チ、チュン、チュン ユサ、ユサ 「ちょっと、ねぇ、あなた、起きてくれない?」 眠い……… 「ちょっと!ねぇ!」 うるさいなぁ………わかりまし……… バシッ! 「てぇぇぇえ!?」 「ちょ、綾香さん!?」 「あんた初対面の人間にいきなり……」 Lメモ 「老樹先見・後編」 なん、何なんだ?叩かれたのか?ほっぺが痛いんだが……… 「だって、起きないんだからしょうがないでしょ!」 この人に起こされたのか………でも何で? 「この立て看板に書いてある”コヤツ”って、あんたのことでしょ?」 黒髪のショートの人が尋ねてくる………立て看板? 僕が、身を起こしてその立て看板を見る。 『この老木に用の方はコヤツを起こして下さい』 ………間違いなく僕のことだな……… 「すいません、起こしてくれて有り難う御座います。ちょっと、待ってくれます?」 三人に、しばらく時間を貰い、JJと『命』を起こす。 「朝かぁ」 …………朝だよ、お前が叩かれれば良かったのに……… 『すいません、寝坊をしてしまったようです』 まったくだ、『命』が寝坊するなんて珍しい。 「さて、お待たせしました」 そう言って、僕は「ご老体」に術をかける。 「じゃ、俺達はいつも通り離れるか」 そう言って僕たちは、その場を離れる。 「何なの?あいつら?」 「さあ?」 「人の方は、たしか東西さんとか言う人だったと………」 『ま、後であの坊と話せば良かろう、そう言うことは………』 三人共が一斉に振り向く、 綾香嬢、好恵嬢、葵嬢じゃな………葵嬢は口がぱくぱく動いておるようじゃが……… 「あ、あんたのお姉さんが言ってたのはこのこと?」 「らしいわね………ちょっと私も驚いたわ」 「………………」 成る程、芹香嬢から聞いてきたのか……… 『しかし、綾香嬢ちゃん、花を持ってくるとは珍しいのう』 綾香嬢の手には、色とりどりの花が束になっておる。 「供え物よ、あなたの前に飾るつもりで持ってきたの」 『ほう、嬉しいが、普通、墓とか、おらんようになってから供えるんじゃないのか?』 「死んでからじゃ見れないでしょ?綺麗な物は」 『ふぉっふぉっふぉ、こりゃ一本取られたのう』 全く持って、綾香嬢ちゃんらしい…… 「あ、あの………」 葵嬢がおずおずと前に出る。 『なんかいのう、葵嬢ちゃん?』 「えっと、今まで有り難う御座いました」 そう言って、礼をする。 『なんか、礼をされるようなことをしたか?』 「えっと、木陰で休ませて貰ったり………」 『律儀な子じゃのう』 「私達もそれで来たんですけど………」 『ふぉっふぉっふぉ、こりゃ悪かったのう、好恵嬢ちゃん』 ふん、とそっぽを向く、これくらいで拗ねてくれるなよ、好恵嬢。 『綾香嬢ちゃんに、葵嬢ちゃん、今日は取り巻き連中はおらんのか? 好恵嬢ちゃんも、beakerの坊主もついておらんし………』 からかい口調で言ってやる。 「今日は女だけで来たのよ!」 綾香嬢が舌を出す。 好恵嬢は慌てておるし、葵嬢はよくわかっておらんようじゃのう………皆、先は長そうじゃな。 『まぁ、良いわ………思われることに慣れすぎるなよ、年寄りの余計な戯れ言じゃがのう』 綾香嬢は、鼻を鳴らし、 他の二人は、先の反応と変わらず………それでも心なし毅然とした雰囲気を出したか……… 『どうせ、朝の練習のついでに来たんじゃろう、もういかんと時間がなくなるぞ?』 そう言うと、三人とも、時間に気付き、礼をして帰っていった。 「あの人、来栖川先輩に似てたなぁ」 「おう、性格は正反対だったけどな」 『お前達しらんのか?あの嬢ちゃんは、来栖川綾香、芹香嬢の妹じゃよ』 『どうりで、似ているはずですね』 東西達は再び「ご老体」の元でたむろしている。 『お前達………もう授業が始まるんじゃないのか?』 「「ご老体」との約束の方が大事」 東西が飄々と言う。 『授業中のことはしょうがなかろう!良いから行って来い!!』 「いつもあんなにおこんないのに…………」 『口実にされたからではないでしょうか?』 授業中、東西と『命』は、ぼそぼそと話していた。 『一人で………というか、周りの方々とゆっくり話すこともあるでしょう』 「周りの方々?」 