前回までのあらすじ! 学園祭初日、オカルト研究会主催の”お化け屋敷”でひそかなたくらみが! ”お化け屋敷で女の子のスカートめくってセガランクをふやしちゃおう!” 計画を愚かにも実行に移したYOSSYFLAME&デコイ。 しかし、その目論見は来栖川綾香によって潰えた・・・かに見えた。 ところが、その計画に使われた”魔風穴”が暴走してさあ大変! どうする、どうなる、オカルト研究会!(ぷらす3名) 学園祭Lメモ「楓祭’98/閑話休題『ヒロイン達の大ピンチ!(完結編)』」 「一般生徒の避難、出口は完了したわ!」 「入口、全員避難完了!」 ただならぬ魔の気。 とにもかくにも一般生徒を脱出させる事に成功した綾香とYOSSYではあるが。 「!!・・・なぜそのまま逃げないのです?」 と、神無月りーずの叱責が飛んだりする。 「そんなことはいい、とにかく打開策はどうなっている!?」 一仕事終えて次のステップに移ろうかとしていたYOSSYとして見れば、 何故逃げないかといわれては、少しばかりむかつくものがあり、 ついつい言葉づかいが荒くなってしまう。が、切迫しているのも事実。 「まず、僕と芹香君がこのお化け屋敷の核・・・オカルト研究会部室にいきます。 そこで浄化の呪文をとなえますから―― 「私たちは!?」 「話を最後まで聞いてください。 この浄化呪文。これだけの魔の気を浄化するのですから、よくて一時間。 そのくらいかかる呪文なんです。 霊体系の悪霊なら、僕の魔力壁でどうにでもなりますが、召喚された実際の妖魔とくると・・・」 「つまり、その妖魔の足止めを俺達にしてくれと言うんだな?」 「そういうことです。」 「わかったわ! そうと決まれば早く行って!」 綾香の言葉に背を押されるように、りーずと芹香はお化け屋敷の中枢、 オカルト研究会・部室へと足を運んだ。 「さてと、おいでなさったみたいだな。」 「そうね、ものすごい妖気を感じるわ・・・」 お化け屋敷一階。 魔風穴から次から次へと沸いてくる異形の妖魔達。 殺気むき出しでYOSSYと綾香を睨み付けている。 そのまわりにはふわふわと飛び交っている異形の悪霊達も殺気を振りまいてくれている。 そんな一触触発状態の中でYOSSYは信じられない行動に出た。 「あれ、綾香・・・あれは?」 「ん? 何?」 どすっ! 「・・・よっしー・・・何を・・・?」 崩れ落ちる綾香。 そんな彼女の身体を支えながら、 「いやあ、悪いな、自分のまいた種くらいは自分で刈り取らせてもらうわ。 ・・・そこでゆっくり寝てろ。」 ぼそっとお気楽な調子で呟くYOSSY。 そのまま綾香を結界内の安全地帯に運び、 「さてと、そいじゃいっちょ闘りましょうかねえ!!」 愛刀・喧嘩刀を颯爽と構え・・・ 喧嘩刀を颯爽と・・・ 喧嘩刀を・・・ 「喧嘩刀忘れたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」 パニくるYOSSY。 「そーいえばなんかさっきから背中が軽いと思っていたらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」 . . . たらーーーーーーーーーー . . . 「ま、なんとかなるか。」 苦笑して無数の妖魔達の前に立ちはだかるYOSSY。 ――お化け屋敷・南向き地点。 「螺旋光熱波ぁぁぁ!!!」 ずしゃあ! トリプルGの光熱魔術を食らい、また一体妖魔が滅ぼされた。 「はーっはっはっはぁ!!!」 一人悦に入っている友人を尻目に一体一体丁寧に妖魔を埋葬して行く東西と『命』。 「ほらほらほらぁ!!」 なおも悦に入ってるトリプルG。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』 「喰らえぇぇぇぇぇぇ!」 