Lメモ自伝 act1 第12話 「See you again」 投稿者:YOSSYFLAME
今日も闘い覚めやらぬリーフ学園。
学園2年、YOSSYFLAMEにとってもそれは例外ではない。
無論今も。
しかし、今日という日はどこか違った。
目の前に立ちふさがる風見ひなたを見て、しかしながら余裕の笑みを浮かべるYOSSY。
何か勝算があるのか、いぶかしむ風見。
パートナーの赤十字美加香をカタパルトにして大空高く舞い、
得意技・外道メテオをぶちかます。
数発被弾しながらも接近戦を挑むYOSSY。
木刀と杖での痛烈な打ち合いの後、間合いをあけ離れる二人。
と、間合いを空けた瞬間、風見が凄まじいダッシュで瞬時に間合いを詰めにかかった。
好機!
YOSSYは懐に入れていた右腕を一気に開放した!



「ファイナルガールすごいぜさおりんと祐くんのキスシーーーーーーーーーーーーーーンっっ!!」



「な、な、・・・あああああああああああああああああああああああ!!!!!」
頭を抱えて苦しみのたうつ風見。
ふっ、当然。
男の嫉妬心が許容量をはるかに飽和した時、人間は致命的なダメージを受ける。
「なんてことするんですかーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
げしいっ!
いきなり美加香にパンチを食らって吹っ飛ぶYOSSY。
「痛いな美加香ちゃん。」
「痛くないっ!  それよりも、どうしてくれるんですか!?」
「心配しなくても。あの写真、どうせデコイくんに頼んだ合成写真だから。」
「そーゆー問題じゃないんですっ!」
汗みどろに場をしのごうとするYOSSYに食って掛かる美加香。
だが、
こんなささいな出来事が――






Lメモ自伝  act1  第12話 「See  you  again」






――翌日、放課後。

「あーーーーーーーーーーーっ、それにしても昨日はいい日だったなあ〜。
風見には完勝するし、今度は違う手で違う奴にやってみようかな〜」
合成写真という卑劣な手で勝っておきながら何抜かすYOSSY。
「さてと、今日は格闘部の日だったかな、そいじゃそろそろ行こうかね〜
・・・・・・・・・・・ん?」

どんっ。

「・・・と。」
突然の衝撃。
「って、・・・ん?」
胸に誰かがぶつかった手応えを感じたYOSSY。
ふと下を見ると、
「あいたたた・・・。」
女の子?  しかも結構かわいめのっ!
そう思った時のコイツの行動の早さは並ではない。
「大丈夫?」
「大丈夫じゃないわよ〜〜〜、あたたたた・・・」
YOSSYが差し出した手をしっかりとつかみながらも、言うことはずけずけという。
「・・・可愛い。」
「・・・え?  え?」
思わず口に出た賛美の言葉に意外にもうろたえる少女。
いける!?
この初々しい反応といい、これは久々の大ヒットかもっ!
「ごめんな――」
といいながらその少女のブレザーの埃を払ってやる。
誤解の無いよう言っておくが、決して変なところなど触ってはいない(笑)。
「――お詫びっていったらなんだけど、これから俺に何かおごらせてくれません?」
「!!!」
突如ぱあっと表情に光が灯る少女。
「ほんとに?  ほんとになんでもおごってくれる?」
「あんまり高いものでなければおごらせてもらうよ。」
「わーい!  やったぁー!」
思いっきりバンザイして身体中で喜ぶ少女。
そんな彼女を、しかしながらやや苦笑気味に見つめながらも、
右手は財布の漱石さんの人数を触感で確認している。
ちなみに貧乏学生のYOSSYには、諭吉さんや稲造さんはめったに会いに来ない。
まあ、漱石さん’sのコンビネーション攻撃ならば多少の無理はきくだろう。
今日は目の前の純粋無垢そのものの少女のために大盤振る舞いをしてやることにしよう。
「あ、俺は2年のYOSSYFLAMEって言うんだけど・・・君は?」
少女はひまわりのような笑みを浮かべ、

