『どよめけミスL学コンテスト』 第二十三とにぶんのいち話 〜〜三枚の袋〜〜 投稿者:山浦

「おーい、隼ぁ。あんま離れとると危険だぞ」
 思惑、問題、大騒動、様々なモノを巻き込んで、予想通り暴走を開始しはじめ
た『どよめけ! ミスL学コンテスト』も初日の夜を迎えていた。
「そう言うな。丁度今面白くなってきた所なんだよ。山浦」
「あのなぁ。一応お前もエントリーヒロインなんだぞ。そうで無くったってこっ
ちは弱小勢力だっつうのに……」
「まあまあ、堅実な人生なんて時間の浪費でしか無いんですし」
「そーそー、人生冒険だよぉ、山浦くん。にゃはははははっ」
「あんたらなぁあああああああっ!!」
 で、その中の勢力の一つ……と言うには少々戦力が足りない……隼魔樹@寮生
代表&芳賀玲子チームである。
「……ったく、こんな調子だとアレを使う時も近いかもなぁ……」
 その中で唯一先の心配をしている男、山浦がブツブツ呟く。どーも、コンテス
ト開始以降、キャラが変わってきたような気がしないでもない。
「なんです? 『アレ』と言うのは」
「ああ、こいつは参加する前に秋山さんからいただいたモンで……」
 神海の質問に応える山浦の手の中には、【壱】【弐】【参】とそれぞれにナン
バーリングされた小袋があった。


『どよめけミスL学コンテスト』 第二十三とにぶんのいち話

                「三枚の袋」


「あうあうあうあうあう〜。またはずれちゃったよあたらないよこまっちゃった
よどうしようよどうしようよ電芹ぃ」
 さて、その頃屋台連合VSセリオ&マルチ連合(仮)の戦闘は膠着状態になり
つつあった。
「ディアルト! もうちょっと接近できないの!?」
「無茶言わないで下さいぃぃぃぃぃぃぃ!!」
 そうこう言っている間にも断続的に電芹の電柱攻撃は続いている。もちろん、
屋台連合の優位には違いない。しかし、FENNEKの回避能力の前に、クリテ
ィカルな効果には至らない。
(……持久戦は避けたいですね……)
 現在は互角に近い走力をもっていると言っても、相手は車である。時間の経過
に従ってディアルトの不利は否めない。
「……何か手段は…………」
「今こそ切り札を使うときです!」
 ふと呟くディアルトの声を、唐突に電芹が遮る。その手の中には、【壱】【弐】
【参】とそれぞれにナンバーリングされた小袋があった。
「あっきーがくれた袋だね」
「そうですたける。そう、それは丁度私たちが戦いに赴く直前の事です……

(回想シーン)。
『たける、電芹。やはり往くのだな?』
 忍び装束に身を包み、常とまるで変わらぬ剛毅な表情の秋山登。手塩にかけて
育ててきた娘たちが戦いに赴くと言うのに……いや、それゆえに彼の表情はいつ
もと変わらず誇らしげに彼女らを見守る。
『はい、カフェテリアを守らなくて何が看板ウエイトレスですか』
『みんなのためにも頑張るからねっ!』
 力強く応える二人に秋山は頼もしげに笑いを見せて、そしておもむろに懐に手
を突っ込む。
『よく言った。その覚悟があるなら俺に言うべき事など無い』
 言いながら取り出した手の中には、ちいさな袋が三つ納められている。
『三枚の袋を用いて『一枚の袋では破れても三枚の袋はなかなか破れない』とし
て、諸葛孔明が三国鼎立を唱えた故事がある。これは俺からの餞別だ。困った事
があったら順にこれを開くのだ』
(回想終了)

……そうして受け取ったのがこの袋です! 今こそこれを開く時でしょう!!」
 屋台の上で仁王立ちになったまま、電芹は高々と袋を掲げ、そしてゆっくりと
をれを開く。
「…………」
 何となく期待に息を呑む一同の前に晒された袋の中身、それは…………。
「……これは?」
 出てきたのは、見慣れない形状の缶詰。予想外の代物に首をひねる一同。そこ
に、ひらりと一枚の紙切れが落ちる。
「……『がはははは、男は筋肉だ』…………あっきー……」
 袋から顔を出した缶詰。それはまさしく、液状プロテインの缶そのものだった。