リーフ学園の怪談 1 投稿者:u.g
「幽霊?」
「そ、幽霊」
相田響子が責任者をつとめる第二保健室
ここに3人の教師が集まっていた
授業の空き時間を利用してのたわいもないお喋り、
ごくいつもの事である。
「夜な夜な学校を徘徊してるらしいわよ、知らない?」
かなしいかな、教師が集まれば必然的に中心になるのは
学校の話に生徒の話。
そのなかでも、この日は噂話が主な話題となったようだ
小出由美子が最新のものを披露する
「んーー、聞いたことないなぁ・・・」
要約すればある女子生徒が忘れ物を取りに
学校へ戻った所、暗闇の中でかすかに光る人影を見たのだそうである
身振り手振りも交え熱心に語る由美子に対し
勇希の反応はいまいちである
「まぁ、噂を広げているのがいつもの彼女なんだけどね」
「なんだ・・・・」
その”いつもの彼女”が誰のことを指すのかは、
あえて言うまでもなかろう。
ぐっと信憑性が低くなったところで由美子は切り札を出した
「でもこれで終わりじゃないの」
「?」
「昨日、警備保障の人たちも見たんだって」
「え?・・・・って言うことは」
怪訝な顔をする勇希
にやにやと笑う由美子、反応を楽しんでいるらしい
「それでね。今日もう一度、念入りに調べるらしいの
私たちも行ってみない?」
きらりと光る眼鏡が妙に邪悪な風情を醸し出している
「・・・・怖いって・・・・・」
「あら、勇希ってこういうの苦手?」
「ううん、由美子ちゃんの様子が・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
一瞬、辺りが静まり返る
「で、どうするの?」
気を取り直して尋ねる由美子
勇希が答えるより早く口を開いたのは
「幽霊に薬が効くのかどうか、試してみたいわね・・・・」
今まで話に加わらなかった響子である

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    Lメモ  
            リーフ学園の怪談

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夜の校門前
「よくぞここまで来た我が精鋭達よ
あまたの試練を突破し多くの友の屍を乗り越え(略)」
あまりに長いので割愛するが
ノリノリで語っているのは由美子である
レミィと忍が律儀に聞いている
話が終盤にさしかかる頃
「ごめ〜〜ん☆」
「おっそいわねぇ〜〜」
最後の一人がたどり着いた
愚痴る恋に悪びれた様子もなく勇希が言う
「みんな、そろったわね」
幽霊探しのため特別に編成されたメンバー達が集まっていた
斎藤勇希、小出由美子、相田響子、宮内レミィ
広瀬ゆかり、東雲忍、東雲恋の7人である
どういう基準で選んだのだろう・・・
厳かに宣言する由美子
「これより『せっかくだから幽霊に会っちゃおうぜ』大作戦を開始する」
ようやく終わったらしい
しゃべり疲れたのか肩で息をしている
「それじゃ、れっつ☆ご〜〜」
いつのまにやら勇希が仕切っていた
後から来たくせに・・・・・

一行が探索を開始した校舎に
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ」
絶叫が突然響きわたった
「な、なに。今の」
「・・・あっちからですね」
忍が言う。その冷静さは頼もしささえ感じさせた
ただ単にマイペースなだけかも知れないが・・・・
ちなみに一度爆笑するところを見てみたい彼である
それはともかく、声がした方向へ駆けて行く一行
その先にあったもの、それは・・・・・
第一保健室

「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・(ぼーっとしてるだけ)」
「・・・・・・・・・・・」
その場にいた全員が何が起こっているかを
正確に想像する事が出来た
だが、敢えてそれを口にするものはいない
「ねぇ、どうする?」
尋ねる由美子にも答えは分かっていた
しかし、そうすることで確認したかったのかも知れない
「どうするって・・・・・」
そこで口ごもる勇希
「行こっか・・・・・」
しばしの間をおいて結論を出す
「人の恋路をジャマするの、よくないネ」
困ったような顔でレミィが言う
「聞かなかった事にしよ・・・・」
ゆかりの呟きに異を唱えるものはいなかった

「だれかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ!!!!」

中からは相変わらず悲鳴が聞こえてくる
こんな時間までなにしてんだか・・・・・

 



一同が保健室の呪縛からようやく離れようとしたとき

どごおおおおーーーーーーーーんんん!!!!!

