」

「同じく二年の『佐藤雅史』、よろしくね」

 簡素な自己紹介が終わった。

 東西には一つ気になることがあった。

 浩之の視線である。

 東西は今一つの「もなか」を持っている。

 東西の好物の和菓子である。

 浩之の視線は自己紹介の最中からそれに向かっていた。

 東西の中で少し悪戯心が芽生えた。

 「もなか」を持った手を左右上下に動かしてみる。

 すると、浩之の視線もあからさまにそれの後を追う。

 雅史がそれに気づいて、クスリと笑う。

 その控えめな笑いに浩之がハッとなる。

 浩之の次の行動は、

「いいかげんにしろ!」

  ゴン!

「いったーーー!?」

 東西の頭を拳固で殴る、だった。

「先輩を玩具にするな!まったく……」

「すいません……」

 半べそで謝る東西、

「浩之も悪いんだよ。ごめんね、東西君。ところで……」

 雅史が少し言いにくそうにしていると、

「すまねぇが、食い物が余計に余ってるようなら分けてくれねぇか?」

 この二人ホントに良いコンビである。

「いいですよ。」

 そういうと東西は、懐からたくさんの和菓子(「もなか」をはじめ、煎餅、饅頭などなど)

 たくさんの物を出す、冗談抜きで一人が食べるようには見えない量である。

 というか、お前何処にこれだけの食い物を入れてた!?

 食べ物の分配を頼んだ二人も目が点になっている。

「お好きな物をどうぞ、飲み物は緑茶で良いならここにありますから」

 そういって最後にやや大きめの水筒を差し出す。

「あ、ああ。サンキュ」

「あ、ありがたくいただくよ」

 二人とも笑顔が強張っている。

 ………

「で、何でお前はここに来たんだ?」

 各々好きな物を食べながら談笑している。

「……外で色々とありまして」

「ふぅん……」

 浩之はそれ以上追求してこなかった。

 東西の表情が少し、ホントに少しだけの変化だが寂しげな物になったのに気づいたから……

 雅史は、浩之のその辺のことがよくわかっていたために何も言わなかったが、

 東西は少し驚いていた、大概、今のような答え方をすると人は追求してくる。

 が、目の前の先輩はそれをしてこない、何か新鮮な感動があった。

「ありゃ、なくなっちまったな。」

「そうだね」

 東西が持ってきていた和菓子は全て平らげられていた。

 一人で食べる分には多くても三人では少し少な目であったようである。

「オレ、少し菓子買ってくるわ」

「良いですよ、僕が買ってきます」

「浩之が自分から行くって言ってるんだから任せとくのが賢いやり方だよ」

「おう、先輩の言うことには従っておけ」

「でも……」

 その後も何回かの言葉のキャッチボールが行われたが、

 結局、先輩二人組に言い負かされる形になる東西だった。




(なんでこんなになってんの?)