もはやアドレナリン分泌全開状態のトリプルGを尻目にほそぼそと雑務に励む東西と『命』 そのとき、 かしゃーん・・・ 『眼鏡』 主に視力が弱い人が視力補正のために装着するもの。 「ぶっ殺してやらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」 「どわあ!?なんだなんだぁ!?」 『と、東西!? 落ち着いて落ち着いて〜〜〜〜〜っ!!』 ――同、正門地点。 「キシャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」 「ひ・・・!」 魔風穴から沸いて出た数体の妖魔が近くの女生徒に襲い掛かり、 その肌に紅の爪を食い込ませようとした瞬間! 「シャアァァァァァァァァァァァァ!!!」 男のまるで妖魔と見紛うくらいの禍禍しい気合によって放たれた、 鮮烈な闇により四散する妖魔。 「・・・大丈夫ですか?」 本当にさっきの気合の主と同一人物なのだろうか。 そう思えるほどの優しげな微笑を女生徒に向け手を差し出す男。 「は、はい・・・ありがとうございます。」 「いえ・・・」 素直に礼を述べる女生徒を引き起こしながら心中苦笑する男、神凪遼刃。 「(自分の不始末くらいは自分でどうにかしなければいけませんからね。)」 ――同、西向き地点。 「・・・暇ですね。」 ぼーーーーーーーーーーーーーーっと突っ立っているのは、T−Star−Reverse。 いくら暇だとはいったところで、彼はここを離れるわけにはいかないのである。 防御結界を張りつつけて妖魔が屋敷の外に出てくるのを抑えている役割がある以上。 そう考えると、彼のこの立場は非常に重要な・・・のではあるのだが。 「・・・暇です。」 まあまあ。 ――同、東向き地点。 「これで大体は大丈夫ですね。」 西側のティーと同じく、こちらも結界を張り終わった沙耶香が呟く。 「お疲れさまです。」 「にゃ〜〜〜〜〜。」 そして、沙耶香の横に佇む黒猫が一匹。 ――お化け屋敷中枢・オカルト研究会部室。 「芹香君・・・本気ですか?」 「・・・・・・・・・・・・(こくんっ。)」 「しかし、いくらなんでもそれは芹香君が・・・」 ばさっ。 あまりにもアレな芹香の”提案”に、さすがに渋るりーずだが、 これ以上は時間の無駄とばかりに、 普段、トレードマークとして羽織っているマントを脱ぎ捨てる芹香。 「・・・・・・・・・・・・。」 「ええ、時間のないのはわかります! けど! 本当にいいんですか!?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 「わかりましたよ! 協力します! (まったく、意外といえば意外すぎるほど頑固なんだからな。)」 . . . と、いったものの、芹香の動きはない。 困ったように、その優しい目を左右に泳がせている。 顔を赤らめ、目を固く瞑り、かすかだが身体も震えているようだ。 「・・・芹香君?」 「・・・・・・・・・・・・・・・(ぷい)。」 最後まで言いきって、耐えられなくなったのか、視線を彼から逸らす芹香。 「向こうを向いててください・・・って、そ、そうですね(汗)。」 普段はその容貌からは想像もつかないほど、その内面はふてぶてしい男、神無月りーず。 だが、その彼をもうろたえさせる事を、今、芹香はやろうとしていた。 ふぁさ・・・。 衣擦れの音。 ふぁさ。 また聞こえてくる。 「(・・・寿命が縮みますよ〜〜〜)」 心臓の鼓動がどんどん高まってくるのを懸命に抑えて、魔術の構成を組んでゆくりーず。 魔術というものは、なんらかの媒体によって発動させるものである。 元々人間というのは、単独では魔術、もしくは魔法を発動させることなどほぼ不可能な生物。 