スパァァン! パシィィン! パアン! パァン! パシィィン! 「ゲーム! きたみち、桂木組、1−2!」 「Hi−wait、月島組、3−1!」 「2−3!」 「4−2!」 「3−4!」 「4−4!」 「5−4!」 「5−5!」 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」 「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」 息を切らせながらも消えることなき闘志を見せる二人と二人。 実にここまで全くの互角。 「えええぃっ!」 「なっ!?」 パシィン! 桂木美和子の気迫に惑わされたせいか、彼女のフェイクショットがコートに叩き込まれる。 「ゲーム! きたみち、桂木組、6−5!」 「はぁ…、はぁ……、……先輩。」 「……うん。」 疲労困憊の美和子であるが、それでも笑顔を絶やすことなく頑張る。 「(まったく……、そんなに頑張られたら……) ――飛天御剣流・龍槌閃!!」 ドカァァッ! Hi−wait組のコートに爆音が響く。 「(そんなに頑張られたら、負けるわけにはいかない!)」 「あと1球! あと1球! あと1球! あと1球!」 きたみち組の応援団の大コールがこだまする。 「私達はあきらめません!」 咆えながらもしっかりと拾う瑠香。 「お願いします、ハイウェイトさん!」 「誰に物言ってるんだ、瑠香……?」 きたみちから返ってきたストロークをしっかり読み、そして―― 「俺は負けん! 正義の為に!」 シュパァァァン! Hi−waitの放った一撃は、コートにバウンドした途端、強烈に跳ね上がる。 鋭すぎるトップスピンが、きたみちの頭上遥か高く―― 「飛天御剣流・龍槌閃!!」 「しまっ……!」 この試合、数多のロブを撃ち落としてきた、きたみちもどる必殺の対空技が、またも炸裂! 凄まじい轟音を響かせながら、急降下して襲い掛かってくるボール。 「任せてくださいっ!」 落下点に走り込む瑠香! 「えええいっ!」 ギャキ……ィッ…! 「くうう……っ!」 しかし、龍槌閃の威力にさすがの瑠香も耐えられず、 「きゃあっ!」 ボールは瑠香のラケットを弾き飛ばし、無情にも―― 「そうはいくかぁ!」 パァン! すかさずフォローに回り込んでいたHi−waitのショットで拾われ、 ボールは油断していたきたみち組のコートに。 「イン! デュース!」 「しゃ!」 さすが本職の素早さで、デュースにまで持ち込んだHi−wait組。 「って、アレ、いいんか?」 夢幻来夢が疑問の声をあげる。 アレとはこの場合、本来一撃で返さなくてはならないショットを、 瑠香が弾かれた後、Hi−waitがフォローして打ち返したことを指すのであるが、 「おかしくないんか?」 「いいのよ、それで。」 何時の間に横にいたのか、太田香奈子が説明を入れる。 「ダブルスのときは、片方が弾かれたボールをもう片方がフォローすることは許されているの。 つまり、一人1回、計2回ボールに触れることは許されているのよ。」 「へぇ……」 「ゲーム! Hi−wait、月島組、6−6! タイブレーク!!」 「はぁ…、はぁ…」 きたみち組も、美和子が相当体力を消耗している。 ただでさえ、それほど体力がない彼女。 それに加え、強烈なプレッシャーをかけてくる敵。 既に、彼女は限界近くまで押し上げられていた。 「(しかたない。まさか2回戦で使うとは思わなかったが……)」 きたみちの表情に決意が漲る。 「(やるしかないか! 後のことはそれからだ!!)」 そして始まったタイブレーク。 経験者の老練さで終始ペースを握っているHi−wait組に対し、 きたみちの鋭いショットで応戦するきたみち組。 そして…… 「えいっ!!」 バンッ! 