 今、東西にとっては信じられない状況になっていた。

 酒が入っていないどんちゃん騒ぎ。

 酒抜きでも人はここまでテンションを上げられるものなんだなぁ、と思わず感嘆してしまいそうな光景だった。

「ん?どうした。東西?」

 この声の主は幻八である。

「別に、少し驚いているだけですよ……」

「そうか……こういう場はまだ苦手か?」

「そうですね……」

「早く慣れた方がいいぞ、もっと多くの人たちと一緒に騒ぐときがあるからな!」

 そういって笑い出した。

「だけどここまで人が集まるなんてすごいですね」

「そうだな、中心にいるのが、あいつだしな」

 そういうと幻八は志保とカラオケをやっている浩之を見る。

「藤田先輩だから?」

「ああ、なんでか知らないが人望だけはあるやつだからな」

 それを聞き何故か東西には納得できた。

 自分が転校してきた理由を聞かれたときのさりげない優しさを思い出し……

 しかし、この宴、最初はここまで多くはなかった。

 浩之が食べ物を買ってきたとき、一緒に何人かの人たちが付いてきていた。

 ほとんど知らない人達だったが、その中には

 東西にとってオカルト部の先輩「来栖川芹香」もいた。

 東西は浩之に何でこんなに人が付いてきたのかを聞いてみたが、

「歩いてたら見付けたり、見つかったりしたから誘ってみた。」

 と言う返答が帰ってきた。

 ホントに色々な人達を引き連れてきた物である。

 三年生では、来栖川芹香、

 二年生では、神岸あかり、長岡志保、保科智子、宮内レミィ、雛山理緒、

 一年生では、姫川琴音、松原葵、

 皆、東西に挨拶をすると一緒になって食事を楽しんでいた。

 そうすると今度は、その様子を見ていた人達も各々好きな物を持って寄ってきた。

 そういう人達も一応の挨拶を東西にしてから自分勝手に楽しみだした。

 その中に、これまた同じクラブに所属する「ジン=ジャザム」と「神凪遼刃」の姿もあった。

 浩之だけの人望ではないとはわかっているが、人望を持つ人を集めることには感嘆できる。

(確かに……慣れないな。こういうのは……)

 その想いとは裏腹に東西の表情はゆるんでいた。

 それに、一目見てから気になる子もいた。

(姫川琴音さん……だっけ)

 何故かは知らないが彼女には惹かれる物を感じていた。

 その彼女の周辺では楽しそうに数人の人達が話をしている。

 神凪もその輪の中に入っている。

(楽しそうだな……)

 そう思う自分自身に東西は困惑していた。

 人の輪の中に入りたいと思ったのは本当に久しぶりである、そんな感情すら忘れていた。

「俺のことは気にしなくて良いから行きたいところに行って来いよ」

 いきなり傍らにいる幻八が語りかけてくる。

「誰も貴方を気にしているわけではありませんよ」

 幻八はそれ以上何も言わずに、フッ、と笑う。

 東西は立ち上がって琴音を中心とする輪の方に歩き出した。

「眼鏡は外すなよー。」

「わかってますよ」

 東西は振り向かずに片手を上げて幻八に応える。

「全く世話の焼ける」

 そう呟き幻八も場所を移動させた。

「ここ、いいですか?」

 東西が琴音の輪の中に居場所を求める。

「ああ、東西さんか、ならここにどうぞ」

 神凪はそういうと、

 自分の隣にスペースを空けてくれる。

 皆笑って席を勧めてくれるが神凪が知り合いと言うことと、

 当初の目的である琴音の近くということでそこにきめたようである。

「すみません、神凪さん」

「どういたしまして……

 そういえば命ちゃんは?」

「いますよ……いますが……」

「出して上げなよ。誰も変な目で見ないって。」

「はぁ、わかりました」

 ぽん

 軽快な音とともに命が東西の頭に出てくる。

『はじめまして、命と申します』

 命が一礼をすると、

「「「はじめまして」」」

 を言う声がその場のみんなから発せられる。

 誰も命のこと、自分のことを奇異の目で見ない事に今日何度目かの驚きを感じた。

 まぁ、この程度のことで驚くような人間はこの学園には居ないが……

 それからみんなで色々なことを話した。

 腹を割って話すことはとても気持ちがよかった。

(ここでなら変われるかもしれない……)

 そう思いながら東西は午後の宴を楽しんだ。

 ……午後の授業はどうした?(どうでもいいか……)


  了


東西:ついに完成しました。Lメモ第五弾!
命 :何でこの楽しそうな話に私が一言しかないのよ!?
東西:ごめんね、今回お前も引き立て役だから……(笑)
命 :おもしろくなぁーい!!
東西:やっとリーフキャラを出すことが出来ました。
命 :えらく偏った出演ね?
東西:SS使いの皆さんはもう少し勉強してから出させていただこうと思いまして……
命 :しかも、出演者が多すぎて書き切れてない!
東西:その通りでした、しかし、後悔はありません!!
命 :言い切ったわね
東西:この学園ならこのくらい時を忘れて楽しく騒げるはずだという個人的願望が入っておりますが……
命 :結局いいわけか!?
東西:えー、自分ならこのキャラの近くにいる、と言う方、想像の中で居て下さい、すいません。
命 :まだ書くの?
東西:書かせていただきます。いつか……