リーフ学園の怪談 4 投稿者:u.g
保健室
「ごめんなさい」
現在ここには20人近くの人間がいる
が、それでも狭く感じないのは
学校の施設にしては妙に広々としているせいであろうか
「ごめんなさい。ごめんなさい・・・・」
泣きながら謝っているのは、シャロンである
「ごめんなさい・・・・・」
あの後、崩壊した図書館から
一度全員で安全な場所に移る事にしたのである
怪我人を連れて保健室にたどり着いた一行
そこには、響子と芹香、それにカレルレンが
一通りの道具をそろえて待っていた
今は手当も終わり、一段落したところだ
「えーーと・・・・」
なだめながら話を聞いているのは勇希である
「図書館のことなら気にしないでいいわよ。よくあることだから」
「そうそう」
響子の言葉に綾香が相づちを打つ
「でも、あの・・・」
「それより君の正体を教えてくれないかな?
それと、なんで夜の学校にいたのかを・・・・・」
勇希が話題を変え、優しい口調で問いかける
「は、はい・・・・。
さっきも言いましたけど私、ホログラムなんです」
ぽつりぽつりとシャロンが話し始める
「ホログラムって・・・」
「立体映像のことです」
「それは知っているけど・・・機械とかは・・・?」
シャロンの実体を投影している装置は近くには見あたらなかった
「あ、それは軍事衛星を使っているんです」
「ふーーん」
とりあえずそれで納得する勇希
いろいろと疑問点は残るものの
今日の所は詮索するのはやめておくことにしたようだ
「でも、ここでは電波が届きにくくて・・・
それで完全な姿では再現できないんです」
そう言ってぼやけている足を指し示した
「じゃぁ、なんでここに?」
次の質問にうつる
「あ、あの・・今度マスターが・・・・」
どもりながら言い直すシャロン
「私の・・・その・・・・人がここに入学する事になって・・・」
私の・・以下のところで、真っ赤になるシャロン
敢えて野暮な突っ込みをする者はいなかった
にやけてる人間はいるが
「それで・・・・」
「学校見学に来たわけね・・・」
ゆかりが続けた
「はい」
「でも、だったら昼間に来ればいいんじゃ・・・・?」
恋が横からもっともな疑問を口にする
「あの人に、内緒で来てみたかったんです」
「・・・・なるほどね」
勇希の顔がほころんだ
「でも、それがこんな事になってしまって・・・・」
再び泣きそうになるシャロン
「心配しなくても大丈夫」




エピローグ

図書館はその日のうちに新しいものに変わっていた
なお、その日の日記には以下のように記されている
(業務日誌)今日も平和だった
      とにかく平和だった
      何が何でも平和だった
      以上・・・・・
紙が妙に歪んでいたのは汗か涙か

悠 朔、ハイドラント、葉岡 斗織の3人は
綾香が看病する事になった
「ハイドは一応私をかばってくれたのが暴走のきっかけみたいだし
ゆーさくは私が頼んだからだし
斗織はTOGSとしての使命を全うしようとしての結果だものね・・・」
自分にも責任の一端があることを気にしていたらしい
「それにしても」
記憶と照合してみる
「ゆーさくの怪我・・・・酷くなっているような・・・」

「・・・・・・・・・・」
エーデルハイドは嬉しそうににゃあにゃあないている
ご褒美にご主人様になでなでしてもらっているのだ
──それにしてもこわかったにゃぁ〜
ずるずるにゃにかがはい回っているかと思えば
なにか堅いものがごんごんにゃってるし
ぼぼぼぼぼ〜〜、って得体の知れない音もするし
悠朔を運んでいるときの事を思い出しているようだが・・・
──ま、なにもなかったし。早く忘れるにかぎるにゃ
それがいいと思う

「・・・あれ・・・ここは・・・・」
小出由美子は比較的早く目を覚ました
「あ、小出先生が起きたよ」
見守っていたのは忍と恋である
「・・・気分はどう?」
ゆかりも近寄ってきた
「ちょっと頭が痛いです・・・それよりあの・・・」
頭を押さえている。どこか様子もおかしい
その正体に気がつくより早く
「あなた達はどなたですか・・・・?」
由美子が口を開いた
「私は誰なんでしょう・・・」
「は・・・?」
「・・・・これは・・・・」
「記憶喪失ね」
いつの間にやら背後にいた響子が冷静に分析する
「一時的なものだとは思うけど」