そういうわけで、他の自然要素から力を借りて、魔術を発動させなければならない。 呪文の詠唱というのは、そのための準備のようなものである。 今、芹香がやろうとしている事は、 自分の限界ギリギリまで、自然要素の力を借りて、この穢れきった空間を一気に浄化する 『超必殺浄化呪文。』 そのためには、極力無駄な障害を払拭しなければならなかった。 例えそれが、自分の衣服であろうとも。 日本有数の規模を誇る来栖川グループの令嬢であり、次期後継者であろうとも、 オカルト方面の知識が豊富で、一種独特の雰囲気を醸し出しているとしても、 芹香とて極々普通の17歳の女の子。 いくら浄化呪文に必要とはいえ、同世代の、しかも自分に因縁深い男の前で 自分の肌を晒すような行為に出る事は、身を切られる思いに違いない。 しかし、今回だけは、 最愛の妹、綾香がこの穢れた空間に幽閉されてる以上、 一刻の猶予、そして一度の失敗も許されない。 そして、この最大浄化呪文は、芹香が一人で捨て身でやったとしても、効果が薄いのに加え、成功率も低い。 彼女は、普段こそ何だかんだ反発的な態度を取るが、信頼しているのだ。 目の前の、一見女性にも見紛えるような”元・外道錬金術師”のことを。 芹香がそこまでの覚悟をしてまで唱えようとしている、超必殺浄化呪文。 この呪文には、多大なるリスクが存在する。 芹香自身が強力磁石のように媒介となり、自然要素を結集させて放つ呪文。 全てをさらけ出し、まったくの無防備になっている彼女に対して、無数の邪霊が群がってくるのである。 例え結界を張っているとしても、それ以上の吸引力を持っているため、これはどうしても避けられない。 この”元・外道錬金術師”神無月りーずの役割。 無防備の芹香に群がってくる無数の邪霊達を一体残らず駆逐する事。 絶対に失敗は許されない、ある意味芹香以上に過酷な仕事。 しかし、 「(絶対に成してみせますよ、何せね・・・)」 自分の背後にいる女性は、そのリスクも何もすべて承知の上で、自分に全幅の信頼を置いていてくれるのだから。 これに応えられなくては、りーずの男が廃るというもの。 「・・・・・・・・・・・・・・・。」 「絶対にこっちを見ないでくださいって・・・。」 あまりに無茶な芹香の注文に思わず苦笑するりーず。 何だかんだ言っても、やはり芹香はお嬢さまなのであろう。 これから成そうとしてる事は、芹香の肢体を気にしては出来る事ではないのに。 それでも、やはり見られる事を気にする芹香の妙な矛盾が、少しばかりりーずには嬉しかった。 ――魔風穴地点。 「がっ・・・!」 吹き出す鮮血。 彼、YOSSYFLAMEに群がる無数の妖魔。 喧嘩刀を携帯していない彼に、妖魔を倒す手段はない。 しかし、これはある意味好都合と取れた。 妖魔が自分一体にのみ目標を定めて攻撃してくれるから。 自分の血を、肉を、断末魔を求めて、我先に攻撃を仕掛けてくるのであるから。 自分が生きている限り、傍らで眠っている綾香に害が及ぶ事はないのだから。 妖魔達によって傷つけられた無数の傷痕がそれを物語っている。 しかし、今日のYOSSYには敗北は許されない。絶対に。 自分が倒れれば、奴等の矛先は綾香に向く。 それだけは絶対に許すわけにはいかない。 最初から綾香と二人で妖魔を倒せばいいんじゃなかったのかという話もある。 だが、これだけの妖魔の数。 いかに綾香とて無傷ではすむまい。 特にYOSSYが喧嘩刀を携帯していない現状ではなおさらである。 この一件は、自分らがまいた種。 自分のまいた種くらい自分で刈り取る。 しかし、そろそろ目が霞んできたかもしれない。 「頼むぜ、芹香先輩、神無月くん・・・」 このままだと持ってあと5分。 