「きたみち組、7−6!!」 ここにきてバテバテだった美和子が、最後の意地とばかりにフェイクショットを決めてきた。 これでポイントは7−6。 きたみち組、勝利へとあと1球と迫った。 「……よし!」 咆えるきたみち。 ここまできたら、もう自分達が勝ちをいただく。 自分達には、いや、自分には、とっておきの切り札≠ェあるのだから。 最後となるかのラリーをしながら、十分に気を溜めるきたみち。 後のことなど全く考えない、きたみちもどるの片道特攻最終兵器。 そして、絶好球となる瑠香のストロークが正面に! 「いくぞ!!」 瞬間、きたみちの姿が掻き消えた!! 「飛天御剣流奥義・天翔鬼閃(あまかけるおにのひらめき)!!!」 爆音と共に、ボールはその姿を消した。 それは、本当に一瞬だった。 しかし、彼らにとっては、それでも永い時間のように感じられた。 天翔鬼閃を読んでいて、対処方法を用意していた彼らにとっては! 「「踊れ正義の盆踊り! 絶対正義・デレンガイヤー………見参っ!!」」 ギャギィッ!! 天翔鬼閃から撃ち出された超豪球を真っ向から受け止めるデレンガイヤー!! 「く、くぅぅぅっっ………っ!!!」 凄まじい威力にデレンガイヤーのラケットも圧されまくる! 「……ぜ、絶対正義だろうが、なんだろうが、……飛天御剣流奥義が敗れるか……… ぅぅぅぉぉぉおおおおおおおおおおおおぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 きたみちの凄まじい咆哮!! デレンガイヤーのラケットも、デレンガイヤーの力も、天翔鬼閃の前には無力なのか!? このまま負けるのか!? 絶対正義・デレンガイヤー!! 「(やーみぃさん! 私達は、正義は負けませんよね!?)」 「(当たり前だ!! 俺達の合い言葉を忘れたか!?)」 「(いいえ、忘れてませんっ!!)」 「(よし! なら行くぞ!!)」 「ウィーアージャスティス! これが二人の合い言葉!! 必殺!デレンバスターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」 その瞬間、閃光がひらめいた。 バチィッ!!! 「うぐぁぁぁぁぁっ!!」 「きゃぁぁぁぁぁぁっ!!」 どしゃあっ!! デレンガイヤーの変身が解かれ、分断され、弾き飛ばされたHi−waitと瑠香! 「……なんて威力だ……これが、校内巡回班総長・きたみちもどるの究極奥義……… ………天翔鬼閃=c…… まさか、まさかデレンガイヤーの変身すら解かれるとは………」 きたみちもどるの中の鬼≠呼び覚まし、 洗練された飛天御剣流の斬術でその驚愕なる力を引き出す超必殺技・天翔鬼閃。 それ故に、駆使したきたみち本人も、当然ただで済むはずはない。 恐るべきパワーの循環により、繰り出した体は当然ズタズタに。 しかし、それを覚悟して放った技だからこそ。だからこそ。 絶対正義という信念の壁、デレンガイヤーをも撃破するほどの威力を生み出せたのだろう。 「ゲーーーーーーーーーーム! アンド、マッチウォンバイ、きたみち、桂木――」 「……待てよ。」 「え………?」 きたみち組の勝利が宣告されているまさにその時、Hi−waitの声がそれを断ち切る。 「まだ、勝負は終わってないぜ。」 鋭い視線で審判を睨みつけながら、声低く訴えるHi−wait。 にわかにざわつく会場。 「な、何を言っている? きたみち選手のスマッシュに、君らは弾き飛ばされたじゃないか。これで彼らの――」 「その弾き飛ばされた後のボール。一体、いつ地面に触れたんだ=H」 「な、何を言ってるんだ君は? 君らが弾かれたボールは、もう場外に消えただろ!?」 「消えた……? ……おい、審判が先入観で判定していいっていうのか?」 「いいかげんにしろよ! 