警備保障アルバイトのへーのき、OLH、榊は
まっすぐに本部に向かったようだ
Dセリオのメンテナンスのためである
「それにしても、Dマルチさんはどこ行っちゃったんだろう・・・?」
「そういえば、ガーネットとボックスもいないような・・・」
「あれ・・・・・?」

そのDマルチはカメラをもって帰ってきた
なぜかガーネットとデコイも一緒である
「──私はなぜあんな所にいたのでしょうか?」
「さぁ・・・・・」

D箱は保健室に忘れられたままだ

時には忘れたい過去、忌まわしい出来事と言うものもある
セバスチャンはすっかり忘れ去られていた
というか、当時の記録は全て抹消済みである
「かあああああああああああつっっっっっっっ!!!!!!!!!」
その日の午後には元気な声が響いていたが・・・
人間?

そして・・・・
「今日からこの学園に入学しました、シッポと言います」
「シャロンです。よろしくお願いします」
今日もまたリーフ学園の騒がしい日常が始まる

「これにて一件落着ネ」

おまけ
「昨日何者かが校内に進入し破壊活動を行った模様です」
ゆかりは部下から報告を受けている
「早速調査を開始します」
「その必要はありません」
厳かに断言する
「その件につきましては私が内々のうちに処分を下します」
「委員長自ら・・・・ですか」
「ええ。ですから風紀委員会としてこれ以上関わる必要はありません」
静かな、それでいて有無をいわせぬ口調でいうと
「いいですね」
話はそれまで、とばかりに打ち切った
「了解しました」
部下が出ていったのを確認してから、ゆかりはそっとため息をついた
──何とか、誤魔化せたか・・・・・
彼女もなかなかに大変なようである
なにげに思い出すのは騒ぎの事
「まったく・・・・・」
その表情が楽しそうに見えたのは気のせいであろうか


「と言うわけなのよ」
図書館にて
「へぇ、そんな事があったんですか」
勇希が昨日の出来事を事細かに話していた
「はぁ・・・、どうもシャロンがお騒がせしました・・・」
傍らにはシッポとシャロンもいる
「あ〜〜あ、私も最後までいればなぁ・・・」
悔やしがっているのは由美子である
「それにしても、途中からの記憶が全然ないのよね・・・」
そりゃそうだろう
軽度だったとは言え記憶喪失から回復しただけでもめっけものだ
「そういえば・・・・」
思い出したように沙耶香が言う
「幽霊でしたら、TaSさんも・・・・」
「HAHAHAHAHA!ないすとうみーちゅ!!!」
噂をすれば影
「オヤー、貴方が転校生の方デスネー」
シッポとシャロンを見かけると
相変わらずのラテン弁で話しかける
「仲良くしまショー」
「はぁ、どうも・・・・」
シッポは異様な風体に面食らっているらしい
「あ、あ、あ・・・・・・」
「そちらのオジョーさんも、ネ」
きらりと歯が光る
様になる人がやれば様になる光景であろう
「いやぁぁぁぁぁぁっっっっっ」
だが、シャロンは恐怖におののいていた
「あ、アフロが・・・・」
「お、おいシャロン・・・そういう言い方は・・・・」
失礼だろう、と続けようとしてシッポは目の前の異変に気がついた
「動いてる・・・・」
そう、アフロヘアの一本一本がまるで自由な意志を
もっているかの如く蠢いていたのである
「アノー・・・」
ざっっ
近づくTaSにシャロンとシッポは引いた
「ドーカシマシタカ・・・?」
ざざっっっ
再び近づくアフロ、二人はさらに引き下がる
こうして歴史は繰り返される

「そういえばそうね・・・・」
TaSの姿を眺めつつ、思い出したように言う勇希
「でも・・・、何かが違いすぎてて気がつかなかったわ」
「・・・・そうですね」
頷く沙耶香
「まぁ、アフロだし」
「そうね・・・アフロだし」
響子と由美子もしみじみという
「色の白いのは七難隠すというネ」
「そうそう、そんな感じ」

おいかけっこは当分続きそうだ


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