「あたしはひかげ!  ・・・風上日陰っていうの!」





――・・・・・。

「――ふ。」
「あら、何を見て笑ってらしてるんですか?」
「・・・あの男は、女がいれば地獄すら楽しみそうだな。」
「ふふ、確かにそうですね。」






――某市内・某商店街。

「うーーーーーーーーーん、しあわせ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ♪」
すでに5杯目のフルーツあんみつをたいらげたあと、おもいっきり身体をのばして
おもいっきり至福の笑顔を振りまく、風上日陰なる可愛い少女。
しかもその横にはパフェの容器が4つほど堂々とそびえたってると来たもんだ。
「ねーねーよっしーさーん、よっしーさんは食べないの?」
「(あんなあ、俺の懐具合もう少し考えろよアンタ)」
などということは当然おくびにも出さずに、優しげな笑みを日陰に向けながら、
「(こりゃまた、第二購買部あたりでヤバイバイトやらなきゃなんねーな〜)」
パフェの容器を慎まやかに1つだけ横において、紅茶などを飲みながら、ふとそんなことを――
「よっしーさん♪」
「(・・・これだよ。)」
どうも彼女の笑みには弱い。
しかし、それとはまた別の何かを感じる。
なんて表現すればいいのか、こういうタイプの女の子は初めてではなかろうか・・・
「不思議な娘だなあ・・・。」
「え、なんか言った?」
「うん、不思議な魅力の娘だなぁって。」
「ふ〜ん・・・」
上目遣いの可愛い視線でYOSSYの眼を覗き込んでくる日陰。
「ねー、それって可愛いってコト?」
「ま、そゆことかな。」
ニュアンスは多少違ってるが、まあそういう事には違いあるまい。

ぎゅっ。

「・・・・・!」
柔らかい胸の感触。
少しばかり斜め下の無邪気な笑顔。
「ねーよっしーさんっ。」
「ん?」
「向かいのアイスクリーム屋さんでアイス買ってくれる?」
一点の曇りもない顔でアイスをねだる日陰。
・・・真面目に来月の家計を考えなきゃなあ・・・(汗)



――ショーウィンドウの向こう側。

「わーーーーっ、綺麗・・・」
純白のウェディングドレス。
それをまばたきする時間すら惜しいかのように目を輝かせて観ている日陰。
「(やっぱり女の子なんだなあ・・・)」
そんな彼女のことを考えながら、YOSSYは後ろに立つ。
出会って早々いきなり、人の財布の中身を甘味処で食いつぶしてくれた女の子でも、
こういう姿を見ていると、つくづくそう思う。
「ねーよっしーさんっ。」
「ん?」
YOSSYの腕に腕を回しながらにこやかに微笑む日陰。

「これ買って♪」

ずしゃあ!
思わずもんどりうって転倒してしまうYOSSY。
「あ、あのね、ちょっとそれは・・・」
「あははっ!  心配しないで!  冗談だからっ♪」
冗談なのか・・・
心底びびったぞ今のは。
「いくらなんでも、そこまでお金があるとは思えないもんね〜」
よくわかってるじゃないの。

「あたしは、着れないのかなあ・・・」

?
一瞬、顔を曇らせながら呟く日陰。
その顔の真意を取り違えたまま、YOSSYは日陰の肩を、ぽんっ、と叩き、
「何言ってるんだか、日陰ちゃんなら心配ないよ、可愛いし面白いし、
きっと、日陰ちゃんを幸せにしてくれる人が現れるからさっ!」
と、一応フォローらしきことをしてみたりするYOSSYに対し、
「うん・・・そうだといいね。」
少しばかり寂しそうな笑みをこちらに向ける日陰。
「・・・日陰ちゃん?」

「死ねバーカ!」
「この腐れ蛆虫野郎が!」
と、にわかに喧騒が巻き起こる。
何の気なしに遠くから眺めるYOSSY。
そこでは、
一人の学生が数人の同じく学生により殴る蹴るの暴行を受けている、まさにその最中であった。
しかも、屈辱的な身を切るような言葉を受けながら。
それが明らかに常軌を逸している行為であることは一目瞭然。
まわりの人間は見て見ぬふりをしてはいるが、これだけ派手にやっているのだ。
そのうち警察が来て、ちりぢりに逃げてしまうに決まっている。
「(ツラぁ覚えといてやるか・・・)」
YOSSYの眼に殺意が宿る。口元が狩りの期待に歪む。
「(ま、いくらなんでも殺すのは可哀相だから、全治3年くらいで許しといてやるかな?)」