『ええ、周りの方々です』 『なぁ爺さん、本当に切られる気か?』 『人間達の技術を使えば何とか長らえるんじゃないのか?』 老木の周り、木々達が人には聞こえない会話をしている。 『言ったじゃろう、長く生きたから良いとな』 『泣いてる人間も結構いるじゃないか………』 『悲しまずに強くなれるモノは存在せんよ………』 『本当に、もう良いのか?』 『色々見れたからのう……本当にもう良いよ………』 『そうか………』 ・昼休み 「授業間の休み時間なんて、さぼる気にならなきゃ何もできないよなぁ」 「いや、結構遊べるもんだが………」 『東西、寝てたでしょう』 東西達は、食事(和菓子)を、食べてくつろいでいる。 「怠慢だな………」 JJが、突っ込む。 『まぁ、いいわい、万言を交わすことだけが会話ではないからのう』 「そんなもんかねぇ?」 『そんなもんじゃ』 「ところで、来客が来る気配はないのか?」 JJが、東西に尋ねる。 「だめ、さっきから聞いてるけど来ない」 フェアリーテイルで、定期的に確認を取っているようだが、反応がないらしい。 『昼休みは多分無理じゃろうのう………被害者がよく出ておるよ』 「購買部か………よっかたなぁ、菓子とは言え、腹に入れることが出来て」 「感謝しろよ?」 『東西は、お菓子は多少控えないと、体に毒です』 『命』が諭すが、東西は、「ご老体」に身体をもたれさせ、眠る体勢に入る。 「寝るか?昼休みに」 『今日で最後じゃ………好きにやらせてやれ』 その言葉を聞き、JJと、『命』も微睡みに身を任せる。 「東西さん、東西さん……」 むぅ……… 聞き覚えあるなぁ………神凪さんか? 「またさぼってたんですね?」 姫川さんの声? 「………ん、おはよ」 「おはよじゃありませんよ、午後の授業一つ終わりました」 目の前に呆れたような神凪さんと、姫川さんの声がある。 「琴音さんを、お連れしたんですが………」 姫川さんが、老木を見上げている。 「わかりました、神凪さんは?」 言いながら、術を「ご老体」にかける。 「放課後に、オカルト研究会のメンバーで来ることになってますから今は結構です」 「じゃ、あっち行きましょうね」 JJと、『命』を起こし、琴音だけを残して、皆離れる。 『こんにちは、琴音嬢ちゃん』 「こんにちは」 にこりと微笑んで答える。 『嬢ちゃんもお礼かい?』 「ええ、色々と慰めていただきましたから……」 『まったく、皆、勘違いしとるのう……何かしらを乗り越えたのは皆自身の力じゃというのに………』 皆、自分を過小評価しすぎじゃな…… 「でも、貴方の下にいると落ち着きましたから」 『ま、その程度じゃのう、嬢ちゃんの周りにも良い人間がおることに気付いたようじゃし、後はそやつらにまかせるよ』 くすっ、と笑うと、琴音嬢は坊主達が去った方に視線を向ける。 「ええ、良いお友達です」 良いお友達か………この嬢ちゃんに想いを寄せる連中も先は長いな……… 『全く、このゲームを見届けられんのが心残りじゃな』 「はい?」 『何でもない、こっちの話じゃ』 ま、もう決めた事じゃ、あの世で誰かにきくとしよう、いつかな。 「本当に有り難う御座いました………」 ぺこりとお辞儀をする。 『元気でな……』 「はい」 そういうと、また、にこりと笑って背を向けて学舎(まなびや)の方へと向かう。 『おお、そうじゃ、東西の坊も連れてってくれ、次の授業もサボりかねんからのう』 「わかりました、最後まで、お気をお揉みになりますね?」 振り向いて、くすくすと笑う。 『間違いなく、この学園で五指に入るぞ、あのサボり性は』 思わず溜息が出るほどにのう……… きーん、こーん、かーーん、こーーーん……… 今日、最後の授業が終わったか……… ? 誰か来たか? もうしばらくしたら坊が来るんじゃが………間に合うか? 色眼鏡かけて、学生服か……Yinの坊主じゃな。 アイラナ嬢は………連れてないのか?珍しい……… 歩みが止まる ふぅ、坊はまにあわんかのう……… まったく、誰もいないんじゃから、色眼鏡外せばよいのに……… 見上げられとるが………いまいち表情がよめんな、色眼鏡のせいで……… しばらくして、背を向ける。 ………なんじゃ、もう帰るのか? ん?