『どよめけ! ミスLeaf学園コンテスト』 第十二話 〜Unbelievable speedstars〜 投稿者:YOSSYFLAME




「……来たか」
  男は一人、瞑想から己を解放した。
「英志さん……」
  傍らにいる少女が、心配そうに声をかける。
  獲物としての自分自身の身を案じているのか、そんな自分のために身を砕く男を案じてい
るのか。
  微かに不安を見せる少女の頭を、男はそっと撫で言う。
「何も……心配しなくていい」

  がっちゃーんっ!

「どわああっ!  いきなり押すんじゃねえレミィッ!」
「……きしめん、さん……?」
「ハァイ、カエデ!  ネングのミツギドキネ。覚悟するネ!  ゴー、キシメン!」
「ば、ば、馬鹿野郎ぉぉぉぉぉぉぉ……っ!…………………はっ」
  どうみても襲撃者の自分。
  どうみても自分の仲間であろう、楓の敵のレミィ。
  あまりといえばあまりな相手の来襲に言葉のでない楓。
  そして……
「…………ほぅ。要するに貴様は楓の敵な訳だ」
  ギシッ!  
  漢・西山英志の拳が歓喜に軋み。
「ち、ちがう!  誤解だ!  誤解なんだぁっ!」
「ハイキシメン!  ヒデシは任せたネ!  ――ワタシはカエデを倒すカラ!」
「きしめんさん……」
「馬鹿野郎レミィッ!  違う、誤解だ、誤解なんだ、聞いてくれ楓ちゃ――」



「石破エディフェル天驚拳っっ!!!!!」



  きらーん。
  愛と裏切りの妖星・XY−MEN星になる。
  柏木楓をめぐる好敵手・西山英志とXY−MEN。
  だが、今回ばかりは悪いが、彼我の気迫の差があまりにもありすぎたようである。










『どよめけ!  ミスLeaf学園コンテスト』第十二話  〜Unbelievable  speedstars〜










「アララ、キシメン星になっちゃったネ」
  一生懸命XY−MENをたきつけていたレミィも、あまりにあっけない結末に拍子抜け。
「さて。女の服を剥ぐのは趣味ではないが、これも楓のため。……覚悟してもらおう」
  ジリジリと一歩ずつ間合いを詰めていく西山。
  結局やろうとしていることはただのハレンチ行為に違いはないのであるが何故だろう。
  この男がやるとなると、それですらも荘厳な儀式のように映るのは。
  しかしその西山の気迫に晒されながらも、レミィは余裕しゃくしゃくと。
  彼女の余裕に違和感を感じる西山。そして次の瞬間大声で咆えた。
「逃げるんだ楓っ!」

  ビリィッ!

  その瞬間、楓の制服の肩口が、襲撃者によって破られる。
「チッ……惜しかったなぁ……」
  クスクスと笑いながら破った肩口の制服を眺めるセミロングの勝気な少女。
「成程………貴様も肩入れしていたか、広瀬ゆかり」
「まあね。ウチとしてもレミィに勝ってもらいたいし。手伝いの一つくらいはするけどね」
「貴様なら、服を破られる女の気持ちが理解できると思ってたが……?」
「だから、無粋な目のないここで、せめて剥いてあげようってお話じゃないの。それに……
」
  自らのセリフのその途中に、ゆかりが地を蹴り迫る!
「あなただって人のこといえないでしょうにっ!!」
「小癪な!……何!?」
  払いのけんとす西山の平手が空を切る!
「アイツの技パクるのはなんか釈然としないけど、人の技を演じるのもまた女優!


――覚悟っ!“パラノイア・マックス”!」


  リズムに乗ったゆかり変幻自在のフットワークが西山の剛拳をかいくぐり楓に迫る!
「猪口才な、これしきの技!」
「させないネ!」
  バシイッ!
  ゆかりを薙ぎ倒さんとすその腕を、レミィの回し蹴りが払いのける!
「アナタの相手はワタシネ、オーケー?」
「おのれぇ!」
「サンクスレミィ!  もう逃がさない!」
  ゆかりの幻惑フットワークは既に西山の射程外!  狙いはただ一つ、楓のその制服のみ!
「――もらったあ!」



  フッ……



「――え?」
  呆然とゆかりは立ち尽くす。
  確かに捉えたはず。確かに射程距離ピッタリだったはず。それが何故一体……
「消え、た……?」

「楓を甘く見過ぎたな」
「西山っ……!」
  レミィの鞭のような雨のように降りそそぐ蹴りを立て続けに捌きながら西山は笑う。
  その視線の遥か先に、穏やかな笑みを浮かべる恋人の姿を見届けて。
(バカな……瞬間移動?  いえ……違う!)

  ………超…機動……

  彼女の仇敵がもっとも得意とする能力が頭をよぎる。
  しかも今見せた楓のそれは、そいつのものとはケタが違う。
「柏木、楓………あなたは、一体………?」



「そろそろ決着をつけようか」
「……クッ!」
  そして同刻、西山英志vs宮内レミィの闘いも、そろそろ幕を閉じようと。
「レミィ、ダメ!  ここは一旦引いてっ!」
「ユカリのアドバイスでも聞けないネ………ここまでしてくれたお返しは……」
  ゆかりはこの時ようやく気づいた。
  あまりにも強すぎる敵・西山英志を向こうに回した時点で、既にレミィの獣性が目覚めて
しまっていたことを。
「ハアアアアアァァァァアアアアッ!!」
  レミィ渾身の左回し蹴りが西山の首を折らんと疾る――
  ――だが。
「……素質はいい。あとは洗練だけだ」



  ビイイイイィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!



