会社説明会行ってる場合じゃなかったよ(おひ)未完成品(涙)  投稿者:u.g
「梓先輩、お弁当、おいしぃです」
柏木梓お手製のお弁当を片手に宇治丁は幸せを感じていた
「先輩が作ったんだから当然でしょ」
「梓がつくったのだから当然だ」
見事にはもる秋山と日吉かおり
つい今までケンカをしていたのにこういうところでは
息がぴったりである
「特に、この唐揚げが絶品でなっっ」
力強く断言する秋山
「卵焼きのまろやかさがまた・・・・」
うっとりとなるかおり
「あああっっ」
今、左右から二人がつついているのは丁のお弁当箱
当然、自分たちの分はお腹に収まってしまった後だ
「ううううう・・・・・」
捨てられた子犬のような目で梓を見つめる丁
「ああ、もぉ。これあげるから泣くなってば」
見かねた梓が自分の分を差し出す
「あーん」
そうなるのを見越していたのかのようなスピードで
丁は狙い澄ましたかのように箸ごと口にする
ごっくん
「わーい」
「なぁあぁあぁっっっ」
「ずるい、先輩。私にもあーんってして下さい」
「はけ、はきだせ。俺にも食わせろぉっ」
と、まぁ相変わらず賑やかと言うか、非常に騒がしかった
そう、いつも同じように・・・

(おかしいな・・・)
だが、そのことに疑問を感じるものがいた
丁である
昨日の雰囲気から言って二人が何らかの行動に出ることは
容易に予想できた。
(なのに・・・)
いつも通りのお昼
いつも通りの景色
彼にとってそれは、逆に不思議だったのだ
(もっとこじれるかと思っていたのに・・・)
途中経過がどうであれ最後のつじつまさえあっていれば
それでよい。彼はそう言う人間である
故に、今回はあくまでも傍観するつもりであったし
そうである以上ごたごたに巻き込まれることを避けたのだ
(いったい何があったんだろう・・・?)
疑問は急速に膨らんでゆく
あるのはその場に居合わせなかったことへの後悔である
「そういえば・・・」
さりげなさを装い、訪ねてみる
「梓先輩。菅生先輩と一緒に出るんですよね、テニス大会」
「あ、ああ・・・三年で卒業旅行に行くことになって・・・それで・・・」
「旅行!? 僕もついていっていいですか・・・?」
上目遣いに”お願い”する
「えっ。そ、それは・・・みんなに聞いてみないと・・・」
「ああ、梓先輩と旅行・・・ステキ・・・」
うっとりとする丁
当梓の言葉は耳に入っていない
「ちょっと待ちなさいよ」
「抜け駆けはよくないぞ、宇治」
「梓と旅行に行くのは俺が先だからなっ」
「梓先輩と旅行に行くのは私が先よっっ」
二人の声が見事にかぶる
「・・・・先輩、この二人とも登録してるんですか・・・?」
確かに規定では多重登録も可となっている。が・・・
(一人で3チーム・・・? 流石の梓先輩でも・・・)
「いや、違うよ。宇治」
梓が苦笑する
「秋山とかおりがペアなんだ」
頷く二人
「不本意ながらもね・・・・」
「うむ、何の因果だかな」
「へぇ・・・秋山先輩と日吉先輩が・・・
って・・・えええええええええっっっっっ」
その時の宇治は、まさに
鳩が豆鉄砲を喰らったような・・・
形容するにふさわしい顔であった

茫然自失の宇治に秋山が声をかける
「なんだ、そんなに驚くような事か?」
「じゃ、じゃぁ・・・優勝賞品は・・・?」
(三人で行く、なんて言うとは到底思えないけど・・・)
「もちろん、こやつを冥府の底に沈めてから
梓に有意義に使っていただくことになっている」
「ああ、そいつの旅行先のみ、南極の氷の下に決定してるから
何も問題はないわよ」
どっちもどっちの物言いだが
とりあえず、お互いがお互いをパートナーと認識したらしい
(まいったな・・・確率的には一番低いと思っていたのに・・・)
「へぇ、じゃぁ僕、応援してますね」
混濁しそうな意識をかろうじて堪え
微笑みをたたえて口にする丁
(何が起こったんだろ・・・いったい・・・)
その心の中では先ほどの疑念を再び繰り返していた


