Lメモ・vsジン・ジャザム「ジャッキング!クイーン・ザ・リズエル・エピローグ」 投稿者:YOSSYFLAME




「うおおおおおおああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「……な!!?」
グアアアアアアッ!!!
今までとは比較にならぬ程のジンの力≠ェ、YOSSYを弾き飛ばす!
「な、何ぃっ!?」
驚愕のYOSSY。
弾き飛ばされたそれ自体にも驚いていたが、それ以上に驚くべきことに。
「ハ、ハイパーモードだと!?」



鋼鉄の金色鬼の復活――
しかも、先程のそれよりもその輝きは明るく、そして熱い。
全く力が入らなかった両腕両脚には、漲らんばかりの力の充実。
「そ、そんなことがありえていいのか!?」
YOSSYFLAME唯一の誤算。
ハイパーモード=姫護の力≠ニは、本来柏木家の女子を護る為の力。
エルクゥ同盟員独自の能力増加の一言で片づけられるほど、底の浅いものではないのだ。
彼女らの想いに呼応する限り、その力に限界などない。
千鶴の想いある限り、その力に限界など――

「――俺は、絶対に負けねえ。千鶴さんがそう願う限り、絶対にな!!!!!」















「――はっ!」
がばあっ!
「――――っ……!!」
眼を固く閉じ、迫り来る何かに懸命に構える、ベットの上のパジャマ姿の青年。
「……………え?」
しかしながら、いつまでたっても迫り来るものが来ない。
「…………ジン先輩はどこ行った?  って、ここは?」  
きょろきょろ。
何が何やらわけがわからず左右を見回す男。
自分が今横になっているのは、簡素で清潔感溢れる、白いシーツに白い布団のパイプベット。
壁もまた清楚な白一色。
吊られてギプスで固められてる左足と左腕。体中に巻かれている包帯。
自分の目の前には、テレビやカレンダーもあったりする。
そして自分の枕元には、いくつかのリンゴ等の果物と、何故か積まれている宿題。
「えっとぉ……この状況から判断するにー……」
リンゴを掴み一口かじり、宿題のプリントを蹴落としながら。
「どうやら闘いは終わっちゃって、俺はここ、病院に運ばれたみたいだな……」
リンゴをしゃりしゃりとかじりながら一人ごちる。
「で、ここに運ばれることを全く俺が覚えていない状況、すなわち俺はジン先輩に……」



こんこんっ。
「はい、どうぞ?」



「よっしーくんっ、やっと目が覚めたのねっ」
心底ほっとした表情で入ってくる一人の女性。
「……千鶴さん」
「あらあら、お腹空いてたのね。私がむいてあげるから、ちょっとリンゴ貸して?」
「あ、はい………」
何が何やらさっぱりわからず、言われるがまま千鶴にリンゴを渡す男、YOSSYFLAME。

「本当に、本当によかった……」
安堵感に顔が緩む千鶴に、
「そんなに俺、重傷だったんですか?」
「あたり前でしょう!?」
何を当然、といった風に思わず語気を強める千鶴の勢いに、きょとんとするYOSSY。
「あ、ごめんなさい……
でも、あれから一週間も寝てたんだから、よっしーくん」
「一週間っ!?」
今度はYOSSYの声色で、千鶴を驚かせてしまう。
「あ、すみません……、……それにしても、一週間か……」
あまりといえばあまりの時間に驚かされるYOSSY。
「ってことは、やっぱり勝負は……」
YOSSYの呟きに、無言で頷く千鶴。
「そうですか……」
右手で前髪をくしゃっといじりながら、何かに思い耽るような面持ちのYOSSY。

「ねえ、よっしーくん」
「はい」
リンゴをむきながら、千鶴が声をかけてくれる。
「リンゴの皮むけたわよ、はい、どうぞ」
「あ、いただきます………って、これはまた見事な」
「ううっ……でもほら、食べられるから」
さすが千鶴のむいたリンゴらしく、実が半分ほど削り取られているすばらしい出来のリンゴ。
「いっただきま〜す」
しかしながら本来女の子が、それも千鶴がむいてくれたリンゴ。
YOSSYにとってはそれがどんな形であろうとも、おいしくいただけるものなのである。
「よかった。もっとむいてあげるから」
「ありがとうございます、すっごく嬉しいです」
千鶴のむいたいびつなリンゴを、美味しそうにパクつくYOSSY。



「この度はご迷惑おかけしました。本当に申し訳ありませんでした」
一通り落ち着いたあと、深々と千鶴に詫びるYOSSY。
「でも、それでも。俺は、クイーン・ザ・リズエルになりたかったんです。
そのためにはジン先輩を倒さなければいけなかった。俺は納得いかなかったんです。
姫護の任、運命の守護者だか血の宿命だかなんだか知りませんけど、
それだけで、ただそれだけで千鶴さんを護れるなんて……」
「よっしーくん……」
「と、最初は思ってました。
だからこそ、あんなことをやらかしたんですし」
あっけらかんとした笑みを千鶴に向けながら話すYOSSY。
しかし、その笑みが俄かに真剣なものへと変わる。
「俺は勝つ気でやりました。手段を選んでるゆとりなんかありませんでした。
とにかくジン先輩に関するデータを集めて、対策を練って……
まあ、ジン先輩は有名ですし隠し事をしない人ですから、データ収集は楽でしたけど。
そして、そのデータに基づいて、勝つ為だけの最短の手段で挑み、事実一度は勝ちました。けど……」
不意に千鶴に向ける寂しそうな表情。
「気づいちゃったんです、俺は。
どう頑張ったところで俺は、クイーン・ザ・リズエルにはなれないことを。
運命だの血だの、そういう問題なんかじゃない。
クイーン・ザ・リズエルは、ジン先輩でなければならないと。……なんとなくですが、ね」

