Lメモ自伝風紀動乱編その3 「朧月の密談」 投稿者:YOSSYFLAME




「ったぁ……、あの野郎、本気でぶん殴りやがって……」

頬を押さえながら歩を進め帰路に就くYOSSYFLAME。
つい先程、特別風紀委員でもある銀狼≠wY−MENを襲撃し返り討ちに遭った彼。
その後、そのXY−MENと、二人の友人である宮内レミィとの密談≠終え、
手負いの体を引きずるように帰路に就く。
「アイツを本気で怒らせるのは止めといたほうがいいかもしんないなぁ……」
まだ微かに膝が笑ってる。そかしそれも無理なきこと。
XY−MENの気迫に気圧された一瞬の隙をつかれ、クリーンヒットを許してしまったのだから。
しかし、その痛みとダメージが、YOSSYに安堵感を与える。
レミィとXY−MEN。
少なくとも肉体的な闘いにおいては、彼ら二人は他に引けを取らない。
これで、自分はかなり勝手に動くことが出来る。
しかし、
自分の打倒対象・広瀬ゆかり。
そしてそれに対しての障害・ディルクセン率いる生徒指導部。
敵は思っていたよりもかなり強大な勢力を持っている。
「俺一人じゃ、無理かもしれねえなあ……」
ふと呟くYOSSY。
所詮SS使いといえども、たった一人の力など微弱なもの。
調子に乗りやすい彼といえど、たった一人で風紀委主流派と指導部を相手にどうにかなるとはさすがに思えず。
それならば、どこかの勢力についてと考えるのだが、
もともと闘いにおける悪知恵には多少長けていても、政略謀略の類はカラッキシのYOSSY。
一体どこの勢力につけばいいのやら、YOSSYには全然見当すらつかない。



一時広瀬派について邪魔者を掃討した後、広瀬に牙を剥くか――

政治無知のYOSSYでもわかることだが、
指導部は普段の広瀬のアラを重箱の隅をつつくように捜しまくって、政略上の攻撃の材料にしている。
そんな状況で、学園札付きの自分が表立って仲間に加わったが最後、
政略の舞台で″L瀬が潰される危険すら、今の状況では笑い話ではなく有り得ること。
一時的に手を組むのも悪くはないとは思いつつ、事は慎重を期さなくてはならない。



指導部の力を借りて広瀬を倒す――

ただ単純に広瀬を倒したいというならば、これが最良の選択かもしれない。
表でディルクセンが蠢き、裏で自分が刺客の一人として、広瀬シンパを本気で£ラす。
今の状況ならば、成功することもそんなに至難でもない。
しかし、それで満足感、達成感が得られるかといえば、甚だ心もとない。
しかも指導部のこと、事が達したが最後、全ての汚点を自分にひっかぶせる可能性は十分有り得る。
指導部のスケープゴートとなり肩身の狭い学園生活を送るのは、いくらなんでも嫌だ。
なにより、目標を達成するという達成感が得られないのがやはり……



第三勢力に与し――

…………どこにつけばいいのかが、皆目見当がつかない。
(ちなみに現時点のYOSSYは、監査部の存在も、情報特捜部による事件も知らない)





完全に膠着してしまっている今の状況。
そんな中、YOSSYが一番求めているシチュエーション。それは――
「……いるんだろ?  出て来いよ。」
試立リーフ学園裏路地。
林が生い茂っている、昼間ならば涼みには最適の路地。
しかし、夜になると一転、静かな闇にその姿を包ませる。
そして、今日は朧月。街灯の光も容易に届かないこの場は、闇討ちにはもってこいの――



「がっはっはっはっは!  いやあ、やはりバレたか。な、よっしー!」
「……ちったあ気配を隠そうとしてくださいよ秋山さん。こっちが恥ずかしくなってくる……」
「まあまあ、秋山さんはそういう人だからね。」
「デコイさんまで……」
しかし、さすが撮影マスターというべきか。
デコイの気配は今の今まで全くわからなかったのであるから。

「……もう一人。いや、二人いるぞ。」
「え?」
珍しい秋山の囁き。
そのギョロリとした眼で睨むその先には、林しか見えないが……



【ククク……、……さすが秋山さまといったところでございましょうか……?】



「……誰だ。」
「待った秋山さん、その声、どこかで聞いた気が……」
殺気を迸らせる秋山を制止し、声の主を探るYOSSY。
「なるほど。ちょっと悪趣味ですよ、……ギャラ先輩。」
苦笑を空間に向けるYOSSY。

