Lメモ・vsジン・ジャザム 「幕間」 投稿者:YOSSYFLAME




「ちゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

ギャキイッ!
剣と剣のぶつかり合い。
ドシャッ……
そして、一人が吹き飛ばされ倒れる。



「はぁ……、はぁ……、はぁ……、……もっぺんやろうか」
倒れたその男は、息も切れ切れながら立ちあがり、汗みどろの顔を笑みで歪める。
「――ワカリマシタ」
無機質な声でそれに応えるのは、L学きっての狂戦士・Dガーネット。
「いくぜ!  絶・烈風乱舞!!」
男――YOSSYFLAMEの気合と共に始まる強烈な打ち合い。
そして再び弾き飛ばされるYOSSY。

「はぁ……、わかんねえなあ……」
脇にいてずっとその試合を観戦していた八塚崇乃がぼそりと呟く。
「何がですか?」
八塚と共に観戦していた東西が、そのセリフを聞きとがめる。
「よっしーはこないだジン先輩に勝って……」
「やり口はとても誉められたものじゃないですけどね……」
「そうだよ。それであいつの周り、しばらく人が寄ってこなくなっちゃって」
「やりすぎですものねえ……」
「それで今度は正々堂々と闘おうとしているのかもしれないが」
「それが、どうしました?」
東西のセリフにため息を一つ吐き、
「なんであそこまでやる必要があるんだ?」
「なるほど……」
東西が頷きながら試合場を眺める。
何度も何度も弾き飛ばされるYOSSY。
Dガーネットに手が出ないのであれば、やはりジンに勝ったのはマグレ、ともとれる。
だが、
明らかにやられるべくしてやられている≠xOSSY。
既に慣れきられている烈風乱舞を、実にわかりきったタイミングで打ち放つ。
Dガーネットならずとも、そんなものが通用するわけがない。
しかし、そうこうしているYOSSYの表情には笑みすら伺える。
八塚にも東西にも、その笑みの意味はなんなのか皆目見当がつかない。

ただ、女子部員を教えながら横目で見ているティリアだけは、
呆れたようなまなざして、ただやられゆくYOSSYを眺めていた。






シャァァァァァァァァ………

ティリアの――締まった、それでいて女性のふくらみはいささか失っていない――身体に
優しく降り注ぐ温水。
トレードマークの三つ編みも解かれ、赤毛の髪が濡れて肌にかかる。
己が身を湯の流れに委ねるティリア。
瞳を閉じ、湯の滝に己の身体を開く。彼女の身体を流れ落ちる幾多の雫――
「!!……そこぉっ!  ラインクルスッ!!!」



グアアッ!!
光の斬撃が侵入者*レ掛けて疾る!
「――チ!」
どっこい、侵入者≠焉A信じられない身のこなしで躱し、シャワー室へ!
「甘いわ!!  フィルスソード閃光斬り――――!?」
刹那、驚愕のティリア!
「(は、速い!?)」
閃光斬りの間合いより深く飛び込み、一糸まとわぬティリアを押し倒しにかかる侵入者=I
「くっ!」
焦りの色を美貌に浮かべ、両腕を交差させ胸を庇うティリア!
「もらったあ!」
かさにかかって飛び込む侵入者=I

きぃん☆
「腕使えなくても、脚があるのよ。わかった?  よっしー?」
鋭い気迫を瞳に浮かべ、ティリアの蹴りが急所に決まる。
「今日のレクチャーはこれで終わりよ!」
悶絶YOSSYを蹴り飛ばし、急いでバスタオルを身体に羽織る。






「まったく、散々疲れてそんな体力ないと思ったら。油断してたわ……」
呆れ顔でシャワー室の側に蹴り倒されているYOSSYを覗き込むティリア。
「(それにしても……あの気の張りようは一体……)」
普段のYOSSYなら、間違いなく閃光斬りの時点でケリはついている。
まがりなりにも閃光斬りを封じるほどの踏み込みの速さと、そしてその気迫――
「ん……んん……」
「あ、目が覚めたみたいね?」

