「さてと、何か面白いことはないかな…………をっ?」 いつものごとく暇そうに学園内を闊歩していたYOSSYFLAME。 その彼の足がピタリと止まり、その視線はある一点に釘付けになった。 「なにやってんだ? 菅生先輩……」 妙なそれ≠ェ気になり、工作部に足を踏み入れる。 「こんちわっ、何ですか? そのビデオカメラみたいなドライヤーは」 「何だ、君か。 これは、我が工作部で作った名品、風向自在ドライヤー≠セよ」 「風向自在ドライヤー……?」 えっへんと不必要なまでにそっくりかえりながら説明する工作部部長・菅生誠治。 「そう、つまり――」 「ふんふん……って、俺ですか?」 そう言いながらドライヤーの送風口をYOSSYに向ける誠治。 「まあ、見てなって………スイッチ・オン!」 「………なっ!?」 瞬間、YOSSYの目が驚愕に開かれる。 なんと、YOSSY自身に向けられた送風口から、全然YOSSYに風はあたらず、 代わりにYOSSYの後ろに落ちてた紙切れが、宙に舞いあがっているのであるから。 「な……なんですこの物理法則を完全に無視したドライヤーはっ!?」 「ふふん、驚いたかい? このように、ファインダーを覗いて、対象物をロックオンする。 ――今ロックオンしたのは、君の後ろの紙切れだ―― そして、その対象物にどの方向からどれだけの強さの風を当てるかを選択、 そして、スイッチ・オン!」 ヒュウゥゥゥゥ……… 「す………すごいですよ先輩っ! すごい画期的な発明ですよっ!」 今度の送風口はYOSSYの真ん前に向けられていたにも関わらず、 YOSSYの後頭部めがけて思い切り風が吹きつけられていたのであるから。 「どうだい? 驚いただろう?」 「ええ! 先輩の科学力とその才智には、頭が下がる思いです!」 「いやぁ、それほどでもないよ」 「ですからコレ、俺に貸してくれませんかっ!?」 「ダメ」 「(けっ、ドケチ)」 「……何か言ったかい?」 「いえ、何も」 YOSSYの貸与願いにも耳を貸そうとしない誠治。 「だいたい君なんかに貸したら、悪用するに決まってるからな」 「ひどいですね先輩。僕のどこを見てそのような暴言を」 「……よくもそういうセリフが口から出るものだと感心するよ」 「いやあ、お褒めくださって嬉しいです。で、貸してくれたらもっと嬉しいんですが」 「ダメったらダメ」 「ちえっ」 頑として譲らない誠治に、ふてくされながら諦め出ていこうとするYOSSY。 トゥルルルルル……、トゥルルルルル…… 鳴り響く工作部の内線電話。八希望がそれを取り、 「部長。警備保障の霜月さんからお電話です」 「霜月が? 何の用事なんだろうな……」 といって、そのままドライヤーを持ったまま電話口に向かう誠治。 「帰ろっと……」 とぼとぼと帰ってゆくYOSSY。だがその時唐突にチャンスが訪れた。 「(先輩、ドライヤーを机に置いたまま話してやがる………ラッキーっ!)」 霜月との会話でメモを取る必要ができたらしく、 机にドライヤーを置いて、メモ書きしている誠治。 無論、このチャンスをYOSSYが逃すはずはなかった。 「っしゃラッキー!」 右手に風向自在ドライヤー≠持ち、校内を悠々と歩くYOSSY。 「さてと、せっかくだからこの一品、どういう風に使っちゃおうかな〜〜♪」 「なぁにをしらじらしい。お前の使い方なんか一点しかないだろうが」 「霜月先輩?」 揶揄に振り向くYOSSYの目の先には、ニヤツキ顔の霜月祐依の姿が。 「さすがYOSSY。俺のアシストをキッチリ決めてくれたな」 「アシスト………って、あの電話がそうだったんですか?」 はっとするYOSSY。 確かにあの電話はタイミングが良すぎた。 それが霜月の策略だとすると、確かにつじつまが合う。 「さて、早速このドライヤーを有効活用しようではないか、同志よ!!」 「……有効活用って、具体的には?」 肩をバンバン叩いてくれる喜色満面の霜月に対し、あくまでそらっとぼけるYOSSY。 「だぁぁ!! とぼけるのもいい加減にしやがれっ!! スカートめくりだよスカートめくり!! 風チラは漢字の漢とかいて漢の浪漫だろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」 「あー……先輩、声が多少大きいかと……」 YOSSYの胸倉つかみ大演説をかました霜月ではあるが、 クスクス何あの人達やだぁといった汚物を見るような視線で女子生徒が渡り廊下を過ぎて ゆくのには無頓着だったらしい。 「……お前、ヤな性格してるよなー」 「考え過ぎですよ。多分、きっと、おそらく、希望的観測をこめて」 「で、とにかくこんなイイモノをゲットしたんだからな。 スカートめくりをしない手はあるまいっ! そうだろよっしー! さぁっ!! そうと決まれば早速子ウサギちゃんたちを我らが毒牙に――」 「ちっちっち」 霜月の目の前で人差し指を左右に動かしニヤつくYOSSY。 