Lメモ自伝 シリーズ第一話 「木漏れ日」 第三章  出会い 投稿者:YF−19
「シッポです。よろしくお願いします」
 ここは二年生の教室。
 朝のHRが生徒の喧騒に包まれながら進行している.
 そんな中、YF−19は担任に転入の紹介をしてもらっていた.
 名前は以前決めたように―シッポ―で通すことにした。
 無論、自己紹介もぬかりはない。
 目立たず、騒がず、普通に。
 この辺、諜報活動に携わっていた者の悲しい性とも言えなくもない。
 ま、それはともかく彼は大したトラブルもなく朝のHRを乗り切った。

「さて、ホントに同じクラスだとは思わなかったな…」
 彼が担任に紹介されたのはHRの最後だったので、彼が席に座れたのは休み
時間に入る直前だった.
「しかも…隣の席とはね…」
 そう、彼の隣は志保だった。
 運がいいのか悪いのか。
 不思議な偶然もあったものである。
 ま、なんにせよ調査にはちょうどいい。
 彼はこの偶然を素直に受け止めることにした。
 そんな事を考えながら隣の志保をちらりと見ると、
「はぁい」
と言った感じで手を振ってきた。
 と、その時突然大勢の生徒が彼の元にやって来た。

「ねーねー。シッポ君はどこから来たの?」
「お前スポーツは何かやるのか?」
「飛行機持ってるってホント?」
「歳いくつ?」
「通学なの?それとも寮?」

 いつの時代にも転校生を待ち構えているという、もはや恒例行事の質問攻め。
 彼もご多分に漏れず、机の周りを多くの生徒に囲まれ、一度に多くの質問を
投げかれられていた。
 いつの間にか休み時間に入っていたらしい。
 人垣の隙間からちらりと教壇の方を見ると、ちょうど担任が教室を出て行く
ところだった。

「どこからと言われても…。ちょっと事情ありで学校行ってなかったから…」
「スポーツ? 特定の物はないけど大体できる…かな?」
「飛行機? あぁ、それを言うなら戦闘機です」
「歳は17」
「通学ですね」

 彼はいつも自分がこなしてる作業のように、ごく当たり前に投げかけられた
全ての質問に答えていた。
 その瞬間、教室が…しん…となった。
「…? どうかし…」
 と言いながら彼ははっと気付いた。
 ここは基地ではないと言う事に。
(…しまった。いきなりやってしまった…)
 彼らしからぬミスだった。
 今までにない類の緊張感が彼にポカミスを引き起こしたのだろう。
 とりあえずどうしようか、彼が頭を働かせようかと思った瞬間、最初に質問を
投げかけてきた女の娘が驚きの眼差しと共に、
「すっご〜い! 全部に答えちゃった!」
 と、言った。
 すると教室中がその声につられたように同様の声を次々と上げた。

 だが、そんな彼を別な角度から見ていた者が数人いた。

 その中の一人である志保は、
(これはいい人材ね〜。インタビューの時なんかいいかも…。ぜひうちに欲し
いわね)
 などと思っていた。
 …これもまた、他の数人とは違った視点だったが。

 それを彼の特技だと思った彼らによって、教室は一層大きな喧騒に包まれて
いった。



Lメモ自伝 シリーズ第一話 「木漏れ日」
                         第三章  出会い



「ふん…小賢しい」
 カタカタカタ…。
 人気のない資料室にキーボードを叩く音だけが響いている。
 …ペポ。
「ナメてるのか? この程度のセキュリティとは…」
 シッポはそう言うと作業を再開した。
 資料室の端末を使って『YF−19』が学園の資料を検索しているのだ。
 カチ、カチ、カチ…。
 マウスを握る右手は素早く、そして正確にポイントへと移動してゆく。
「これか…」
 彼が今探しているのは『長岡志保』に関するデータ。
 聞き込みや直接聞くという手段はあまり使わない。
 聞き込みは相手にばれて警戒される原因ともなるし、真意を悟られぬように
直接本人に聞くというのも正直言って現段階では難しい。
 と、なれば直接学園のデータベースからパーソナルデータを集めるしかない。
 幸いこの端末は学園の中心部にもアクセスできるようだった。
 もっとも彼の思った中心部とは、学生のデータやテストの成績、その他もろもろの
いわゆる「大事な情報」程度のLVの情報が保管されている所であったが。
 この学園にはもっと高度なPASSでないとアクセスできない情報が山ほどあった
のだが、それはまだ彼の知るところではない。