突如として轟音が鳴り響いた
「きゃぁっっ」
「な、なに?」
振動する校舎
「地震・・・・・・?」
「・・・・・・・・いいえ」
独り言に近い由美子の問いにゆかりが静かに答える
「あれは・・・・、魔術ね」
「魔術、どうして?」
「そこまでは・・・」
さすがにそれ以上のことを知るはずもない
「・・・とりあえず行けばわかるわね」
相田響子が現状を理解するためのもっとも
簡単な方法を口にした

その場では一組の男女が対峙していた
いや、正確には一人と一体、であろうか
「──ふふふふふ、やりますね」
戦いの喜びに浸るDセリオと
「くくくくく、貴様もな」
なんだか危ない目をしたハイドラントであった
「あら、珍しい取り合わせね」
「先生、そんなこと言ってる場合じゃ・・・・」
そして、やや離れた場所から
来栖川姉妹とエーデルハイドにカレルレンと悠 朔
それにDマルチが
事の成り行きを見守っている
よく見ればDボックスもいた
勇希達に気がついたのか近づいてくる
「みんな〜☆こんばんは」
「──コンバンハコンバンハ」
それに答えたのはD箱のみであった
「ダメじゃない。挨拶はしっかりしないとね☆」
めげずに言う。笑顔はややひきつっていたが
「そうそう、挨拶は←↓→+P、名刺交換への連鎖もありなんだから
ちなみに握手は←↓→↑+KKよ」
由美子も話に加わる。なんの話に・・・・?
「はい、もう一度」
生徒をその気にさせる超一流の反復
勇希にのせられて発動する挨拶モード
どちらかというとそのノリは幼児向け教育番組のそれに近かった
「よくできました!」
過酷な修練の末に会得した超一流のよくできました実践
先生は留学生なんです
「──ヨクデキマシタヨクデキマシタ」
「CMネタはすぐに風化するわよ・・・・」
響子がぽつりと突っ込みを入れる
場違いな空気が流れた

「で・・・・、なんでこんな事になってるの」
脱力したように言う由美子
話を本筋に戻している
「いや〜〜、まいったなぁ・・・・」
「──話せば長くなりますが」
無表情なDマルチと諦めたような笑顔のカレルレン
意外に冷静に見える
冷静さの質はそれぞれで異なっているようだが
「とりあえずこの状況を何とかしないと・・・・」
忍が言う。
至極もっともであり、そう考えるのも当然のものだ。
しかし、それは大きな疑問を発生させる
「・・・・でも、どうやって?」
恋の問いがみんなの心を代弁していた・・・

「ねぇ、ゆーさく。あれ、止めてきてくれない?」
【死の速攻】の二つ名を持ち
リーフ学園でも上位の実力者である彼女とても、
さすがにこの状況では進んで関わり合う気はおきないらしい
「む、無茶言うな。できるか、あんな・・・」
朔の言葉は最後まで続かなかった
みんなの期待に満ちた目に気がついたためである
「もしかして期待されてる?」
「うん」
綾香が笑顔で答える
朔はなぜか動揺していた
「・・・・・・・・・・・・・」
──期待されているのか・・・。俺が・・・・俺が・・・・・・
「期待には・・・・応えねばならんな・・・・・」
妙にさわやかな顔で出撃して行く彼
「やめるんだ、二人とも」
そして、ハイドラントとDセリオの間に割って入る
だが・・・・
「神威のSS 黒い牙!!」
「──シャイニングアーム!!」
それはちょうど二人が技を発生させた直後のことであった
「きてはぁぁぁぁっっぁっぁぁぁっっっっっ」
いいタイミングで直撃を喰らう朔
そのまま黒こげの状態で放り出された
「こ・・・・、こんな役・・・・なのか・・・・・」
ごめんね
そんな彼を柱の影から見つめる者がいた
「朔・・・・・・・」
彼の姉、悠 はじめ
彼女はただ見守るのみ
弟の成長を願って・・・・・

