体育祭Lメモ『情報特捜部 体育祭特別号外第二号』 投稿者:YF−19
「んーと、じゃ、とりあえず志保のとこ行って許可貰ってくるか。放送席に居
るといいけどな…」
 シッポは悠朔―情報特捜部部長―に手渡された原稿を持って放送席のあるグランド中央へ走って行った。
 客席(観覧席:保護者達が座る、球場のスタンドを一部分切り出したような場所。席は二階からなので、
その下は役員控え室などの各種控え室になっている)の下にあるマスコミ専用控え室では、他の部員達が
記録の保存に忙しく立ち回っていた。


体育祭Lメモ『情報特捜部 体育祭特別号外第二号』


「志保〜、いるか?」
 ここはグラウンドの中央にでかでかと作られた特設放送ブース。
 シッポはその中に居るはずの志保―情報特捜部副部長―を訪ねた。
 色校の検閲をしてもらって、発行の許可を貰う為である。
「何よ?シッポ。私、今日一日中忙しいって言ったでしょ?」
 志保の、−わざわざ原稿を書いているマスコミ控え室前のグラウンドから訪ねてきた−
シッポに対する第一声は、文句だった。
「…これ、部長が書いた原稿。んでこれの発行部数はどれくらいにする?」
 さすがのシッポにも多少堪えられなかったらしく、さりげなく額に青筋が浮かんでたりする。
「はぁ?そんなの悠が決めればいーじゃない」
 そんなシッポの様子に気付く気配のない志保は、そう言うと手元にあった緑茶で喉を潤わせた。
「そう言う訳にもいかないんだと。いつもやってるのはお前だから、お前の指示に従えってさ」
 シッポはなんとか自分の感情を消し去ることに成功すると事務的に話を進めた。
 …と、それを聞いた志保がゆっくりと首をこちらに回しながら言った。
 シッポは嫌な予感がした。
「ふーん、そう。ってことは、この原稿も手直しオッケーなワケね?」
 にやり。
 そして、あのいたずらを考えついた子供のような表情を浮かべた。
 …予感は当たった。
 志保はぴっと言う音と共にシッポの手の中の原稿を奪うと、脇に置いてあった
ワープロを起動させると、嬉々とした表情で新しい原稿を作り出した。
(放送席にも伝達事項の変更やルールの改正などに対応する為に、一台ワープロが置いてあった)
「開会式あたりはこのままでいいから、裏面から競技の内容にして…」
などと呟きながら原稿を書いてゆく志保を見てシッポは、
(あぁ、もうこの記事は原形をとどめないだろうな…)
と、思い心の中で悠朔に合掌した。

 その後、シッポは志保に手直しされた原稿を持って、悠朔の待つ輪転機
(なぜか学園の印刷室にはコピー機とは別に輪転機があったりする。時々謎だ。この学園は)
の元へ走った。


 シッポは道中、「志保に手直しされ、既に別モノになっている原稿」を悠朔に見られる前になんとか
輪転機にかけてしまおうと考えていた。
 輪転機にかけてしまえばこっちのモノ。
 一度回り出した輪転機はそうそう気軽に止められるような物ではないのだ。
 シッポは悠朔が記事を書いているのを今まで見たことがなかったのだが、さすがに志保に手直しされたこの
「悠朔が書いたという形跡がない」原稿を見ると内心、
(とても見せられた物ではないな)
と、思った。

 第二印刷室が近づいてきた。
 輪転機は巨大な為、他のコピー機などとは別な場所に置かれている。
 その扉の前で一旦立ち止まったシッポは、いくつか考えた作戦の内一つを実行することに決めた。
 内容は、時間がないことにして掲載予定の写真を自分の手で素早く張りつけ、その
まま輪転機にかけると言う物。
 他にも少々ヒネったモノを考えていたのだが、状況と未だ得体の知れない悠朔相手に完璧にこなせる
確証はないと判断し、一番現実的かつ簡潔な案を採用した。

「お待たせしましたっ」
 計画通り扉を勢い良く蹴り開けると、そのまま室内に備え付けられている机の前まで走って行った。
 悠朔はデコイから受け取った現像済み写真の選定をし終えたところだった。
 そんな悠朔を見たシッポは、写真の山とは別に分けてある写真を掲載する写真だと判断すると、
速攻でそれらを最終色校に貼り出した.
「お、おい。シッポ?どうしたんだ?一体」
 悠朔が少し不思議に思って、焦って写真を張りつけているシッポに聞いてきた。
 シッポは予め用意しておいた答えを一瞬の内に頭の中に浮かべると、一気にまくし立てた。
「えっと、次の競技までもうあんまり時間がないんです。で、今志保に少し時間を延ばしてもらってるんです。
だから、これを急いでかけて戻らないと」
 言いながらも写真を貼り終えたシッポは、悠朔に見せないように最終チェックを手早く済ませると、
完成校を輪転機にセットし、輪転機を作動させた。
「…そうか、じゃあ急がないとな」
 悠朔はそれだけ言うと机の上の写真をまとめて手にし、シッポと共に第二印刷室を後にした。
(ふぅ…なんとかばれずに済んだ…)
 悠朔の後ろではシッポが安堵のため息を漏らしていた。