自分の体力の限界以上の力と気迫を振り絞って、それに何分延長できるか・・・ 妖魔が何十度目かのとどめの爪を振り下ろした。 「また・・・肉を切らせるか・・・」 ざしゅああっ! ――オカ研部室内。 「はあぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」 じゅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・・ 「これで何体目か・・・忘れてしまいましたね・・・、しゃあっ!」 じゅう・・・・・・・ 「本来はこういう闘いはしないんですけどねえ・・・」 確実に邪霊を駆逐しながら汗みどろの顔を苦笑に歪めるりーず。 「芹香君は・・・?」 傍らの芹香を”一瞬だけ”伺う。 彼女もその綺麗な肢体に汗を滲ませて懸命に詠唱を続けている。 そんな彼女の姿が、りーずにはやけに神々しく映えた。 「っと、僕はなにをやってるんだ!」 罪悪感にとらわれて自分の頭をこづくりーず。 こんな健気で一生懸命な芹香の肌をこの機に盗み見るなど、男として恥ずべき行為だと思っているりーず。 もったいない、YOSSYやデコイ、beakerだったら、心置きなく鑑賞するぞ(笑)。 まあ、それは置いておいて、 今この時間、芹香の守護者たる彼は、都合上どうしても芹香を見なければならない。 一瞬のミスも許されないこの状況下で、実に高校生らしい葛藤を、りーずは抱えていた。 ――魔風穴地点。 ざしゅああっ! 「なんとか間に合いましたね。まさか木刀を忘れてるとはねえ・・・」 呆れたような声を出しながらも、颯爽と現れた一人のアフロ。 「なんだ、いたんですかあ・・・、デコイくん。」 そう、この件のYOSSYの共犯、デコイである。 そのアフロに圧倒されて、今まで気がつかなかったが、 デコイの体には無数の傷がついていて、流血もおびただしい。 「アンタ・・・」 「ああ、あっちの妖魔もここほどではないにしろ、そこそこ手強かったですよ。 それよりも、ほい。」 血染めの顔をにこにこさせて、無造作にYOSSYに何かを投げ渡す。 「鉄パイプ・・・?」 「その辺に落ちてました。これでそれなりに闘えるでしょう?」 デコイの笑みに思わず苦笑するYOSSY。 「そだね、贈り物を頂いた以上、有効活用しないとねえ・・・」 一瞬後、彼を一番痛めつけてくれた妖魔に向き直る。邪悪な笑みを浮かべながら。 「死ねやぁぁぁぁぁぁぁ! 絶・烈風乱舞ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」 ――オカ研部室。 「(・・・はあ! はあ! はあ! はあ!)」 既に疲労困憊状態のりーず。 当然である。 彼は元々体育会系の人間ではないのだから。 もう自分が何をしているかもわかってはいない。 ただ、目に付く邪霊を駆除しているだけ。 眼も霞んできた。 それでも。 芹香の信頼を裏切れない。芹香を傷つけさせはしない。 なんとしてでも芹香を守る。 それだけを、ただそれだけを思いながら、もはや執念だけで、気迫のみで、意識を失っても尚、闘いつづけるりーず。 「(・・・・・・くん・・・)」 . . . 「うりゃうりゃうりゃうりゃあーーーーーっ! 刺殺! 撲殺! 惨殺だぁぁぁぁぁぁぁ!!」 すでにどこかイッちゃったような気合を込めて妖魔達をなぶり殺してゆくYOSSY。 「はあ・・・」 既にYOSSYに任せて、綾香の傍らで一休み中のデコイ。 「てめーーーーーー! 俺の出番とりやがってこのレーザーオタクがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 「何やとコラァ! 誰がここまで働いたとおもってけつかるんや!!」 眼鏡が外れて狂気モード(?)