「先輩。神はこのようなイイモノを我々に与えたもうたのですよっ! それを我々だけで堪能するのは神への冒涜って奴ですよ〜〜」 ちなみにこの男、無神論者である。 「やっぱりここは、青春に迷える子羊たちにも幸せを与え賜らないとっ」 「はぁ……?」 YOSSYの言葉の意味がさっぱりわからず、首をかしげるままの霜月。 「とりあえず、これはやり過ぎだと思うで、ウチはな」 「しかしだな……SS使いの愚行を押さえるのには、これくらいは……」 渡り廊下から声が聞こえ、一組の男女が歩いてくる。 風紀委員・ディルクセンと、気丈なおさげのメガネっ子優等生・保科智子の二人である。 なにやら廊下を歩きながらでも真剣な話をしているらしい二人。 話の内容が内容な為に甘い雰囲気とはいかないまでも、 二人の間の雰囲気は、平凡なものとは一線を画していた。 「くっくっく。こういうペアを待ってたのよ。 なんていうか、恋愛感情の蕾の二人≠チて、いいと思いません? 霜月先輩?」 「だーかーらー、お前は一体何を狙ってやがるんだ」 渡り廊下から少し離れて含み笑いを漏らすYOSSYと、今もって不可解な表情の霜月。 「ここまで来てまだわかりません? 先輩?」 ぺろりと舌なめずりをするYOSSY。獲物を狙う時のこの男のクセ。 そのニヤツキ笑いのまま、ドライヤーのファインダーを覗き込む。 「俺はね……」 ファインダーのピントを徐々に合わせる。保科智子の足元に、ロックオンし標的固定。 「不器用な純愛を志す人達が誰しも願う、一縷の望みを叶えてやろうと――」 風速と風向をインプットし、そしてYOSSYの人差し指が―― 「――好きな娘の恥じらう姿、存分に味わってくださいなっ!!」 ――ヒュウゥゥゥゥゥ……… 「……え……な、なに? なんやの!?………きゃあぁぁぁっ!!」 まるで淫らな生き物のように、智子のスカートが舞い上がる。 恥じらいに顔を紅潮させて、慌てて前を押さえる智子。 だが、後ろからは純白のショーツに包まれたお尻が丸見えに。 「あ……あかんて!」 小さく悲鳴をあげながら後ろも押さえる智子だが、なかなかそれもままならない。 まるで意志を持ったかのように主人を辱めたらんと舞い続けるスカート。 たまらず蹲って、懸命にスカートを押さえようとするが効果なし。 数秒の間だけだったが、襲いかかった風は十分にその役目を果たしてくれた。 なにせ智子の純白ショーツを、存分に堪能させてもらえたのだから。 「……な、なんやの? 今のやらしい風………」 突如巻き起こったエッチな風に襲われた智子。 紅潮した顔そのままに俯き、愚痴を漏らす。 「あー、保科………そのー……、あまり気にしないほうがー……」 後ろからディルクセンの珍しく対処に困った優柔不断な声が聞こえる。 その声が見られたことを意識させ、一層面差しに赤みが増す智子。 「だから、その……、パンツ見られたからって減るものじゃないだろうし……」 「っ!!」 その一言が逆鱗に触れた。 見る見る真っ赤になって羞恥と怒りに包まれる智子。 勢いよく振り向いて、キッ!とディルクセンを睨み付け―― 「――アホぉっ!!」 パアァァン!! 「この……ドスケベっ!」 茹蛸のように真っ赤に染まった顔そのままに叫びをぶつけ、早足で走り去ってしまう智子。 その背中をディルクセンは、魂を抜かれたように締まらない顔つきで呆然と見続けるのみ。 「(……かぁいいやん、アイツ……)」 頬の痛みも心地よく、気丈な想い人の意外な一面。 「よっしー……、お前ってなんて優しい奴なんだぁ………」 「でしょでしょ、いいでしょ? なんとなく気になってる人に、恥ずかしい姿を見られる女の子の反応っ! 荒療治だけど、こうしてお互いがますます気になる存在と化していき、 俺らは俺らで可愛い女の子の恥じらう姿が見れて、もう一石二鳥って奴ですよっ!」 智子のあられもない姿が見られて、もううはうはなYOSSYと霜月の二人。 「さてと、次の毒牙にかける子を選別しなくちゃなっ!」 「そうそう! 次はどの恋人未満のペアを狙いましょうかね〜〜♪」 奴等の暗躍は、まだ終わらない。 ============================================== はい、原点回帰のYOSSYです(笑) 最近どうもYOSSYが大人しくて。主にスケベとナンパの点で。 「これはなんとかしなければ、このままでは」と、別に思ったわけではないですが(笑) 「可愛い委員長が見たかった」という突発的妄想が、この話を書かせました(*^^*) あまり間を持たせず、テニスLの合間くらいに完結させる予定ですが、 後編では何組の恋人未満のペアに役得(犠牲?)を堪能させられるか、実に楽しみです(*^^*) 無論、「vsジン」と「シャッフルL」を忘れたわけではないですので。m(_)m では、失礼いたします。