「ふむ…これは興味深い内容だ…」
 彼を引き付けたのは、
『歩く校内ワイドショー』
『制服を着た東スポ』
等の生徒達による、彼女に対する人物評の記述だった。
「要するに情報経路が充実していると言うことか…。でなくてはいくら脚色ぐせがあ
っても仕方ないからな」
 材料がなくてはマズイ料理も出来ない。
 つまりはそういう事だ。
「他に…ん、あった」
 彼の目線の先には、
『情報特捜部を実質的に取り仕切っており、部誌として学内新聞を発行している』
という記述があった。
「ふーん、なるほど…。面白いモンやってるな」
 シッポは不敵な笑みを浮かべると、更に関連項目を調べだした。
 とりあえず、情報特捜部の事は全て調べるつもりだった。
 カチ。
 次にシッポが引き出した情報は情報特捜部部長である『悠朔』のものだった。
 
『悠朔』
 現在二学年に在籍。
 授業への出席率はあまり芳しくない。
 その割にこれまでの試験では好成績を納めている
 情報特捜部創部を提案し、創部後部長に就任。
 にも関わらず彼自身はあまり活動していない。
 現在ダーク13使徒と対立。
 特にハイドラントに執着する傾向が見られる。
 ジャッジに協力的な行動を取る事も確認されている。
 
「剣士ね、二刀流とはまた珍しい…」
 シッポは特記事項にあった悠朔の戦闘経歴を見て呟いた。
 カチ。
 ピー。
 そのままもっと詳しい経歴を探ろうとしたところ、システムに進入を拒絶された。
 "Hu^jin――Don't refer to this matter."
 この一文と共に。
「ふぅん…中々面白いところらしいな。この部は」
 シッポはこの一文で情報特捜部に興味を持った。


「…ったく、どこ行った? 必要ないときはいつもいるクセに、必要なときに
いないとは…」
 悠朔は志保を探していた。
 が、先程から姿が見えない。
「わざわざ探すのもめんどくさいな…」
 が、すぐにあきらめたようだった。
「どーしたの? ゆーさく」
 やる気のなさそうな素振りで机に突っ伏していた悠朔は、その声の主
―来栖川綾香―を認めると顔だけを上に向けた。
「ん、綾香か…。ちょっとな、例の新入生の情報が入ってないか志保に聞こう
かと思ってたところだ」
 悠朔は相変らずだるそうに綾香に答えた。
「ふぅん。そう言えばいないわね。どっちも」
 綾香はそう言いながらシッポと志保の席の方を見回した。
「二人で早速どこかにお出かけなのかしらね?」
 綾香が多少からかいの意味をこめて悠朔に言った。
「知らね」
 悠朔はいかにも興味のなさそうな声で綾香に言うと、再び机に突っ伏して居眠り
をはじめた。
「そうだったな。貴様には長岡志保がいるのだったな」
 ハイドラントがいつのまにか綾香の側に来ていた。
「…あのな。何馬鹿な事言ってんだ?」
 寝る予定だったところを邪魔されて、悠朔は多少不機嫌になりながら
ハイドラントに答えた。
 二人の時間を邪魔されたと言うのもあるのだろうが。
「おや? そういうのは貴様のところの専売特許じゃなかったのか?」
 ハイドラントはそういうとくっくっくと含み笑いを漏らした。
「副部長は副部長だ。それ以上でもそれ以下でもない」
 悠朔は机の上から起き上がると、多少怒りを込めた眼差しでハイドラント
に言った。
「おやおや。私はてっきりその副部長とやらにご執心なのかと思ったよ」
 ハイドラントはもう隠すところもなく笑っている。
「貴様…」
 悠朔が、がたっと音を立てながら椅子から立ち上がった。
「ちょっと、教室ではやめなさいよね。後始末が面倒なんだから」
 綾香がそう言いながら二人の間に割って入った。
「しかし綾香…」
 悠朔が綾香に対して講義の声をあげるのを見ながら、ハイドラントが言った。
「私は一向に構わんのだがな」
「何?」
 ハイドラントが不敵に笑うのを見て、悠朔が再び臨戦体制に入ろうとする。
「ちょっと、二人ともいいかげんにして。ハイドもハイドよ。あんまりゆーさく
にちょっかいださないでよね。あんた達が一回はじめるといろいろ面倒なんだから」
 綾香は今にも暴れ出しそうな二人を諌めると、もう一度ちらりとシッポの席を見て
また二人の方に向き直った。