「やっぱり、ダメだったわね・・・・」
「・・・・・・そうね」
ゆかりと綾香がため息をつく
半ば予想はしていたらしい
「・・・ゆーさく、あなたのことは忘れないから・・・」
「なむなむ・・・」
まだ死んでないって・・・
「・・・・・次は僕が行きます・・・」
「だ、ダメよ、お兄ちゃんにあんな危ないことさせなからねっっ!!」
名乗りを上げる忍を恋が必死で止めようとする
「カレルレン先生。男でしょ、頑張って」
「ぼ、僕ですか?わ、私には家で帰りを待つ妻で子が・・・」
カレルレンが救いを求めるように見つめる先には
「にゃにゃ、嫌にゃぁぁぁぁ!」
「・・・・・・・・・・・・」
芹香は本気でおびえているエーデルハイドを
優しく抱きしめ、なでてあげる
「ご主人様〜〜」
「ネェネェ、撃っていい・・・デスカ?」
レミィはどこから持ってきたのか弓矢の用意していた
だれか止めてくれ

なすりつけあいが泥沼の様相を呈している
「しょーがないわねぇ・・・・」
いままで冷めた目で事態を見ていた響子は、ぽそりと呟くと
Dボックスをつかんで駆け出した
「ハナシテクダサイ、ハナシテクダサイ」
それを聞いたわけでもなかろうが、響子はD箱を放し
そのままシュート態勢に持ち込んだ
「トビマス、トビマス」
蹴り上げられたD箱はそのまま、
「Dセリ」
名を呼ばれ振り向いたDセリオの顔面に綺麗にヒット

ぷしゅーー

その足でハイドラントの背後に回り込んだ響子は
突然の出来事に動転するハイドラントを一気に締め落とす。

「きゅぅ・・・」

その間わずか十数秒。鮮やかな手並みである
「始めからこうした方が早かったわね・・・・・」
さして表情も変えず呟く響子を一同は声もなく見つめている
──・・・・・一体何者?
特にハイドラントが塔で教育を受けていたことを知る綾香に
とっては驚愕以外の何ものでもなかった
「何だか喉が乾いちゃったわね」
響子はそれに全くまったく気づいていないようだ
大きくのびをしている

先ほどまでの騒がしい状態から
カチャカチャ
うって変わって静まり返る
そんな中、何かがぶつかる音がやけに大きく響きわたった
こぽこぽこぽ
妙な音に、綾香が顔を向けた時
「──みなさん、お茶が入りましたよ」
「お菓子もあるわよ☆」
それまでの流れを無視した声がかけられた
Dマルチと勇希である
どうやらわき目もふらず準備していたらしい
レジャーシートの上では紅茶とお菓子が用意されている
「・・・・先生・・・」
「あの状況で・・・・・」
恋とゆかりがあきれたよう言うが
「なんだか、長引きそうだったし」
勇希はどこ吹く風といったところである
「はい」
「ありがと」
いつの間にやら響子は既にくつろいでいる
「──エーデルハイドさんはミルクでいいですね」
Dマルチがミルクを差し出さし尋ねると
にゃあ〜〜
おいしそうに飲みはじめた
彼のご主人様は隣でその様子を眺めている
「さ、みんな。どうぞ」
「そうね、突っ立ってるのも何だし」
綾香の言葉をきっかけに残りの者も
それぞれ思い思いの場所に座ることにする
そのまま雑談まじりにここまでの経緯を話すこととなった
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