学園祭Lメモ「楓祭’98/科学部出展作品(上)」 投稿者:u.g
学園祭Lメモ「楓祭’98/科学部出展作品(上)」 
「学園祭プログラムと地図はこちらで配布しております。
校内大変混雑しておりますので、いざというときの集合場所は
決めておくことをお願いします」
「迷子、急病者等何かありましたら最寄りのテントまで連絡を」
「危険物等不審なものがありましたら至急ジャッジ本部まで」
っておひ

注意を促す校内放送

「映研自主制作映画、もうすぐはじまります。
ご用とお急ぎでない方は見に来てくださーーーい」
「たこ焼き〜、たこ焼きいかがっすかぁっっ」

客寄せの声もそこかしこで景気良く響きわたっている
そう、今日は楓祭
お祭り好きでも知られるこの学園のこと
学園祭と言えばお約束の研究発表、演劇、映画はもちろんのこと

「金魚すくい、いかがです〜」
「くじ引き、はずれ無しだよ〜〜」

縁日にあるような出し物すら一通りそろっているようだ

「鳴きウナギはいりませんかぁ〜〜。借金返さないといけないんです〜〜」

「・・・・いるか・・・・・」
「いるか・・・?」
「・・・・そう・・・・・」
「?」
「・・・つつきませんか・・・・?」
「あの〜〜」

・・・・・なかには得体の知れないものまであるようだが・・・・・
それもまたいかにもである

もともと生徒の総数自体が多い上に
さらに、父兄や他校の生徒など
外部からの参加者も加わるのだから
その賑わいもしれようものである
生徒の総数自体が多い上に、父兄や他校の生徒など
それに輪をかけて外部からの参加者も多い

たっ、たっ、たっ、たっ、たっ、たっ

その混雑の中を人混みをよけつつ駆け抜ける少年が一人

どんっ

「あっ」
「きゃっ・・・・」

と、まぁぶつかるのも仕方ない
相手にとっては迷惑な話だが・・・

「ご、ごめんなさい」
「きゅうぅ・・・・・」
「あっ、ま、マルチちゃん・・・・」
(・・・もしこんなところをセリス先輩や貴姫先輩に見られたりしたら・・・)
怖い想像に真っ白になりそうなのを何とかこらえ
現実でいまだ床に転んだままの彼女を助け起こす
「大丈夫・・・?」
「あ・・・、は、はい。ごめんなさい。ちょっとよそ見してて・・・」
「ううん、こんなところを走ってた僕が悪いんだね。ゴメンね」
「あ、あのマルチちゃん・・・」
「は、はい・・・。あの・・・私の事はノルンとお呼びください」
呼びかけられた時こそ驚いていたもののノルンは微笑みながら答える
「マルチさんは私たちのお姉さんなんです」
「へぇ〜〜。それで・・・、何かを探してるの?」
「今日は3人でお買い物に出かけて・・・たまたま通りかかったんですけど・・・、
マスターがせっかくだから見ていこうって・・・でも、私だけはぐれてしまって・・・・」
「要するに迷子になっちゃったんだね」
はっきりと言われて頬を赤らめるノルン
「・・・・はい」
「じゃぁ、お詫びに案内所まで案内するよ。そこで待ってれば多分あえると
思うから・・・・」
「は、はい・・・あの・・・あなたの名前を・・・教えてもらえますか」
「あ、そ、そうだね。僕は宇治丁っていうんです・・・・」



学園祭Lメモ
  楓祭’98
    科学部出展作品『空想科学の現実における実論的考察』

オープニングは「birth」で(笑)




「さぁ、お待ちかね。科学部主催、実験の時間だ
今日は観客も多めなんで俺もちょっと緊張気味だぜっっっ」
軽快なジンののりに会場はドッと沸く
まるで、後○園のヒーローショーさながらである
つかみはオッケーといったところか
「司会は俺、ジン・ジャザムと」
「ども、お手伝いの東西で〜〜す」
「そして、毎度おなじみの顔ぶれ。実験協力者の登場だ!!
皆さん、拍手でお迎えくださいっっっ!!!!」

パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
堅苦しい印象を与える研究発表にしては客の入りはなかなかのものである

ジンが手元の縄を引っ張ると
毎度おなじみの三人(二人と一匹)が
これもおなじみ簀巻き姿で引きずられてくる
「やぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ」
「たぁすけてぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっっ」
「いやにゃぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ」
「うんうん、今日も元気がいいみたいだねぇ」
ジン、嬉しそう・・・