「ア……」
「レミィ……」
  難なく蹴りを捌いたと同時の西山の爪の前に、レミィの制服は四散した。

「負けた、ネ……」
  ゆかりからかけられたパーカーを羽織り、レミィは静かに舞台から去る。
「でも………今度は負けないネ!」
「うむ。私はいつでも待っているぞ」
  腕を差し出し再戦を誓うレミィの掌を、西山は固く握り締めた。










「ぐあああっ!」
「あうあっ!」
  ビシャッ!  ドオッ!
  バシイッ!  ズダアンッ!

「ハッハハハハハハハ!  こんなもんかい、格闘部ってのもさ!」
  フヒュンッ!  パチイッ!
  血に濡れた黒い鞭を宙で鳴らし、豪快に笑い飛ばすレザーの女性こそ、今大会のダークホ
ースとも呼ばれる、仮眠館居候、またの名を――
「あーあ、サラってば調子に乗っちゃって」
「仕方ないですよ。ひさしぶりに大っぴらに暴れられるんですから」

――またの名を、異世界の勇者の右腕、サラ・フリート。



「くっ………」
  周り一面に転がる仲間達の痛々しい姿。
  リーフ学園格闘部といえば、団体戦力でいえば間違いなくトップクラスの実力をもつ集団
。名のあるメンバーが抜けたとしても、その実力は折り紙つきなのだ。
  その格闘部の、しかも精鋭が、こんな……
「僅か3分で12人……」
「ナメやがって………いくら強くたってな……」
「ダメだ!  これ以上突っ込むな!」
  それでも屈しないメンバー3人が猛然と前に出るのを止めるのは、この集団のリーダー。
  そして、格闘部副部長・坂下好恵。
「黙ってろよ、坂下」
「格闘部がここまでコケにされたんだぜ………思い知らせてやる」
「いくら強くたって勝てるわけねえんだ。………たった一人で俺達格闘部に!!」
「バカ!  やめろ!」
  好恵の制止も耳に入らず。意地と誇りを賭けた三人が咆えながら向かってゆく!
「フン。学ばねえ奴等だな」
  そんな彼らをしかしサラは、せせら笑ったまま動く気配もなし!
「ナメんなあ!!!」
  部員達の三位一体の攻撃がサラを襲う!



  フッ!



「き、消えぐはあっ!」
  パアァンッ!
  一瞬と呼ぶのも疑わしい刹那、思いきり間合いを取ったサラの鞭の一撃が、部員の顔面を
したたかに打ちはたく。
(これだ)
  部員の惨状を目の当たりにし拳震えるも、頭はあくまで冷えている好恵。
(いくら奴でも、一人でウチの連中同時に相手にして勝てるはずはない。しかし現実に奴は)
「があっ!」
  ドオオッ……
  韋駄天の如き足回りで駆けるサラの動きについていけぬまま、また一人が沈む。
(理由は単純。結局奴は1対1で闘っているからだ。あのフットワークと呼ぶにも馬鹿馬鹿
しいスピードで周囲を幻惑し、しかも同時に己の間合いを確保、そこから刹那の鞭の一撃。
口で言うのは簡単だ。が、YOSSYでさえウチの部員十数人相手にできるかどうか)
  坂下の唇が驚愕に震える。
(アレより明らかに上回るスピード。そして戦闘勘。一体コイツ何者だ?)

「へっへっへ、いいんだぜ逃げても。俺が用あんのは、そっちの姉ちゃんだけだからよ」
「黙れ………お前なんかに……」
「奴の言う通りだ!  戻ってこい!」
「坂下……」
  懸命に退却を命ずる好恵に、部員は苦笑いを浮かべて言う。
「縁の下の力持ち、ってか、ははっ………、いいから見てろって」
「あんた………やめっ!!」
「ただでは死なねえよ!  奴の引き出しくらいは……こじ開けてやらあああぁぁああ!!」
  咆哮を上げ突進する男。その男を見るサラの瞳の色が俄かに変わり!



「がああああああああああああっ!」
  シュパパパパパパパパパアアアアァァァアアッ!!
  男を中間距離に釘付けにしたままついに出た、サラの必殺、“ウィップ・ストリーム”!
  スコールのように降りそそぐ鞭の嵐に血の霧までもが巻き起こる!

「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
  絶叫を上げ、たまらず飛び出す好恵の瞳に映ったものは――






  ッパアアアァァァァアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!






  トドメである打ち下ろしの鞭の一撃に吹き飛び、皮肉にも好恵の胸に飛ばされた彼の姿。
「オイ!オォイッ!返事してくれ!返事してってぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
  好恵の叫びにもピクリとも。動かず既に彼は意識を失い、見るも無残な面差しに。
「なんで………なんでこんな大会なんかでこんな目に遭わなくちゃいけないんだ……」

「そいつが本気でかかってきたからさ」
  ビクリ。
  向かいからのサラの言葉に、好恵の背中は大きく震え。
「そいつはアンタのために俺の技を引き出そうとした。だから俺はその心意気に応えた。
それがこの結果。それだけのことだ。

……で、アンタはそいつに何をしてやれるんだ?」



  好恵は既に立っていた。
  何も喋らぬまま、何も動かぬまま。
  向かいに在るはまさしく強敵、サラ・フリート。
  俯く好恵の瞳の色は、そのサラにしか決して見えない。












                                               第十二話での脱落者………宮内レミィ


=========================================

というわけでYOSSYです。
霜月さんの伏線を解消させていただきました。
結果はあの通りでしたが、いかがでしたでしょうか?
結構、レミィと広瀬が頑張れたんじゃないかなとは思ってますが。
それにしても、あれじゃきしめんさん、全然本来の力出せませんよ(笑

そして繰り広げられるサラ組vs好恵組の激突!
この結末は、みなさまにおまかせいたします!



では、失礼いたします。