Lメモ・学園男女混合テニス大会! 第28章 「魔球デスマッチ!」 投稿者:YOSSYFLAME


「…負けてしまいましたか。」
ディアルトの呟き。
勝利寸前までとーる、レミィ組を追い込んだものの、最後の最後で。
「とーるさん、レミィさん。」
「…………」
「ハイ?」
真摯な目で、自分らを打ち破った二人を見つめるディアルト。
「お二方にお願いがあります。」
「…はい。」
「もし、あなたたちが第2ブロック代表になった、そのときは…」
そして、ディアルトの口が開く…

「絶対にティーさん組だけには負けないでくださいっ!!!」

がしっ!
二人の手をがっちり掴んで、頼み込んだ。
「…は、はあ…」
唖然とするとーる。
「彼らにだけは優勝させるわけには断じていかないのです!
私達は志半ばで散りましたが……、あなたたちに託していいですか?」
「ウン、イイヨ!」
「ありがとうございますっ!」
あっさり承諾するレミィ。
その彼女の手をがっちりと握るディアルト。
とーるはそんな二人を、ただ、ただなんとも言えない思いで見続けることしかできなかった。





――Bコート、第3ブロック2回戦第1試合、XY−MEN、レディー・Y組vs八希望、保科智子組。



ついに火を噴いた八希の新兵器、SFF(スプリットフィンガーファストボール)。
その恐るべき魔球は、

既に敗れ去っていた。

「ゲーム!  XY−MEN、レディー・Y組、4−2!」
気付いてみればなんでもないこと。
打つ寸前に急落するSFFだが、これはテニスであって野球ではない。
素直にワンバウンドするまで待ってから打ち返せば、
なんてことなく打ち返せるただそれだけの球なのである。
「…気付かなかった。」
「あほーっ!」
すぱぁん!
どこから取り出したのか、智子のハリセンが八希の後頭部を直撃する。
「いやあ、ほら、”現代の魔球”とかで話題になってたから、つい…」
「これは野球やのうてテニスやって言ってるやんけっ!」
すぱーん。
再び後頭部に炸裂するハリセン。
「まあまあ、落ち着いてくださいよ。」
「なにをっ!」
意外なほど落ち着き払ってる八希にいぶかしげな視線を向ける智子。
「たった一つ二つ魔球が破られたとて、なんてことありませんって。」



「よっしゃ!  これで2回戦も突破とくらぁ〜」
「呑気なものですね。」
「なっ…」
こちらは優勢に試合を運んでいるXY−MEN組であるが、
「彼らは”魔球のデパート”と言えるほど多くの魔球を編み出してかかって来ています。
これで終わったと思ったら、負けるのはこちらです。」
「けっ!  どんな魔球でこようと、所詮俺らの敵じゃないな!」
「…………」
確かに大飛球もSFFも破っているXY−MEN組。
しかし、レディの予言は最悪の形で的中することになるのである。



「必殺!  スカイドロップ!」

その掛け声と同時に、   
ストーン!  と、ボールが落ちたのである。
一瞬ホームランボールかと思ったボールが、ラインギリギリの位置に。
「なっ!?」
驚愕のXY−MEN。
誰が見てもアウトであろうあの球が、まさに急落してコートに叩き付けられたのであるから。
「どや?  こればかりは打ち返せるもんやあらへんで!
前のような大飛球とちゃう、スピードがついたドロップボールや!」
智子が吼える間にも八希のスカイドロップは次々とポイントを奪ってゆく。
ただ落ちるだけならまだしも、右方向左方向へと流れるように落ちてくる。
しかもスピードがあるために、軌道を目で追うだけでは手後れなのである。
しかし、他に打つ手もなく、XY−MEN組は成す術もなくポイントを取られてゆくのみであった。



