『どよめけ! ミスLeaf学園コンテスト』 第八話 〜weakpoint〜 投稿者:YOSSYFLAME




「はいはいはいはい、すとっぷすとっぷすとーっぷ!」



  ヴォンヴォンヴォン………ドゥルルルルル……
「そこのハーレーダビットソンのお姉さん、今日が何の日だか御存知ですか?」
「“どよめけ、ミスリーフ学園コンテストの日”でいいんですか?」
  学園某所。
  とにかくもハーレーを駆っていた、フルフェイスヘルメットの女性が、木刀を持ちし一人の
男・YOSSYFLAMEに止められている。さながら検問でもするかのように。
「で、見た感じ、あなたもしかしてエントリーヒロインじゃないんです?」
「ごめんなさい、人違いですね」
「あ、そうでしたか。それは失礼しまして、すみません」
  快活な女性の答えにYOSSYも非礼を詫びる。
「じゃあ、そろそろ行ってよろしいでしょうか?」
「あ、どうぞ。お気をつけて」
  ヴォンヴォンヴォン………ギャルルルルルッ……
  軽く右手を上げつつ、じゃじゃ馬さながらエンジンを吹かし、女性は愛車ハーレーを駆り、
  涼やかな風を一陣残し、轟音と共にその場を立ち去る。
  その彼女の背後から、人間とも思えぬスピードで襲いかかるモノにも気づかずに。

  シャァオンッ!  ズギャラッ!

「……そうは問屋が卸さない、っていうわけですか」
「そりゃあね。あなたの正体くらい俺にはお見通しってヤツさ。な、風見のお姉さん」
「さすがひなたちゃんのお友達ですね。一味も二味も違います」
  間一髪。
  背後から襲いかかったYOSSYの欲望の爪牙を躱し、態勢を整え女性はメットを脱ぎ捨て
る。そのメットの奥のボーイッシュな女性こそ……
「運送会社勤務・風見鈴香………なんであなたがウチの大会に出れたかは知らんけど」
「実は私もよくわからないんですよね。何故でしょう」
  まあ、この学園だから。そう思い呆れるYOSSYに、首をかしげて考える鈴香。が。
「ま、そんなことはどうだっていいんだけど………あなたの服さえ剥かせてもらえれば!」
「――はっ!」
  ヴォンッ!
  豪快な排気音を奏でながらハーレーと共に身を躱す鈴香、一瞬遅れてYOSSYの毒牙が。
「ま、私もどうだっていいんですけどね。この大会の出場の経緯がなんであろうと……」
「……!」
  鈴香の瞳に熱がこもる。
「……私は自らの仕事の完遂。すなわち――」
  防戦一方だったハーレーの唸りが変わる。命を吹き込まれた鉄の野獣のように。

「――あなたたちみんなブッ飛ばして、優勝すればいいだけですから!!」
  刹那、鈴香を乗せた鉄の野獣は、彼女の意思そのままにYOSSYに喰らいつく!










『どよめけ! ミスLeaf学園コンテスト』 第八話 〜weakpoint〜










  ヴォンッ!
「っとおっ!」
  YOSSYFLAME対風見鈴香の一騎打ち。
  あのクソ重くてどう考えても回避能力は高くないと思われるあのハーレーを、さながら緋色
の雌豹の如く操る鈴香。その姿はまさにビースト・マスターならぬ、“輪の魔術師”。
  いかなる車とて、まるで自分の手足のように駆りこなす鈴香のソツのない攻撃の前に、さす
がのYOSSYも早くもタジタジ。
(……く。バイク乗りとも闘りあったことあるにはあるんだけどなあ。こんなヤツ初めてだ
な、まったく、対バイクの攻略も常識もなんにも通用しないんかい、この人には)
  なんとか決定打を食らわずにやり過ごしてきたYOSSYではあるが、徐々に徐々に鈴香の
精妙かつ豪放な運転術の前に逃げ場を失っていく。
  ヴォンッ!
「なっ…!?」
  一瞬の油断。一瞬の弱気が飢えた鈴香のバイクに脚を噛ませ。
「がっ!」
  脚を噛まれ地にその身を打ちつけ。刹那鈴香が躊躇なく、倒れたYOSSYを見上げる形で
、喰い逸る愛車ハーレーを宥めるようにしながらも、その前に凛と立ちはだかる。