「どこ行ったのかしら…」
 志保はシッポを探していた。
 新しい志保ちゃんニュースと校内新聞の為だった。
 つい先程まで尾行していたのだが、あっさりとシッポに撒かれてしまったのだ。
「この辺で見失ったのよねぇ…角を曲がったらいきなりいなくなるなんて」
 事実シッポが志保を撒いたのはここだ。
 そして今はこの先の資料室にいる。
 先と言っても二ブロック程先だが。
「これじゃ出直しね…」
 志保は溜息をつくと彼の追跡を諦め、教室へ戻るべくその先へと足を進めた。
 それは、計らずともシッポのいる資料室の方へと向かう事になった。
「はぁ…これじゃ記事が書けないのよね」
 かつかつかつかつ…。
 志保の足音が廊下に響く。
「それにしても…いつ来ても人気のないところねぇ」
 志保はそう呟くと当たりを軽く見渡した。
 この辺のブロックは人気があまりない。
 それもそのはず。
 この辺はすべて教材室になっているのだ。
 社会系の授業で使う世界地図の壁掛けや、数学系の授業で使う巨大三角定規とか、
そのような物ばかり保管している。
 したがって、用のある生徒と言えば教員に準備を言いつけられた者ぐらい。
人が寄り付くはずもない。
「なんとなく不気味なのよねぇ…」
 そう言いながら一つの部屋を通過しようとした時、志保はふと人の気配を感じた。
「…? 誰かいる?」
 志保はとりあえず立ち止まって、辺りを見まわした。
 しかし、誰もいない。
 と、すると右手にある扉の中しかない。
 志保は扉のノブをゆっくりと回してみた。
 かちゃり。
 扉が開いた。
「なんで開いてるのかしら…?」
 いったん手を止めて中をうかがう。
 何も起きないのを確認すると、少しずつ扉を開けた。
 きぃぃぃぃ。
「…事件の匂い?」
 志保は身体が通るだけのスペースを空けると、するりと中に入った。


 かっかっか…。
 シッポは近づいて来る足音を聞いて、素早く席を立った。
(誰か来る)
 そう思うと同時にPCの電源を落とし、その辺の資料をまとめた。
(隠れるか…)
 手近な棚に今まで見ていた資料を放り込むと、扉の前まで一気に移動する。
(それにしても・・・誰だ?)
 シッポはこの部屋にいることをまさか感づかれるはずはないとは思いながらも、
一応警戒の姿勢をとった。
 扉の裏に立ち、廊下の足音が聞こえやすいようにする。
 こつこつこつこつ・・・。
 足音は迷いもなくこの部屋の方向に歩いてくる。
 足音がある程度近づいたのを確認すると、扉の裏を離れ右手奥へと身体を
ずらした。
 こうすれば誰か扉を開いた時、扉の陰になって見つかる恐れはない。
 その時、足音が扉の前で止まった。


「誰も・・・いないわよね?」
 志保は恐る恐る部屋の中に問い掛ける。
 
 部屋の中の構造はLの字型になっており、先ほどシッポがPCを操作していた
のは突き当たりを左に曲がった先、要するに一番奥となる場所。
 志保にこのまま部屋の中に入られて、奥にあるPCと共に自分の姿を見られる
のはシッポにとってマズイことだった。
 シッポがいると言う事と、PCがあるという事実だけで志保が何かを感ずると
いう可能性は極めて低いが、ないとも言い切れない。
 万が一があってはマズイのだ。
 今は。

 志保は何の返答もないことを確認すると前へと歩みを進めた。
(ちっ・・・黙って出て行けばいいものを・・・)
 シッポは静かに志保の後ろに近づいていった。


「ん? 誰かがLEVEL2に侵入したみたいですね」
 へーのきが首をかしげながら言った。
 彼はシステム内定期巡回の真っ最中だった。
「―侵入者ですか?」
 彼と共にシステム内の巡回をしていたDマルチがへーのきの方を見ながら言った。
「―排除してきます」
  隣にいたDセリオがにやりとしながら扉に向かって歩き出す。
「わーっ、待って待って、セリオさん待って!」
 へーのきはそんな彼女を慌てて止めると、ディスプレイに向かってつぶやいた。
「こいつは…私が処理します」
 Dシリーズは揃ってへーのきを見て、少し驚いた。