「へえ、やるなあ…」
観客席から観戦していた風紀委員会・”元”生徒指導部のディルクセンは、誰にともなく呟いた。
「(聞けばあの数々の魔球は保科のサポートなしでは生まれなかったという話だが…)」
眼鏡の奥の冷徹な目が智子を捉える。
ディルクセンの話通り、
八希の発案した魔球を現実のものとするために、試行錯誤し、計画立てて、
そして完成まで導いたのはまぎれもなく智子の手腕。
無論、八希の想像力と才能、そしてたゆまぬ努力があってこその話だが。
「あの指導力と実行力、生徒指導部の再興のためにぜひ欲しいんだがな。」

「渡さんよ。」

「貴様……Fool!」
ディルクセンの呟きをたまたま横にいて聞いていたFoolが横槍を入れる。
「渡さんだと…?  貴様にそのようなことを言える権利がどこにある?」
「権利ならあるさ。」
ディルクセンの追求を事も無げに受けるFool。
「俺は彼女を信頼している。手駒としか思っていないあんたとは違う。」
きっぱりと切り捨てるFool。
しかし、
「…それとも、あんたも、彼女を手駒以外の、そんなものではない何かと見ているのか?」
ディルクセンの目が予想していたものとは少し違っていることに気づき、そんな言葉を投げかける。
しかし、ディルクセンは口元に笑みを浮かべたまま、コートに目を移し、それきり口を開くことはなかった。
それを受け、Foolの視線もまたコートに。



「りゃぁぁぁぁぁぁ!」
八希の気合と共に弾かれるボール。
右へ左へ突き刺さる変幻自在の弾道にXY−MENはおろかレディー・Yも……?

「…なるほど。」

そう呟いたレディーの横にスカイドロップが突き刺さる。
「ゲーム!  八希、保科組、4−4!」
ついに同点に追いついた八希組。しかしその顔に笑みは浮かんではこない。
「…なるほど、やて?」
レディの瞳を睨み付けながら口を開く智子。
「よお聞こえなかったなぁ、もいっぺん言ってくれます?」
「スカイドロップの攻略の目処は立った。と言ったのですが。」
顔色一つ変えずさらっと言ってのけるレディ。

「…おもろいやないか。」
ぼそりと呟く。
「おもろいやないか、破れるものなら破ってみい!
八希くんっ!  加減する事ないで。粉々に砕いたらんかいっ!」
「ラジャー♪」
そういって八希も即座に構える。

「へっ!  盛り上がってきたなぁ!」
「XY−MENさん、指示した通りお願いしますね。」
「…わぁってらあ。」
「それと。」
心なしかレディの顔が笑っているようにXY−MENには見えた。
「アレの使用を許可します。存分にやってさしあげなさい。」
「…アレって、アレか?  いいのか?」
「ええ。…来ます!」

ドキャッ!

八希から放たれたサーブを無難に返すレディ。
そのリターンを智子が返し、それをまたXY−MENが返し、いつしか一触触発のラリーと化していた。
「(メドは立ったやと?  アホらし!
私と八希君で開発した、左右打ち分け急落ドロップ、スカイドロップを打ち返せる訳が――)」
そして、XY−MENの甘く入ったストロークが八希の真ん前に!

「(――ないっ!)」



パァァァァァン!



「今です!」
「おう!」
その瞬間、レディとXY−MENが一斉にラインより更に後ろに下がった!
スカイドロップはラインギリギリに突き刺さり、大きく跳ね上がる!
「右!」
「おうっ!」
レディの指示が飛ぶや否や、ボールを見向きもせず観客席のほうへ猛ダッシュのXY−MEN!
そして、ボールが観客席に飛び込む瞬間!
「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
まるで位置が分かっていたかのように観客席の壁を蹴っ飛ばし、ボールに向かって飛翔する!



「喰らえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!  魔球オーバーヘッドドライブ!!」



ものすごい跳躍から、ラケット越しにオーバーヘッドキック!
打球は唸りを上げて八希組のコートに叩き込まれる!

