――2月3日・節分。 「鬼退治に来たぜ!」 「…………はぁ?」 ――L学ボードゲーム部部室。 「さあさあルミラさん、今日こそは年貢の納め時といきましょうか。」 「……やけに自信たっぷりじゃない。 こないだアレイに身ぐるみはがされたこと、もう忘れちゃったわけ?」 (ギャラさんのLメモ:生まれ出る薔薇ダイス、参照) 「クックックック……」 しかし、今日のYOSSYFLAMEは、いつもとは違っていた。 「悪いですけど今日ばっかりは、カンペキに勝負運があなたから離れてますよ、ルミラさん。」 「へぇ、その根拠は?」 奥の椅子に座り足を組みながら、涼しげな笑みをYOSSYに向けるルミラ。 「今日は2月3日、日本中が節分一色の日! そう、雀鬼であるあなたたちの力が、今日に限っては格段に低下しているのに気がつかないのですか?」 「………別に。」 それがどうかしたか、というような態度で応ずるルミラ。 「フ、まあ焦る気持ちも分からなくもないですけどね。 ま、俺とてあなたを脱がすためには、ツキだけを狙っているわけじゃない。 ちゃんと戦略は練ってきましたからね。」 そう言い放ち、自信満々に胸を張るYOSSY。 「別に焦ってるわけでもなんでもないけどね。 それはそうと、戦略だとか言ってるけど、こないだあなたが仕掛けた数々のイカサマ、 全部メイフィアに見破られたのを、忘れたわけじゃないわよね?」 「………………………ふ、ふふっ、そんなイカサマだなんて……」 「えらく発言に間があったけど? まあいいわ、早速始めましょう。で、ルールは?」 「2対2のタッグマッチ。 2人の総合点数が高い方の勝ちってのはどうです?」 「面白いじゃない。私のパートナーは誰がいい?」 「そうねえ……、じゃ、そこで読書などを嗜んでいるティーさん、ルミラさんのパートナーになってくれない?」 「ティーを?」 へえ、とばかりにYOSSYを見るルミラに、呼ばれてゆっくり振り返るティー。 「よっしーさん、私は脱衣麻雀はやりませんが。」 「わかってるって。もし万が一ルミラさんが負けた時は、退室しててくれていいからさ。 俺らとやらないかい?」 「それなら……、でも、いいんですか?」 首をかしげ、自分が参加していいのか、という視線をYOSSYに向けるティー。 それも当然の話で、彼、ティーは、麻雀においていえば、 この<泣~ラの実力に匹敵する、ほとんど唯一のSS使いなのである。 はっきり言って、雀鬼最弱のアレイにすらあしらわれるYOSSYが相手をするには、 あまりにレベルが違いすぎる。 が、 「ああ、いっこうに構わないぜ。じゃ、そっちはボードゲーム部代表ってことで。」 「……じゃあ。ルミラさん、よろしくお願いします。」 「まあまあ、楽しくやりましょうよ。」 未だ気が進まないティーを、ルミラが宥める。 「で、あんたのパートナーは?」 「じゃ、呼びましょうか。………いいですよ、入って来てくださーいっ!」 「やっほー! 来たよー!」 YOSSYの呼びかけに応じて飛び込んできたのは誰あろう、 トラジマビキニのコスプレをした、薔薇部の新入部員・芳賀玲子≠サの人であった。 「節分ということで、玲子さんには某鬼娘のコスプレで出て来てもらったわけですが、 さて、そいじゃやりましょうか、麻雀を。」 「あ、あの、すみません、芳賀さん……」 ビキニの玲子に何やら言いたそうなティーであるが、 「あ、あらかじめ言っておくけど、玲子さん、今日は節分ということらしいから、 ずっとこのカッコのまんまだそうだ。ま、我慢してくれ、ティーさん。」 「………う、うぐ………すみません、私――」 「やるって言いましたよね、ティーさん。男に二言はないでしょ?」 うろたえまくるティーをニヤリと笑って牽制するYOSSYを横目で眺めるルミラ。 「(はぁ、そういうことね。)」 要するに、女の色気でヘロヘロのティーを叩きのめして総合点で勝ろうとするのがYOSSYの作戦なわけだが、 見え見えのプランに気づき、呆れたため息をつくルミラ。 「(……上等じゃない。雀鬼ナンバーワンのこのルミラ様をハメようとするとはね。 私達ボードゲーム部をナメたらどうなるか、教えてやる必要がありそうね……)」 かくして勝負は始まった。 圧倒的強さで膨大な点をもぎ取るルミラに対して、 玲子のビキニに完全に悩殺されて、ルミラの勝ちを帳消しにする自爆連発のティー。 膨大なプラスマイナスのボードゲーム部チームに対し、ほとんど点数変動のないYOSSY&玲子。 総合得点、ややYOSSY組のリードのまま、最終局に入った。 「(……っちゃあ、最悪じゃない。この配牌……)」 節分が原因なのかは知らないが、最後の最後に来て、どうしようもない配牌がルミラを襲う。 それどころか、来る牌来る牌とことんツキがなく、テンパるのがやっとの展開。 差は約4000点。 このままだと、敗北は必至。 こんな相手に、雀鬼のリーダーである自分が負けてしまうなんて…… ――そのとき。 「……ツモ! 国士無双!」 「……何いっ!」 「うそおっ!」 聞こえるはずがないだろうその凛々しい声と共に、大逆転の国士無双が上がっている。 「………なんとか、勝ちました………」 勝利を見届けると共に、音を立てて倒れこむティー。 「そんな馬鹿な! ヤツの闘志は全て喪失させたはず……!?」 信じられない逆転負けに、思わず駆け寄るYOSSY。 「……わからん。結局はヤツの不屈の闘志だったというのか……」 誰にともなく呟く。 「俺の負けだ。……まったく、たいした人だぜこの人は……」 気絶しているティーを背中にしょって、YOSSYは夕陽の中に消えていった―― 「待ちなさいな。」 がしっ。 そんなYOSSYの肩を、千切れそうなほど強く握るルミラ。 「負けたからには、払うもの払ってもらいましょうか?」 「さ、さあ、何のことでしょう?」 「ふーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん? じゃあ、また身ぐるみはいでやるしかないかしら、ねえ……」 ごごごごごごごご…… 闇のオーラを漲らせ、一歩一歩獲物≠ノ近づくルミラ。 「あわ、あわわ……、鬼はそとー、福はうちー!」 「………服はウチで………あんたは外よっ!!!」 げしいっ! 「鬼ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」 身ぐるみはがされたYOSSYは、節分の夜、お星さまになった。 さて、何故にティーは玲子の呪縛から逃れ、逆転の一撃を決められたのかというと―― 玲子の後ろに飾られていた額縁 額縁の中に潜む怪画、メイフィア・ピクチャーが、ティーにしきりに見せびらかしていた、一枚の劇画調で書かれていた眼鏡の男。 その男≠フあまりのインパクトに、のぼせていた頭が完全に冷えたのが、勝因だったのかもしれない。 ============================================== どおもお、YOSSYです。 仕事から帰って来て、急遽ネタが思いついて執筆しました、この他伝ACT3. 鬼≠ヘエルクゥだけじゃない! ルミラ達雀鬼、ここにあり! というのを、感じ取ってくれれば幸いです。 では、失礼いたします。