に入っている東西と、何故か河内弁でメンチ切ってるトリプルG。 『二人ともやめなさーーーーーーーーーい!!』 そんな困った二人をなんとか仲裁しようと努力を続ける『命』。 「神凪ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!! 絶対安静だといったでしょうがーーーーーーー!?」 「ひぃぃぃぃぃぃ、堪忍してください、響子先生〜〜〜〜〜っ!」 さすが『痕』本編じゃタフな女の相田響子教諭にずるずると引っ張られて強制連行され行く神凪遼刃。 「ティーせんぱい、何をなさってるんですか?」 「あの、手伝いましょうか・・・」 「いえいえ、それには及びません。 そうだ、暇ですから、少し話相手になってはくれませんか?」 絶対この男は潜在的ナンパ属性があると思いねえ。 松原葵と姫川琴音を相手にして、雑談にふけるティー。 「zzz・・・zzz・・・」 「うにゅ〜〜〜〜。」 寝てやがるし。 幸せそうに夢の世界に入っている沙耶香と、彼女の傍らでまどろむ黒猫。 そんな彼らが、この瞬間、全く同じ光景を目にしていた。 お化け屋敷の中枢、オカ研部室から、溢れ出さんばかりの神々しい光が降り注いできているのを。 瘴気が充満していたお化け屋敷が浄化されゆく光景を。 妖魔達が次々と浄化され天に召されて行くのを。 そして、暖かみのある光が皆に射し込んでくるのを。 「30分も予定を早めてやってくれたか・・・」 自らの血と返り血に濡れて満身創痍のYOSSYが安堵のため息と共に呟いた。 . . . . . そんな光の射し込む中、目を覚ました神無月りーず。 なにか体が癒されるかのような神々しい光に包まれながら。 暖かい温もりにつつまれながら。 ポタ・・・ポタ・・・。 りーずの頬に”雫”が落ちてくる。 彼を抱きしめるか細い手に力がこもる。 「せ、・・・芹香君?」 「・・・・・・・・・・・・・・・。」 ただ何も言わずに、あの無表情の芹香からポタポタと流れ落ちる涙。 悲しみの涙ではない、安堵の涙。 「・・・・・・・・・・・・・。」 無言で芹香から離れ、彼女と向き合う。 そして、彼女の涙を優しく拭い、彼女の髪を優しく撫で、その頭を抱き寄せる。 「ありがとう、芹香君・・・」 今ならこんなことも自然に出来る。 芹香の肩に自然に触れ、美しい裸体を引き寄せる。 そして、互いの唇が徐々に近づいてゆき・・・・・・ って、裸? どんっっ!! 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・〜〜〜〜!!!」 超必殺浄化呪文をかけるときから今までの記憶が一気に芹香の頭を駆け巡る。 見る見るうちに芹香の顔、いや、身体全体が真っ赤に染まる。 あまりに強烈な羞恥に襲われた芹香。 思わずりーずを突き飛ばし、両腕で身体を抱きしめて、後ろを向いてうずくまってしまう。 「あ、あ、あ、あ、ご、ご、ごめん、芹香君っ!!」 もはや完全に動揺してしまったりーず。 慌てて芹香に彼女のマントを羽織らせ、急場をしのぐ。 据膳食わねば男が廃るということわざの意味を全然わかってない男、神無月りーず。 しかし、彼の受難はそれだけにとどまらなかった。 「・・・何やってんだ? アンタは。」 びくうっ! 思わず芹香を自分の後ろにかばって身を隠させる。 芹香も状況上、りーずの後ろで小さくなって身を隠している。 だが、この時ばかりは突然の訪問者も芹香の姿など見てはいなかった。 「人が死ぬような思いをしてたってゆーのに、アンタは一体なにをしてたのかな〜? え〜〜〜〜? りーずくん。」 鉄パイプを軽く2,3振りながら問い掛けるYOSSY。 「さて、ゆっくりと事情を聞かせて――」 ごんっ。 