「ノゾキする体力だけはしっかりと残ってるなんてね。あっきれた」
心底呆れたような表情でYOSSYを眺め降ろす。
「でもま………、………さすがに………疲れたわ………」
「ここんとこ毎日毎日Dガーネットと無謀な立ち会いを挑んで、
みんなが帰った後も道場庭の無数のタイヤ相手に打ち込みの練習……まあ、目的はわかるけどね。
そんなに正々堂々と、あのジン・ジャザムに勝ちたいの?」
「……いいや、別に」
「え?」
少し驚いたティリアに、倒れたままYOSSYは口を開く。
「……俺は別に、まわりがどう思おうと関係ねえや。
勝ちという文字に正々堂々と卑怯の違いがあるかっての」
「まあ、それはそうだけどね」
万人に受け入れがたい理屈にあっさりと同意するティリアに、YOSSYも少々面食らう。
「いいのか?  勇者がそんなこといって」
「……負けたら、殺されたら勇者もヘッタクレもないわ。
私だけならまだしも、仲間の命も背負っているのよ。
正々堂々と闘って仲間を殺されるくらいなら、ね……」
YOSSYが見上げたティリアの顔は、少しだけ真剣な彩りを見せ、
そして、次の瞬間、夕闇に溶けるように、僅かに笑みを見せる。
「そーゆーコトよ」
「なるほどね……」
んしょっ、とYOSSYの横にちょこんと座るティリア。
L学指折りの剣士とは思えぬ華奢な身体が、なんとも可愛く映る。
「どしたの?」
「いや、別に……」
言葉を濁したまま、YOSSYは体を起こし座る。

「次、闘る時には……今のままじゃ勝てねえ。
正々堂々とか全力とか、そういう次元じゃねえんだ、ヤツと闘りあうのは。
次は……次、ヤツが出てくる時は、間違いなく今までのヤツなんかじゃねえ……」
そういって押し黙るYOSSY。
話を聞いていたティリアも、ようやく合点がいった。
今度は正々堂々と≠ネどと、相手をナメきった態度でないこと。
以前と同様、いや、以前以上の危機感を持って、闘いに出向かんとするYOSSY。
だからこそ、あそこまでの気迫を出し、闘うことができるのだ、と。

「でも、今のやり方は間違ってるわね」
「え?」
不意にティリアが真剣な瞳でこちらを見つめる。
「あんたの練習の一部始終、見させてもらったわ。
必殺技の威力を上げよう、撃ち負けないようにしよう、
Dガーネット相手に見え見えのモーションで技を放ったり、タイヤの打ち込みもその現われ
なんでしょうけど……」
一呼吸置いて、そして断言する。
「それじゃ、ジン・ジャザムに勝つなんて一生無理ね」
「な!?」
さすがにそこまできっぱりと断言され面食らうYOSSYを、瞳で押しとどめるティリア。
「だいたいが、力で捻じ伏せる≠ネんて、あんたのスタイルじゃないわよ。
私があんたんとこにコーチで来ることに決めた時、あんたに言ったことがあったよね。
あんたの長所、私はあんたになんっていった?」
じっ、とYOSSYの目を見つめながら、その愚を説くティリア。
「何をしてくるかわからない意外性を持った想像力と、何がなんでも勝つって執念………
………だっけか?」
「そう!  それと、その尋常ならないスピードよ!  それを活かさなきゃ!」
「でもなあ……」
この男らしからぬ、珍しく渋る素振り。
「やっぱりな、こないだ闘っていても、いや、こないだだけじゃない。
スピードの限界≠チてヤツを、最近つくづく思い知らされてる感じなんだよ……」
珍しい口調のYOSSYを、じっと見つめるティリア。
「散々敵を引っ掻き回した挙句、タメの一撃で逆転負け……
やはり、攻撃にはそれなりにパワー。それを裏付ける筋力もなくちゃなぁ……」