 はー、今回も終わりました。長編第三章。予定にない展開になりつつある状況で
また話が膨らむのか?と不安におののいているYF−19です。(^^;
 ようやっとLメモらしくなりつつありますね。
 色々登場人物も増えましたし。(笑)
 さて、次回からはだんだん詰めてきます。
 そろそろ終わらないと。(^^;

お礼レス
 △よっしーさん
 レスが遅れてしまってすいません。出演させて頂きどうもありがとうございました。
志保に心酔しちゃうんですか? 確かに昔はそう考えてたんですけどね。いつからこ
うなってしまったのやら。(^^;

 んでは今回も後(中)書きをどうぞ〜。

YF−19:さて、今回のお客さんはっ!
綾香   :…私?
YF−19:そう。「死の速攻」の二つ名を持つ来栖川綾香さんが今回のゲスト!
綾香   :あー、それ…あんまり大きな声で言わないで。(汗)
YF−19:え? 立派な通り名だと思ったんですけどねぇ。ま、いいや。
綾香   :…助かるわ。何で礼言ってるのかわかんないけど。
YF−19:とにかく今回のゲストは綾香さん、あなたです。
綾香   :…何で私なの? これってその回で目立った人が出るんじゃないの?
YF−19:ま、元々はそうだったんですケドねぇ。
綾香   :じゃあ、何で?
YF−19:ん? …聞きたいですか?
綾香   :そうね。
YF−19:ならば答えましょう! 実は…。
綾香   :うんうん。
YF−19:前回で味を占めてそれほど目立たなかったキャラでもいーやとか思った
      けどそれじゃ出てもらった人に申し訳ないなと思いつつもやっぱり出番
      が少なかったんだからこーいうところでも出たほうがいいんだろうしそ
      うするとやっぱりもっと出て欲しかったキャラを出そうかなと思って
      ちょっと考えてへーのきさんに出てもらおうかと思って書き始めたら
      Dシリーズのイメージが強すぎてへーのきさん自身がちょっと分からな
      かったなんて表立って言えないやと思ったから適当なリーフキャラでも
      出すかと言う結論になったって目の前に綾香がいるのにそれって言っ
      ちゃいけないことなんじゃないかなとか思いつつもやっぱり綾香でいー
      やって言うことになって君のところに出演依頼を出したわけ。
綾香   :………。
YF−19:最近流行りつつある長文挨拶風に言ってみました。(笑)
綾香   :………。
YF−19:ん? どしたの?
綾香   :…なるほどね。(ぽつり)
YF−19:分かってもらえました?
綾香   :…あたしは結局埋め合わせってことねっっっ!!(怒)
YF−19:うわぁっ! なんで分かったんだっ …って琴音ちゃん? どこ?
綾香   :ごまかすなぁぁぁぁっ!!(鉄拳)
YF−19:まっ 待てっ! 話せばわか…ああああっ!(ごすぅっ!! …ぱたり)
綾香   :まったく! 私はヒロユキみたいに暇じゃないのよっ!
YF−19:…………(しーん)
綾香   :こー言う依頼は困るのよねぇ。 セバスに言ってもっと出演依頼
      を絞るようにしてもらおうかしら?
YF−19:…………(しーん)
綾香   :…ちょっと。いつまでふざけてるつもり? 早く終わらせてよ。
      この後も予定詰まってるんだから。
YF−19:…………(どくどくどくどく)
綾香   :ちょっと! いいかげんに…!?。
YF−19:…………(どくどくどくどくどくどく)
綾香   :ま、まさか…冗談よね? ねぇ…ねぇてば…。
YF−19:…………(どくどくどくどくどくどくどく)
綾香   :…結構マズイかも(汗) セバス! セバスはいる?
YF−19:…………(どくどくどくどくどくどくどくどく)
綾香   :ああっ! もう直接運んだ方が早いわね!
YF−19:(…がっ 綾香に担がれた)
綾香   :死なれちゃ困るのよ! …ホントに(大急ぎで退場)

            (ぱっ)
ナレーション:しばらく世界の風景と音楽をお楽しみください。
デンマークの花畑とクラシック:ちゃ〜らら〜♪
            (ぱっ)
シャロン :シッポさんが急病!? 大丈夫なんですか!?
シャロン :…え? 大丈夫だから締めろ? …はい、わかりました。
シャロン :え〜と、シッポさんが急に倒れてしまわれたので代わりに。
シャロン :次回のタイトルは「潜入」です。
シャロン :ではまた次回作でお会いしましょう。