Lメモ他伝act6 『ほんのささやかかどうかは非常に疑問な日常』 投稿者:YOSSYFLAME




『こんびに』


  がーっ。
「いらっしゃいませー」
「を、水野くんお疲れー」
  知り会いのバイト店員に挨拶して、YOSSYは軽く店内を物色します。
  今日は休日。小腹もすきます。
  弁当棚でにらめっこ。今日は何を食べようか……

「こちらのからあげべんとうがおすすめですー、ねだんがとってもりーずなぶるですー」
「このまくのうちは、いまがしゅんでとってもうれているのですー」
「なつばてにはすたみなとうがらしべんとうをおすすめするのですー」
「あとなつのよながには――」

「電器店じゃないんだからいちいち説明せんでもいーっての」
「むー、おしえてあげたいのですー」












『こんびに2』


「うっしゃ、こんなもんだろ。と……やっぱ読みながら食うのが乙だよな」
  幕の内弁当と緑茶と雑誌をカゴに入れて、ささやかな楽しみの準備をします。
「水野くん、これお願い」
「あっためますかー?」
「うん。悪いね」

  ちーん。

「あっためましたですー」
「を、見事にあったまったな。……って、雑誌熱してどーすんじゃあああああああっ!」












『らーめんや』


「いらっしゃいませですー」
「…………なんでお前がここにいるんだよ」
「あるばいとですー」
「いや、アルバイトはわかるんだけどね」
  バイト王座24回連続防衛中の理緒ちゃんじゃあるまいし。
  そう思いながらも、背に腹は代えられません。
  早速カウンターに座ると、おもむろに注文をはじめました。
「んじゃ、チキンラーメン一つね」
「はいですー」



  ……1時間経過。



「……水野くーん」
「はいですー」
「チキンラーメンまだかなー?」
「それなんですけどー」
「……?」
  なにやらおどおどした様子の水野くん。ちょっと気になり厨房を覗いてみます。
  するとそこには……

「ほうちょうがこわくてねぎがきれないのですー」
「あぁ?」

  魔王の牙なんつー物騒なものを嬉々として振り回していたくせに。
  そう思いながらも、かわってあげてネギを切り刻みます。

「っしゃ。これでいーだろ」
「あのー」
「なんだよ」
「ひをつかうのがこわいのですー」

  おどおどびくびくの水野くん。
  その時YOSSYは感じました。何かすごく猛烈に嫌な予感を。

「あのさ、水野くん」
「きゃるん?」
「まさかこれで、“チキン”ラーメン、だなんて言わないよね?」
「……き、きゃるんっ」
「み、ず、の、くん?」






  ずばっしゅ。
「こんなおちでながながとひっぱったてんばつですー」












『図書館』


「おーす風見、鈴香さんは元気か?」
「なぜ僕があの女の近況を知ってなければいけないんですか」
  カウンターに座る風見くんは、なぜかとっても不機嫌です。
「まあそれはそれとして、なんか面白い本入ってないか?」
「ふん。貴様はこれでも読んで情操教育をやり直しなさい」
  ぽんっ。
  その手に渡されたものは、子供向けの童話でした。
「白雪姫?  なんで今さらこんなもん読まなきゃいけないんだよ」
  しかし風見くんは、もううんともすんともいいません。
「ったく。いいよ、ことのついでで読んでやる」
  そういってイスに腰を下ろし、早速読み始めました。






  むかしむかしあるむかし。
  しらゆきまぎといった、たいそうきれいなおひめさまがいたそうな。



「……なんだ、これ?」



  しらゆきまぎはそのうつくしさとかれんさで、たちまちくにじゅうのひょうばんになっ
たとさ。

  ところがところが、そんなしらゆきまぎにしっとするものもおったとさ。

【おのれしらゆぎまぎめ、わがでぃーぼっくすさまのびをおびやかすものめ】

  ぐつぐつぐつぐつ。
  まったくみゃくりゃくもないようななべのにだちがひびくなか、じゅじゅつしこうみは
おこっていました。

【こうなったら、しらゆぎまぎにはきえてもらうしかありませんね】

  いっつもいっつもおもうのですけど。
  どうしてむかしばなしのあくやくって、こうもたんらくてきなのでしょうか。
  まあそれはおいといて。
  さっそくまほうつかいこうみは、しらゆぎまぎのもとへむかいました。

