Lメモ・学園男女混合テニス大会! 第72章 「決勝トーナメント、組み合わせ決定!」 投稿者:YOSSYFLAME




 学園男女混合テニス大会。
 長く長く、ほんとーに長く続いた各ブロック予選も、TaS&電芹組が決勝トー
ナメント最後の椅子を勝ち取り、ひとまず終止符が打たれた。
 今やすっかり日も落ち、煌々と照明に照らされるLeaf学園テニスコート。
 小雨の降る中、ちらほらと会場を後にする生徒の姿も見られる。
 しかしそんな中、大部分の生徒達は未だに離れず残っていた。
 コートに設置された舞台から、目を離すことなく――

『さぁ! それじゃいよいよ、決勝トーナメントの抽選会をはじめるわよ〜!』







『えー、テステス、マイクテス』
「あほー」
「始まってからマイクテストやる奴がどこの世界にいるんだよー」
『ここの世界にいるのよっ。文句ないでしょっ』
 相も変わらずの独断専行ぶりを発揮するのは、ご存知本家・長岡志保。
『えー、本抽選会から決勝トーナメントまでは、理奈センセに代わってこのあたし、
志保ちゃんがお送りいたしますわね〜!』
「どーゆー日本語だー」
「雨降ってんだからとっとと進めろー」
『それじゃあ景気付けに一曲――』
 ごんっ。
『……わかったから早く進めなさいな』
「理奈センセー、代わりに実況やってくれー」
『なんですってえ』
『ふふっ、みんなありがとうねー!』
 手を振りながら歓声に応え、舞台から降りる理奈。
 そして志保が一人、マイクを持って壇上に立つ。
『ぶらーん、にゅーっ、は〜♪』
 ごんっ。



『……そういうわけで進出チームにはあらかじめ予備抽選を行ってもらってるわ。
 決勝トーナメントの抽選は、この予備抽選の順番でやっていくわよ〜
 では! 予備抽選ナンバー1! EDGE、ハイドラント組ぃ!』
「……呼んだか」
『うひゃうっ! び、びっくりさせないでよっ』
「要するにクジを引けばいいのだろう……」
(いきなり背後から出てきて無愛想な奴ね)
 志保の心中も構わず、無造作にクジ箱に手を入れ係(吉井)に渡す。
 その一部始終をセリス、岩下信らジャッジ。きたみちもどるら校内巡回班が目を
光らせて監視している。――そう、イカサマか否かを見極めるために――
(まぁ、一番目にクジ引いてイカサマも何もないんだけど)
 巡回班のハッピを羽織りイカ焼きを頬張りながらぼそりと呟く斎藤勇希。
 その間に吉井が封筒を切りクジを取り出し、口を開いた。
『EDGE、ハイドラント組……第4試合、B!』

「ふーん、ラストってところがまた思わせぶりね。ね、予選で敗れたぁ、兄様?」
「……五月蝿い」
 仏頂面の西山英志の隣でにやにや笑っているEDGE。
 しかしこの二人、なんのかんので結構仲がいいのかもしれない。

『続いてぇ、予備抽選2番! 
 XY−MEN、篠塚……じゃなかった、レディーY組ぃ!』
「おっ、XY−MEN先輩ってばなんか知らないけど勝ち上がってきたのよね。
 優勝しちゃったらどうするんだろうねぇ、予選でぇ、アフロにぃ、敗れた兄様?」
「……ぬうぅぅううう……」
 辮髪のため剥き出しのこめかみに青筋立ちまくりの西山をよそに、吉井のアナウ
ンスが会場に響く。
『XY−MEN、レディー・Y組……第1試合、B!』

「……決勝、ですね」
「……………」
 長身の黒装束の男・神海を従える女性・篠塚弥生は何も言葉にはしなかった。
 ただ、XY−MENが引いて決まった組み合わせ表を、見つめるのみだった。



(決勝戦が始まるまでは間が空くが、決勝戦が始まってからの試合間隔は短い。
 となると、戦力的に余裕がある間に直接対決しておきたい。
 ……決勝ではお互い全力でぶつかれないかもしれないからな)
 同じく組み合わせ表を鋭い眼で睨むように見据える悠朔。
『それでは予備抽選3ばぁん! 悠&来栖川綾香組ぃっ!』
 特捜部同僚のやかましい実況に若干煩わしさを感じながら、悠は舞台に――

