Lメモこれくしょん第一段 投稿者:u.g
俺の前に道がある
他の生徒が俺の姿を見るなりことごとく身を引いたためだ
まるでモーゼのごとき今の俺
前回のように噂話も聞こえてこない
「ひいぃぃぃぃ、あわわわわわわ・・・・・」
腰を抜かしたまま呻いている者
神に祈りを捧げる者
「ひーーん、こわいよ〜〜。ママ〜〜」
幼児期に退行する者・・・・・
ショックがあまりにも強すぎたらしい
それぞれ好きなように(?)恐慌状態に陥っている
ただ、一様に異様なものでも見るような目で
遠巻きに眺めている点では一緒であった
「しょうがねぇよな、こんなカッコウだし」
何となく、アンニュイな気分になる
「・・・・・・・・・チクショウぉぉぉぉぉぉぉぉ」
泣くのをこらえて全力で駆け出す
そう、男は涙を見せぬのもの。永遠に、だ!!
そうだ、俺は男なんだ。ここで流れるテーマソングは・・・・
 苦しくったって〜〜悲しくったって〜〜♪
 コートの中では平気、なの♪
涙がでちゃう、だって女の子だモン
「だから、アタックNo1じゃないんだ、俺よ!!!」
自分で入れた自分の突っ込みになにか悲しくなってくる
「ぶろくぅん、まぁぐなぁむぅぅぅぅぅぅぅ」
そのやるせなさを拳に込めて、発射したパンチは
前を歩いていた人影に命中した

ぐぁきいぃん

「ふぐおぉぉぉぉっっ!!」
綺麗な弧を描き吹っ飛んで行く通行人の姿は
強烈な既視感を抱かせる
俺の脳裏に前回の悪夢が走馬燈のようによみがえってきた
「ま、まさか・・・・」
普段は神など信じぬこの俺も、この時ばかりは神に祈る
「か、神様・・・・もう俺十分酷い目にあったじゃないっすか・・・・」
いくらなんでも、もうこれ以上酷いことは起こらないよな
かすかに残された希望に取りすがる
だが、ゆらりと立ち上がった影は
「この痛み、この、冷たい感触は・・・・・」
「ひぃ・・・」
血みどろになりながらも目を爛々と輝かせているのは
「ジン、俺をもっとなぶってくれぇぇぇぇぇぇぇっっっっ」
やっぱり、秋山 登だった・・・・・
「いやだぁぁぁぁぁぁ!!!!」
・・・この期に及んで、まだ・・・
この世には神も仏もいないんだな
ヤツから逃げながら俺は呆然とそんなことを考えていた
ぱとらっしゅ・・・・僕もう疲れたよ・・・・・・


「愛と鬼畜のエルクゥユウヤ☆時間もないのに登場ぐべしっっ」
前方に現れた影を跳ね飛ばして駆けて行く                             
一瞬、だぼだぼのワイシャツの下からちらちらと何かが
覗いていたような気もするが、そんなものは今の俺には
重要ではない
 
 一方、跳ね飛ばされた方の人は
 「ジン、貴様・・・その姿は・・・・・・」
 何事かを呟いてたりなんかしちゃったりする
 正気に戻ったんか、あんた?

「さあぁ、もう逃れられないんだ・・・、
観念して俺を喜ばせろ、悦ばせるんだぁぁぁぁ・・・・」
「効かない、効かないよぅ〜」
荒い息を吐きながら追ってくる秋山に対し一通りの武器は試したものの
予想通りと言おうか・・・やつはひるむどころか
その全てを喰らってなお、さらに速度を上げて迫って来た
悦びに顔を歪めながら・・・・
「ひぃ〜〜ん、どうしよう〜〜」

 何の好転も見せないまま舞台は校庭に移る
 ジン、大ぴーーんち

───ジン。おまえはもう充分戦っただろう。はやく楽になっちまえよ・・・
俺の中のもう一人の俺が誘惑するのを必死にこらえながら
あてどもない逃走劇を続ける
「いやだ」
萎えそうになる気力を奮い立たせるために、俺は叫んだ
「俺は、俺は・・・・・こんなところで立ち止まるわけにはいかないんだぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!」
 