「はぁ……なんにもわかっちゃいないのねえ……」
「ティリア?」
心底呆れたといったように、腕を竦ませるティリア。
「思いっきり勘違いしてるようだから言っておくけど、
あんたの技、スピードに限界を感じた――なんてレベルじゃないのよ」
「……………」
「それに、あんたはそのスピードしか取柄ないし」
「なっ……!?」
「きたみちもどるのような決定的な斬撃速度もない、
悠朔のような一撃で敵を沈めるような破壊力もない、
セリスのような攻防一体のテクニックがあるわけじゃない、
佐藤昌斗のように、技に融通が利かせられるレベルでもない。
彼らのマネをしようと思っても、あんたにはその資質がない」
平然と言いたい放題のティリア。さすがにYOSSYも開いた口が塞がらない。
「つまり、あんたの肉体的取柄ったらそのスピードしかないのよ、実際のトコロ。
――でも」
平然とした中、ティリアが呟く。
「ことスピードを操らせれば、あんたの右に出るものなど、そうそういないわ。
少なくとも、この学園の中では、ね――」
「ティリア……」
「それともう一つ。あんたの技って結構お手軽に思われてるけど、覚えておくといいわ。
――だからこそ、の利点があることをね」
さて、私はそろそろ帰ってご飯でも食べるわ、と言い残し、ティリアが立ち去る。
最後に一言だけ残して。
「自分の持てるものを全部掘り下げれば、でてくるはずよ。――答えは自ずと、ね」






「とは言うけれどなあ……どうしたものか……」
ティリアの言葉が頭から離れず、されどこれといった打開策も見つからず。
すっかり日が沈んだ学園を一人歩くYOSSY。
「自分の持てるものを全部――ね……」
てくてくと歩き続けるYOSSYの耳に、何かが聞こえてくる。
「……ピアノ、か?」
その方面に関しては素人のYOSSYではあるが、なんとなく引き寄せられるように
その音が奏でられる場所、音楽室へ歩を進める。

「うきゅ?  どうしたですか?」
その中にいたのは、見紛おうなきS学生――ではなく、SS不敗流・水野響。
「水野くん、こんな時間まで練習してんの?」
「うきゅっ!  もうこんな時間でしたっ」
今頃時間に気づく水野に、YOSSYも苦笑を隠せない。
「うゆ、でももう少しやっていくです!」
そう言って、一心不乱に鍵盤をうち鳴らす水野。
「(まったく、熱心なんだな………)」
せっかくだからとYOSSYも近くの椅子に座り、水野の演奏を鑑賞する。
水野の十本の指が、踊るように軽快に鍵盤を舞う。
スピーディーなその動きから奏でられる無数の旋律。
何者をも押しのけるような力強い節。
優しく包み込むような暖かい節。
その流れはさながら寄せては返す波のよう。
いつしかYOSSYも、その千変万化の旋律に包み込まれていた。

「すっごいな水野くん、よくあんなに無数のリズムを奏でられるなぁ……」
「うゆ?  ありがとです〜〜」
YOSSYの称賛に素直に笑みを浮かべる水野。
「いやホントに。力強さから繊細さから千変万化。恐れ入ったわ」
「んー……
わたしはわたしのできることをできるままにやってるだけですっ☆」
きゃるん☆と、そのテの愛好者が見れば思いっきり誤解されそうな笑みをばらまく水野。
しかしYOSSYはその時、全然違うことを考えていた。

「(自分のできることをできるままに……)」
ティリアにも似たようなことを言われた。
水野のその無限のリズムの原点も、なんのことはない、始まりは一つ。
それは何も水野に限った話ではない。
剣道部だって、格闘部の連中だって、無論誰もが得ている道。
戦闘≠フ二文字に囚われていたYOSSYは、思い出した。
無い物を無理に作るよりも、あるものでどうにでもなることを。
自分の能力も。自分の性格も。無論自分の卑劣さも。
あるべきものを如何に使うか、ということを――
「水野くん、あんがとな!」
「……うゆ?  ではです〜〜〜」

水野の声を背に受けながら、いつもの不敵な笑みを浮かべる。
もう二度と勝たせない。例えどんな手を使おうとも。
絶対的な勝利への確信を得て、YOSSYは迎え撃つ。

勝利に飢えた復讐鬼、ジン・ジャザム≠――










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こんにちは、YOSSYFLAMEです。

テニスLを書いてても、寮Lを書いていても、どんなLメモ書いてても。
忘れたことなどありません。「vsジン・ジャザム」!!

とりあえず、第一戦の後の幕間をあげました。
本編も近々上げたいと思います。
YOSSYFLAMEの戦闘概念をこめた対決。楽しみにしていただければ幸いです。