もう一人来た………おお、坊か! 「あれ?この木にご用の方ですか?」 東西の坊が尋ねる、JJは、伴っていない、『命』嬢はいつも通り頭に乗っておるがな。 「ええ、でも、すみました」 「あ、いえ、ちょっとだけ待ってもらえます?」 Yin坊は、いぶかしんだようじゃが承諾したな。 坊が儂に術をかける。 『際どかったな』 坊に話しかける。 「これでも急いできたんだよ」 苦笑しながら言いよる。 『まぁ、いいわい。Yinの坊主、少し話していけ』 後ろで惚けているYinの坊主に話しかける、全くみんな同じ反応じゃな。 「邪魔者は去りますからごゆっくり」 坊が、Yinの坊主に声をかけて離れる。 『もっとこっちに来たらどうじゃ?』 「あの人の能力ですか?」 尋ねながら寄ってくる。 『そうじゃ、危うく話せずじまいになるところじゃったのう』 「話せるなんて考えてませんでしたから」 肩を竦める。 『アイラナの嬢ちゃんはどうした?』 「レッドテイルさんと遊んでます」 『仲が良いのう、あの二人』 「まったく」 『で、お主は何をしに来たんじゃ?』 「別に、見に来ただけですよ」 『この老いぼれをか?』 「ええ、育てる者としては、貴方ぐらい立派に育てたいですから、ある意味憧れですね」 『儂ぐらいになるのを見届けるのは人間には無理じゃがな、ふぉっふぉっふぉ』 「まったくです」 『アイラナ嬢ちゃん、なかなか親離れせんようじゃのう』 「ですね………」 『本当にさせたいか?』 「そりゃ、もちろん、親離れが出来て一人前ですから」 多少声の調子が変わる。 『実際にその時が来ると結構辛いぞ』 「わかってますよ!」 ムキになるな……… 頭でわかっておっても………その時になればきついものじゃぞ? 『わかっておるなら良いよ、立派に育ててやれよ?』 「立派に育ってるでしょう?愛らしく」 さも、心外だ、と言わんばかりの口調で答えよる。 『違いない、ふぉっふぉっふぉ』 愛らしいという点において異存はないからのう。 「では」 『アイラナ嬢ちゃんにも伝えておいてくれ、達者でな、とな』 「わかりました」 大変じゃな、何かを育てるのは……… 『よく来てくれたのう、皆よ』 「…………………」 『今までお話ししてくれていたお礼です?皆が聞き上手じゃから語っていたまでの事じゃ』 「ご老体」が楽しそうに笑う。 今、芹香をはじめとするオカルト研究会のメンバーが顔を揃えている。JJも、出席しているが。 「だけど、残念です……色々楽しいお話を聞かせてもらっていたのに………」 『儂とて、ダンジョンの中身や、お宝の話やらを聞いておったじゃろう、楽しかったからおあいこじゃ』 「私は主に「ご老体」の、説教を聞かされていたような気がしますが………」 『皆がお前に逃げるんじゃからしょうがなかろう? 儂は楽しかったぞ?異国の話を聞くことが出来てのう』 「僕は、何もできませんでしたね………」 『お主は、見ててあきんかったよ、Runeの坊主と一緒にいる時なんぞなかなか楽しく見せてもらっとったぞ?』 『りーず、トリプルG、神凪の坊も、いつも世間話やら色々してくれとったしのう』 『儂がはなせんときでも、皆儂の周りで色々な話をしてくれとった………お前達に限ったことではないがな』 「ご老体」の声が少しだけ震える。 「泣いてらっしゃるんですか?」 『そうじゃな、涙を流せるンなら流したいところじゃが、ながせんのが辛い所じゃな』 「歳とると、泣きやすくなるっていいますもんね」 誰かが茶化すように言った。 『なに、泣くと言うことは別に悪いことではないぞ………内にため込まぬと言う意味の手段ならば問題ない。 逆に、泣けない者というのは辛い者じゃよ』 「ま、今日は、難しい話はぬき!楽しく行こう!」 JJが、しんみりし出した空気を変えようとする。 『楽しい話しでも誰かしてくれんか?沙耶香嬢ちゃん、あれから、ダンジョンに潜っていたんじゃないのか?』 「ま、菓子でも食べながら聞きましょう、御茶もありますし」 「全部僕の持ち物なんだけど…………」 「東西のおごりだから気兼ねなく行こう!」 「JJ、お前は、もう少し感謝しろ!」 それ以降、皆、楽しい話に花を咲かせていた。 