「勝負ありました。これ以上私に手を出さないと約束してくれるなら、私も手を引きます」
(く……)
  屈辱的な思いで緋色の野獣に跨る女猛獣使いを見上げるYOSSY。
  強い。
  さすがはかつて風見ひなたの姉と噂されただけのことも、ジン・ジャザムの必殺技を躱し切
ったと噂されただけのこともあった。このボーイッシュな女性の実力、運転技術は紛れもな
く本物。それに加えハーレー自体の馬力とスピードがまさにケタ違い。己のアイデンティテ
ィといっても過言でさえないスピードさえも上回られ、勝てると思った小回りまでもが、あ
の希な技術に凌駕され。
  おそらく不意打ちでも通用すまい。優勝を職務として誓った鈴香の闘志は、生半可な小細工
ではどうにもなるまい。小細工が得意なYOSSYだからこそ、それがよく解るのだ。
「どうします?  ここで引いておけばお互いにとってプラスだと思いますけど」
  再度投げかけられた鈴香の勧告。悔しさを胸にそれでも。
(それでも………それでも、俺は折れるわけにはいかない。こればかりは)
  そう。L学のナンパ師の名にかけて。
  L学スケベの名にかけて、俺は折れるわけにはいかない。
  最後の賭け。
  凛と誇った鈴香が見せた、おそらくは自分だからこそ気づいた弱点。
  つかせてもらう。僅かに残った勝機に賭けて!
「――鈴香さん」
「はい?」



「白のパンツ見えてるよ」



「な…っ!?」
  ボンッ!
  ヤンチャな少年をも思わせる鈴香の相貌が一瞬にして真っ赤に茹だる。
  想像すらしていなかった口撃にキッと鋭く鈴香が睨む――



――いない?



「いくら大会制服だからって、バイクにミニスカは失敗だろ?」
  僅か一瞬。
  本当に僅かな一瞬に、YOSSYの体躯は雌豹の真横にピタリとついて。
「しまっ……!」
  慌てて逃げんとアクセル回す鈴香だが、もう遅い。
「悪いな。女押し倒させたら俺の右に出る奴いねぇよ!!」



  次の一瞬、鈴香を優しく抱き回し、柔らかな草藁に静かに沈めた。



「勝ったっ」
「……卑怯です」
  御満悦のYOSSYに対し、鈴香は拗ねたかのようにその目を睨む。
「だってなんでもありですもん。それに……」
「なんですか?」
「パンツを見せたあなたが悪い」
  ぱんっ。
  いい終わるや否や飛ぶ、恥じらいと怒りの鈴香の平手。
「さてと、そいじゃルールはルールだし、鈴香さんのビキニ姿の柔肌を〜」
  通常より脆い制服の胸倉を、ぎゅっと掴むYOSSYに、鈴香は顔背け目を閉じる。
「そいじゃ、いっただっきま〜す!」