 そのしばらく前、第二購買部
 「あ、Dセリちゃん。ちょーどいいところに来てくれた」
 前を通りがかったDセリオに勇希が声をかける
 「──なんですか、勇希さん」
 「ジン君が女の子になっちゃったでしょ、でね・・・」
 きょとんとした顔をする。初耳だったらしい。
 「ここで、いいもの見つけちゃったの☆」
 勇希は無邪気に微笑んでいる
 「こんなのつけたらもっと可愛くなるかなぁ、って」
 渡されたものを見て
 「──ええ、とてもよく似合うと思います」
 Dセリオはニヤリと嗤った 

 「Dセリちゃんのコーディネートは今度考えてあげるから」
 「──・・・それは、遠慮しておきます」
 すかさず答えるDセリをめげた様子もなく見送る勇希
 「じゃ、お願いね〜〜」
 その言葉が終わる頃には既にDセリオの姿は消えていた
 空の彼方へと・・・・

ズウ・・ゥン
背後から妙な音が聞こえてくる
次の瞬間、俺の体は衝撃波で宙に浮かんだ
「な、なんだ」
振り返った俺の目に映ったのは
巨大なクレーターのできた校庭
槍を突き立てられてつぶれている秋山の姿 
「こ、この技は・・・・・」
───軌道落下攻撃
単独で衛星軌道上まで上昇、降下する際に生じる
エネルギーをそのまま相手にたたきつける技。
それに、秋山が復活してこないところを見ると
あの槍にも何か・・・・・
「──ミストルテインの槍・・・だそうです。秋山さん用に借りてきました」
聞き覚えのある声が響きわたる
再生能力を停止させる槍なんだろうか
リリスのごとく張り付けられて動かなくなっている秋山
それを見て俺はほっとする
貞操の危機が去ったことに
・・・・・・・・・・・・・・
なんで男なのにそんな心配しなきゃならないんだろうな、俺は・・・・・


やめよう。
きりがなくなりそうな事考えるのは・・・・
目の前の現実に目を向けることにする
前方の人影を注意深く見つめる。それと、さっきの声
もうもうと立ちこめる土煙の中から、俺の前に姿を現したのは
予想通りの・・・・・・
「──ぷぷぷぷ・・・・」
Dセリオはにやにやしながら笑いをこらえてやがった・・・・

ぷっつん
「笑うなぁ!!!!」
必殺のロケットパンチ
だが、それはDセリオの背中から生えている翼にあえなくはじかれる
「新装備か・・・。そ、それは・・・・」
それは、思いもかけないものだった
「それはウイ*グゼロ*スタムのアクティブバインダー!!!!」
そう、OVA版でおなじみのあれだ
「ど、どこで手に入れた・・・・」
思わず血が騒ぐ
返ってきたのは予想もつかない答え
「──ジンさん用に預かったモノです」
だが、それは俺にとっては好都合だった
「つ、つけてくれ!!」
アタッチメントでDセリオに付けてもらう
「これで、ツインバスターライフルまでついていたら完璧だったのに」
画竜点睛を欠くってヤツだ
このくらいのことわざは知っている
「ああ、これで俺も大気圏突入ができるんだぁぁぁぁ・・・」
喜びにむせぶ俺にDセリオが声をかける
「──・・・・それにしてもジンさん」
「な、なんだよ・・・・・」
「──その翼、よく似合ってます。特に今のジンさんには」
ニヤリ、と笑うDセリオ
「それと、女の子専用だそうです」
背中のあれを指し示しながらその一言で、
俺は今の自分の格好を思い出した


「この姿を見られたからには・・・、殺す」
Dセリオは周りを見回す
「──もう遅いようですが・・・・」
周りはたくさんの野次馬でひしめいていた
「五月蠅い!!一人残らず葬ってやる!!!!」
自棄?
そうかも知れない。
だが、もうどうでもいいや。そんなことは・・・
「──うふふふふ、サウザンドミサイル」
「ヴェズパー!!・・・、ってあれ・・・」
ここへ来てようやく自分の武装パーツのほとんどが
はずされていることに気がついた
「あ、あの時か・・・・」
当然、家庭科室だろう
迂闊と言えばそうなんだが、
今日はいろいろなことがありすぎたんだよな・・・・

 そのころ
 「これを購買部まで持っていけば・・・」
 ジンの武装パーツを運んでいるのは雛山理緒と
 はな垂れくそが・・・いや彼女の弟、良太である
 「こんなにいろいろなものが落ちているなんて今日はラッキーよね」
 落ちている、と言うのが正しいのかどうかはよく分からないが・・・ 
 「よし、良太。晩御飯は奮発して卵かけご飯だからね」
 「わーい、ご馳走だね。ねーちゃん」
 仲むつまじい姉弟の様子は見るものの涙を誘う
 みんな●乏が悪いんだね、貧○が・・・・・ 


「うおおぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっ」
避けられない、そう思った瞬間
突然服が蠕動しだした
「や、やめ、あ・・・・、うあ・・・・・・、あ・・・ん・・・」
しかも、なんだかやらしぃ動きでだ・・・
思わず悶える俺の目に何本かの触手に姿を変えたそれらが
一瞬のうちに全てのミサイルをはじき落としてゆくのが見える
俺はがっくりと膝を突いた
「どっかで見たことがあると思ったら・・・・
”Aika”に出てきたヤツじゃないかぁぁぁっっっ・・・・・」
そう、男としての敗北感に・・・・・
あまつさえ、触手はそのまま
Dセリオに向かって伸びてゆく
あんまりと言えばあんまりな展開に一瞬反応が遅れたのだろう
あっさりとはじき飛ばされる
そして・・・・、
「お、おい・・・・」
その一撃で、我がライバルは・・・Dセリオは完全に沈黙していた
「こ、この破壊力は・・・・」
体が震えてくる
俺の力がさらに強化されたから・・・・、じゃない
「お、男の時より強くなってるぅぅぅぅぅぅぅっっっっっ!!!!!」

「ふぅ・・・・」
誰かがため息をつく
俺のすぐそばで
相手はすぐに思い当たった
「遊輝・・・・またお前がやったのか」
すごんでみせる俺に対し遊輝は
「違うのじゃ・・・」
静かに、だがはっきりと答える
「あまりに哀れすぎて今日は手を出す気もおきなんだ・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
怒りの矛先を向ける相手を失い、奈落の底に引きずり落とされる俺

・・・・・おやっさん・・・・真っ白に燃え尽きちまったよ・・・・・

 「ま、間に合わなかった・・・」
 屋上からジンを見つめる少女が一人
 ティーナである
 「でも、これでマジックナイトジンはもっと強くなれるよ☆」
 ハンマーを片手につぶやく彼女
 「そう。もっとね・・・・・」
 彼女の野望は止まらない
 
「ジンさん・・・・」
いつの間に現れたか、沙留斗が木の陰で涙を流し佇んでいた
「僕は・・・僕だけは・・・ずっと貴男の味方ですから・・・」
夕暮れ時の、紅く染まる空のもと
「・・・夕日が・・・綺麗だな・・・今日も・・・・・」
「・・・・・そうですね」
その光は俺達を優しく包んでくれていた

                          完



終わった・・のか・・・・・終わったんだな・・・・・・
だったら、なんで元にもどらねぇんだよおおおおおおおおおおっっっっっ!!!!!!(血涙)
 
 もうちょっとだけ続くらしい
 そう言いながら、ン年間続いた漫画もあるけど

「あっ。こんな所にいたのね」
びびくっっ
その声を聞いて体が硬直する
振り返った先には案の定
「もう、探しちゃったじゃない。ちゃんとまっててって言ったのに」
千鶴さんが立っていた
ちょっと怒ったような仕草、それからすぐに悪戯っぽい微笑みに変わる
「じゃ〜〜ん、恋する乙女のスタンダードスタイル、セーラー服よ」
手に持っていた服を広げる
保健室での勘は外れていなかったようだ
だが、今考えれば千鶴さんにセーラー服を
着させられていた方が何倍もましだったかも知れないな・・・
呆然とそんなことを考えていた
「どうしたの?元気ないわね。あら、ジン君・・・その格好・・・・」
「い、いや。その・・・・・」
「とっても素敵・・・・」
千鶴さんのその一言にほっとする俺
だが、その先に続いた言葉は俺の考えを遙かに遙かに上回っていた
「そうだ、せっかくだから鶴来屋の結婚式場パンフレットに
使わせてもらっちゃおう」
───え・・・・?
「さぁ、そうと決まれば早速写真撮影に行きましょう」
───え”え”え”え”え”え”!!??
「ひょうぅぅぅぅ〜〜〜」
声にならないムンクな叫びはむなしく空に響きわる
「助けてくれぇぇぇっっっっっ!!!」
「我が儘言っちゃだめよ」
そして、俺はずるずると千鶴さんに引きずられてゆくのだった

「いやあああああぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ!!!」

                          終劇

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