「菅生先輩、ちょっといいですか?」
丁は目的の相手がテニスコートにいるのを見かけ、声をかける
他は柏木梓、秋山、日吉かおりという面々
「ここではなんですのでカフェテリア室にでも・・・・」
「じゃぁ、いってくるよ」
「それじゃ、休憩するカニ」
「おう」
「はーい」
ちょうどいい頃合いだったらしい
そのまま、小休止にはいる3人


「ご注文はおきまりですか?」
カフェテリア室
席についた二人の前に早速メニューを差し出すたける
「コーヒーを」
「ジャンボパフェをお願いしますね」
(おいおい・・・)
注文に内心、脱力する誠治
「ところで、昨日の怪我はもう治ったんですね・・・」
丁はメニューを閉じるとそのまま誠治に尋ねる
「あっ、ああ。ナノマシンの力・・・って何でそのことを・・・」
「ええ、カマかけてみただけです」
「昨日、ただならぬ雰囲気を発していた二人が組んで、テニス大会にエントリーしていますし」
「工作部からルミノール反応も出ました」
いつのまにやら調べていたらしい
「何があったかはだいたい類推できますが、当事者の口から聞きたいと思ったので・・・」
「だがそれなら、秋山くんや日吉さんでもいいんじゃないか?」
「理論性と客観性、です」
その言い方はまるで・・・
「なるほど・・・」
「そういうわけで、お願いします」
「まぁ、隠すような事でもないんだが・・・」
大ざっぱに流れを説明する
いわゆる”かくかくしかじか”である
「つまり、部室で午後の一時を楽しんでいたところ、二人組の強盗に襲われた・・・、と」
「おい・・・どうしてそうなる・・・」
智子なら「なんでやねーん」と、ハリセンでつっこむんだろうな、
などと思いつつも律儀に答える誠治
「で、殴られちゃった訳ですね」
急に話題を変える、というよりもとに戻す
「・・・・・・・・」
話の飛び具合に付いてゆけず、誠治は一瞬絶句する
「ね」

「ああ、そうだ。まったく、若さってやつは・・・」
「前々から思ってたんですけど」
「ん?」
「いえ・・・・・」
「なんだ、話しかけて途中でやめるなよ・・・っていうか何だその”若作り”ってのは・・・?」
丁の口元に添えられた扇を指さして言う
「ただ、同じ高校生にしては、妙に悟った人だと思ってただけです」
「そ、そうか・・・?」
「耕一先生や、千鶴先生よりももしかしたら・・・」
「ま、まぁ、昔から大人びてるとか言われてたしな」
あさっての方を向いてのたまう誠治
明らかにうろたえていた
「男の人は嘘付くとき目を逸らすそうです。逆に女の人は目を合わせるそうですが・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「では、僕はそろそろ失礼させていただきますね」
「あ、ああ・・・。ところで君は、どうするんだい?」
丁が立ち上がったところで、ふとした疑問を口にする
「さて、どうしましょう・・・・」
困ったような表情を浮かべて、しばらく考えてから答えた
「おいおい考えてみることにいたします・・・では・・・・」
黙って見送る政治
「本日はわざわざご足労いただき、ありがとうございました」
「コーヒーのお代わりいかがですか?」
たけるが声をかける
「あ、いただけるかな」
「はいっ」
元気の良い返事が返る
そして、誠治はふとあることに気がついた
「あぁっっ」
「ど、どうしたの? 誠治さん・・・」
「あいつ・・・金払わないで行きやがったな・・・」
「せーじさん、お会計。お願いね☆」
にっこりとほほえむたけるに
結局、丁の分まで払わされる誠治であった