【いやぁ……、失礼いたしました。つい道化師の血が騒ぎ……】
「いーからさっさと出て来てくださいな。」

「YOSSYさま、そんなに怒らなくても……」
「怒ってませんけど、いちいち戦闘態勢に入らなければならない俺の気にもなってくださいよ。」
「実はYOSSYさま、意外に小心者ですか?」
「……TPOを考えろと言っているんです。」
相変わらず人を食ったようなギャラに頭を抱えるYOSSY。
「で、ギャラ。もう一人お前の他にいるな。さっさと出るように――」
「さすが秋山さまですな。ええ、もうひとかたいらっしゃってますよ。」



「そういうことよ。こんばんは。」



「む……」
「え?」
「アンタは……」
やや驚く秋山。意外さをそのまま顔に出すデコイ。思いがけない人物の登場に面食らうYOSSY。
「先程お会いしていたのですがね。YOSSYさまはよくご存知でしょう?」
「まあね。いつもお世話になってますし。」
「こちらこそ、ね。」
YOSSYと二言三言交わした後、セミロングの女生徒は、むさ苦しい男達にすぱっと名乗った。



「あらためてこんばんは、暗躍生徒会の太田香奈子です。」









「……で、何でみんなこんなところに集まってんだ?」
「俺は偶然お前を見つけてな。声をかけようとしたんだが、
お前が妙に思いつめた顔をしているものだから……、……面白そうだからずっと見ていた。」
「……アンタな。」
他にやることないのかアンタというような表情で秋山を見やるYOSSY。
「私は、よっしーさんに用があって……」
「俺に?」
妙に思いつめた表情のデコイを見て、不思議がるYOSSY。
一体デコイがこんな顔をするほどの用とは何なのだろうと。
「……皆様、結局は同じ考えのようでございますね。」
「「は?」」
唐突なギャラの言葉に素っ頓狂な声を上げる3人。だがその後すぐの香奈子の、



「要するに、対生徒指導部絡みの話でしょ。あなたがたみんな。」



「え?」
「何でわかった?」
ズバリ言い当て得意そうな香奈子に驚くデコイとYOSSY。
「俺は別に関係ないが。」
「あーそう。」
「………なぁよっしー、太田のヤツひどくないか?  俺は心の痛みには弱いんだよ。」
「知りませんよそんなの。」
どこまでもTPOを理解できていない男・秋山登。





「――というわけで、そろそろ彼らもうっとおしくなってきたのよ。」
やっとのことでいよいよ本題。まず香奈子が話を切り出す。
「今まで私達暗躍生徒会の活動は、広瀬さんはじめ学園治安組織に押さえられてきたわ。
だから正直、生徒指導部復活の知らせは、私達にとって吉報だった訳よ。」
「なんで?  風紀委主流派だろうと指導部だろうと、活動を取り締まられることには変わりあるまい?」
「一枚岩より二枚岩のほうが何かとやりやすいのよ。」
「……なるほどね。」
YOSSYの質問にも冷静に答える香奈子。



「だけど、彼らはやりすぎた。少々ね。
その力を、生徒会にも干渉させ始める兆しが見え始めてきたのよ。」



「生徒会、ですか……」
「ええ、本来学園の立法機関は生徒に選出された生徒会のはず。
学園公認治安維持組織とはいえ、役職的には警察組織と変わらない生徒指導部が、
立法に食い込んでくるなんて、許せないことだわ。」
「その立法、延いてはアンタら行政が権力を隠れみのにして暗躍してっから、取り締まられるんじゃないのか?」
「えーそおね。その暗躍のおかげで甘い汁を啜ってる人には言われたくないけどね。」
「うふふふふふふふふ………」
「ふふふふふふふふふ………」
額がくっつきそうになるくらい顔を近づけて、眼が笑っていない微笑みをぶつけあうYOSSYと香奈子。



「気にいりませんね……」



「なんですって……?」
平然とした表情で批判をぶつけるギャラに、香奈子が気色ばむ。
「私にとって、生徒会がどーだの指導部がどーだの、そんなことはたいした問題ではないのです。
しかし太田さま。
真実をぶつけることなく我々の助力をアテにするとは、少々虫がよすぎではございませんか?」
「な……っ?」
「はっきりおっしゃっていただけないでしょうか。
学園の三権分立も、指導部の越権行為も、生徒会の立法権主張も
貴女にとってはどうでもいい、ただの建前だということに。」
「……………っ……!」
「言いにくいのなら私が代わりに言わせていただいてもよろしいですよ。
貴女がお気に病んでいるのはそんな些細――貴女にとって――なことではない。
貴女にとって一番大事なことは――」
「――黙ってっ!!」
ギャラの糾弾に肩を震わせる香奈子。
YOSSYもデコイも、掌に汗をかかせて二人のやりとりを見ていた。
そんな中、香奈子が重い口を開こうとしていた。
「――わかったわよ。確かに貴方の言う通りだわ。
私が指導部をどうにかしたい本当の理由は――」



