Lメモ・学園男女混合テニス大会! 第10章 「温暖前線急接近!」  投稿者:YOSSYFLAME


――第8ブロック一回戦第1試合。TaS×電芹組vs神無月ろーず×葛田玖逗夜組。

「えーーーーーーーーーーいっ!」
スパアンッ!
電芹の普段の電柱技を流用したパワーテニスが冴える!
ざしゅっ!
その勢いのある剛球が、ろーず達のコートに突き刺さる。

「ゲーム!  TaS、電芹組、3−0!」

「HAHAHAHAHAHAHAHA!」
もうアフロ全開の高笑いで優勢な今を謳歌しているTaS。
しかしながら、いつもなら悔しげな口撃を繰り出す葛田が、何故か今日に限って大人しい。
ただ無言でコートチェンジを済ませ、そして試合を再開する。
すぱこーん。
それなりのサーブが、いいところに飛んで行くのだが、
「Haa!」
ぴしっ!
奇妙なリズムに乗ったTaSのリターン。
そのボールをゆっくりと返すろーず。
「えいっ!」
電芹が返す。
すぱーんっ。
今度は葛田が、力のないボールを返して行く。

とまあ、この調子で、他のコートに比べて、えらい遅い試合展開になっていた。




――第3ブロック一回戦第2試合。Yin×エビル組vs八希望×保科智子組。

「よーーーーし!  そこだ!いけっ!エビルっ!」
「エビルさーーーーん!  がんばってください〜〜〜」
「おーおー、この暑い中頑張るわねえ。」
イビルを筆頭とし、アレイ、メイフィアなどの魔族メンバーが、
普段マイペースな彼女たちにしては珍しくヒートアップしている。
最も、メイフィアのみは、いつものようにパイポなどくわえて涼しい風景画の中に半分つっこんで観戦しているが。

「八希君、智子君、そこだ、行けーーーーーーーーーーーーーっ!」
「部長部長、落ち着いてください…」
こちらも強烈にヒートアップしている菅生誠治。

「…………。」
フッ!  シュパァン!     ぞしゃあっ!
「よしっ!」
「…ふう。」
なんとなくエビルに誘われてテニス大会に参加したYin。
しかし、彼は知らなかった。
テニス全く知りませ〜んって雰囲気を漂わせていたエビルの意外な才能。
そう。
彼女が愛用している”死神のカマ”。
普段こそ使用機会らしい機会はないが(あればあったで困るのだが)
実は、凄まじい斬撃速度を誇る技なのである。
それをテニスに応用できた日には…

ひゅごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……   ずしゃっ!

スピードならば、まさに圧巻。


「ふふん、なかなかやるやないか。一回戦にしては骨のある相手やなぁ。」
しかしながら余裕の笑みを浮かべる智子。
「取られたら取り返す。これが勝負の鉄則や!  いくで、八希君!」
智子の檄に、そのあどけない顔に笑みを宿らせる望。
幾度かのリターンの後、望がロブを打ち上げる。
「よっしゃ、いいタイミングや!  これぞ私らが編み出した魔球――



――大飛球・神戸ランドマークタワーやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」



「わ、わ、わわ…」
「………。」
懸命(?)にボールを捕捉しようとするYinとエビル。
が、あまりにも高い位置にあるため、容易に補足できないのに加え、
「あああああ、あっちいったりこっちいったり、全然捕れねえじゃねーーーーーーーかぁぁ!」
無回転の超秘球・神戸ランドマークタワー。
それ故にボールの行方は打った望にもわからない。”ボールに聞いてくれ”状態である。

ぽーーーーーーーーん。

「イン!」

「くうっ…」
「………。」

「ゲーム!  八希、保科組、4−4!」

この超攻撃的試合展開は、今のところ両者全くの互角。
盛り上がりもますますヒートアップしてゆき、前半戦を終えようとしていた。



――再びDコート、第8ブロック。

「OH!  さすがに待ちくたびれましたネエ!  葛田サン、早く打ってくだサーイ!」
人を自分のペースに巻き込むことにかけては天性の才能を発揮するTaSが、
逆にこういうふうに焦らされると言うのは、滅多に見ることができない光景だろう。
TaSがこれなのである。
温厚な電芹も少なからずイラつきはじめている。
「おいコラァ!  セコイ手ばっか使ってねーでさっさと始めやがれ!」
気が長いとは言い難い秋山登も、たびたび怒声を浴びせる始末。
作戦なのかなんなのか。
葛田とろーずは、制限時間限界まで粘って粘ってサーブを打っている。
他にも、何かといって時間を引き延ばしに引きのばしている。

「えーーーーーーーーいっ!」
電芹の電柱スマッシュ(使っているのはあくまでラケットです)が炸裂したと同時に、
ゲームも5−0と、TaS組の圧倒的リードでこの試合にリーチがかかった。

「…さて、そろそろ頃合いでしょうね。このぐらいの湿度、そして気圧なら…」
「そうですね、おにいさま…」
と呟くや否や、
「…超ベンギソ、”沙織”ちゃ〜んっ!  出番ですよ〜っ!…」

ぴぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

観客から悲鳴が上がる。
そりゃそうだろう。
突然巨大な超ペンギソが目の前に現れた日にはねえ。
「な、な、な、…なんなんですかあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「OH!  ダイナマイツですネエ!」
さすがに慌てる電芹と慌ててる?  TaS。
そして…