『・・・永遠の煉獄に消えよ。』



「(何!?)」
凄まじい殺気を背中から感じた一刹那。
ぐしゃあっ!
断末魔をあげ奴等の体が四散する。
あまりに信じられない光景を突如目の当たりにして声も出ない。
まわりの野次馬の悲鳴と喧騒の中、別世界にいるように立ちすくむYOSSY。
その視線は、既に醜い肉塊と化した醜き男達にはなく、
ただ一人、変わらぬ無邪気な笑みでこちらを見つめている美しき少女に向けられていた。
怒りも恐怖も悲しみもない、ただ、視線が。



――近傍の公園・黄昏時。

「やっぱりわかっちゃったんだ。」
「ま、あれだけまわりが恐怖一色になってる所に、一人だけニコニコ笑ってればそりゃわかるさ、
・・・誰が殺ったかぐらいはね。」
夕日に照らされている公園の少し錆び付いたブランコ。
二人はそれに座っていた。
「あたしのこと、嫌いになった?」
「・・・・。」
やや寂しげな笑み。

「いーや、別に。」
「なんで?  人間ってのは、同じ人間を殺すのはいけないんじゃないの?」
「ま、そーゆーことにはなってるな。」
意外な返答にやや戸惑う日陰。
自分のことを毛嫌いするような態度でもなければ、露骨に怖がってもいない、平常そのものの態度。
「・・・ワケ、あるんだろ?」
「!」
「見てりゃわかるさ。
どうも、俺の想像を遥かに超えた事情だと言うことくらいしかわからないけど、
でも、なんかワケありってことくらいはわかる。
さすがに自分の友人とかを殺られたら怒るかもしれないけど、
あんな奴等の2人や3人殺したところで、うるさく言うつもりはないよ、
・・・俺はね。」
日陰の顔が興味深いものに変わってゆく。
「じゃあ、もし、よっしーさんの大切な人があたしに殺されたらどうする?
・・・復讐する?」
さっきまでの態度はどこへやら、いたずらっぽい笑みを浮かべながら、
とんでもなく物騒な例えを持ち出してくる日陰。
それに対して、
「ま、仮にそうなったら俺だってアンタと闘る気になるかもしれないよな。」
こういう物騒な会話をもてさえ、にやりと笑って続ける。
「でもま、まず勝てないだろうけどな。」
そう言って含み笑いをする。
「え〜〜〜〜!  
じゃあ、その言い方でいくと、よっしーさんは、あたしよりもその人の方が大事ってことだよね〜〜〜」
「あのね(汗)。」
「だってそうじゃないっ。あたしよりも大切だから、あたしを殺そうとするんでしょ!」
さっきのやりとりが気に障ったのか、ややヒートアップ気味に食いついてくる日陰。
YOSSYは、俄かに風向きが変わった彼女の反応に多少困ったように、
「いちいち人の揚げ足をとるなよ、
そんなもん、俺だってわかんねえよ、実際そういう状況になったわけでもないし、
そもそも、さっきの言い回し、逆パターンだってあるんだぜ、
いくら俺の友人だって、
理由もなく日陰ちゃんを殺したりしたら、もしかしたら俺はそいつを殺そうとするかもしれない――」
「じゃあ、理由があればいいんだ!  理由さえあればあたしみたいな魔王なんて殺されたって――」

「いい加減にしろ!」

びくっ!
正直、女の子の軽い嫉妬話を聞くような感じで応対してきたYOSSYもさすがに声を荒げる。
日陰のか細い両肩をがっしり掴んで、目線を逸らして話をしていた日陰の目を真正面から見据えさせる。
「そうやって物事を悲観的に考えて自暴自棄になるな!  しまいにゃ怒るぞ!
俺だってわかんねえよ!  自分の友人同士が殺し合った時、どうするかなんて!
そもそも想像すらしたくないしな!
俺にとっては、もう日陰ちゃんだって大切な友達の一人なんだ――」
「・・・・・・ともだち・・・・・?」
「そ!  だから、これ以上自分を粗末にするようなことは言わないでくれ、
日陰ちゃんが魔王だろうがなんだろうが、もう、俺の友達だろ?  違うのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「頼むから――――」
何時の間にか、自分の目線が日陰の遥か下にあることに気づく。
直立姿勢のまま、日陰は、目の前の男を、見続けることしか出来なかった――