【しらゆぎまぎ、しらゆぎまぎ】
【はい。なんでしょう、おじいさん】

  おれはまだじゅうはちだこのあっぱーむすめが、とおもいながらも。
  こうみはえがおをけさずにりんごをさしだしました。

【このりんごをあげよう。おなかいっぱいたべるといい】
【じぇりーず、どくみして】

  ほんにんをめのまえにしてどくみをさせる。さすがといってさしつかえないでしょう。
  そのりんごをたべたじぇりーずは、ころっとたおれてしまいました。

【ふっふっふ、あいにくでしたね。ぼくにどくさつなどつうようしませんよ。しゃりっ】
【……あ】

  なにやらまぶしいえがおをうかべながらりんごをかじってしまいました。
  ばたっ。
  しらゆぎまぎはそのままたおれてしまいました。



【しらゆきまぎーしんじゃいやだよー】
【しらゆきまぎー】
【えーんえーん】
【だれかしらゆきまぎをたすけてよー】

  もはやなにもかたることのないしらゆきまぎを、たくさんのじぇりーずがかなしみまし
た。
  しかしはたからみると、したいにくらげがたかってるようにしかみえません。
  とうぜんそんなぶきみなこうけいにちかよるものもなく、なのかななばんたったあるひ。

【にゃはは〜☆  せいぎをたすけあくをくじく、あおきがっしゅさんじょう〜☆】

  そのとき、てぃーぴーおーをまったくわきまえないちょうしでおうじさまがあらわれま
した。

【じゅうしゃゆうかちゃん、このこどうすればなおるかなあ】
【えっと、おそらく、あの、その……】
【ゆうかちゃんっ】
【でも、こんなことしていいのかしら。ひとのねこみをおそうなんて。きゃっ】
【ゆうかちゃん、おしえてよ〜】
【でも、ひとにはえらぶけんりってものもあるし、でもいまはせいめいをそんちょうし
なければいけないし、ぷらいばしーのけんりもそんちょうされるべきだとおもうし……】



「……これだけで10ページ使ってやがる……」



【わかった〜☆  このおひめさまにきすをすればいいんだねっ♪】
【ああいいのかしら。そんなよばいだなんて。ふぁーすときっすはだいじなものなのに】

  いまだにかっとうしているゆうかをおいといて、れいこおうじはまぎのくちびるにそっと……

【きゃあんっ☆  はずかしくてできないにゃん☆
でも、このこのいのちのためにはがんばらなくちゃいけないし……
でもわたし、これがふぁあすときっすだし……ううっ、よわいこ、れいこにゃん。
でもがんばらなくちゃいけないし……ゆうかちゃん、ちからをかしてよ〜】
【けんぽうだいにじゅうごじょうでは、ひとはだれもがけんこうでしあわせなうんぬん】
【ゆうかちゃ〜ん】



【てめえらいつまでまたせやがるいいかげんにしやがれこのあっぱーむすめがぁぁ】
【きゃあんっ☆】
【もうてめえらにはまかせておけん。てめえのことはてめえでかいけつするわー】

  しらゆぎまぎはそういっておうじさまをおしたおし、それから、あの、その、えっと……






「……ここで終わってやがる。ったく、なんなんだこの話は。
誰だ、こんなヤマもオチもないあーぱーな話考えたヤツはっ」
「ごめんなさい……」

「………!」
  どこかで聞いたようなその声に、YOSSYの背筋が凍りつきます。
「ゆ、ゆ、ゆ、ゆ……夕香さんっ!?」
「ごめんなさい………私、やっぱり才能がないんですね……」
「いえ違いますって!  そりゃ、ちょっとメリハリがやや少しだけ、あの、そのっ……」

「最低ですね」
「夕香ちゃんいじめた〜」

  さらに追い討ちをかけるように、2人の悪魔がやってきて。
「は、隼っ!?  と、玲子さんっ!  違う、誤解だ誤解っ!
いや、きゃらくたーはかがやいてましたし、じょうけいもぐっどでしたし、えもさいこ
うでしたし、そりゃあもうみらいにはばたけるそしつはもうばりばりで……」
「知ってます?  アーティストってすごく繊細なんですよ」
「せっかく夕香ちゃんの新しいちゃれんじだったのに〜」
「いえ、いいんです。もう……」
「だーかーらー!  違うんですってばーーーーーーーっ!」






この日、夕香さんが立ち直るまでに、彼が多大な犠牲を払ったことは言うまでもない。
教訓――

――――口は剣より強し。されど時には自刃となりて。











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コンビニ行った時にネタが収束しました(笑