「…”沙織”ちゃ〜んっ!  やっちゃってくださ〜いっ!…」
ごおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
葛田の合図と共に、ペンギソの口からコート上空に向かって大火炎が放射された!
その異様な光景に悲鳴をあげる観客。
しかし、
「…はっ!」
「藍原君?」
次の次に試合のため控えていた瑞穂のあまりにも不安げな表情に驚く岩下。
「信さんっ、観客達を避難させましょう!」
「何っ?」



「…ククククク、この試合、根底からひっくり返させてもらいますよ…」



ごごごごごご…
その時、Dブロック上空の空気が唸りはじめた!
「…この時の伏線ですよ。試合時間を遅延しまくったのも、そして、”無意味に走り回ったのもね”…」
葛田の壮絶な笑み。
そう。彼が狙っていたものは――

「全員逃げろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
岩下が吠えるように避難勧告を出す。
既にそれを察していたのか、西山、風見、ゆき、きたみちなども観客の誘導を助ける。

「…ククク、何もかもが吹き飛ぶがいい。…ろーずっ!…」
「はい、おにーさま…」
ろーずが、まさにとどめ、地獄の釜を自ら開ける呪文を唱え終わった。その時!



ビュゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!
Dコートに巨大竜巻が発生して、一瞬のうちにコートを覆った!



そう。この試合、葛田とろーずはいくつかの伏線を張っていた。
第一に、故意に遅刻してきたこと。これによってコート内の熱気をわずかながら溜めること。
登場時のTaSに対する攻撃は、このためのカモフラージュだった。
第二に、試合中もだらだらして、”一見無意味に”コートをうろつきまわったこと。
この二つは、竜巻を呼び込めるように錬金術を応用して作った、葛田とろーずの周到な罠の作成だった。
そして第三に、超ペンギソ”沙織”の存在である。
”彼女”の火炎放射で、完全に空気のバランスを崩壊させたのである。
その幾多の要素が加わった、これはまさに葛田×ろーずのアルティメットホールドであった。
「…これで、僕たちの愛と奇跡の逆転勝利だね。ろーず…」
「はい、おにーさま…」



「残念でしたネエ!  あたしらがそう簡単にくたばるとでも思っているのデスか〜?」



「…何!?…」
驚愕の葛田。
竜巻が去った後にそんな彼の目に飛び込んできたものは――



「なんとか間に合いました…」
「あたしらの技を甘く見てもらっては困りますネ。これぞ必殺――電柱固定!」
安堵の笑みを浮かべる電芹と、いつも通りのTaS。
「よーしよし!  さすが我が弟子よ!」
”何故か”あの竜巻をモロに食らって平気な顔の秋山が賛辞を贈る。
竜巻が彼らを襲ったその瞬間、どこからか電柱を取り出した電芹。
その電柱を持ち前のパワーでコートに突き刺し固定する。
そして、電芹達自身を固定したものは――

「HAHAHA!  アフロの力をなめてもらっては困りますネエ!」
「ううっ、何か複雑な心境です…」



そう。”増毛したアフロ”を電柱と体にくくりつけて自分達を固定したのである。



「…な…!」
愕然とする葛田。
「…ふ、ふふ、ふふふふふ…」
そして、放心したかのように笑いはじめる。
「葛田サ〜ン?」
「葛田さん、しっかりしてください!」
「おにーさまっ…」
ろーずと、そして電芹、TaSまでもが心配そう(?)に葛田のまわりに集まってくる。
「…あはははははっ…」
大笑いを始める葛田。しかし、それはさっきまでの壊れたものではなく、意志のこもったものであった。
「…これだからあなたたちは面白い。
まさか僕らの竜巻を、あんな方法で防ぐなんて…、正直予想できませんでした…」
「おにーさま…」
ろーずが呟く。
「…ろーず、お疲れさま…」
そう優しくパートナーに笑い掛け、そして、TaSに右手を差し出した…



「…あなたたちの、勝ちです…」



「…葛田サン」
TaSも、彼の手をがっちりと握り返した。





























ぐきっ。













「OH〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

「…ふ、油断大敵ですよっ…」
「葛田さんっ、この期に及んで手首をひねりにいきますかぁ!?」
「おにーさま…(ジト目)」
「…ふ、これがダーク13使徒四大使徒の意地ですよ…って、…ああああああ〜〜〜〜〜!…」

ぼきっ!

「お仕置きですっ!」
「…ううっ、痛い…」



      TaS×セリオ@電柱(電芹)組…2回戦進出!
      葛田玖逗夜×神無月ろーず組…1回戦敗退。



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どおもお、YOSSYです。

ゆかり:こんにちは、広瀬ゆかりです!
よっし:さて、今作のコンセプトは――
ゆかり:言ってみなさいよ。
よっし:ゆかりちゃん?  なんかおめめが怖いんだけど…
ゆかり:テニスを書きなさいって言ってるでしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?

(以下惨劇)

よっし(血みどろ):でもまあ、意表はついただろ?
ゆかり:つきすぎなのよっ!
        …ふう、まあいいわ。で、次回は?
よっし:Yin組vs八希組決着編。
        でもって、2ブロック第2試合か、6ブロック第2試合、
        もしくは7ブロック第2試合ってところを入れていこうかと。
ゆかり:あんまりアテにはなりませんが、待っててやってください。(礼)


今作に登場してくださった、ろーずさん、葛田さん、TaSさん、Yinさん、八希さん。
どうもありがとうございました。