 その後、出来上がったガリ版を見て悠朔がため息をついたのは言うまでもない。



 今回の号外は表面悠朔の記事。裏面志保の記事と、特別両面構成。

『情報特捜部 体育祭特別号外第一号


 いよいよ始まった我がLeaf学園の体育祭。
 年々過激になる演目(演目自体はごくごく普通のものであるのだが、これ   
が過激な内容に化けるのがこの学園らしいとも言える)に、保護者から
"止めた方がいいのでは?"
等の声が上がっていたが、お祭り大好きな人間が集ったこの学園でそんな意見が通る訳もない。
 開幕に当たって選手宣誓があったのだがその内容は素晴らしいものだった。
 宣誓をしたのは三年生の代表として台に上がったジン・ジャザム。

「宣誓! 我々は、力の限り戦い抜く事をここに誓ってやらぁぁぁぁっ!!!」
 スポーツマンシップも正々堂々という言葉もすっ飛ばしたのは、もはや計画的と言うより他有るまい。
 余計な事は一切誓わず始まった体育祭。
 準備体操の段階で"日射病"で倒れた者が続出したが、概ね順調にスタートしたと言える。
 順調、とはいえこの体育祭が波乱含みであることは、もはや言うまでもないだろう』


 こっちは裏面。志保の記事。
『情報特捜部 体育祭特別号外第二号

 借り物競争 愛の勝利!!

 さて、今回の第一種目は借り物競走だったのだが、これが何と
「ルール無用!妨害・私闘・策略何でもありよ(はぁと)デスマッチ・モード!!」
だったのである。
 当然スタートからその火蓋は切って落とされたのだが、さすがにスタートは皆警戒
していたらしく、かかったのは転入生の冬月とディアルトだけであった。
 その他はおおむね順調にスタートを切った。
 …阿鼻叫喚の地獄が待っているとも知らない選手達は一目散に封筒を目指し、全力
疾走していった。
 その結果がサテライトキャノン二連発だったり、人間ロケット発射だったり、集団リンチだったりするのだが、
いつもの事。大した事はないだろう。
 それよりも興味深いのは競技の結果。
 一位岩下瑞穂ペア。
 三位西山楓ペア。
 ここまではいい。
 二位やーみぃ瑠華ペア。
 興味深いのはこれだ。
 前者二組は既に学園公認になりつつあるが、後者は初顔。
 と言う事で、
(ここで二段ぶち抜きの見出し)
 緊急速報!リーフ学園に新たなカップル出現!!
        正義の使者もやはり人だった!熱血で恋もアツアツ?

 さあっ、新たなカップルが誕生しましたっ。
 あの正義の使者で有名なやーみぃさんと月島瑠華さんが新たにカップル宣言!
 月島瑠華さんはこの度やーみぃさんの所属する生徒会に入られたそうで、その辺の
ことも関係しているのかもしれません。
 みなさん、いつ彼らが恋人宣言をした?と思ったでしょう?
 それはですね、今回の協議に隠された謎があったんです!
 今回情報特捜部では大スクープとしてこの情報をあるルートからリークして頂きました。

 その隠された謎とは…ゴールした選手のメモには
「あなたの好きな人」
 と書かれていたと言うことなのです!!
 あなたの好きな人を連れてゴールしろとは即ち恋人宣言と言うこと!!
 他の思い半ばにしてお亡くなりになって行った人達の分までお幸せに(笑)』

 出来上がった新聞が他の部員の手によって掲示、配布されると所々から突っ込みがあった。
 が、既に手遅れだった。
 
 ちなみに暗黒生徒会の暗躍については綺麗さっぱり記述が消えていた。

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「って待てっ!俺は断じて認めんぞーっ!!」
 あ、Hi−waitさん。
「こ、こんなの恥ずかしいです…(てれてれ)」
 月島瑠華さんもいますね。おめでとうです(笑)
「勝手に殺すな!まだ死んでないっ!!」
 あ、皆さん。無事だったんですね。
 では、波紋を投げかけながらお別れです。(笑)

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さて、自伝Lメモいつまで経っても終わりそうにないんで部長の誘い通り乱入Lメモ書いてみました。(笑)
長編以外のLメモは初めてなんでちょっとまとめ方が弱いです。(^^;
その辺はご容赦を。不当な扱いを受けた出演者の皆さんにもお詫びします。(ぺこり)

ネタは正規運動会Lメモから全て拾ってます。
今回は西山さんの、
体育祭Lメモ「借り物競走?それぞれの想い」
から頂きました。
西山さん、作品お借りしました。事後承諾になってしまってすいません。(^^;

それでは長編の次章書きます…。