『第5ブロック代表決定戦に出場予定の猫町選手、猫町櫂選手! 大至急、Bコートまで来てください! 繰り返します――!』 第4ブロック代表決定戦にて、優勝候補最右翼・ジン、柏木千鶴組のよもやの敗退でざわつく会場。 そのざわつきも収まる前に、今度は別のざわめきが、コートを覆い尽くしていた。 そのざわめきの中、ただ一人、ぽつんと佇むパートナーの雛山理緒。 彼女の胸中は、一体いかなるものであったろうか。 「……綾香、急いで用意しろ」 「え?」 親友・柏木梓の勝利を見届けた後、ひとまず控室に戻っていた来栖川綾香。 そんな彼女に、遅れて控室に入ってきた悠朔は開口一番。 「準備って………まだ第5ブロックの試合があるでしょ? それからでも――」 「その第5ブロックの試合が、行われなかったとしたら?」 「――え?」 「何?」 「それって、ホントなの?」 試合観戦をしていた榊宗一にそう言われ、僅かに驚くOLHと斎藤勇希。 「ああ。猫町が試合開始時間になっても姿を見せない。 このぶんだとどうやら、T-star-reverse組の不戦勝になりかねないんでな」 「不戦勝……」 「……ウォームアップを急ぎましょ、OLH君。そういう事情なら」 「そうだな。急いだ方がいいな」 「(どこにいるんだ、猫町君!!)」 学園中を息を切らせながら、騒ぎの張本人を捜して走るきたみちもどる。 無論彼だけではない。校内巡回班メンバー総出で、彼の消息を追っている。 局長である彼にしても、今回の失踪は寝耳に水。 一体何が原因なのか。 しかし、そんなことより、今は急を要する。 急がなければ。 「(猫町君、出て来てくれ!)」 『第5ブロック代表決定戦に出場予定の猫町選手、猫町櫂選手! 大至急Bコートまで来てください! 繰り返します――!』 「ったく、何やってんだか、猫町のヤツ……」 観客席からためいきをつきながら、コートを見下ろすYOSSYFLAME。 「お前らしくも無い発言だな。このままいけば松原は不戦勝で難なく勝ち上がれるんだぞ」 そんな彼にいつもらしさが欠けていると指摘するのは、隣に座っている山浦。 「松原萌えのお前としては、タナからボタモチの展開だろう?」 「ま、そりゃそうなんだけどさ……」 YOSSYの目は、ある一点を見据えて動かない。 「葵ちゃんには勝ってほしいことには違いはないんだけど、 こんな形での決着ってのはちょっとなあ……」 「雛山か。お前が見てるのは」 「うん……。せっかく頑張ってきたのに。 勝負で負けるならまだしも、こんな形で負けるのは、ちょっとって気もしないでもないんだ……」 視線は理緒の方を向いたまま、言葉だけを山浦に投げかける。 そんなYOSSYが、ある気配に気づいて横を振り返る。 そこには、第二購買部部長beakerが、厳しい面差しでコートを見下ろしていた。 「ティーせんぱい、この試合、どうなっちゃうんでしょうか……」 不安げな視線を、パートナー・T-star-reverseに向ける、理緒組の対戦相手・松原葵。 勝負においては、いついかなるときもまっすぐ正々堂々とありたいと願う彼女。 そんな彼女にしてみれば、この試合の展開は甚だ不本意に他ならない。 勝っても、例え負けたとしても。 正々堂々と胸を張っていたい。それが松原葵の“戦いの信条”。 その葵の気持ちは、ティーには痛いほど解っている。 けれども、肝心の相手がいないのでは、どうにもならない。 彼の目が、コートの向こうに注がれる。 一人ぼっちの雛山理緒。 しかし、彼女の瞳は死んではいない。 そんな瞳が、ティーの視線に気づく。 「大丈夫!」 なんの揺るぎも無い、言葉だった。 『第5ブロック代表決定戦に出場予定の猫町選手、猫町櫂選手! 大至急Bコートまで来てください! 繰り返します――!』 ============================================== こんにちは、YOSSYFLAMEです。 このテニスL、一試合一試合、僕は自分なりに気持ちを込めて書かせていただいています。 ですので、現状不透明な状態で書くのは、僕にはできませんでした。 どの試合もそうですが、特にこの試合、雛山理緒組vs松原葵組の対決は、 一生懸命でひたむきな二人の勝負。書く立場としても、しこりなく書きたいというのが 主催者としての、SS使いYOSSYFLAMEとしての我侭だったりします。 ちょっと僕も、いろいろあったりしちゃいますので、一週間はテニスL書かないと思います。 その間に音沙汰、そして進退を知らせてください。 どなたに言っているのかは、おわかりですよね? では、失礼いたします。 なお、このLメモに関しては、全てがYOSSYFLAMEの独断での掲載であることを ここに掲示いたします。 意見、質問などありましたら、よろしくお願いいたします。