「待った!!」



「秋山さま……?」
香奈子が今、重い口を開こうとしていたそのときに、秋山の一喝が場を切り裂く。
「なんだかわからんが、今のところは指導部なり何なり言われても、俺はよくわからん。
だから、協力といわれてもまだピンとこない状態だ。
そんな今の俺が、お前の必死な話を聞くのは失礼だからな。
――俺はここで帰らせてもらうぜ。」
「……秋山くん。」
「……悪いな。」
この豪快な男らしい、少しばかりの心づかいが、香奈子の心境を若干和らげたのかもしれない。

「秋山さん!」
立ち去ろうとした秋山をYOSSYが呼び止める。
「……時期がくれば、そのうち、な。」
そのうちとは、どんな意味なのだろうか。
この問題に首を突っ込む気ならばいつでも来いという意味か、もしかして助力を頼むかもしれないという意味なのか。
「……そのうち、な。」
いずれにしろ、秋山はこの男らしい豪快な笑みと共に一言だけ残し、この場から風のように消えた。



「ふう……」
一息つく香奈子。
今この場に残りしは四人。
「……他に秋山くんと同じ考えの人はいない?」
三人を見回し、真摯な表情で見回す香奈子。
「……アンタの考えを聞いて、俺がそれに賛同するかはわからん。
けど、真面目に話は聞く。それでいいか?」
YOSSYの言葉に、僅かな間を置きながらも頷く香奈子。デコイ、ギャラも同調する。
肩を震わせながら、顔を真っ赤に染めながら、閉じた口をこじあけるように、
「私が指導部をどうにかしたい本当の理由は、……理由は……っ!!」



「もう、いいよ……」
「ゴメン、悪かった。」
「少し悪ふざけが過ぎました。太田さま、ご無礼をお許しください。」



「……え?」
「太田さまの真剣さはよくわかりました。
胸の内の強制吐瀉。申し訳ありませんでした。」
ギャラが香奈子に頭を下げる。
「まだ与するっていった訳じゃないのに、ここまで女の子に言わせちゃあまりにも、なぁ?」
苦笑を浮かべるYOSSYに、デコイも頷く。



「しかし、私はまだ暗躍生徒会に与するかどうかは判断しかねます。」
普段のおちゃらけた雰囲気を纏ったままのギャラのその口調は、何故かとても真摯に感じられた。
「甲斐性無しの男がいるのです。
その男には、愛してくれる女性がいます。
その女性に苦労ばかりかけさせて、
更にまた苦労をかけさせようとする。とんでもなく甲斐性無しの男ですが、
いなくなると、その女性が悲しむのです。
私は、その女性には、いつも微笑んでいて欲しいのです。……例えその微笑みが、自分に向けられることがなくとも。」
らしくないですね、と一言いい、
「ですから、最善の方法が見つかるまで、軽率に決断はできないのです。」
そう言って香奈子を見つめるギャラの眼は、とても優しかった。
まるでサーカスで子供を見つめる道化のように。
「太田さま。」
「……………」
ご縁あらば、共に闘わんことを――
そう言葉を残し、ギャラの姿は霧のように流され消えていった。



「ほっとけないんだ。」
ぽつりと呟くデコイ。
「いっつも人のことをこき使って、挙句には手下Bだなんて呼びくさる。
でも、俺が守ってやらなけりゃダメなんだ。」
デコイ自身、気づいているのかどうか。一人称が俺≠ノなっていることに。
「そりゃアイツは何も言わないさ。変なところで意地っ張りだからな。
だけど……だけどな……、……わかんねえわけねえだろうがぁ……っ!!」
別人のように怒りに満ちた眼を、YOSSYと香奈子に向けるデコイ。
「太田さんじゃないが、俺はアイツを守りたいんだ!
だから、だからなんでもいいから知りたいんだよ!  その為にここに来たんだ、俺は!!」
悲痛な表情を浮かべ叫ぶデコイ。その面持ちはとても盗撮マスターのそれではない。
そんなデコイを、香奈子はなんともいえない思いで見つめていた。