「あれ、なんだぁ・・・?」
「停電・・・・?」

暗くなる場内
何人かが素っ頓狂な声を上げるのが聞こえる

カッッ

暗がりの中、突如としてスポットライトがある一点を照らし出す
舞台の中央、光の中心に立つもの、それは・・・・
「そして、科学部顧問の柳川先生ィィィィィィィィィっっっっ」
ドライアイスによる煙と乱舞するイルミネーションという
デーハーな演出の花道をさして気にした風もなく進み来る柳川
一昔前の超能力特番のごとき様相を呈しながら、それははじまった

「では、さっそく。今日のサクリファイスはっっっっっっ!!!」
「「「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ・・・・・・」」」
「おう、安心していいぞ。うまく行けば三人とも出番が来るからなっ」
それは失敗と言わないか?
「「「やだぁぁぁぁぁぁっっっっっ」」」
「まて、ジン・・・・
せっかくだから今日は会場のどなたかに協力してもらうというのはどうだ・・・」
狩猟射的微笑みでとんでもないことをおっしゃる柳川
「なるほど、そいつぁ良い考えだ・・・・」
おひおひ・・・・
「マンネリ化は倦怠期にもつながるからなっ」
のりのりでそうのたまうジン
何となく用法が違ってるような気がしないでもないが
目の前の現実に比べたらそれは、大した問題ではない
「と、言うわけで・・・・誰か手伝ってくれる人、いるかなっ?」













静寂・・・・・
ジンの呼びかけに答えるものはいなかった
無言の返答の先にあるもの、それは簀巻き姿の3人の姿
先ほどより観客の視線はその一点に集中している
やや大袈裟な演出と迫真の演技と見ていた観客達も
少しづつ事態の異常さに気がついたらしい
直感的に危険を避けようとするのは古から体に刻み込まれた本能のなせる技か
ジンや柳川と目を合いそうになると盛んに視線が逸らしている
「くくくくく・・・・そうかよ・・・・・そっちがその気なら・・・・」
ジンの瞳に剣呑な光が宿り
「10・・・・」
やおらカウントが数えられはじめた
「9・・・・8・・・・7・・・・」
場内にいやぁ〜〜な気配が漂ってゆく
と、

カシャッ

客席の後ろから鉄製のリングがはまり
逃げだそうとした観客の動きを封じる
「な、なんじゃぁこりゃぁぁぁぁぁっっっ」
あちらこちらで巻き起こる悲鳴

「行きなさい、私のことはいいから」
「ママ〜〜」
「はやくっ!」
幸いにも難を逃れたらしい子どもと
それを逃がそうとする母親
「すまん、生きていたらまた会おう」
「やー、置いてかないでっ、助けてっっ!!」
彼女を置いて逃げようとする彼氏

「・・・6・・・・5・・・・4・・・・」

がちょんぎちょんげちょん・・・
ジンの武装が徐々に展開されて行く
実に楽しそうである

「あ、あかねえぞ」
「畜生、鍵がかかってやがる」
動けるものも動けないものも
その場にいた彼らの前に
訪れるは平等にしいて残酷な現実、絶望・・・・・


「3・・・2・・・1・・・・」

準備万端整ったらしい
「ひぃぃぃぃぃぃっっっっ
ぼっっ、僕がやりますからジン先輩やめてぇぇぇぇぇぇぇっっっ」
「俺達は新しい刺激がほしいんだよぉぉぉぉぉっっっっっっ」
とんでもないことを口走っているジン
ちょっといっちゃってるらしい
ゆきの涙ながらの訴えもあっさりと無視する
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
あとの二人は恐怖が限界を超えたためかとっくに気絶してた

「くくくくく・・・・いいんだな・・・・・? いいんだなっっっ」

「ひいいいいいいいいいいいいっっっっっっっっっ」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっ」

慈悲であろうか
最後のカウントに一拍を与え

「やれ、ジン」
「いっくぜぇぇぇぇっっっ、ふぁいや・・・・・」

「「「「「「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・」」」」」」

その全ての武器を一斉に解き放とうとしたまさにそのとき

ガラガラガラ・・・

ピシャッ

「はいは〜〜〜い、ゆきちゃん空くん猫さん、それにジン先輩
頑張ってくださいですぅ〜〜〜」

ノー天気な声とともに・・・・・

救いの神は現れた