「ここは私に引かせて、ゆーさく」
「あ……綾香?」

(む……?)
 ハイドラントも面食らう。
 会場のざわめきをかき分けるようにして進む少女は、今ここにいないはずの少女。
 大会中負った重傷で来栖川系列の病院に運び込まれたはずの来栖川綾香が……
『なんでここにいるわけ? あんた』
「なんでって、勝ち残った選手だもの。いてもおかしくないでしょ? それに……」
 痛々しく固められ巻かれた右腕のギプスや頭の包帯。
 しかしそんな雰囲気を全然感じさせずにさらっとクジを引き、吉井に渡す。
『悠朔、来栖川綾香組……第2試合、A!』

「やっぱり私的に、自分の相手は自分で決めたいってね」
 組み合わせ表に背を向けて、舞台から見える全員に、綾香は不敵に微笑んだ。 

(……ふ。悠と綾香か、XY−MENと弥生さんかは知らんが、どうやら決勝まで
お預けということだな……)
 舞台の綾香に背を向けて、ハイドラントはその場を立ち去る。
(……これも一興……)
 突き刺さる、悠と弥生、そして綾香の、それぞれの視線を背で受けながら。



『TaS、セリオ@電柱組…………第4試合、Aっ!』
 どんがらがっしゃんぐしゃどっぎゃーーーーーーんっ!!!



『さぁさぁ続いては予備抽選5番っ! T-star-reverse&松原葵組よ〜っ!』
「はいっ!」
 礼儀正しく元気よく、アナウンスに大声で返事して舞台に向かう、松原葵。
 何もかも見なかったことにしてそそくさと立ち去ろうとしていたハイドラントが
EDGEにしばかれているその横を、緊張したような面持ちで葵は歩いてゆく。
「お願いしますっ!」
 迷いなくクジを引き、封筒を吉井に渡す。
(お願いします……綾香さんと……第2試合を……)
 封筒を開けられて読まれるまでの間、葵は一心に祈っていた。そして。
『T-star-reverse、松原葵組…………第1試合、Aっ!』

(あっ……)
 一瞬、がっかりしたような表情を見せたものの、
(準決勝かぁ)
 両拳をぐっと握り締め、顔をあげ、光を取り戻す葵。
 そう、このクジの結果は決して悪いものではない。
 お互いたった1勝するだけで、準決勝で綾香と出会えるのだから。

(まぁ、その1勝というのが、とてつもない難関なんですけれど)
 観客席で見ていたT-star-reverseが、心中呟く。
(……しかし)
「ティー?」
 隣の佐藤昌斗がいぶかしげに友人を見つめる。
 ティーは見てしまったのだ。準決勝、対綾香戦に葵がどれほどの意気込みを持っ
ているのかを。
 そんなものを見てしまったなら、彼としては後に引く訳にはいかない。
(申し訳ないですが、準々決勝……勝たせていただきます)
 向こうに陣取る弥生に対して、彼にしては珍しく、鋭い視線を投げかける。
「……………」
 ティーの視線を受け止めつつも、少々苦々しげな表情を、弥生は浮かべていた。



「サテ、そーなるとアヤカと当たるのは、ワタシたちネ」
「へぇ、レミィってそんなに綾香さんにライバル意識持ってたっけ?」
 意気込むレミィに悪戯っぽく、広瀬ゆかりが声をかける。
「アハハ、まぁ、グランドチャンプと対戦シタイ。ソーユーのはあるかもネ」
 手をパタパタ振りながら、抽選会場に向かうレミィ。
(強いものと当たりたい、ねぇ。それだけなのかな)
 そんなレミィの後姿を眺めながら、ゆかりはちょっと考えていた。

『とーる、宮内レミィ組…………第3試合、Aっ!』
「オー」
 決まった瞬間肩を竦めるものの、そこはレミィ。
 Bブロックの組み合わせを見て、また胸を躍らせる。
(マ、コレハコレデ面白いゲームができそうだけど、ネ……)



「よしっ!よしっ!」
 レミィの組み合わせが決まった瞬間、小さくガッツポーズをする柏木梓。
 そんな梓の思惑など、菅生誠治や保科智子など工作部プロジェクトには筒抜け。
『それでは予備抽選最後!7番! 菅生誠治、柏木梓組ぃ!』
「余り物には福があるってねえ。いっちょ決めてくるよ、誠治!」
「おう、頑張ってこいよー」
 のっしのっしと肩をいからせて、気合を漲らせて梓は舞台に向かう。
「わからんなぁ、わざわざ強敵と当たりたいその神経が」
「強敵だからというわけじゃないだろうさ。梓と綾香の関係は特別らしいからな」 
 智子の呟きに誠治が答える。
「それにどのみち、レミィ組もかなりの強敵。
 ならむしろ、テンションが高まるほうと当たってくれたほうが、俺も楽だから」