『今日もここに泊まるつもりか?』 「うん、母さんの了承も取ってあるからね」 『あくまでも幻八さんに泊めて貰うというのが条件だったと思うんですが………』 「あの人、面倒見良いんだなぁ………東西を見放さないなんて」 『ふぉっふぉっふぉ、まったくじゃ』 「あんたら、本人前にしてなんちゅうことを………」 既に、オカルト研究会のメンバーは皆去っている。 昨日と同じように、東西、JJ、『命』が残って「ご老体」と話をしている。 すでに、刻は太陽ではなく月が支配する時間。 「明日なんだ………」 『そう、明日じゃな』 「なぁ、「ご老体」死ぬのは恐くないのか?」 『恐くないはずなかろう』 「じゃ、何で大人しくそれを享受しようとする?」 JJが、また話を混ぜっ返す。 「もう十分だ、というのは昨日聞いたが、俺は納得いかないなぁ………知りたい事なんていくらでも出てくることだろう?」 実直な意見である。見聞を広げればそれだけでも、先のことなどを知りたくなる。 『そういうとキリがないからのう………じゃから、もういいんじゃよ、JJ』 「そうだな、人の覚悟に茶々を入れるようなことは無粋だぞ」 「若いうちの当然の疑問だろ?聞かせてやれよ」 いきなり、そういきなり、二人の人間の声が聞こえてくる。 『ほう、耕一坊に、柳川坊か………いや、先生方か』 東西達の前と言うことを意識したのか、「ご老体」が言い直す。 「ジンの言ったとおり、俺達まで坊で呼ぶか?」 「坊でかまいませんよ、実際貴方からすれば俺達は子供ですから」 二人の姿が闇から抜けて、東西達にも認識できるところに来る。 「柳川先生に柏木先生………こんばんは………」 「何をしに来たんですか?珍しい組み合わせですが………」 「そう意外そうな顔をするな………こいつとはそこで偶々あっただけだ」 「俺達がこの木を尋ねてくるのがそんなに以外か?」 柳川は仏頂面で、耕一は子供っぽい笑いを浮かべて言う。 耕一の手には一升瓶が握られている。 「千鶴さんと、幻八から話を聞いてね……ご老体と話しながら一杯やろうと思ってね」 『子供達の前で醜態を見せんようにな?』 「わかってますよ」 『全く以外じゃったわ、お前達が来るとはな』 耕一、柳川は、酒を飲みながら、ご老体と話をしている。 今回は、その二人と共に東西達も同じ場で話を聞いている。 「この周りは静かだからな………読書に丁度良かった………場所を提供してくれていた礼だ」 柳川がちびちびと飲みながら言う。 『じゃな、お主はよく本を読みに来るが………耕一坊の方は、よく昼寝に来ておったな』 「この周りは静かだから」 耕一がふざけて、それでも本音だろうが、柳川の台詞をまねる。 『ふっ、似たものが一人其処におるがのう』 「ご老体」の声に含み笑いのような物が感じられる。 「そうそう、東西、授業には出ろよ、先生方が愚痴ってたぞ」 「は〜い」 東西が小さくなって返事をする。 柳川がつまみ(東西が持っていた、あられ)に手をかける。 同時に、耕一も同じ物に手をかける。 「「……………………」」 ぴたりと二人の動きが止まる。 「「俺が先に手をつけた」」 …………… 『お主ら………そんなことで喧嘩をするな………』 「ご老体」が呆れたように言う。 直ぐさま、東西が、あまり空いていない柳川のコップに酒を注ぎ、JJが、耕一につまみを渡す。 『生徒に心配をかけるでない………』 多分、己が身の心配をしているんだと思うが………… 「「ふん」」 二人とも、よく似ているのに何故喧嘩をするのか………まぁ、似た者同士だからだと思われる。 二人が、この場所を気に入っている理由はあやふやな事しか言わないのでわからない。 先の発言とて、静かな場所は他にもあるのだから、 「ご老体」の所に来たのも、結局父親に対するコンプレックスが元なのかもしれない……… 「ご老体」の、包容力に憧れを持っているのかもしれない……… これらがあっているかどうかわからない、本当のところは、本人達も気付いているのかどうかわからない。 「思いの外長居をしてしまったな………」 柳川がコップの酒を一気にあおりながら言う。 「だな」 『酒を持ち込んだ者が言う言葉か?』 耕一が乾いた笑いを浮かべる。 