「あんたはどうしてそう気が利かないのっ! ・・・・・・じゃ、姉さん、ごゆっくり〜〜〜〜♪」 一撃でYOSSYを気絶させ、この件で唯一無傷で済んだ綾香がにこやかに手を振り ずるずるとひきずって去ってゆく。 無論、そんなことを言われても、ハイそうですかとなるわけがない。 互いにそっぽを向いたままに、芹香は制服を着込んでしまって、バツが悪そうに走り去ってしまった。 「はあ・・・」 今日は学園祭。 神無月りーずの恋愛辞書にまた新たな1ページが書かれた日であった。 〜エピローグ〜 結局、このスカートめくり事件に関しては、YOSSYFLAMEの単独犯行ということになった。 セガランクの写真の保護と、周囲に対する無用の騒動を考えて、 YOSSYが罪をかぶる事が、前もって話し合いで決められていたからである。 しかし、結局は不起訴処分。 散々綾香に蹴りを食らった上に、死ぬ寸前まで体を酷使して尻拭いを敢行したYOSSYに対して、 来栖川姉妹はこれ以上一切追求してこないでくれた。 (この件は風紀委員会やジャッジなどの耳に入る事なく、内密に処分された。) 捕まる事をも覚悟していたYOSSYは、いずれ別件で彼女らに借りを返す事になるが、これはまた別の話。 魔風穴を利用して使い人を葬り去ろうとした神凪遼刃が、デコイに倒された一件であるが、 神凪にしても、この一件が明るみに出れば、今は困るのに加え、 デコイに姫川琴音のセガランク写真5枚セットを無料でもらい、この一件を水に流す事に決めたのである。 一切の罪を一人で被ったYOSSYであるが、無論彼とて慈善事業でこんなことをするわけがない。 第二購買部から報酬としてもらったのは、大方の女生徒のソニーランクの写真一式と 某友人Aから頼まれた、メガバズーカランチャー一式(何故か雛山理緒の名前が記入してあった(笑))である。 これでしばらくはファイナルガールの持ちネタには困らない。 ちゃんと現金、セガランク売り上げの2割(割り増ししてもらった)も頂いて、案外上機嫌のYOSSYであった。 そして、神無月りーずと来栖川芹香の微妙な関係はどうなったかというと・・・ ――学園祭から数日後の図書館カフェテリア。 「よっしーさん〜・・・なんとかしてくださいよ〜!」 「・・・・・・・・・・・・・・・。」 「りーずさん、どうしたの〜?」 「芹香君があれから全然口を聞いてくれないんですよ〜!」 そう、 あれ以来しばらくの間、来栖川芹香は、りーずに対して口も聞かなくなってしまうことになる。 ただ、嫌悪感から来るものではなくて、 りーずと顔を合わせた途端、顔を真っ赤にして逃げ出してしまうのである。 「よっしーさん〜(汗)。」 「知らねえよ、んなこたあ。自分でなんとかしたら?」 詮無いYOSSYの物言い。 「お願いしますって〜!」 「ふん、芹香先輩のあんな姿見た男なんかに何もアドバイスする義理はないね。」 「そんな〜〜〜〜っ・・・」 神無月りーずの春は、まだ先のようである。 ・・・・・・・・・Fin。 ============================================= どおもお、YOSSYです。 やっと終わりました、学園祭L・ヒロイン達の大ピンチ! 本当に長い間待たせてしまいました。 関係者各位の皆様、心よりお詫び申し上げます。 いつものように、魔道用語は僕の思い付きなので、深く考えてくださらなくて結構です(^^)。 今作の懺悔〜 もうこの人しかいませんっ。 神無月りーずさん、どうか笑って読んでくれれば幸いです。 ちなみに、この作では、少しだけ芹香先輩の好感度が上がってます・・・きっと(^^)。 最後になりましたが、 学園祭L関係者のみなさま、オカルト研究会のみなさま、そして、読んでくださった全ての皆様。 本当にありがとうございます。 それでは失礼いたします。 YOSSYFLAMEでした。