「・・・って、魔王?」



まったくの突然。
思い出したかのように、日陰の視線の高さに、自分の視線の高さをあわせ、改めて問い掛ける。
「さっき〜、確か〜、魔王って言ったよね?」
突然間の抜けた声をかけられ、あっけにとられて頷くことしか出来ない日陰。
「あの、魔王って、よく漫画とかに出てくる〜、アレのことかな〜?」

「・・・・・・・・・・・っふふふふふ。」
「あの?  日陰ちゃん?」
「あっははははははははははははははははっっ!  よっしーさん、あたしの話、ちゃんと聞いてないでしょ〜?
なんかバカみたい、よっしーさ〜ん♪」
「ば、馬鹿とまで言いますかい(汗笑)」
「あっははは、だってバカだもん、ぜったいバカだよ、よっしーさんって♪」
さっきまでの雰囲気はどこへやら。
堰を切ったようにけらけらと可愛らしくも大笑いしはじめる日陰。
半分以上馬鹿にされながらも、それでもYOSSYは、日陰がまた自分に笑顔を見せてくれたことが嬉しかった。

それから日陰はYOSSYに、自分のことについて話しはじめた。
正確に言えば、自分は魔王というよりは、世界の破滅という運命を実行しにやってきている存在であるということ。
世界を無に帰せることが、自分の持っている使命であること。
とりあえず、本覚醒まではこうやって時々ひょっこり出てきて楽しく遊んでいること。
(風見やハイドラントらとの関係については、彼女だけの問題ではないので、
さすがに日陰もYOSSYには話さなかったようだ)
そして・・・

「どうしてあたしって、こんな力持っちゃったのかなあ・・・って、考える時があるんだ。」
あまりに強大すぎる自分の力に苦悩する日陰。
そこには、魔王だとか言う恐怖のイメージはなく、
ただ、どうにもならない苦しみから逃れられない少女の姿があった。
そして、YOSSYには、彼女の苦しみを真に救ってあげることはできないかもしれない。
図抜けた脚力をもってようと、
妙な学校の妙な仲間と毎日のようにふれあってようと、
裏の汚い世界にすでにはまり込んでいるとしても、
彼女の苦しみの本質は真に理解できないかもしれない。
だけど、例え解らなくても、
「月並みだけどさ、日陰ちゃんは、日陰ちゃんでいいと思うんだ。
こだわるなっていっても、無理かもしれないけど、
けどさ、俺は、日陰ちゃんのままでいいと思うよ、うん。」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
日陰のジト目。
「よっしーさん、言ってることがさっぱりわかんないっ。」
「わり、俺も言っててよくわかんなくなった。」
今度はYOSSYが悪戯っぽい笑みを浮かべて日陰の髪をくしゃっと撫でる。
日陰も軽くYOSSYを小突きながら、それでもいつもの明るい笑みを振りまいてくれる。

そう、全部理解してあげることなんか不可能だし、また、その必要もない。
この先何が起こるか全く解らないし、もしかしたら、近い未来、彼女と相見えるかもしれない。
けど、
「おなかすいた〜〜〜〜っ。よっしーさん、なんか買って〜〜〜〜。」
・・・少しづつでも、ね。




「そいじゃな。また遊ぼう!」
「うん、また出てくるからね〜!」
「ああ、今度はもっといろんな所にな。」
「うん!  じゃーねー!」

「・・・よっしーさーーーん!」
「ん?」
「・・・・・・♪」



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どおもお、YOSSYです。

ようやく完成しました。
『魔王級すらナンパの前では例外足り得ない』
日陰ちゃんとデートLメモです〜

考えてみれば年前ですよ、日陰ちゃんとデートの約束したの。
もう、何ヶ月待たせたことか。
アレですね。『永遠の煉獄に消えよ』
ぐはあああああああああああああああああああああああ・・・・・・・・

純シリアスなんて、ほんと、act1第1話以来です。
しかも結局何の救いにもなってないし、YOSSY(汗)
いいんです、日陰ちゃんとはもう会えないわけじゃないし、次もあるさっ(笑)。

ひなたさん。
ほんとうにお待たせしました。
長い間待ってくれてありがとうございます。m(_)m

そしてみなさま。
久々のナンパ男YOSSYLメモ、読んでくれれば幸いです。m(_)m

では、このへんで失礼します。
YOSSYFLAMEでした。