『二人とも達者でな』 柳川は、鼻を鳴らして、耕一は一礼をして去っていく。 「先生達が来るとは思わなかった」 『何処かを気に入るというのはな、それなりの理由がある物じゃと儂は思うよ』 「じゃ、あの二人が「ご老体」の所に来るようになった理由は?」 『さぁのう………個人のことじゃからわからん』 そういって、大きく笑う。 (知ってるんだろうな………多分、何でも見透かすし………) 『人にはな、皆他人にいえん事があるという事じゃ』 東西の考えを見透かしたとしか思えないタイミングで「ご老体」が、諭す。 「なぁ、東西は何にも思わないのか?」 「なにが?」 「気になることがあるのに死ぬ覚悟ができるかって話だ」 『JJ、お主、まだその事を引っぱり出してくるか?』 「悪いな、俺は気になり出したら納得するまでは我慢ならん質でな」 JJが、鼻を鳴らす。 「正直……僕にもわからない………」 「だろ?」 「でも、いいや、聞いて今の僕にわかるかどうかわかんないし……… これからわかることなら今聞く必要ない、自分でわかった方が面白いし」 『坊らしい答えじゃ』 「わからん!聞けるんなら今きいとく方が良いじゃないか!?」 「だから!言っただろ!自分で理解した方が僕は良いんだって!」 「く!もう良い! ちっ!「ご老体」も教えてくれそうにないし!寝る!」 そう言って、横になる。 なんかぶちぶちと文句を言っているのが聞こえるが、じきに静かになる。 『まったく、馬の好奇心にも困ったもんじゃな』 「馬じゃねぇ!」 その言葉を最後に完全に沈黙する。本当に寝たのかどうかはわからない。 『さぼりたがりの東西にしては上出来ですね………答を簡単に求めないなんて』 今まで沈黙していた『命』が言う。 「別に………気分的なものさ」 皆眠りについた………起きているのは儂と、『命』嬢ちゃんだけか……… 『はい』 東西が起きぬ限り、二人で話せるなぁ………嬢ちゃん 『そうですね………』 ………儂が死ぬところを見ると、先のことを考えるか? 『……………』 東西が、大事か? 『ええ』 いい返事じゃ………東西は、寿命で死ねるんじゃろう? 『…………はい』 そして、嬢ちゃんも死ぬわけではない……… 『…………………』 ………辛いぞ、死によって失うと言うことは………距離をとるというのも手段じゃが……… 『「ご老体」のお言葉とは思えませんね』 そのような寂しそうな顔で笑うでないわ………それに、今となってはもう遅いしのう 『まだ……今回の東西と違い、時間があります………』 時間か………時に、猶予というモノは残酷になるぞ? 『「ご老体」救いがないような言い方ですね?』 ………寿命が違うモノ同士が近くに居るというのはそれだけで残酷じゃよ……… この学園にも、それらについて何時か悩まなければならない者達は沢山居る………誰も手助けはできん。 各々が答えを出さなければならない事柄じゃ。 嬢ちゃん、儂は残酷かのう………嬢ちゃんにこんな話をする……… 『いいえ………「ご老体」は、気付かせてくれました、見つけなければならないことを……だから感謝しています』 笑顔でそう言ってくれると助かる、 儂もJJとかわらん、気になった事は言っておかなければ気がすまんのじゃから……… これで……取り敢えず言いたいことは言えた、明日を……受け入れられる。 『東西の、昔話でも聞かせましょうか?』 そうじゃな、今宵ぐらい眠らずにおくか…………夜は長い、聞けるだけ聞かせて貰うよ。 「東西、起きろ」 「うにゅ〜?幻八さん?」 「幻八さん?じゃない!朝飯だ!」 そう言って、焼いたパンが入っている駕籠を差し出す。 「JJもだ!起きろ!」 「幻八さ〜ん、『命』知らな〜い?」 「お前がしらんのに知るか!!」 「幻八さん、おはよう………」 「『命』〜?」 東西が大きな声を上げる。 『はい、おはよう御座います、東西』 頭上、「ご老体」の、枝の一本から聞こえてくる。 「いたか、ご飯だって、降りておいで〜」 『わかりました』 『命』が降りてくる。 「………何で俺はこんな主夫ぜんとしたことをやってるんだ?」 「幻八さん、このジャム特製?美味しいねぇ」 「まったくだ」 幻八が考え出したと共に、後ろから声がかかる。