Lメモ他伝ACT7 「鈴香の受難」 投稿者:YOSSYFLAME




「うわーーーーっ!  運送屋が来たーーーーーーーーーっ!」
「逃げろーーーーーーーーーーーーーっ!」
「俺はまだ死にたくねーーーーーーーーーーー!!」



  ヴォンヴォンヴォン、ドゥルルルルルルル……!

  Leaf学園キャンバス内の、阿鼻叫喚の叫びをバックに、今日も走るは風見鈴香。
『真心運ぶペンギン便』をキャッチフレーズに、恐怖と混乱を運ぶ彼女。
  バキバキグシャアッ!どんがらがっしゃーん!
「こんにちはー!  真心運ぶペンギン便でーす!
えーと……はい、姫川琴音さんですね。
立川さんから油絵セット、お届けにまいりました」
「あ、はい……」
「じゃ、ここにサインをお願いします」
「はい……」
  乱入時とはまた違った物腰のやわらかさ、それもまた彼女の魅力の一つ。
「ありがとうございました。
それじゃみなさん、どうも失礼しましたーーーーっ!」
  ギュロロロロロロ………ベキグシャバキバキイッ!

「……確かに、悪い人じゃないんだろうけど……」
「なんつーか、その……」
「世の中には玄関とゆーものがあると、アリストテレスも言ってることだしなあ……」






「ふーっ、あっつ……!」
  所かわって学園の日陰。
  鈴香がバイクを止めて一人、木にもたれかかってうだっている。
「最近の猛暑っていったいなんなんだろ……まったく……」
  当然の事ながら彼女の仕事は、学園だけで済むはずがない。
  その範囲は街中、隣町……
  県(?)を飛び出すことさえも、何も珍しいことではない。
  今回はとりあえず宅配バイクで周っているのだが、それだけに猛暑が身にしみる。
「うわぁ……びちゃびちゃ……」
  木陰にいて少しは冷めたのだろう。冷え切った汗を吸った衣服が肌につき、なんとも
いえず気持ち悪い。
  誰しもがわかる不快感を感じていた鈴香の目に、替えの制服のバッグが留まる。
「どこか……着替える場所ないかなぁ……」
  宅配業をバリバリこなし、“ミス・ノーブレーキ”と謳われる鈴香とてやはり女。
  着替えられるものならば着替えてさっぱりしたいのが、やはり女性の心理。
  そんなことを思ってキョロキョロしていると、目の前を一人の女生徒が横切る。
「あの……すみません」
「はい?」
「すみませんけど、着替えられるところどこかありませんか?」
「ええ、構いませんよ。ささ、こっちです」

「ここなら誰も来ませんから、安心して着替えてください」
「ありがとうございます。少しだけお借りします」
  女生徒に案内されるままに、無人の体育倉庫に入る鈴香。
  閉じられた扉のその外での、その女生徒の薄笑いを、不幸にも彼女は気づかなかった。






「まったく……授業にくらい、きちんと出てほしいものですけどね……」
  彼にしては珍しくいらつきながら、外を走るはT-star-reverse。
  彼らの次の授業は柳川教諭の物理なわけだが、そこにいなくてはならないYOSSY
FLAMEが、授業が始まっても姿を見せない。
  柳川教諭の授業をサボることは、是即ち死へと繋がる。
  そういうわけで、なんとか柳川を言いくるめ、YOSSYを呼びに駆け出したという
わけだったりするのである。
  すれ違った隼魔樹から、YOSSYの居場所は運良く聞けた。
  傀儡を使いたいところではあるが、以前YOSSYにめいっぱい落書きをされたとい
う前歴があったりするので、彼に対してはあまり使いたくない。
  そうすると。
「おおかたぐっすり寝てるのでしょうが……仕方のない人ですねえ……」
  自らの足で倉庫に向かい、ややいらついたそのままに、彼は扉を開け放った。












  その彼の目に焼きついた姿に。
  白く小さき布のみ残りし、肌も露な彼女の姿に。
  彼女が悲鳴を上げる間もなく、彼は音を立て地に伏した。












「ち、ちょ………大丈夫ですかっ?  しっかりしてくださいっ!
暑さでやられちゃったのかも………しっかりしてくださいっ!!」






  極度の女性裸身恐怖症であるティーの特質を、初対面の鈴香は知るよしもなく、
  携帯で駆けつけた河島はるかの説明で、なんとか事無きを得ることができ。

  そして、この一連の騒ぎにも目を覚まさなかった騒動主・YOSSYFLAMEは、
  当然ながら柳川の手で、真夏の三途の川に叩き落とされたことは言うまでもない。



  ――真心こもる宅配娘・鈴香の小さな騒動記。






















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こんにちは、YOSSYFLAMEです。

仕事から帰ってきたものの寝付けずに、こうなったらLメモ書いちまえとばかりに
書いた一本です。
鈴香さんの魅力が伝わってくださったなら、嬉しいです。

猛暑が続きますが、みなさま、お体には十分留意して、過ごしていただければ幸いです。