「まってくださいっ!!」






「え?」
「………?」
  至福の時に水刺され不機嫌なYOSSYと、覚悟を決めていた鈴香の視線が同方向に向けら
れる。
「はぁはぁ、間に合った……」
  その飛び込んできた女性を見、YOSSYの顔色がみるみる蒼白に。
「み、み………南さん………?」
  学園女子寮の管理人であり、L学の事務員、そしてYOSSYの天敵・牧村南。
「鈴香さん、大丈夫ですかっ?」
「……あまり大丈夫じゃないです……」
  天然大炸裂で駆け寄る南に、組み敷かれたまま鈴香は苦笑する。
  その光景を見て、YOSSYは何かとてもすごく猛烈に嫌な予感を感じていた。
「よっしーさんっ」
(ぎくっ!)
  ホラ来たとばかりに、それでもなんとか笑みは残し、錆びた機械のように首を回し振り向く
。
「お願いです。鈴香さんを見逃してあげてくれませんか?」
「い………………い………………」
  これが他の相手なら躊躇いなく「嫌です」で終わらせるところだが、南のその上目の瞳に何
故か彼はすっごく弱い。
「……別に情けはいりませんよ。私は負けたんですから。例えどんな手だったとしても」
  顔を背けたまま鈴香は綴る。
  いらぬ情けは受けたくない。それが彼女のプライドだから。
「鈴香さん……」
「ありがとうございます。でも、いいんです」
  尚も案ずる南に向かい、穏やかな笑みを浮かべ鈴香は感謝を投げかけた。



「だーーーーーーーっ!!  なんかこれじゃ俺がすっごく悪い奴みたいじゃねえかっ!!」
「違ったんですか?」
「違いやしませんけどねえ、これじゃあまりといえばあまりじゃございませんこと!?」
  鈴香のツッコミも入らないのか、頭を抱え喚くYOSSY。
  南の嘆願と鈴香の潔さに、すっかり毒気を抜かれてしまい。
「あーもおやめやめやめ!  いいですもお!  解放でもなんでもさせていただきます!!」
  一気にまくしたてて鈴香の身体から離れるYOSSY。尚も憮然としたままで。
「言っときますけど、情けがどーたらとか言わんでくださいね。俺の意志でやったんですか
らね、俺の意志でっ!」
  ずびしと鈴香に言い放ち、もう未練はあるにはあるけどとりあえずこの場を離れようと――

「よっしーさん、待ってくださいっ」

  南の一言でピタリと止まる。そしてその後振り返る。
「よっしーさん、もし今フリーでしたら…………鈴香さんの味方になってくれませんか?」
『え?』
  鈴香とYOSSYの声がハモる。
「見たところお二人とも味方がいらっしゃらないみたいですし、鈴香さんも部外者ですから
なかなか………お願いできませんか?」
  意外といえば意外という南の提案に、二人して南に目を合わせ、次いでお互い向かい合う。
「あー………そのー………」
  悩むYOSSY。
  もう鈴香ひん剥き計画は頓挫している。味方にしても特に失うものはない。が……
「私は優勝さえできれば、些少のことは気にしません」
「え?」
“ある一つの懸念”が引っかかっていたYOSSYだが、鈴香の意外な一言に戸惑い。
「正直、私に味方が少ないのは事実ですし、勝つためには味方は必要だとも思いますし。お
互い行動自体は自由として、協力し合える時に協力できれば、それで」
「つまりは、同盟ってわけですか……」
「はい」
  YOSSYの抱いていた懸念、それはまぎれもなく“ひん剥きが制限される可能性”。
  しかしそれには干渉しないという鈴香。それならば。
「鈴香さん」
「はい?」
「同盟の件、一つだけ条件……っていうか、お願いがあるんですけど」
「なんですか?」 
「もし、鈴香さんを優勝させることができたなら……」
  そんな自分を真っ直ぐ射抜く、されど優しい鈴香の視線。
  目の前の、快活な女性の視線を受け止め、心に残る全ての思いを、小細工無しで投げかけた。

「優勝させたらビキニ見せて」
「ごめんなさい」










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こんにちは、YOSSYFLAMEです。
そういうわけで今回は、風見鈴香選手の味方となりました。
まあ、味方といっても始終ぴったりいるわけでもないですが。
一応連絡は取り合うことにはしてるんで。
鈴香選手を狙うなら、YOSSYと闘りあうことを覚悟しておいてくださいね(笑)

次あたりでそろそろ剥いちゃおうかと、
主催者の分際で今だ手を汚していないYOSSYでした。ごめんなさい。m(_)m