幻八以外の皆はいつの間にか食べ始めている。 「ん?って、馬鹿野郎!俺の分も入ってるんだから全部喰うなよ!!」 幻八も輪に入り食べ始める。 「さて、まだ時間もあるし………」 食べ終わった東西が、「ご老体」に近付いて、術をかける。 『………』 「? あれ?失敗?」 「ご老体」は何も語っては来ない。 『いえ、かかっています』 『命』も、心配そうに見上げる。 JJと、幻八も何事かと注目する。 「どうした?」 「「ご老体」が、話してくれないんだけど………」 『……………術はかかって居るよ』 やっと「ご老体」が、話し出した。 「何で挨拶もしてくれないんだよ?」 『今日は、もう来なくて良い、話すことはもうないから術をかける必要もない、行け』 つっけんどんにそう言うと、「ご老体」は、また沈黙する。何回か、皆話しかけるが、誰にも口を開こうとしない。 その内、東西と『命』、JJは校舎へと向かう。 残っているのは幻八だけ 「爺さん………ちときつかったんじゃないか?」 幻八が「ご老体」に話しかける。 『これくらいせんと離れそうにないからのう………』 幻八がぽりぽりと頭をかく。 「あいつのことだから、だらだらと術をかけ続けて、伐採する人間があんたの声を聞くかもしれん……か?」 『ああ、そうなると、伐りづらいじゃろう……というか、儂を恐ろしく思い、伐ってくれんかもしれん』 「……表の業者が来るんだろうしな」 『ここに慣れきって居る人間でも結構驚いて居ったからな』 「東西にも困ったもんだ………」 『失うことを恐れておるんじゃよ………親しいモノをな』 「あいつのはちょっと行き過ぎてないか?」 『理解してくれるモノが少ないからな………臆病にもなるじゃろう、お前と違ってな』 幻八が頬をかく、暗に強いと言われて、喜んで良いのかどうか迷っているようだ。 『越えねばならぬ事は皆に多く存在する、坊は、俗世の中でも生きていけるようにせねばいかんのじゃ』 「何故それを面と向かって言わない?」 『己で気付くこともまた大事なことじゃろう?』 「………そうだな」 『お前ももう行け、授業が始まるぞ?』 幻八が時計を確認する。 「だな………じゃあな」 そう言って、去っていく。 昼休みになった。 伐採のための業者が今その準備を行っている。 目の前にはそれ以外誰もいない………と言いたいところじゃが、千鶴嬢が居る。 柔らかい微笑みすら浮かべて、儂を見て居る………仮面じゃとしても、泣き崩れられるよりは良い。 準備が整ったようじゃな。 …………儂という自我はもうすぐなくなる。 しかし………我らは個であり全……… 儂がよみがえることはなくても、新たに芽吹く者達が儂と同じように見届ける…… 同じ考えを持つ者が居るのならそれは儂とも言えよう。 いつか………再び誰かとまみえんことを………… 生徒の誰も、老木の最後を近くで看取った者は居ない。 ただ、遠くから、他の木より大きな老木が見えなくなる瞬間を見ていた。 誰にでも慕われた者が、この学園を去る瞬間を誰もが眺めていた………… =============================================== 東西 :終わった……… 『命』:まず第一声がそれですか? 東西 :良いんだよ………しんどかったんだから……… 『命』:最後の方てこずってましたね? 東西 :僕に言葉を贈るか、お前に贈るかで悩んでた。 『命』:で、結局私ですか? 東西 :ま、精霊の悩みとかは人にはわかんないと思ってね。 『命』:いつも思うのですが……… 東西 :なに? 『命』:暴走してません? 東西 :では、皆さん、読んでくれて有り難う御座いました! 『命』:ちょ、ちょっと!って、何で幕が!? 「幕が両サイドから流れてきて、『命』の声をかき消す………閉幕」 Thanks:Yinさん、オカルト研究会のメンバーの皆さん、幻八さん、JJさん ご出演有り難う御座いました。 出演者:Leafキャラ 来栖川芹香さん、来栖川綾香さん、坂下好恵さん、松原葵さん、柏木千鶴さん、姫川琴音さん 柏木耕一さん、柳川祐也さん…………かな?(汗) お疲れさまでした。 99/02/16