君の言ってることはさっぱりわからない!!」 Hi−waitの物言いに、とうとう本気で怒り出す審判。 「往生際が悪すぎるぞ!! さっさと負けを――――何だ?」 Hi−waitが指差した空の一点から、何かが迫ってくる。 「つまりはこういうことだ。 きたみちの天翔鬼閃から繰り出されるショットに、確かに俺と瑠香は弾き飛ばされた。 だが、弾き飛ばされはしたが、ボールは地面にはついていないとしたら? きたみちのスマッシュに、かろうじてだが俺達が回転を加えていたとしたら?」 空の一点、確かに見える。 小さく、丸く、黄色い物体が。 凄まじいスピードで、コートめがけて急降下してくる。 「普通だったらこんなことは有り得ない。 だが、きたみちの奥義と俺達のデレンバスターのパワーが合わされば――」 唸りをあげて落ちてくるボールは、さながらブーメランのようにテニスコートに一直線、そして―― 「美和子さん!! 逃げろっ!!」 きたみちの切迫した叫び。 「危ない! 勝負なんかどうだっていいから、逃げてくれっ!!」 天翔鬼閃のパワープラス、デレンガイヤーの合体技の回転力を内在した超豪球。 あれを美和子のような女の子がマトモに食らいでもした日には、良くて大怪我、悪ければ―― 「美和子さんっ!!」 思う侭動けない体を起こし、美和子に叫ぶきたみちだが、美和子は動かない。 「私……、……先輩のお役に立ちたいですから……」 ラケットが震えている。 脚も、身体も震えている。でも、でも逃げたくない。先輩の全力に自分が何もしないで逃げられない。 「先輩……、……先輩の天翔鬼閃、無駄にしませんから……」 唸りをあげる豪球に立ちはだかる美和子。 「馬鹿! 逃げろ先輩!」 「桂木先輩! 逃げてくださいっ!!」 Hi−waitも瑠香も、必死に止めにかかるが、美和子は僅かに首を振るだけ。 「美和子さんっ!!!」 グシャァァァァァァァァァァァァァァッ!!! 凄まじい轟音がコートに響いた。 まるで爆弾でも爆発したかのような轟音と、朦朦と立ち込めた砂煙。 その中で何が起こったか、外からは一切窺い知れない。 「冬月君!」 セリスが大声で呼びかける。と同時に、風使い・冬月から放たれた風が、砂煙を優しく取り払う。 もし、万が一のことがあれば……、急を要したセリスの判断は正しいと言えよう。 そして、砂煙が払われた中から見えた一つの影…… 「……先輩…っ…?」 「馬鹿、野郎………」 中から見えた一つの影。そして、すぐ側のコートの陥没。 「でも……無事で、よかった………」 まさに間一髪。 超豪球が美和子に直撃するかしないかの瀬戸際。きたみちが飛び込んで美和子をかばった。 天翔鬼閃の後遺症で壊れかけた体に鞭打ち、それでも。 「せ……先輩ぃ…っ……」 天翔鬼閃を繰り出し限界を超えた体力と、美和子をかばった結果の想像を絶する激痛。 既に意識のないきたみちの体に顔を伏せて、美和子はただ、ただ泣きじゃくっていた。 Hi-wait×月島瑠香組…3回戦進出! きたみちもどる×桂木美和子組…2回戦敗退。 ============================================== どうもお、YOSSYです。 ゆかり:こんにちは、広瀬ゆかりです! よっし:さて、決着しました。 ゆかり:この試合のコンセプトは? よっし:アクションバトルと、あとはやっぱりきたみちさんと桂木さんかと。 ゆかり:最後のシーン、みなさんにはどう映りましたでしょうか…… よっし:そして、次回はついに2回戦最後の試合! ゆかり:秋山登、日吉かおり組 vs 風見ひなた、赤十字美加香組の試合です! よっし:エルクゥ同盟同士の対決! 果たして勝利の凱歌はどちらに!? ゆかり:執念の風見か!? 不死身の秋山か!? よっし:2回戦ファイナル、楽しみにしていただけると幸いです!