リーフ学園の怪談 3 投稿者:u.g
勇希は走っていた
──ちゅど〜〜ん
ただひたすらに走っていた
──ちゅどど〜〜ん
もちろん、Dセリオとハイドラントの攻撃から逃れるためである
先ほど打ち出されたペンシルミサイルがそこかしこで爆発している
その中を勇希は夢中で走っていた
隣ではシャロンと・・・、なぜかゆかりまで走っていた
「なんで・・こんな事に・・・なるのよ・・・・」
どうやら、立っていた場所が悪かったようだ
巻き込まれたらしい
「とりあえず、この状況を何とかしないとね☆」
「☆つきで言ってるような場合じゃないと思うんだけど」
冷静に突っ込んでる場合でもないと思うが・・・・
「さてこの状況をどうしようか、シャロンちゃん」
やけにハイな感じで尋ねる勇希
しゅたたたたたたと規則正しいペースだ
「・・・・ごめんなさい、私ホログラムだから・・・・」
なぜか某3人目を思わせる言い方で答える
「と言うことは、攻撃を受けても大丈夫なのね?」
「は、はい。たぶん」
「なんか、巻き込まれたぶん馬鹿みたいね・・・」
ゆかりの言葉はもっともだが
ただ単に運が悪いだけのような気もする
「・・・・すいません」
シャロンはすまなそうに言う
「まぁまぁ、旅は道連れ世は情け、って言うじゃない」
勇希が仲裁に入る
仲裁と言うにはのんきすぎるお言葉かも知れない
「死出の旅は遠慮したいわ」
3ステップで飛んでくるドリルを華麗にかわしつつ
にべもなく答える
「プアヌークの邪険よっっっ!!!」
踊り場の壁を光熱破が打ち抜く
「あ、よく考えたらあなたと別の方向に逃げればいいのよね」
「冷たいの〜〜」
そう言う問題じゃないと思う
「先生は、どこまでもご一緒にどうぞ」
ゆかりはそれだけ言うと分かれるタイミングと場所を
調べるため周囲を見回した
その目に入ったものは・・・・・

「先生っっ!!」
「な、なにっっ?ゆかりちゃん」
突然の大声に勇希は驚いていた
「図書館に向かってください」
「・・・・どうしてですか?」
シャロンが怪訝そうに尋ねる
「あっ、図書館に行けば何とかなるのね」
「いえ・・・・・」
わずかな間をおいてはっきりと言う
「これ以上の校舎の破壊は風紀委員長として許しません」
ゆかりの目は自らの使命に燃えていた
「・・・・え・・・・と・・・・」
思わず言葉に詰まる勇希
「図書館ならいいの?」
あらためて聞き返す
「代えがあるだけましです」
「・・・なるほど・・・・」
理屈に合ってないような気もするが
有無を言わさぬ迫力に思わず頷いてしまったらしい
勇希はそれ以上深く考えるのをやめ、走ることに専念する
どちらにしろ細かいこといちいち気にしてもしょうがないのだから
「とにかくさっさと行きましょう」
「・・・まったく、こんな時にも職務熱心なんだから」
クスリと笑う勇希
「あの、ホントにそれでいいんですか?」
シャロンは未だ納得がいってないらしい
まぁ、当然だろうが・・・・・
「いいんじゃない。じゃぁ、図書館に向けてしゅっぱーつ」

一方、残された者たちは
「先生達・・・大丈夫かな?」
「・・・まずいわね、これは・・・・」
遠くから凄絶な破壊音が聞こえてくる
「マズイデス、マズイデス」
先ほどの衝撃のためか、なぜか箱は倒れていたが
誰も気にしていない
榊がOLHに問いかける
「どうする・・・」
「どうするって言ったって・・・・」
追いかけるべきかどうか、と言うことなのだろう
二人はあまりの乗り気では無いらしい
可愛い奥さんが帰りを待っているしネェ・・・
「そういえば、Dマルチさんは・・・?」
へーのきがふと気がついたように言う
例によっていつものごとく肝心なときにいなかったりする
「・・・・行きましょう・・・・」
直感的にそうした方がいいように感じたのか、忍が言う
「そうダネ」
レミィも同意する
「・・・・恋、お前はここに・・・・」
「もちろんついて行くわよ、お兄ちゃん」
微かに逡巡する忍
しかし、それはほんの一瞬のこと
それ以上は何も言わず一つ頷くとそのまま走り出した
「私たちも」
恋、綾香、レミィの3人も忍に続く
「あ、おい・・・」
「──ドウカシマシタカ」
状況を理解していないらしいガーネットは
とりあえずおいといて
「しょうがない・・・行くか・・・・」
ため息を混じりで警備保障バイトの3人組もその後を追う
「──オコシテクダサイ、オコシテクダサイ」
倒れたままのDボックスを残して・・・・
ガーネットはその様子をどうしたものかと見つめている
あ、誰かが引き返してきた
「しょうがないネ」
レミィだ
これだけのために・・・・
「──アリガトウゴザイマス、アリガトウゴザイマス」
「イイヨ、気にしないデモ。さ、行こ」
そうして、二人(二体?)を促した
結局、全員で向かうこととなったわけだが
・・・・・ええ娘や・・・・・