「倒したい女がいる。
いや、倒さなくちゃならない女がいる。この俺の手で。
指導部なんぞにゃ倒させねえ。俺が倒さなきゃ意味がないんだ。
……なんとなく、としか言えないが、そんな気がするんだよ。」
右拳を固く握りながら、独り言のように小さく、しかしはっきりと呟くYOSSYFLAME。
「だから俺もデコイさんと同じ。目的達成の為には、情報はあって困ることはないからさ。
無論ただでとは言わん。太田さん、こんな話は聞いた事ないかい?」
そしてYOSSYの口から語られる、指導部による反広瀬派の生徒の強制勧誘の話。
「知ってるわよ?」
「はえ?」
あっさりと、にこやかに笑いさえしながら答える香奈子。
「暗躍から、風紀委員会の監査部に城下くんを出してるからね。
指導部がなにをやっているかくらいは、監査部を通して私達の耳に入って来るわよ。」
「監査部?  初耳だな俺。誰が作ったんだそんなもの。」
「知らなかったの?  監査部の存在を?」
さすがに呆気にとられるYOSSYとそれ以上に呆気にとられる香奈子。
そんなYOSSYとデコイに、これくらいならサービスと、監査部について教える香奈子。
風紀委きっての電脳マスター・とーるの肝煎で、委員長・保科智子、顧問・緒方英二という、
各団体勢力均等の為の監査機関であるということを、わかりやすく、端的に。
「監査部も知らないで、風紀委をどうこうしようとしてたなんて……、……呆れた。」
「……うるさいな。」
ジト目の香奈子に、冷や汗YOSSY。



「とりあえず俺は、まだどこここにつくとは決められない。悪いな……」
「別にいいわよ。あなたと私達暗躍の関係は、ギブアンドテイクというのは、前からそうでしょう?」
「そういってくれると気が楽だな。ま、そんときはよろしく頼むわ。」
頭を掻くYOSSYに、にっこり微笑む香奈子。
「あ、デコイくん。」
「え?」
呼ばれて香奈子の方を向くデコイに、真剣な瞳を向け一言。
「長岡さんのこと、いつも気にかけてあげなさいよ?」
「太田さん……って、え?」
「いいから。これからも、気を配ってあげなさいよ。」
香奈子らしくないその一言は、同じ、愛する者に尽くす者として、デコイに何かを感じたからかもしれない。

「太田さん。完璧に暗いし、送るよ。」
「ありがとう。でも結構よ。」
「いや、暗い夜道は――」
そう言いかけてYOSSYの口が止まる。
彼の視線の向こうに見える、優しげな男子生徒の姿を見たから。
「そっか。じゃ、気をつけなよ!」
そう言葉を投げかけ、YOSSYは立ち去った。






「太田さん、送るよ。」
「すみません、健やか先輩……」
健やかと二人、朧月の夜を歩く香奈子。
彼女の胸のうちは、先程ギャラに言わせられかけた本音≠ェ渦巻いていた。



私が動くのは月島会長の為。
会長のためならなんでもする。会長の邪魔は絶対に排除する。
そのための手段なんか選んでられないの。
それで会長が喜んでくれるなら。私は悪魔にだって魂を売るわ。

生徒指導部はもちろん、監査部、風紀委主流派。
YOSSYFLAME、デコイ、ギャラ、秋山登だって、
私達、いや、月島会長の障害となるならば――



「――太田さん?」
「……え?」
「どうしたの?  思いつめた顔して。」
「え?  そんな顔してました?」
ニコリといつも優しい微笑みを投げかけてくれる健やか。
その度に、胸のどこかがチクリと痛む。
その理由もわからないまま、香奈子は歩く。隣に優しき騎士をともなって。





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こんにちは、YOSSYFLAMEです。

風紀動乱編第3弾。今度は思い切り外部に手を伸ばしてみましたが、どうでしたでしょうか?
そもそも僕が風紀動乱に首を突っ込む上で、一つこれだけはしたいと思ったこと。
ギャグキャラのシリアス化
で、ギャラさん、デコイさん、秋山さんら、ギャグで立ってるキャラクターに出演していただきましたが、
個人的には、シリアス系よりある意味かなりハマッたと思っているのですが、どうでしたでしょうか?
ギャグキャラシリアス化計画風紀動乱Lは、もう少し書くつもりでいますので、
よろしくお願いいたします。
もちろん、みなさまの風紀動乱Lも、よろしくお願いいたします。

あと、ギャラさん、デコイさん、秋山さん、太田香奈子さんとYOSSYは同盟は結んでいません。現時点では。
とりあえず出演していただいただけで、僕自身はSS使いの方の行動指針はわかりません。
そういうことで、今後の動きは全く未知数という訳です。

あと、動乱話の特徴として、他人のネタを活用する≠ニいうのもありますが、
僕のLに関していえば、使いたい箇所だけご自由に引用していただければ幸いです。
あくまでこれは、YOSSYFLAMEが書いた一本のLメモですから。
〜しなければならない、とは思わないでいただければ嬉しいです。


長々となりましたが、テニスLはじめ、書かなければならないものがありますが、
どうか、よろしくお願いいたします。m(_)m