「見たかぁ!  これが俺様の新魔球第一弾、オーバーヘッドドライ…ぶおっ!」
がんっ!
最後まで言い終わる前にレディに後頭部を殴られるXY−MEN。
「というわけです。」
自分のやったことをまるで意に関せず、智子達に告げるレディ。

「やるやないか…」
しかし、なんら落ち込んだ様子もなく構え直す智子。
「そやけど!  こんなもので私らのスカイドロップを破ったと思わんとき!」
「何度やってもおそらく結果は同じでしょう。」
「じゃかましいっ!」

しかし、結果はまさしくレディの言う通りだった。
スカイドロップの弱点は、ボールが必要以上に跳ねること。
それと、八希の正確無比なショットが裏目に出、全部レディに見切られる結果となり、
観客席付近のボールは全てXY−MEN必殺オーバーヘッドドライブで返される。
ライン際に落とさないことでフェイントを決めようにも、
スカイドロップのバウンド後の滞空時間の長さのせいで、十分対応できてしまうのである。
「うあぁぁぁ!  秘打、白鳥の湖っ!」
隠し球として温存していた八希の回転ショットも、
「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ドバキャッ!
鍛えに鍛えられたXY−MENの豪腕で、押されながらも返されて、
すぱぁぁん!
智子が最後の粘りを見せるも、レディの壁に阻まれる。
そして――



「ゲーム!  アンド、マッチ・ウォン・バイ、XY−MEN、レディーY組!  ゲームポイント、6−4!」



「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
XY−MENが勝利の咆哮をあげる。
「くっ……」
その反対側では、八希が悔しそうにうめいている。
が、二人ともふと気づく。ネットを挟んで互いを見据えてる女性二人に。

「悔しいなぁ…、結局出す技出す技全部返されてんやから…」
「……………」
「そやけど!」
「……」
「今度やったときはそれを更に上回ってみせる!」
「あっ…」
不意に智子の腕に掴まれ引っ張られる八希。
「今度は私らが絶対に勝ちますさかい、覚えといてや!」
目の前のレディに啖呵を吐き、そして、八希に向かって軽くはにかむ。
「な!」
思わず苦笑いする八希。
勝負に勝とうが負けようが、彼女は彼女のまま何も変わらぬことに少しばかりの安堵を覚えながら。

「…覚えておきます。」
唐突にそういって腕を差し出すレディ。
仮面の奥で、彼女はどんな表情をしているのだろう。
でも、そんなことはどうでもいい。
目の前に差し出された手は、まぎれもなく再戦の約束なのだから。
「…ああ!」
ニカッと笑いながら智子は、その手を固く握り返した。





      XY−MEN×レディー・Y組…3回戦進出!
      八希望×保科智子組…2回戦敗退。



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どおもお、YOSS…うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

どぐしゃぁぁぁぁ!


ゆかり:どうもじゃなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいっ!
よっし:いきなり何すんだてめえ!
ゆかり:それはこっちのセリフよ!  27章から何日経ってると思ってるの!?
よっし:えーと、一月半弱。

ぐしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

ゆかり:しれっと言うなぁぁぁぁぁ!
よっし:うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!(現実逃避の叫び^^;)
ゆかり:…そういえば、vsジン先輩はどうなったのよ?
よっし:…ぎく。
ゆかり:いつまでも人を待たせるんじゃないって何度言ったらわかるのよーーーーーーーーーっ!
(ちゃらんぼちゃらんぼちゃらんぼ)
よっし:あうあうあうあうあうあうあうあう。

(今現在45kです。ううっ、申し訳ありません…)

ゆかり:で、今作のコンセプトは?
よっし:策略派の激突って所かな?  策を実行できる頼れるキャラがいないとできないことだけど。
ゆかり:レディ先生も保科さんも頭いいからね。
よっし:どっかのスイカ頭女優と違ってな。

ぱかんっ(スイカが割れる音)

ゆかり:さて、次回はTaS組vs西山組、ティーナ組vs菅生組の予定です。
        グータラ作者のおかげで長引きそうですが、これからもよろしくお願いします。