「さて、ホントにどうしようか・・・」
丁は自らの部屋で一人ごちた
何かを考えているとき、独り言が多くなるのは癖みたいなものである
もっとも、人前ではやらないよう心がけてはいるが・・・
「出るのは決めた」
既に誠治に問われた時点で、それは決定していたのである
「ま、この状況じゃ出ないわけには行かないさね・・・」
ぽつりとつぶやく
(どういうわけだか梓先輩争奪戦になっちゃったし、ね)
すくなくとも彼にとってはその意味をもっていた
とすれば四の五、言っている場合ではない
(どんと せい ふぉー おあ ふぁいぶ・・・か)
「とりあえず、顔出ししておけば面目は立つ、だろうね。でも・・・」
己に言い聞かせるように、ハッキリとした口調で言う
「やるからには負けたくはないな」

「でもなぁ・・・」
たしかに、たしなみ程度の経験はある。
ルールについても、分からない部分は
それなりの本を読めば理解できるだろう
しかし、実戦ともなると・・・
「どうにも心許ないな・・・」
これが正直な感想である
「こう言っちゃなんだけど・・・人外魔境の巣窟だし」
情報特捜部発行の新聞に目をやり、思わず苦笑する
参加者のほとんどがいわゆるSS使い
常日頃はほとんど意識していないが
こうして向こうに回すことになると、実にやっかいである
「何が起こっても不思議じゃないからな〜〜」
彼らが持つ力とて万能ではないのだが
持たざる者としては、やはりいくら大目に
見積もっても不安をぬぐい去ることは出来ない
未知のモノへの恐怖が人を狂気に走らせた例は
歴史上、枚挙にいとまがないのである
「購買部辺りでなんか品物物色しておくか・・・
どんな弾も打ち返せるラケットとかあるかも知れないし」
あっても不思議はないのが不思議である

「結局・・・、問題になってくるのが・・・」
どこをどうしても・・・
「・・・・誰と組むか・・・だよなぁ・・・」
最後にはここに行き着くのである
まず思い浮かぶのは最愛の君
ルールには同一選手による複数参加も可、と書かれている。
が・・・
――梓先輩はぺけだな・・・
「蚊帳の外に置かれた恨みもあるしぃ〜〜」
半分は自分のせいとはいえ、そのままに出来るほど
素直な性格はしていないのである
「それに、いい機会といえばいい機会かもね・・・」
――先輩と本気でお手合わせする、なんてね・・・
表情がゆるむ
”梓先輩に守ってもらう”
それが、彼のスタンスであり
そのために、母性本能をくすぐるための
小細工は常日頃より欠かさない
でも、たまには違うシチュエーションもいいよね
そう思う丁である
「愛する人と相対する悲劇・・・ああ・・・燃える・・・」
その状況を想像しうっとりとなる丁
ちょっと酔っている
――それまでは、負けられないな
「とすると、せめて経験者になってもらえるといいんだけど・・・」
そうすれば、しっかりご教授いただくこともでき、一石二鳥である
しかし、少なくともそんな都合のいい知人は思い浮かばない
経験者というのであれば、とっさに思い浮かぶのはテニス部員
「・・・河島先生、T−star−reverse先輩、東雲恋先輩・・・」
実際に活動をしているのを見たのことがあるのは、この3人くらいである
「男は却下でしょ。あんまり面識はないけど・・・
とりあえずあてになりそうなのはこの二人・・・かな・・・?」
――二択か・・・幅が狭いって言うか・・・
「河島先生はいまいち実力が計り知れないし、
東雲先輩はATフィールド、強そうだし・・・・」
――大丈夫かな・・・
「他には誰かいたっけ? 幽霊部員じゃ役に立たないだろうし・・・」
それ以前に名前もないような連中ではやはり心許ない
「ま、とりあえずあたってみるか・・・」


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「いいわよ・・・・」
「え・・・ホントに・・・?」
「うるっさいわね。いやなら別にいいんだからね」

あまりにうまく行くことに驚く丁少年
恋の決断の影には・・・?


ってところでタイムアップ
東雲忍x長瀬真希(他薦)もかねるつもりでしたが・・・
また、問題があるようなら、腹案はレミィ姉となります

猶予、いただけないでしょうか