「見えた」
3人はようやく図書館が見える位置まで来た
「黒破雷神槍!!!」
黒い稲妻をギリギリのところで交わす3人
「──サテライトフォース」
Dセリオは攻撃衛星とコンタクトを取っている
ここに至るまでに攻撃の手は更に激しくなっていた
それに反して距離は確実に詰まってきているのだ
今が昼ならば確実にきたみちもどるや
藤田浩之(注:デフォルト主人公)あたりが
変死体となっているところであろう
図書館まで残り約50m
残り30
20
10
・・・・
図書館の入り口はすぐ目の前である
安堵する3人
その頭上よりマイクロウェーブが降り注いだ・・・


「あ、あれっっ」
恋が窓の外に勇希達の姿を見つける
「図書館の方に向かってるみたいね」
「よかった。無事だったんだ」
ホッ、としたように言う
「・・・・・いけない・・・・・」
忍が呟く
その場所が、轟音と共に突如として吹き飛んだ
「あれはサテライトフォース。Dセリオさん・・・・」
そして、爆発のあった場所には
ただクレーターだけが残されていた
「・・・な・・・・・?」
絶句する綾香
──ピピピピピ・・・・・
「あ、は、はい」
携帯の音で我に返る
「あやかおじょうさまぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
暑苦しい男の声が大音量で聞こえてきた
思わず耳を押さえる綾香
「セ、セバス?」
──ちぇ、姉さんの薬、もう効果が切れちゃったのか・・・・
一服盛っていたらしい
通りでいつもくっついている人がいないと思ったら
「じぃは、じぃは悲しいですぞぉ」
泣き落としに入っている
「いつからじぃになったのよ」
由緒正しき執事の呼び方のような気もするが・・・
「今それどころじゃないの。またあとで連絡するから・・・切るわよ」
だがそれは、逆効果だったようだ
「な、なんですとおおおおおお!!!いま参りますぞ!!!!」
「え、あ・・・、そうじゃなくて・・・」
綾香が説明しようとしたとき、既に電話は切れていた・・・・
「ややこしいことになりそうだな・・・・」
榊がぽつりと呟いた

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・」
図書館内
「あ、危なかったぁ〜」
「・・・・な、なにが起こったの」
勇希、ゆかり、シャロンの3人はなんとか攻撃を回避したらしい
「Dセリちゃんが攻撃衛星からマイクロウェーブを発射したのよ、きっと」
「にこやかに言う事じゃないわ、それ」
まったくだ
「それにしても・・・・」
ゆかりの視線が勇希の足下に向かう
そこにはスケートシューズのような形の靴があった
あの瞬間
「シャロンちゃんゆかりちゃん、しっかり捕まってて」
そう言い終わるまでに、勇希はシャロンとゆかりを抱きかかえ
一気に図書館まで駆け抜けたのである
ビームの到着よりも早く

「そんな便利なものがあるならなんでもっと早く使わないのよ」
ゆかりが勇希につっかかる
「そう言われても・・・、本来一人用だし・・・・」
自分一人で使うのは気が引けたと言うことらしいが
なんか間違ってるような
「それに、校内であんなスピードだしたりしたら壁にぶつかっちゃうわよ」
こっちの方が説得力があったのだろう
「あ、そう・・・・」
ゆかりもそれで納得したらしい
「あら、シャロンちゃん。どうかしたの?」
シャロンはなにやら物思いに耽っている
「あ、いえ・・・。」
──どうして、私を掴むことが出来るんだろう。
先ほどのことが気になっているらしい
──私、ホログラムなのに・・・
答えのでない思考の迷宮にはまっていた
それぐらいじゃなきゃ
リーフ学園で教師なんてやってけないのかもしれない

「こんばんは」
図書館には既に先客がいた
相手より早く勇希が声をかける
「ああ、先生。どうかしたのですか、こんな時間に?」
「そう言えばこんな人もいたわね・・・」
そこにいたのは
  T ・・・ Tosyokan(何故ここだけ日本語(笑))
  O ・・・ Offense
  G ・・・ Guard
  S ・・・ System
(設定より抜粋)
通称 TOGS(トッグス)隊員の葉岡斗織だ
「怖い人たちに追われてるんです・・・・」
間違ってはいないがそれはそれで問題のある言い方をしてくれるシャロン
ちょっと潤んだ目が実に効果的である
入り口には人影が二つ
「あなた達ですか・・・・・」
答えはない
「プアヌークの邪険よ!!」
「オプティックブラスト!!」
二人の攻撃を光葉翼で防いだ斗織は
「これ以上の破壊活動を続けるならば・・・・容赦はしませんよ」
魔性の笑みで宣言した