『それでは柏木選手、クジ引きをお願いします』
「……………」
 抽選箱を目の前にして、梓が唸っている。
 残る封筒は、たったの2枚。
 どちらかの封筒には、梓が望みに望んだ、綾香との対戦切符が入っているのだ。
(もう一度、綾香と……)
 校内エクストリーム大会・素手部門決勝戦。あの全てがフラッシュバックされる。
 その右腕に願いを宿らせ、今……
(頼む……今一度……!)
 バキィイイイッ!!
『抽選箱壊すなあああああああっ!!』

 木っ端微塵に砕け散った抽選箱と机。
 どうやら願いと一緒に鬼の力まで宿らせてしまったようだが、
「あ……」
 二枚の封筒がヒラヒラと宙に舞っている。
 そのうちの一枚が、梓の手の平にふわりと落ちる。
「――これだ!」
 直感。エルクゥの血のなせる業というべきものなのだろう。
 封筒を吉井に渡すのも忘れ、封を開け、中を取り出し、そして――

「よっしゃあああああああああああああああああああああああっ!!!」

 歓喜の咆哮と共に、クジを持つ右腕を掲げ上げ、観衆に中身を見せつける。
 その中身には紛れもなく“2−B”。そう大きく書かれてあった。



(なるほど。こっちの相手になったか。
 ……ふむ。なるほどね。ふふふふふふふふふふふふふふ。……面白い)
 壇上の梓を、悠は愉快そうに見据え、笑みを浮かべていた。

「梓」
 いつのまにか壇上に、来栖川綾香が上がっていた。
 ギプスと包帯姿のそのいでたち。
 しかし、少しも痛々しく見えないのは、綾香の気迫によるものだろうか。
「エクストリーム大会・決勝の再現には、ならないよ」
 綾香に向かい、はっきり梓はそういった。
「あのときよりもいい試合をしてみせる。そして、今度は私達が勝つ!」
「同感。だけど結果は変わらない。梓、今度も勝たせてもらうからね!」
 梓と綾香。二人、心からの笑みを浮かべていた。
 どちらからともなしに握られた、掌と掌を、お互い、強く、熱く握り締めて。












 学園男女混合テニス大会・決勝トーナメント組み合わせ。


 準々決勝第1試合
 T-star-reverse&松原葵組 vs XY−MEN&レディー・Y組。

 準々決勝第2試合
 悠朔&来栖川綾香組 vs 菅生誠治&柏木梓組。

 準々決勝第3試合
 とーる&宮内レミィ組 vs Hi−wait&月島瑠香組。

 準々決勝第4試合
 TaS&セリオ@電柱組 vs EDGE&ハイドラント組。


                                      









「って、なんで僕達がこんな隅なんだ。クジも引けないし」
「それは……ほら、私達暗躍が大会主催者だから、辞退したんですよ、きっと」
「勝手に辞退するなよ全く。おまけに緒戦が共食いマッチだし。
 あーあ、無能な上司が上にいると実働部隊が苦労するぜ、まったく」
「は、Hi-waitさんっ!」
「あー?」

 ごんっっっ!!!

「無能な上司で悪かったわね。えー?」
「か、香奈子さんっ、消火栓で殴るのはさすがにまずいかも……」
(……準決勝まで上がって来い。俺の名にかけ貴様等の命の炎、消し尽くしてくれる)
「おー、簀巻き」

「ということで、決戦は一週間後! 
 私もHi-waitさんもみなさんもがんばります! みなさん、応援してくださいね!」
 











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 えー、YOSSYFLAMEです。
 この組み合わせは、5月17日にチャットで行われた抽選会に準拠します(笑

 あと、瑠香ちゃんがいっているのは、Lメモ時間の一週間後です。
 この一週間の間、特訓LやライバルL、敵対Lなど、書いて頂けると嬉しいです。
 ていうかネタが枯渇気配なので(笑 お願いいたします(笑
 全体掲示板でも書きましたが、別に進出者8チームに絡める必要もありません。
 書いてくださったシチュエーションなどは、できる限り反映させていただきます
し、そうでなくとも、どこかで書かせていただこうかと考えていますので。
 便乗大歓迎です(笑

 で、次回のテニスL執筆はおそらく6月末〜7月頭になると思います。
 なんかかなり長くなってしまいましたが、
 これからもテニスL、よろしくお願いいたします。