話の最中、千鶴が向けてくれる申し訳なさそうな表情。
「いえ、あの、気にしないでください。俺はもうそれはそれで……」
そんな千鶴の表情に気づき、話を中断するYOSSY。
「俺はもう、それならそれでって考えてましたから、ええ、すみません……」
なんだか言ってることが支離滅裂になってきたYOSSY。
そんな慌てぶりが可笑しかったのか、それとも、
「あ………」
再び向けてくれた千鶴の微笑み。それによって罪悪感が清められてゆく。
「あの、よろしければ………俺の我が侭なんですが、千鶴さんに、聞いて欲しいんです……
もし、本当によろしければ、続きを話して、よろしいでしょうか……?」
YOSSYの願いに、千鶴は微笑みながら頷いてくれた。

「二度目の闘いは、俺は前回以上に負ける気はありませんでした。
どう頑張ってもクイーン・ザ・リズエルになれない悔しさ、鬱憤、嫉妬。
そんな負の感情を、思いっきりジン先輩に味あわせたかった。
絶対不敗、無敵の守護者、エルクゥ同盟クイーン・ザ・リズエル、ジン・ジャザム。
あの男を、俺の足元に。
千鶴さんの守護者には決してなり得ない俺の足元に、無様に這いつくばらせたかった」
次から次へと湧いてくる、YOSSYの暗い衝動。
しかしそんな言葉の暗さとは裏腹に、彼の表情に陰りはない。
「前回以上に卑劣な策を講じて、彼の情けに付け込みすらして。それでも俺は勝てなかった」
呟くように喋っていたYOSSY、不意に千鶴の方を向き、
「愉快なことに、ジン先輩に倒された時……その一瞬、心底ホッとしている自分がいたんです」
憑き物が落ちたような笑みを、YOSSYは千鶴にそっと向ける。

「なんていうか、これがクイーン・ザ・リズエル、なんだなあって……
正直俺程度のダーティーな手段にやられちまうような奴じゃ、いくらなんでも……」
クククッと笑いながら、
「強かったです、ジン先輩は。
単純な力のみならず、想いの力が俺が思ってたよりも遥かに。
これでやっと認める――って言い方はなんか横柄ですけどね――ことができるって」
千鶴に向かって、はっきりと。
「よっしーくん……」
「手段は決して誉められないと、自分でもそう思いますが、
これでも本気で、千鶴さんの守護者になりたかったんです、俺。
あなたに命を救われた者として。あなたの血を体に宿し者として。
――なにより俺自身、YOSSYFLAMEとして」



「ところで、ジン先輩はどうしてますか?」
「ジンくんはね、ほら……」
悪戯っぽい笑みを浮かべながら、病室の窓を開け放つ千鶴。
かすかに聞こえる爆音と笑い声。
きっとまた、Dセリオあたりと果たし合いでもしているのだろう。
「かなわないなあ、正直……」
苦笑を漏らすことしか、YOSSYにはできなかった。



「それじゃ、そろそろ失礼するわね……」
「あ、はい。――今日はいろいろ本当にありがとうございました」
左足が折れてる為にベッドから起き上がれなく、会釈しかできないのがYOSSYには歯がゆかった。
「それじゃ、また来るわね」
ドアを開け、出て行く千鶴。
「あ、そうだ。よっしーくん」
「え、なんでしょう?」
不意に立ち止まり振り返る千鶴。そして、満面の笑みをYOSSYに向けてくれながら。

「……ありがとう……」



「こちらこそ、本当に。本当にありがとうございました……!」
千鶴が去ったドアに向かって、湿った声を喉から投げかけた。








「それにしてもどうしようかな……登校した時、さ。
あれだけやらかしちゃったんだもん、村八分にされたりしてなぁ……」
されたりして、ではなく、その可能性が極めて高いと思うのだが。
まあそれはさておき、ためいきをつきながらベッドに寝転ぶYOSSY。

パサ……

「ん?」
何かがYOSSYの顔にかぶさった。
「……手紙?」
目を凝らして開封してみる。するとそこには……



『目が覚めたら、ちゃんと宿題やっとかなきゃダメだからね!
P.S.
お見舞い持って来てくれた人達にもちゃんとお礼言っておきなさいよ!』



「あのアマ……」
顔面ひきつりながら呟くYOSSY。
「余計なことしやがって、ったく……」
YOSSYの苦笑。
しかし今のYOSSYには、そういうのもなんとなく嬉しかったり。
「そうだな……」
自分一人で食うには心持ち多い果物の山。
そして、自分一人でやるには絶望的な宿題の山。
「めげてる暇なんかねえか……、これからだな、これから」

苦笑気味に、それでも決して気分悪からず。
思いきり歯を立ててかじられたリンゴの音が、病室に大きく響き渡った。

















                                                                                 Fin

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こんにちは、YOSSYFLAMEです。

今まで本当に申し訳ありませんでした。
やっと、やっと完成しました!  vsジン・ジャザム!
主宰のbeakerさんやジンさんを始め、学園メンバー、読者の方々には
大変なご迷惑をおかけしました。本当に申し訳ありませんでした。

ネタを吟味して吟味して、やっとここまでこじつけました。
あとがきに書いていたら本当に、あとからあとから書くことが出てくるので、
逐次、内情というか、そういうのを、
ご迷惑かもしれませんが、暴露させていただきますです。

本当に申し訳ありませんでした。
そして、今まで待って下さって、本当にありがとうございました。