「──うふふふふふふ・・・・」
「くっくっくっくっく・・・・・」
「フッ、なかなかやりますね」
戦いは三つ巴の体をなしている
もはや、当初の目的は忘れ去られているのかも知れない
勇希達は遠くからそれを眺めていた
「先生・・・」
ゆかりが耳打ちする
「今のうちに逃げましょう」
「・・・・・そうね」
しばし間をおいて勇希も同意する
「え、でも・・・」
シャロンは自分のせいでこんな事になってしまったのを
気に病んでいるようだ
「シャロンちゃん、分かって・・・」
「・・・・で、でも・・・・」
「これ以上私たちがここにいても何もできないから」
きっぱりと言い切る。
「わかりました・・・」
渋々ながら承諾するシャロン
「あんまり気にもまないで・・・、ね」

こそこそと出入り口に向かう
外の世界まで後ちょっとと言う
まさにその時、あの男が現れた
「お嬢様、ご無事ですかっっっっっ!!!!!」
そう、セバスチャンである
そうとう慌てていたらしい。彼は寝間着姿のままだった
「ひぃ・・・・」
ゆかりがひきつった声を上げる
「・・・・・・・・・」
シャロンは言葉も無いらしい
あるいはそのまま気絶しているのかも知れない
セバスチャンは図書館の入り口で仁王立ちをしていた
ネグリジェ姿で・・・・・・・

「ちょっと、色のセンスが悪いかなぁ・・・・」
そういう問題なのか、勇希!?

「気砲暗黒通!!!!」

「──ファイナルガーディアン」

「ナイツオブラウンド!!!!」

戦いに集中していた
ハイドラント、Dセリオ、葉岡 斗織の3人も
あまりの凄惨な光景に精神のバランスを崩してしまったらしい
それぞれの必殺技を繰り出す

その瞬間、図書館にこの世の地獄が現出した・・・・

「ひどっ・・・こんな事って・・・」
廃墟と化した図書館の前
そこに何人かの人間が佇んでいた
「いくら何でもこれじゃ・・・・・・」
崩壊の跡に言葉を詰まらせる
日頃より破壊されることが多いとは言え
この時の状態は限度を超していた
鉄骨は融けて混ざり合い
コンクリートは、砂状になっている
所々が黒ずんでいるのは本棚ごと書物が
灰となったためであろうか
「これじゃ・・・・中にいた人は・・・・・」
声に出したのはへーのきだが
そこにいた全員が同じ事を考えていた


──・・・せ・・い・・・・
遠くから声が響いてくる
──・・せん・・・せい・・・・・
誰・・・・・?
「せんせいっっっ」
「えっ、あれ・・・・・?」
勇希が目を覚ませすと
そこには必死で呼びかけるゆかりとシャロンの姿があった
「ここは・・・・・・?」
まだ、記憶が混乱しているらしい
「図書館です。正確には図書館のあったところ、
と言った方が正確かも知れませんけど」
「あ、そうか・・・爆発に巻き込まれて・・・」
頭が働き始めると同時に立ち上がるとすぐさま身体をチェックする
──軽い打ち身と擦り傷、骨に異常はないみたいね
「・・・・ふぅ・・・・・」
安堵したように息をつく勇希
「助かったのね。にしても・・・・」
周囲を見回して言う
「酷い有様・・・・ね、これは」
辺りは一面廃墟と化していた
「二人とも、怪我はない?」
勇希は、ゆかりとシャロンに問いかける
「私は・・・ホログラムですから・・・」
シャロンはそこで一度言葉を止め、そして続けた
「それに、もし体があっても無事だったと思います。
・・・・先生がかばってくれたから」
「え・・、あ・・・、そうだっけ」
そこら辺あたりも記憶にないらしい
戸惑う勇希
「えーーと、ゆかりちゃんは・・・」
話をゆかりにふる
覚えてもいないことに感謝されるという
気まずさを誤魔化しているらしい
「無事に決まってるじゃない。だって女優だもん」
「そ、そうよね」
いつも通りの答えのあと
あさっての方向を向いて言う
「でも・・・、ありがと・・・・」
照れ隠しであろうか
どうやら好感度がアップしているのは確実らしい
・・・・だからどうっていうこともないな
──・・・夢中だったから覚えてないや・・・・・
「と、とにかく無事でよかったわ。あはははは・・・・」
乾いた笑いでこの場を締めくくろうとしている勇希
感動的に演出すればいいのに
「そう言えば、あとの3人は?」
「あ、”あの”3人でしたらそこに・・・」
シャロンが指し示す方向で、3人は折り重なるようにして
倒れていた。相乗効果で周囲に絶大な被害を与えた技も
中心地点では逆にそれほどでもなかったようだ
「とりあえず・・・無事みたいね・・・・」
特に怪我をしたような様子はない。
気絶しているのは瓦礫の直撃を喰らったためだろう
「なんか腹立つけど・・・・・」
シャロンも無言で頷いていた
「怪我が直り次第、反省房送りかしら」
ゆかりが静かに言う

「・・・・あそこに・・・・・・」
忍が唐突に言う
見つめる先には笑いあう勇希達の姿があった
「よく・・・生きてるわね」
「──イキテマスイキテマス」
──ったく、心配させるんだから・・・・・
なんだか笑えてきたらしい。綾香は思わず吹き出している
「センセー」
レミィを最初に駆け寄っていく

空はもう白みはじめていた

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